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176.カタリナの社交界デビュー

 カタリナの社交界デビューは、盛大に行われることとなった。カタリナの希望もあって、まだ、結婚を公表しないので、エドの屋敷で、招待客を呼ぶことになった。


 普通に案内状を出しても、誰も、来ることは無いと考えて、ムーンは、特典を付けた。それは、灯油の1年間無償券だった。いくら購入しても、その屋敷で利用する物であれば、無償にするというものだ。ただし、不正が見つかった時は、ペナルティとして、正規に金額の5割増しで、購入してもらうことにした。


 ある貴族のパーティーにおいて、エドの一人娘のカタリナの社交界デビューは、話題になっていた。


 「君は、あの話を聞いたかい?」


 「あの話とは、エドの事か?」


 「おいおい、その名を出すな。まだ、大ぴらに出せる名前ではないぞ。」


 「すまん。つい、言って


 「そうだ。その没落貴族が、娘の社交界デビューをするらしい。」


 「ほう、よく金があったな。更に借金を増やすだけさ。」


 「だが、その招待状には、すごい特典がついているらしい。」


 「金もないのに、そんなものを付けれるものか。」


 「それが、どうも、すごい金持ちがパトロンについたらしい。その娘を見初めたという訳だ。」


 「えっ、娘って、まだ、10才じゃないのか?」


 「そうだ。まだ、10才だ。とんだ、色爺だな。」


 「まあ、そんなことは、どうでもいい。その特典は、何だ。」


 「灯油の1年間無償券だとよ。1年間、タダで、灯油が使えるって。」


 「噓だろ。今の灯油の価格を知っているのか?それを、1年間無料だなんて、しかも、招待客全員に渡すのだろう。そんなこと、国王にだって、出来やしないぞ。」


 「おい、おい、口が過ぎるぞ。」


 「しまった。誰も、聞いてていないよな。」


 「迂闊だぞ。注意しろよ。」


 「分かった。」


 こんな話が、至る所で、行われていた。そして、それが、どうも、事実らしいと分かったとたん、いかに招待状を貰うかで、競い始めた。


 エドは、招待客を絞るのに四苦八苦してしまった。当初は、いかに、招待客に来てもらうかを考えた居たが、すべて、無駄になった。


 エドは、招待する客を身分の高さによって、決めようと考えた。しかし、王族、公爵、侯爵、伯爵、

子爵、男爵とすると、どこまで、呼べばよいのだろうか。そもそも、エドの屋敷では、それほどの人数を、招待することは、できない。そこで、カタリナを使って、ムーンにお願いをすることにした。


 「カタリナ、お前の社交界デビューだが、どんな規模でしたいのだ。私の住んでいる屋敷では、たかが知れている。それで、いいのか?」


 「私は、昔から、夢があるのよ。私が、お姫様で、社交界デビューで、王子様に会うの。」


 「お前、王子様って、もう、ムーン様という、主人がいるのだぞ。」


 「それは、形だけって、お父様も仰ってたじゃないの。あれは、嘘なの?」


 「いや、それは、嘘ではないが、でも、王子様を期待しているとは。」


 「えっ、私って、お姫様じゃないの?いつも、お父様が、私の事をお姫様だって言っていたのに。」


 カタリナは、泣きそうになっていた。本当に、10才なのかと、エドは疑いたくなっていた。これじゃ、まるで、6才ほどの赤ちゃんじゃないかと。


 「それじゃ、どこで、社交界デビューをしたいのだ。まあ、予想はつくが、言って見なさい。」


 カタリナは、急に、目を輝かせて、嬉しそうに、エドを見上げて言った。


 「もちろん、お城よ。真っ白なお城で、夜通し、踊りあかすの。」


 「ほー、お城ね。しかも、真っ白なお城ね。それって、どこにあるんだ?教えてくれ。」


 「うーん、私は、知らないわ。お父様が探してよ。」


 「お前は、・・・。」

 

 「そうだ。ムーンに頼もうっと。」


 「お前は、・・・。」


 「だって、私の好きなようにしていいって、言ってたよ。」


 「私からは、ムーン様にお願いすることはできない。カタリナ、お前が自分で、しなさい。」


 「いいわ。私のスキにするわ。」


 「やれ、やれ。好きにしてくれ。」


 エドは、我が子ながら、どうして、こうまで、我がままに育ったのか、呆れかえってしまった。叱るのは、他人の方が良いともいうから、後は、ムーン様に任せよう。エドは、すべて、ムーンに丸投げすることにした。そして、安心して、自分の屋敷に帰っていった。


 カタリナは、父親が帰った後、すぐに、ベルを鳴らした。


 「カタリナ様、何か、御用ですか?」


 すぐに、侍女がやって来て、カタリナに聞いた。


 「すぐに、ムーンを呼んで。」


 「えっ、今は、この城に居ませんよ。直ぐには、無理です。」


 「ダメ、直ぐに来ないと、私、ここに住まない!」


 「分かりました。連絡をしますので、暫く、お待ちください。」


 侍女は、ナターシャを探した。しかし、ナターシャも、ムーンと一緒に、出掛けているようだ。困り果てていると、侍女長のマリーが声を掛けて来た。


 「どうしたの、そんなに慌てて。もっと、優雅に振舞いなさい。」


 「すみません。マリー様。実は、カタリナ様が、ムーン様を直ぐに呼べって、ダダをこねているのです。」


 「そうね。あのカタリナには、参るわね。でも、ムーン様の大事な奥方になられる方だから、丁重に扱わないとね。」


 「そうなんです。ムーン様が、この城に居ないと、言ったのですが、聞き届けてくれません。」


 「分かったわ。後は、私に任せて。」


 「すみません。マリー様、お願いします。」


 カタリナ付きの侍女は、2階へと上がっていった。


 「ちょっと、待って、お茶の用意をして、2階へ上がって貰える。2人分用意してね。」


 「分かりました。」


 カタリナ付きの侍女は、食堂に寄ってから、2階へ上がることにした。

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