43.軍人の街リーベン
私達は、ソーロン帝国の国境にやって来た。ここにでは、大勢の軍人が旅人の出入りを管理している。
「すみません。私達は、ソーロン帝国へ入国したいのですが。」
「まず、身分を示すものを見せてくれ。」
「はい、これです。」
「商人、テラというのか。それで、こちらが、従魔のスピアだな。」
「はい、そうです。」
「それで、どのような目的で、ソーロン帝国に入国するのだ。」
「私達は、商人ですので、商売をしに来ました。」
「誰かの紹介状はあるか?」
「いえ、ございません。」
「なら、だめだ。通すわけにはいかない。」
「お金なら、持っています。」
「おい、お前、俺を買収するつもりか!」
「いえ、怒らないでください。通行料のつもりで言っただけです。」
「そうか、ならいいが、買収がばれると、死刑だぞ。迂闊なことを言うな。」
「はい、すみませんでした。」
私達は、仕方がないので、見つからない所に、転移魔法用の魔法陣を描き、闇魔法で隠してから、一旦、支店に戻った。
「せっかく言ったのに、残念。」
「うん、行ったのに、残念。」
「そうだ、セーロンなら、何か、いい考えを知っているかも。」
私達は、商業ギルドのセーロンに相談した。
「それなら、ベルーナ大佐に紹介状を書いて貰えばいいですよ。」
「でも、私は、ベルーナ大佐に連絡を取れません。」
「そうですか。それでは、私から、連絡しますね。」
「お願いします。」
「テラ様も、一緒に話しますか?」
「いいんですか。」
「えぇ、構いません。」
「それでは、御一緒させてください。」
私達は、セーロンに付いて行った。VIP室の一つに入っていった。
「こちらに、遠隔通話器があります。これを使って、連絡を取ります。」
セーロンは、慣れた手つきで、遠隔通話器を操作している。
「すみません。ソーロン帝国の街リーベンに居られるベルーナ大佐に繋いでください。」
しばらく、取次所の係員と話した後、セーロンが、私に声を掛けた。
「今、ベルーナ大佐を呼んでいます。もうすぐです。」
暫くして、ベルーナ大佐の声が聞こえて来た。
「すみません。私は、先日お会いした、商人のテラです。」
「あぁ、先日は、お世話になりました。」
「いえ、こちらこそ、お世話になっております。実は、ソーロン帝国で、商売をしたいので、入国の為の紹介状を書いていただけませんでしょうか。」
「それは、構わないが、私は、軍人なので、商売の事は、分からない。基地の見学なら、紹介状を書くことができるが、それで、構わないか?」
「はい、結構です。取り敢えず、入国できれば、ありがたいです。」
「それなら、早速遅らせて貰う。会えるのを楽しみにしているよ。」
「それでは、失礼します。」
私達は、遠隔通話器を切った。
「セーロン、ありがとう。助かりました。」
「いえ、テラ様には、お世話になっております。これぐらい、何でもないですよ。」
「ところで、この遠隔通話器は、誰かの特許ですか?」
「テラ様は、遠隔通話器が、初めてですか?」
「いいえ、何度か、見たことはありますが、詳しいことは、知らないんです。」
「今は、商業ギルドが管理しています。といっても、すべての国が、統一した機器を使っています。
規格があって、それに合格する商品を商業ギルドが扱っています。納品する業者に資格はいりません。買取価格も固定です。ただ、合格する品でないとだめですが、これは、当り前ですね。」
「大量の納品がある場合は、どうなるのですか?」
「いままで、そんなことはありません。逆に、商品が足らなく事はありましたが、その時は、予約待ちになりますね。」
「その機械は、どの程度継続的に使えるのですか?」
「月に1回メンテナンスを行っていますよ。それも、特定の業者が行っています。
まあ、業者と言っても、能力試験に合格した者を派遣するだけの業者ですけど。
それに、故障した場合は、買い替えですね。修理は、出来ません。」
「そうですか。特許はないのですね。」
「はい、そうです。テラ様は、興味がおありの様ですが、何か、商売の感でも働いているのですか?」
「今、少し、話をしてもいいですか?」
「はい、テラ様の用件は、最優先です。私を専属の係員と思って貰って構いませんよ。」
「ギルド長に怒られませんか?」
「大丈夫ですよ。先日の特許の商品の打ち合わせは、いつでもできますから。でも、内緒にしてくださいよ、ギルド長には。」
「はい、大丈夫ですよ。実は、いくつか考えがあるのです。一つは、もっと、簡易の機械を作れるということです。細かい話ですが、遠隔通話器は、同じ機械を2個使っていますが、それを1個にすることが出来そうです。」
「えぇ、そんなこと出来るのですか。出来るなら、コストは、かなり安くなりますね。
問題は、同じ機械と認定してもらえるかどうかですね。
納入金額は固定ですから、製造金額が安くなれば、それだけ儲けが増えるということです。」
「そうですね。一度、持ってきますから、調べて貰えますか?買取できるかどうか。」
「もちろんです。いつでも結構です。」
「それでは、また、後日に。」
「はい、テラ様、お待ちしています。
私達は、支店に急いで戻った。新しい商品の開発だ。忙しくなるぞ。」
ソーロン帝国の街、リーベンにやって来た。この街は、ソーロン帝国の軍事の中心だ。
街中、至る所に軍人がいる。ほとんどが、軍人だ。