26.閉塞性魔力硬化症の少女
さあ、今日も張り切っていくぞ。って思ったが、いつも通りのルーチンワークになっている。
店を開店して、貴族エリアの少女のいる屋敷に転移魔法で移動した。
「お早う。サルビア。起きてる?」
「うん、今、起きたよ。」
「昨日は、どうだった?あの後、気分が悪くならなかった?」
「大丈夫よ。それ以上に何だか、調子が良さそうよ。」
「それなら、良かった。まず、赤のポーションを飲んでね。」
「はい、ありがとう。」
サルビアは、私が渡した赤のポーション(特級)を飲み干した。
「手を握ってもいい?」
「いいよ。」
私は、サルビアの手を握って、サルビアの身体のマナの流れを感じた。サルビアのマナの回路図を頭に描きながら、徐々にマナを流していった。
閉回路が少しずつ開いて行った。私は、マナの量を増やさずに、流す量を一定にして、暫く、流し続けた。そして、回路の外に漏れていないかを確認した。特に問題はなさそうだ。
「サルビア、少し、多くするよ。気分が悪くなったら、言ってね。」
「はい、分かった。」
私は、サルビアの手から流し込むマナの量を徐々に増やしていった。その間、ずっと、サルビアの身体のマナの回路で、漏れていないかに注意を払った。
問題なく、流れているようだ。左手から流し込んでいる私のマナは、左腕から、左足に流れている。私は、一旦流すのを止めた。
「どう、気分は?」
「大丈夫よ。気持ち悪くないよ。」
「それじゃ、続けるね。今度は、右手から流すよ。」
私は、ベッドの反対側に移動して、サルビアの右手を握った。そして、左手の時と同じようにマナを流していった。少しずつ、少しずつ、用心しながら流していった。
「どうかな?」
「テラ、大丈夫よ。続けて。」
「分かった。続けるよ。」
今度は、右手に少し多めのマナを流し、その量を保って暫く様子を見た。
サルビアの顔色は、良さそうだ。
徐々に流すマナの量を多くしていくと、右手から、右足に私のマナが流れて行った。
一旦、中断して、サルビアの様子を確認した。
「どうかな?大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。なんだか、身体が温かい。こんな感じは初めてよ。」
「そうか。どうしようかな?」
「どういうこと、何かトラブル?」
「そうじゃないんだけど。今日一度にして、大丈夫か分からないから。」
「私は、大丈夫よ。続けて。気持ちいいよ。」
「そうか、それじゃ。続けるよ。」
「はい、お願いします。」
「今度は、ちょっと、お腹を触るよ。いい?」
「いいよ。服を脱いだ方がいい?」
「脱がなくてもいいけど、服の中に手を入れるよ。いい?」
「うん。いいよ。」
「それじゃ、入れるよ。」
「はい。」
私は、布団の中に手を入れて、サルビアのお腹を探した。それから、服の隙間から、手を入れて、行った。
「テラ、ちょっと、待って、くすぐったい。」
「ごめん。待ってるよ。収まるまで。」
「はい、もういいよ。続けてね。」
「それじゃ、入れるよ。」
私は、サルビアのお腹のへそを探した。漸く、人先指の先でへそを感じることができた。
「サルビア、ちょっとくすぐったいけど、我慢してね。」
「はい、我慢する。」
私は、指をへそに入れて、マナを流し始めた。ここは、太い回路が多いので、初めから、多めのマナを流し込んだ。すると、私のマナは、左足、右足、そして、全身に流れて行った。
サルビアの全身のマナの回路を感じながら、外に漏れていなかを調べた。漏れていない。大丈夫だ。
「サルビア、少し、多めに流すよ。」
「はい。」
私は、マナを流し込み、サルビアの全身を巡るようにした。全身に流れていることを確認して、その量を固定した。
「もう少し、我慢してね。」
「はい。」
暫く、流し続けたが、滞っている所は、感じなかった。これで、一応流れた。後は、サルビアが自分で、この状態を維持しないといけない。
「もう一度、サルビアの身体を調べてもいい?」
「いいよ。」
私は、スキル鑑定で、サルビアの身体を調べた。すると、閉塞性魔力硬化症の文字は消えてなくなっていた。一応、完治したようだ。
「サルビア、治ったみたい。」
「えぇ、本当?」
「本当だよ。でも、これからは、また、病気にならないように、予防しないといけないよ。」
「はい、どうしたらいいの?」
「サルビアは、魔法を使える?」
「使ったら、だめって言われているの。」
「あぁ、そうだね。これまでは、だめだったけど、もう大丈夫だよ。」
「それじゃ、手を貸して。」
「はい、どうぞ。」
私は、サルビアの手を取り、少し、マナを流した。
「今、マナをサルビアの手から流しているよ。わかる?」
「うん。分かるよ。さっきもやっていたね。身体中に流れていたよ。」
「そうか、サルビアは、感じていたのか。」
「あれが、マナなのね。」
「そうだよ。そのマナは、サルビアも、持っているよ。それがわかるかな?」
「ちょっと、待ってね。
うん、分かるよ。マナが流れている。」
「それを、身体中に流していって。」
「やってみる。やった!うまく流れたよ。」
「それでは、掌を上にして、次に、そのマナを掌に集めてくれる?」
「はい、集まって来たよ。あぁ、掌の上で光の球が出来て来たよ。」
「上手だね。サルビアは、初めてとは思えないね。」
「そう、テラの教え方が上手なんだよ。」
「ありがとう。それじゃ、その光の球を見ながら、蝋燭の炎をイメージして、私にぶつけてくれる。」
「いくよ。はい。」
サルビアの火球が私の身体に当たった。
「上手よ。それが火球よ。魔法も出来たね。」
「ありがとう。テラ。」
サルビアは、起き上がって、私に抱き付いた。
私は、サルビアの頭を撫でてあげた。
「よかったね。」
「テラのお陰よ。」
「サルビアが頑張ったからだよ。これからは、毎朝、毎晩、そのマナを身体中に流すことを繰り返してね。それで、閉塞性魔力硬化症の予防になるよ。」
「それじゃ、サルビア、バイバイ。」
私は、スピアと一緒に、転移魔法で店に移動した。
今日も、一日頑張ったね。ちょっと、昼寝しようかな。
「スピア、おいで、昼寝だよ。」
「うん。昼寝。」
私は、スピアに添い寝をしてもらい、少し寝ることにした。