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25.困っている貴族

 今日は、いつも通り、店を開けてから、スピアと私を光魔法で、クリーンにした。


 これで、匂いもなくなった。気を良くしながら、私は、隠密魔法を私とスピアとに掛けた。


 それから、前と同じように、貴族エリアに入っていった。


 私は、何とかして、貴族の知り合いを創りたいと思った。それには、どうすればいいのか?


 いつも通り、少し考えたが、いい考えが浮かばない。困ってしまった。


 リンダは、貴族の知り合いはなさそうだし、ジュナは貴族を知っているだろうが、内緒で仕事をしたいので、相談できない。


 そうだ、私のような貴族を探せばいいのだ。困っている貴族を探そう。それは、金貸しだ。


 貴族の街を歩きながら、私は、金貸しの店を探したが、それらしい店は見つからない。おかしいなぁ。あるはずだが、何処にもない。


 もし、私がお金に困った貴族としたら、どうするだろう。


 これはだめだ、私は、お金に困っていないし、ましてや、貴族でもない。


 そうだ、取り敢えず、貴族の生活を覗こう。そうすれば、貴族の気持ちになれるかもしれない。


 私は、すこし、本通りから外れた屋敷に侵入することにした。ここなら、誰かに見つかることも少ないし、すぐに逃げれそうだ。


 敷地の中に入ると、何故か、花壇の花が枯れている。よく見ると、外壁が薄汚れている。


 中庭に入り、そのまま玄関までやって来た。ガラスの窓があったので、中を覗いてみた。


 「ん、中が見えないぞ。」


 私は、思念伝達で、スピアに話しかけた。

 

 「うん。僕も見えない。汚れている。」


 「そうか、窓ガラスも汚れているのか。仕方がない、裏口に回ろうか。」


 「うん。付いて行く。」


 私は、スピアにおんぶしてもらって、裏口に行った。


 ここにも、誰もいない。スキル探索で、屋敷の中を調べてみた。


 すると、1階には、誰もいなかった。2階に4人いたが、それぞれ、別々の部屋にいた。


 一人は、ベッドで、寝ていた。この人は、病気の様だ。歳は、私と同じぐらいだ。若い女の子だ。


 もう一人は、老人で、机に向かって、何か書いていた。


 後の二人は、何か、動き回っていた。それぞれ、40歳代の男と女だった。この屋敷の主とその奥さんかな。


 不思議な事に侍女や執事がいない。なぜかな、今日は、お休みみたいだ。


 私は、病気の女の子が気になって、そーっと屋敷の中に入り、ベッドで寝ている女の子の部屋に忍び込んだ。


 ベッドの女の子は、寝ているのか、起きているのか、よく分からない。


 部屋の中を見渡すと、やはり、この部屋も汚い。


 「スピア、せっかくだから、部屋を綺麗にするよ。どうおもう?」


 「うん、いいと思う。」


 私は、光魔法で、部屋の中をクリーンにした。ついでに窓ガラスもクリーンにした。ついでに、部屋の空気もクリーンにしておいた。


 「爽やかだ。いい空気。」


 「誰かいるの?」


 これは、スピアじゃない。ベッドの女の子だ。気が付いたみたいかなぁ。起きてたかも。


 「スピア、どうしよう?話しかけてみる?」


 「うん。話す。」


 私は、隠密魔法を解いて、姿を現した。


 「ごめんなさいね。勝手に入って来て。」


 「それより、部屋を掃除してくれたの?」


 「あぁ、わかる?」


 「こんなに爽やかな気分は、久しぶり。ありがとう。」


 「勝手に入ってきて、怒らないの?怖くない?」


 「いつも、一人なの。だから、話ができて、嬉しいわ。

 それに、私ぐらいの女の子を誰が、怖がるの?」


 「そうか、でも、人を外見だ判断したらだめだよ。

 こんな、格好でも、何をするかわからないよ。」


 「でも、いいの。どっちみち、私はすぐに死ぬから、それが、少し早くなっても。

 それに、一人で死ぬよりいいよ。寂しくないから。」


 「そうか。でも、用心はして、損はないよ。」


 「うん。分かった。」


 「私は、テラ。こう見えても、冒険者なんだ。強いよ。」


 「本当、冒険者のような恰好をしているのね。

 それって、本当の事?それとも、趣味でやっている?」


 「何いってるんだ。本当だよ。強いよ。」


 「私は、サルビアよ。仲良くしてね。僅かの間だけど。」


 「サルビアは、どんな病気なの。」


 「私も、よくわからない。急に熱が出て、心臓が、バクバクするの。」


 「そうか、何とかならないの。」


 「小さい頃は、お医者さんが見てくれていたの。でも、最近は、見てくれない。」


 「これを飲んでみて、少しは元気になると思うよ。」


 私は、サルビアに、赤のポーション(特級)を1本渡した。


 「あぁ、ポーションね。高いんじゃない。いいの。」


 「こんなもの、何でもないよ。私、これでもお金持ちよ。」


 「わかった。飲むよ。」


 サルビアは、赤のポーションを飲み干した。顔色は良くなったようだが、病気の方は、ダメみたい。


 「サルビアは、病気のこと、知りたくない?」


 「知りたいよ。自分の事だから。」


 「それじゃ、私が調べてもいい?」


 「テラ、病気が分かるの?」


 「やってみないと、なんとも。ダメだったら、ごめんね。」


 「いいよ。これまで、大勢の医者に診て貰っても、治らなかったんだから。

 だめでも、ガッカリしないよ。」


 「それじゃ、見てみるね。」


 私は、サルビアに、スキル鑑定を使った。すると、「病気:閉塞性魔力硬化症」と出て来た。


 「病名は、分かったよ。閉塞性魔力硬化症っていうんだ。」


 「へぇ。初めて聞いたよ。」


 「ちょっと、確認だけど、サルビアは、手足が痺れたり、冷たくなったりしたことがある?」


 「そうね。気分が悪くなる時は、大抵、手が冷たいわ。足は、わからない。」


 「そうか、少しさわってもいい?変なことは、しないから。」


 「いいわよ。変なことって、何?」


 「まあ、いいよ。」


 私は、サルビアの手を握った。冷たくて、白い手だ。指も細く、か細い感じがする。


 「ちょっと、マナを流すね。気分が悪くなったら、すぐに言ってね。やめるから。」


 「はい、いいよ。」


 私は、サルビアの手を通して、サルビアの身体をめぐるマナを感じて行った。


 マナが至る所で、止まってしまう。うまく流れていない。どうも、マナの回路が途切れているようだ。それが、身体中、いたるところにある。


 大体、サルビアの身体のマナの回路を把握できたので、少しずつ、私のマナを流し込んで行った。


 ちょうど、ハンカチの端を水の入ったコップに少しだけ漬けたように、少しずつマナを流していった。回路が閉鎖して、止まっていたマナが、少し流れた。


 「サルビア、気分はどう?気持ち悪くない?」


 「大丈夫、何だか、温かい。気持ちいいよ。」


 「そう、それじゃ、続けるね。」


 「いいよ。」


 私は、また、マナを流していった。少しずつでは、あるが、閉鎖回路が開き始めた。


 「今日は、ここまでにしておくね。」


 「なぜ?気分いいのに。」


 「どういっていいか、分からないけど、一度にやると、反動で、身体の調子が悪くなりそうなの。」


 「そうなの。でも、少しは、楽よ。」


 「そう、良かった。」


 「それで、私、治りそうなの?」


 「ごめんなさい。私は、医者じゃないから。」


 「そうだよね。ごめんなさい。困らせて。」


 「いいよ。また、明日来るよ。」


 「絶対よ。必ず来てね。約束よ。」


 「はい、約束ね。それじゃ。バイバイ。」


 私は、また、隠密魔法を起動して、姿を消した。1階の裏口の近くに転移用魔法陣を描き、闇魔法の結界で隠した。


 それから、じっと待っていたスピアの腰にぶら下がって、転移魔法で店に移動した。


 「また、明日だね。スピア、寝ようか。」


 「うん。寝よう。」


 いつも通り、スピアに添い寝をして貰い、眠りについた。


 

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