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201.宰相ムーンの初仕事

 今回の宰相の仕事は、簡単な物だった。自分で、高騰させた灯油の価格を元に戻すだけだ。問題は、いかに、私が努力して成し遂げたか、ということを、客観的に示すことだ。


 そこで、私は、2つの政策をとることにした。一つは、輸出できる商品を作ることだ。そして、それは、高価な物で無ければならない。


 もう一つは、補助金を出すことだ。これにより、購入価格の一部を国が負担して、購入者の負担にならないようにする。だが、そのためには、それに見合うだけの収益を得ないといけない。


 私は、国王レーモンに臨時の会議を開いて貰うことを提案した。それは、簡単に了承して貰えた。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 私は、カタリナの城で、ここ数日寝ることにしている。カタリナとの結婚を公に見せる必要があるからだ。だが、寝室は別にしている。今日も、朝、起きてから、カタリナの部屋に移動した。


 「今日は、会議に行く日だよ。カタリナ、分かってる」


 「何だか、頭が痛いの」


 私は、カタリナの傍に行き、光魔法を掛けた。


 「今、治療魔法を掛けたよ。もう、痛くないハズだ」


 「もう、ムーンたら、そんなことしなくていいのに」


 「それじゃ、朝食を取ったら、出かけるよ」


 「仕方がないのね。わかったわ」


 「ありがとう」


 私達は、馬車に乗って、王宮に向かった。係の兵士に案内されて、私達は議会場に入って行った。既に、各部の代表が席についていた


 「予定の時刻になりましたので、これより、3部会会議を開催します」


 「それでは、まず、ムーン宰相から提案をしていただきます」


 私は、立ち上がって、提案内容の説明を始めた。


 「私は、宰相のムーンといいます。今回は、灯油の高騰による国民の負担を軽減するための政策を提案したいと思います。まず、灯油の価格を2割減にします。その為に、国が補助を出します。その財源として、新しい産業として、薬剤に開発・販売を行います」


 「2割もの財源を捻出できるのか?」


 国王レーモンが私の対案に疑問を感じたようだ。


 「これは、テラ・ワールドの新しい商品ペニシリンという薬です。これにより、梅毒が完治します」


 「本当に、完治するのか?」


 「はい、間違いありません」


 「それで、どのようにして、国の財源にするのだ?」


 「テラ・ワールドの収益の一部を納税してもらい、それを灯油価格の削減の財源とします」


 「それほどの収益になるのか、そのペニシリンという薬で、可能なのか」


 「梅毒の蔓延はわが国だけではありません。他国においても、問題になっております。特に、貴族であれば、いくらでも出すと思われます」


 「わかった。ムーン宰相よ。その話は、テラ・ワールドの方にも伝えてあるのだな」


 「はい、了承を貰っています。ここに、テラ・ワールドの代表のリンダが居りますので、確認してはどうでしょうか?」


 「よし、リンダとやら、答えて見よ」


 国王レーモンの問いに答えるために、リンダが立ち上がった。


 「はい、国王レーモン殿、私ども、テラ・ワールドの方も、了承済みでございます。ただし、薬を作るための材料や場所の提供をして貰えると伺っております。それと、兵士による、工場棟の警備をお願いしています。それらの対価として、納税させて頂きます。その額は、利益の10%と窺っております。それで、よろしいでしょうか」


 「そうか。話は、細部まで、詰めておるのじゃな。それでは、この件について、意見がある者はおるか?」


 「「国王レーモン、異存はありません」」


 会議に参加している代表者は、口々に賛同した。


 「ありがとうございました。早速、事業を開始していきます。灯油の価格は、来週初めから、2割引きで、販売ということにさせて頂きます」


 「ほう、早速、値下げになるのか。それは助かる」


 財務大臣のカブートが立ち上がって、質問を始めた。


 「私は、財務大臣のカブートと申します。当初、ムーンは、以前の価格にすると言っていたと思いますが、私の感違いでしょうか?」


 「ムーン宰相、答えよ」


 「はい、レーモン国王、確かに申しました。しかし、3カ月の猶予を貰ったはずです。まだ、時間は、あると思いますが、いかがでしょうか」


 「財務大臣カブート、どうだ」


 「わかりました。もう暫く、様子を見させて頂きます」


 「それでは、本日の臨時会議は、これにて終了とする」


 私は、会議場を出ようとしていたリンダに声を掛けた。


 「リンダ、今日は、ありがとう。事前に相談をしていなかったのに、申し訳ない」


 「いいのよ。テラ・ワールドの代表は、本来、ムーンだもの」


 「いや、今の経営は、リンダだよ。私は、すべてを任せているから」


 「本当に、任せているの? それにしては、私が知らないことも多いようね」


 「時間がなくて話せていないだけだよ。また、ゆっくりと説明するよ」


 「本当に、時間を取って、説明に来てよ。約束よ」


 「わかった。約束するよ。リンダの部屋で、ゆっくりと説明するね」


 「それじゃ、またね。バイバイ」


 「それじゃ、また。直ぐに会いに行くよ」


 私は、リンダと別れて、カタリナと共に馬車で、城まで、戻って来た。


 「カタリナ、ご苦労様」


 「ムーン、私、退屈だったわ。もう、行きたくないわ」


 「何を言っているんだ。もうすぐ、カタリナが女王になるのだよ。そうなれば、会議の中心はカタリナになるのだよ」


 「女王になんか、なりたくないのに」


 「そんなこと、言わないで欲しい。少しは、私の為に、我慢して欲しい。そんなに長い間ではないから」


 「暫くだけよ。早く、誰かに、代わって貰ってね」


 「わかったよ。カタリナには、迷惑かけるけど、暫くだけ、我慢してね」


 「いいわ。少しだけ、我慢する」


 私は、カタリナを抱きしめて、頭を撫でてあげた。カタリナのご機嫌取りも、少し疲れてきた。何か、いい方法はないのだろうか?

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