54.研究所見学
今日は、基地の研究所の見学だ。時間前に転移魔法で基地に移動した。
「今日は、基地の秘密をしっかり探らないといけないよ。サルビア、準備をいい?」
「はい、しっかり、見て行きます。」
「それじゃ、行こうか。」
「うん、行こう。テラ。」
私達は、基地の出入口にいる軍人に商業IDを見せて、ベルーナ大佐の面会を依頼した。前回と同じ場所を指示された。別の軍人に案内されて、ベルーナ大佐の部屋にやって来た。
「こんにちは、お世話になります。」
「よく来たね。私も、楽しみにしていたよ。」
「ありがとうございます。」
「それじゃ、早速行こうか。」
「はい。」
私達は、ベルーナ大佐に案内されて、基地の研究所にやって来た。ベルーナ大佐によると、一般の人がこの中に入るのは、初めてだそうだ。
「ここが、神具の動作確認する場所になる。ここでは、各地から入手した神具を調べて、役に立つかどうかなど、細かく調べている。」
「ここでは、鑑定魔法は、使わないのですか?」
私は、随行している研究者に聞いてみた。
「鑑定魔法は使いません。また、使いこなす者はこの基地にはいません。」
「それでは、神具を使った鑑定は、どうですか?」
「神具は、特定の鑑定のために用いられます。未知の神具の鑑定には利用できません。」
「そうですか、つまらぬ質問ですみません。」
「いいえ、構いません。何でも聞いてください。その為に私は、ここにいるので。」
「はい、わかりました。」
私達は、その後、魔法陣の研究施設を見て回り、最後に、検分専属の軍人の訓練を見せて貰った。
「ここでは、検分専属の軍人の育成を行っている。複数の神具を使いこなす必要があるので、常に練習を欠かせない。また、多量の魔力を消費するので、それに耐えれるように、ポーションを飲みながらの魔法の詠唱を行っている。」
「もう少し、近くで見てもいいですか?」
「構わないよ。テラも、そちらの方々ももっと近くで、見て貰っていいですよ。」
「はい、ありがとうございます。」
私は、神具の魔法陣を見たかった。いくつかの神具を使うと言っていたので、今使っていない神具は、すべて、テーブルの上に置かれていた。闇魔法が施されていて、普通は見ることが出来ないようになっていたが、私やサルビアには、無駄だ。
私は、出来る限り、見て覚えようとしていたが、あることに気が付いた。すべて、ほぼ、同じ魔方陣だったのだ。考えてみれば、当然で、すべて鑑定魔法の魔法陣だ。ただ、対象が異なるだけだ。
しかも、どのような対象かが、魔法陣に記載されているので、汎用性はない。
その上、スキル鑑定では、魔力をほぼ使わないが、この方法では、大量の魔力を消費してしまう。
魔法陣を効率化すれば、多少消費魔力を減らすことはできるが、やはり、魔力は消費されてしまう。
私は、取り敢えず、1個だけ、魔法陣を覚えておくことにした。残りの魔法陣は、自分で、アレンジできそうだ。
「どうも、ありがとうございました。いい、勉強になりました。」
「そうか、それは良かった。」
「ベルーナ大佐、変な質問をしてもいいですか?」
「急にどうしたのかな?」
「なぜ、こんなに親切なのですか?通常では、見せることはないと伺いました。これらは、軍の機密に抵触しませんか。」
「テラが、そのような事を気にするとはな?」
「おかしいですか?」
「この基地に見学に来ること自体が異常な事と思わなかったのか?」
「えっ、どうことですか?ベルーナ大佐。」
「この基地に招待した時点で、すでに、異常な事なのだよ。テラは、素直に来てくれた。もとより、私の思惑をご存じだと思っていたのだが、違っていたようだな。」
「すみません。私には、何のことか、見当もつきません。」
「そうか、本当に興味だけで、ここに来られたのだな。
それでは、説明をしよう。
私達は、以前から、このように、秘密裡に研究を行ってきた。
それ故、他国の技術力との比較が出来なくなってしまった。
私達の研究が、どの程度の物か、分からないのだ。」
「そうなんですか。」
「それで、テラに来てもらった。貴殿は、まだ、若いが、我々の期待以上の結果を上げている。
その幅広い見識を見込んで、我々の研究を評価して貰えたら、ありがたい。
また、その方なら、秘密が守れそうだから、来てもらった。」
「そうですか。正直にいいます。」
「お願いする。」
「実は、商品の納品の時に、神具を使って、検分を行っていることに気が付きました。
しかし、掌に納まるほどの神具なので、詳しく見ることが出来ませんでした。
そこで、見学をしながら、よく、見たいと思っていたのです。」
「そうか、正直に話して貰えて、嬉しいよ。それで、どうだった?」
「その前に、一つ聞いてもいいですか?」
「検分で使っていた神具は、ここで作ったものですか?」
「どういうことだ?」
「購入したもののように、思われたからです。」
「その通り、極秘に購入しているものだ。非常に高価な物だが、他に扱っている処がないので、言い値になってしまっている。」
「やはり、そうでしたか。」
「なぜ、それが分かったのだ。」
「簡単なことです。もし、ここで作っているなら、もっと、効率の良いものに改良しているはずだからです。」
「というと、テラは、あの神具の働きを理解したということか?」
「はい、理解しています。同じものなら、すぐに手配できます。」
「なんと、それはありがたい。私は、今の納入先とは早く縁を切りたかったのだ。
代わりに、テラに納入して貰えるなら、安心できる。」
「価格の交渉は、どのようにしたらいいですか?」
「価格は、テラに一任する。私には、適性価格がわからない。でも、人を見る目だけはあるつもりだ。だから、テラに任せる。」
「今の価格を聞いてもいいですか?」
「少し、待ってくれ。係を呼ぶ。」
ベルーナ大佐は、人を呼びにやらせた。暫くして、係がやって来た。
「お待たせした。テラ、何でも聞いてくれ。」
「検分に使っていた神具は、1個いくらで、納入していますか?」
「あれは、1個金貨10万枚です。」
「この国では、何個使っていますか?」
「正確では、ありませんが、神具は、15種類あり、この基地で、20人が利用しています。国全体では、基地が、約20あるので、15×20×20で、6000個は使っているはずです。」
「そうですか。最後にもう一つだけ、あの神具を使って、1日に何回検分ができますか?」
「それは、使う軍人の魔力量に影響しますが、一般に10回が限界です。中には、30回も使える者もいますが、それは、特別な軍人です。」
「わかりました。ありがとうございました。」
「テラ、それで、何時ぐらいに、納入できそうだ。」
「あの、少し、改良してから、納入したいので、1週間いただけますか?金額もその時に提示します。それと、参考までに、その神具を1セットお貸しできますか?」
「構わないとも、それでは、よろしく。」
私達は、基地から、工房に、転移魔法で移動した。
私は、ちょっとした実験を行うことで頭がいっぱいになり、わくわくしていた。