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186.ソーロン帝国からの軍船

 シロッコスに思念伝達で、連絡を取った。


 「ムーンです。今、軍船を見つけました。これから、対処します。そこで、偵察用気球を遠隔操作で、港の基地に戻して欲しいのですが、いいですか?」


 「わかりました。それは、こちらで、処理します。軍船の方は、お願いします」


 「はい。それでは、また、連絡します」


 私は、思念伝達を切って、隠密魔法で姿を消した。それから、ベルーナ中将の乗っている軍船の甲板をしっかりと確認した。そして、飛び降りて、軍船に潜り込んだ。


 軍船は、帆で風を受けて進んでいる。特別な動力は無いようだ。そこで、風魔法で、軍船を追い返すことにした。風魔法で、反対向きの風を起こした。


 「おい、風向きが変わったぞ。帆の向きを変えろ!」


 なるほど、風が正面から吹いても、前進を続けることが出来るようだ。仕方がない。私は、船底のキールを無効にするために、海底から波が船底を押し上げる様に、水魔法を使った。


 更に、水魔法で、海面を渦巻き状に変化させて、船の自由を奪った。


 「海が、嵐のようです。このままでは、沈んでしまいます」


 「よし、分かった。波に逆らわずに、自然に任せよう。帆を降ろせ」


 船は、波の動きに合わせて、進んで行った。つまり、私の思っている方向に進んで行った。


 「このままでは、元の港に戻ってしまうぞ。船長に報告しろ」


 「わかりました」


 船長は、船を沈めるより、そのまま、港に戻る事を選択した。やがて、船は、元の港に入っていった。


 「今日は、どうなっているんだ。こんなことは、初めてだ。波だけで、海上は、普通の状態とは、どうなっているんだ」


 ベルーナ中将も、甲板に上がってきていた。


 「船長、これは、どういうことだ。何故、港に戻っている」


 「ベルーナ中将、仕方がなかったのです。こうしないと、船が沈んでいました」


 「これは、誰かの魔法じゃないのか?」


 「こんな大規模な魔法は、見たことがありません。異常気象じゃないですか?」


 「いや、魔法だろう。この船には、魔導士は、いないのか?」


 「おい、魔導士を呼んで来い」


 暫くして、3人の魔導士がやって来た。


 「お前たちは、先ほどの状態を見ていたか?」


 「はい、見ていました」


 「あれは、魔法ではないのか?」


 「あれほどの魔法を使える者はいないでしょう。魔力が半端ないですよ」


 「ただ、あんなでたらめな出来事は、初めてです」


 ベルーナ中将は、納得がいかなかった。自然現象にしては、あまりにも、異常だった。だが、部下が言うように、あれほどの魔法を扱える者もいないとも思えた。


 仕方がないので、一旦、基地の戻り、今後の方針を検討することにした。


 「そういえば、ムーンとか言ったか。私に会いたいと言っていたな」


 ベルーナ中将は、遠隔通話器(テレ・ボイス)を操作して、セーロンに連絡をした。


 「ベルーナだ。予定が変更になった。今、港の基地に居る。暫くは、ここにいると思う。ムーンとか、言ったか。テラの後継者だと、言う者に、会う時間ができた。先方に伝えてくれ」


 「わかりました。早速、連絡します」


 暫くして、セーロンから、連絡が入った。それによると、明日の夕方に食事をすることになったようだ。私は、了承した。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 今日は、ベルーナ中将と食事をする約束になっている。少し早いが、セーロンに会いに、転移魔法で、移動した。


 「こんにちは、ムーンです」


 「あぁ、ムーンさん、やけに早いですね。まだ、時間はありますよ」


 「近くに来たので、少し、早いですが、待たせて貰おうと思ってきました」


 「そうですか。まあ、ゆっくりしていってください」


 「そうですね。ここでの商店が取引している物は、何ですか?軍人以外の場合を教えてください」


 「そうですね。小麦粉などの食品関係ですね。トウモロコシなども、よく売れていますよ」


 「なるほど、穀物ですか。それは、セーロンさんも、取り扱っているのですか?」


 「えぇ、扱っていますよ。ムーンさんも興味がおありですか?」


 「実は、私の領地内にも農地がありまして、色々な穀物を保管しているのです」


 「そうですか。余っているのなら、こちらで、販売してもいいですよ」


 「そうですか。それでは、お言葉に甘えさせていただきます。後日、商談しましょう」


 「はい、よろこんで」


 セーロンと色々と話をしているうちに、定刻となった。


 「ムーンさん、そろそろ、いきますか」


 「はい、お願いします」


 私達は、ベルーナ中将の待つホテル内の食事処に向かった。


 「こんにちは、私は、ムーンと言います。テラ同様に、よろしくお願いします」


 「私が、ベルーナ中将です。よろしく」


 「それでは、あちらに席を用意していますので、ご一緒に来てください」


 私達は、個室に入って、食事をしながら、商談を行った。私は、テラと同様に、軍関係の商品の納入をお願いした。


 「今の所、不足している物がないので、また、何かあれば、連絡します」


 「そうですか。残念ですが、仕方がないですね。またの機会にお願いします」

 

 私は、アイテムボックスを一つ取り出して、ベルーナ中将に渡した。


 「今回のお土産として、ささやかですが、お持ちください。テラ・ワールドの商品で、従来の物より、多くの物を収納でします。また、1週間程度であれば、食べ物がほとんど痛みません」


 「本当ですか?1週間も、食べ物が持つのですか?」


 「はい、そうです。試しに使ってみてください」


 「より多くの物を収納できると言いましたが、具体的には、どれぐらいの物が収納できるのですか?」


 「そうですね。リヤカー1台分は、収納できます。それに、石箱で作っているので、頑丈ですよ」


 「これを購入するとすると、いかほどになりますか?」


 「1個金貨50枚で、販売しています」


 「1度使ってみて、良ければ、購入します。1度に何個ほどなら、納入できますか?」


 「ベルーナ中将は、どのぐらい必要ですか?」


 「兵士の人数分ですね。ですから、1万単位になります」


 「それなら、大丈夫です。1週間の余裕があれば、納入できます。まあ、一度、使ってみてください。連絡は、セーロンさん経由で、結構です。良い返事をお待ちしています」


 私達は、後日連絡するということで、ホテルを出た。私は、転移魔法で、秘密の屋敷に移動した。

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