２０４．カタリナとの新婚旅行
今日は、カタリナと結婚後初めての旅行だ。私は、念のため、直属の部下を５人同行させて、私達の周りに配置した。
今回の旅行は、一部の部下にしか、伝えていなかった。そのため、誰かに攻撃されることなど、思ってもみなかった。
私達が、転移魔法でアータキ国の都市コーリマにあるテラ・ワールドの支店に移動し、アンジに貰ったリストを見ながら、買い物をしていた所だった。
急に、１０数人の冒険者風の者達に囲まれてしまった。
「カタリナ、だな」
「カタリナ、私の傍から、離れないで」
「はい」
私は、素早く、闇魔法で、結界を張って、私のカタリナと部下達を覆った。それから、思念伝達で、直属の部下達に攻撃させた。
「一番強そうな者だけを残して、その他の者は殺せ！」
「「了解！」」
一瞬の出来事だった。私達を取り囲んでいた暴漢たちは、地面に伏して、死んでいた。そして、一人の身柄が、目の前から、消えてしまった。
「ムーン様、この者をどうします？」
直属の部下から、思念伝達で、連絡が入った。
「秘密の屋敷の地下に閉じ込めて置け」
「了解」
捕らえた暴漢のリーダーらしき者は、直属の部下の一人に連れていかれたようだ。
私は、何故、このような事が起こったのかを侍女のマリーに調べさせることにした。私は、思念伝達で、マリーに連絡を取った。
「秘密の屋敷に暴漢者のリーダーらしき者を捕らえている。今回の旅行がどこから漏れたのか、調べてくれ」
「はい、ムーン様、カモミールとダリアを使ってもいいですか？」
「構わない。必要と思えば、その他の部下も使っていいぞ。その代わり、急いで調べろ」
「了解」
私は、マリーとの思念伝達を切って、暫く、自分なりに考えることにした。それと共に、安全に旅行が出来る様に、スキル探索で、この街の様子を調べた。その結果をもとに、直属の部下を働かせることにした。
「カタリナ、お待たせ。怖かったかな？」
「ムーンと一緒だから、ちっとも、怖くなかったわ」
「そうか、それなら、良かった。それじゃ、買い物の続きをしようか？」
「私、お腹が空いたわ」
「それじゃ、少し早いけど、昼食にしよう」
私達は、予定していた店で、昼食を取ることにした。店に入って行くと、店長が挨拶に来た。
「これは、ムーン様とカタリナ様。ようこそ。お越しいただきありがとうございます。私が、この店の店長です。何なりと申し付けてください」
「予定より、少し早かったが、構わないか」
「もちろんでございます。さあ、案内します」
店長に案内されて、私達一行は、奥の個室に入って行った。大きなテーブルに私とカタリナが座った。そして、部下は、私達を守る体制を取った。
私は、部屋の中をスキル探索で、調べると同時に、闇魔法で、結界を張って、盗聴を防止した。
「さあ、カタリナ、何を食べる？」
「何でもいいから、直ぐに食べたいわ」
「分かった」
私は、従業員に直ぐに出来る物を持って来て貰うことにした。そして、それとは、別に店のお薦めを頼んだ。
直ぐに、前菜の盛り合わせと飲み物が持ってこられた。本当に、お腹が空いていたように、カタリナは、テーブルに置かれると同時に、食べ始めた。
「カタリナ、美味しいかい？」
「うん。まあまね」
食事をしている間に、マリーから、思念伝達で、連絡が入った。
「ムーン様、どうも、カタリナ様が、街で、買い物をしているときに話されたようです」
「そうか。その店とそれを誰に伝えたのか、分かったのか？」
「はい。何故か、ソーロン帝国の者がカタリナ様をつけていたようです」
「なに？ ソーロン帝国？ それは、軍人か？」
「いいえ、違います。王族です。ゾーウといいます。次期国王と評されています」
「ソーロン帝国に恨まれたか？」
「それはわかりません」
「そのゾーウを監視して、関係者を調べ上げよ」
「了解」
私は、マリーとの思念伝達を切った。カタリナから漏れたということは、想像していたが、ソーロン帝国の王族が関係しているとは思いもしなかった。
カタリナを国王にしようとした矢先に予想外の問題が生じてしまった。ソーロン帝国は、軍隊が国を動かしているということだったよね。国王がいるとか、王族がいるってことすら、気にもしていなかった。しかし、何故、カタリナを狙ったのか、その本当の目的がわからない。
暫くして、直属の部下から、思念伝達で、連絡が入った。
「ムーン様、指示された場所は、すべて、破壊しました。そして、そこに居た者を捕らえて、秘密の屋敷に送りました」
「分かった。ご苦労」
これで、少しは、情報が増えるだろう。後は、マリーに任せて、今回の旅行を楽しむことにした。
テーブルには、前菜に続いて、店を尾進めが並べられていた。どれも、美味しそうだ。私は、カタリナが嬉しそうに食べているのを見ているだけで、お腹が膨れてしまったようだ。
カタリナとの１日だけの新婚旅行だけど、今回来て良かった。少しは、カタリナと仲良くなれた気がした。そして、もっと、カタリナの事が知りたくなってきた。少しは、好きになったのかも。
