35.医師サルビアの誕生
今日は、サルビアと一緒に、朝ご飯を作って食べた。リンダに選んで貰った調理道具を使う初めての朝食だ。食べ終わった後、今日は、店の開店準備をサルビアに任せた。
私は、久しぶりに、コプトの家に行くことにした。今日は、サルビアも一緒だ。
「こんにちは、邪魔するよ。」
「おぉ、テラじゃないか。久しぶりだな。
今日はどうしたんだ。
可愛い女の子を連れて来て。」
「コプト、手を出すんじゃないよ。」
「そんなこと、するわけないよ。」
「仕事は進んでいる?」
「おいおい、先に紹介しろよ。」
「はい、私は、テラの友達のサルビアと言います。今後とも、よろしくお願いいたします。」
「おいおい、ちょっと、間違えていないか?こんな立派な女の子が、テラの友達だと。」
「それが、おかしいか?」
「怒るなよ。ビックリしただけだよ。
今日は、5つ商品を渡せるよ。あれから、頑張ったんだ。」
「所品を沢山引き取れるのはうれしいけど、無理しないでよ。」
「大丈夫だよ。あれから、飲んじゃいないし、元気だよ。
今は、仕事が楽しいんだよ。
全く、疲れないよ。」
「そうだ、これ、飲んどいて。」
私は、赤のポーション(特級)をアイテムボックスから出して、コプトに渡した。
「おっ、ポーションか、これは、上等だな、いいのか。」
「先行投資だよ。身体が資本だからね。」
「おぉ、いいこというね。遠慮せずに貰うよ。」
「今日も、よく出来てるね。全部でいくら?」
「今日のは、出来がいいので、金貨100枚だな。」
「はい、これで。」
「テラ、お前、凄いな。金貨100枚を、ぽんと出すなんて。」
「ポンじゃないよ。ドン、だよ。」
「はっ、はっ、本当だ、ドン、だな。」
「それじゃ、また、作っておいてね。」
「よし、任せとけ。」
「「バイバイ。」」
私達は、革細工師の家を出て、転移魔法で貴族エリアに移動した。それから、ファーリの屋敷まで移動した。
私達は、スピアに抱きかかえられて、2階の部屋に窓から入っていった。
「ファーリ、来たよ。」
「サルビア、テラ、こんにちは。」
「今日は、元気そうだね。」
「はい、昨日から、調子がいいです。」
「でも、まだ、完治したわけではないから、用心してね。」
「それじゃ、サルビア、治療を始めようか。」
「はい、見ていてください。」
サルビアは、前回、テラに教えて貰ったように、ファーリの左手を握り、マナを流し始めた。
ファーリの身体の左側が、マナで満たされていくのを感じたので、マナを流すのを止めた。
それから、場所を変えて、ファーリの右手を持って、同じ様にマナを流し始めた。
また、ファーリの身体の右側が、マナで満たされていくのを確認して、マナを流すのを止めた。
今日は、お腹から、マナを流し始める。
「今から、ファーリの身体の中心に手を当てて、魔力を流していくよ。」
「はい、お願いいたします。」
「それじゃ、お腹に手を置くけど、構わない?」
「いいです。」
サルビアは、ファーリの身体の中心である、へその辺りに手を置いて、マナを流し始めた。
最初は、マナがうまく流れなかったが、次第に、マナがファーリの全身を流れ始めた。
サルビアは、ファーリの全身に滞りなく流れているのを確認して、マナを流すのを止めた。
「テラ、確認して。」
「はい、分かった。それじゃ、サルビアは、離れていてね。」
私は、サルビアに代わって、ファーリのお腹から、マナを流しながら、全身のマナの流れを調べた。
すると、特にマナが漏れている所もなく、うまく、流れていることを確認した。
最後に、スキル鑑定で、病気の有無を調べた。ファーリの病気は、完治した。
「うん、治っているよ。サルビア、最後に、予防の事をファーリに教えてあげてね。」
「はい、分かった。」
サルビアは、ファーリに、病気の予防の方法を説明した。私が聞いていても、上手に説明していることが分かった。
「最後に、これを飲んでくれる。」
私は、赤のポーション(特級)をアイテムボックスから、1本出して、ファーリに渡して飲んで貰った。
私達は、また、スピアに抱えられて、1階の中庭に隠れた。それから、私の転移魔法で店まで移動した。
「サルビア、うまくいったね。ファーリは、完治したよ。」
「テラのお陰よ。まだ、一人でやり切る自信はないわ。暫くは、テラが見ておいてくれる?」
「いいよ。いつでも私は、サルビアの傍にいるよ。」
「ありがとう。」
「まだ、医者になるには、どうしたらいいかわからないけど、治癒魔法は知っていた方がいいよ。」
「どうするの?」
「簡単だよ。傷口を見て、治れって思えばいいよ。ちょっと、やってみるよ。」
私は、腰のダガーを取り出して、サルビアの腕を切った。
「テラ、何するの。血が出て来たわ。」
「ちょっと、待ってね。」
私は、サルビアの傷を光魔法で治癒した。
「傷よ治れ。治癒魔法」
すると、サルビアの傷は消えた。
「これが、治癒魔法だよ。簡単だろ。」
「自分の腕を切って、治してみて。ただし、余り深く切らないでね。」
サルビアは、言われた通りに、やってみた。
「傷よ治れ。治癒魔法」
うまく、傷を癒すことが出来た。
「それでは、次ね。ここに毒水を用意するよ。それを掛けて、毒に侵されてから、治してみて。」
私は、コップに毒水を満たした。
「はい、やってみます。」
サルビアは、毒水を腕に掛けて、毒に侵された。その後、治癒魔法で癒した。
「上手ね、その調子。それを、何度も、繰り返してくれる。」
「はい、分かった。」
サルビアは、言われた通りに、何度も、何度も、繰り返した。いつの間にか、光魔法のレベルが20を越した。
「サルビア、もう、いいわ。十分よ。
今度は、薬草から、ポーションを作って貰うわね。」
「そんな、すぐには、出来ないよ。」
「大丈夫だよ。それじゃ、地下牢前の工房に行くよ。」
私達は、スピアの腰にぶら下がって、私の転移魔法で地下牢前の工房に移動した。
「さあ、ここが工房だよ。ここで、ポーションをつくるよ。」
「へえ、色んな器具があるのね。」
「まず、ここに薬草を入れるよ。それから、マナを流しながら、かき混ぜて、ポーションを作るよ。一度、私がやってみるから、見ていてね。」
「はい。」
「それじゃ、行くよ。」
私は、薬草を千切りながら、蒸留水の中に入れて、マナを注ぎながら、混ぜた。
「ほら、出来上がりだよ。今度は、サルビアの番だよ。」
「はい、やってみる。」
少し、時間は掛かったが、無事、ポーションを作成できた。
「それでは、そのポーションをガラス瓶に入れて、更に、上級のポーションに仕上げるよ。」
「はい、見てます。」
私は、ガラス瓶に入れたポーションを精錬して、上級のポーションに変化させた。
「それじゃ、サルビア、やってみて。」
「はい、やってみます。」
サルビアは、ポーションの入ったガラス瓶を見つめているが、一向に変化しない。
「サルビア、何を考えているの。」
「えーと、じっと見ているだけです。」
「それじゃ、だめよ。よくなれ、よくなれって、心で、念じてね。
特級のポーションを1本出してみて。」
「はい、これです。」
「それをしっかり、イメージしてね。」
「それから、もう一度やってみて。」
「はい、やります。」
今度は、ガラス瓶の中のポーションの色がどんどん濃くなっていった。変化が分からない状態になった。私は、スキル鑑定で、出来上がったポーションを調べた。
「サルビア、特級だよ。うまくできたね。
それじゃ、ひとりで、最初からやってみて。」
サルビアは、ひとりで、特級のポーションを作り上げた。
「今日は、ここまでにしようか。それじゃ、帰って寝るよ。」
私達は、転移魔法で店に移動し、仲良く、ベッドで寝た。