38.ソーロン帝国へ
私達は、ソーロン帝国へ向けて出発した。最初は、ヘノイ王国の中のコベーサという街に寄る予定だ。それから、ソーロン帝国のリーベンという街に行き戦争の情報を得るつもりだ。
先日、リンダに相談していたことを思い出していた。
【過去の出来事 始まり】****************
私は、転移魔法で商業ギルドに移動し、中に入っていった。
「リンダ姉、こんにちは!」
「あら、テレ、こんな時間にどうしたの?」
「ちょっと、相談したいことがあるの。」
「何?」
「別の街に支店を創ろうと思っているの。
それで、どの街に作ったらいいか、教えて欲しいの。」
「コベーサという街なら、この近くだし、大きな街だからいいと思うわ。
でも、今の店も十分に管理出来ていないようなのに、大丈夫?」
「はい、無人販売用の機械があるので、大丈夫です。」
「でも、それでは、管理しているといえないよ。」
「でも、レンタルの費用は、儲けで十分返せているので、いいと思います。」
「そうかなぁ。まあ、頑張ってみて。」
「ところで、いきなり、支店を出すといっても、大丈夫ですか?」
「どういうこと?」
「紹介状など、あれば助かるかなぁって。」
「多分、書いて貰えると思うよ。」
【過去の出来事 終わり】*****************
実際には、紹介状は貰っていない。急な出発になってしまったからだ。
コベーサという街にようやく着いた。今後の事もあるので、人目に付かない所に、転移魔法用の魔法陣を描き、闇魔法で、コーティングしておいた。これで、いつでも、ここにやって来れる。
この街に支店をつくることが、目的なので、まずは、商業ギルドに向かった。商業ギルドは、街の中央にあった。さすがに、この国一の街だ。すごい、大きさの建物が商業ギルドだった。
「すみません。誰か、相談に乗って欲しいのですが。」
「こちらは、初めてですか?」
「はい、初めてです。ブューラナから来ました。」
「そうですか。ブューラナから、はるばると。」
「はい、ここで、支店を出したいのです。」
「ブューラナでは、商業ギルドに登録していますか。」
「はい、商業IDも持っています。」
「拝見してもいいですか?」
「これです。」
係の男性は、セーロンと言って、テキパキと仕事をこなしているようだ。
「はい、拝見しました。まず、この街の商業ギルドに登録して貰いたいのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、お願いします。」
「それでは、登録料として、金貨20枚を頂きます。」
「商業IDから引いて貰ってもいいですか?」
「はい、結構です。すこし、お待ちください。」
セーロンは、奥の部屋に行き、すぐに戻って来た。
「コベーサの商業ギルドの登録も記録しました。これをお持ちください。」
私は、セーロンから、商業IDを受け取った。商業IDには、コベーサの商業ギルドの認定も記載されていた。これで、どちらの街でも利用できるようだ。
「それでは、支店の条件を窺います。」
「地上2階で、地下室があることが条件です。1階は店舗として、2階は住居として利用したいです。地下室は、倉庫として利用します。」
「広さは、どの程度でしょうか?」
「この建物の4分の1ぐらいの広さが欲しいですが、費用次第です。」
「少し、お持ちください。該当する物件を持ってきます。」
暫くして、セーロンが複数の書類を持って、帰って来た。
「いくつか、ありますが、予算は、いかほどでしょうか?」
「そうですね。保証金は、金貨100枚までで、賃料は、月金貨60枚ぐらいで、考えています。」
「なるほど、では、これはどうでしょうか。広さと建物の作りは、問題ありません。ただ、本通りに面しているので、少し価格的に上回ります。」
「どれぐらいでしょうか?」
「保証金が金貨150枚で、賃料は、月金貨75枚です。」
「そうですか、部屋は家具付きですか?」
「はい、家具付きです。それに、前の借主も商人でしたので、1階は、そのまま利用できると思います。ただ、地下室は、別の用途で利用していたようです。私どもも詳しくは聞いておりません。良ければ、ご案内しますが、どうでしょうか。」
「そうですね。見せて貰えますか。」
「いつがよろしいですか?私は、これからでも、都合付けますが。」
「それでは、お願いします。それから、気に入ったら、そのまま、利用したいので、書類も用意してください。」
「はい、わかりました。」
「それでは、表で、お待ちください。すぐに、用意します。」
私達は、玄関に行き、少し、待った。
「すみません。書類を揃えていて、遅くなりました。申し訳ございません。」
「はい、大丈夫です。」
「それでは、行きましょうか。ここから、直ぐですよ。もう、見えていますから。」
その店は、商人ギルドの3軒離れた所にあった。本当に、すぐそこだった。こんな、本通りに面した所で、立派な建物だった。
「鍵を開けますので、お待ちください。部屋の明かりを点けますね。」
「はい。」
私達は、セーロンに続いて、中に入っていった。家具や装飾など、申し分なかった。これなら、貴族相手でも、大丈夫だ。
「それでは、2階に上がりましょう。足元に気を付けてくださいね。」
「はい、大丈夫です。」
2階も、満足のいく広さがあった。また、ベッドなども、すべて、揃っていた。まるで、今も住んでいるようだった。
「何か、質問はありますか。」
「特にありません。とても、綺麗なのですが、何故、手放したのですか?」
「それは、お客様の個人情報なので、お教えできません。すみません。」
「わかりました。」
「それでは、最後に、地下室に行きましょうか。」
「はい、お願いします。」
私達は、地下室に降りて行った。
「おぉ、これは、なんでしょう。」
案内役のセーロンが、驚いてしまった。
「これは、これは、ちょっと、変わった趣味をお持ちの方だったんですね。」
「本当に、そのようですね。」
「これが、原因でしょうね。」
「さあ、私には、分かりかねます。」
「分かりました。地下室も確認できましたし、契約します。」
「それでは、こちらに記入してください。それから、費用は、どのように処理しましょうか。」
「そうですね。取り敢えず、半年は使いますので、その分を今支払います。
いくらになりますか?」
「保証金と半年間の賃料で、金貨600枚になります。」
「分かりました。これで、清算してください。」
私は、商業IDをセーロンに渡した。すると、アイテムボックスから、機械を取り出し、清算の手続きを行った。そして、書類の控えと共に渡してくれた。
「はい、これで、手続きを完了しました。まいど、ありがとうございました。」
「今日から、ここに滞在します。」
「どうぞ、お愉しみください。鍵をお渡ししときます。」
セーロンに鍵を貰い、私達は、2階で、寝ることにした。明日は、忙しくなりそうだ。