173.フットーヒ侯爵の慈悲
リーグリ王国の灯油の価格を1割上げてから、貴族の間にも、不安を訴える者も出て来た。
そこで、フットーヒ家の顔を売るために、フットーヒ家の主コーリア・フットーヒにある行動に出て貰った。
「私が、これまでに、貴族の病気を13件治してきました。」
「そうか、私の家だけでなく、もう、そんなに治したのか。」
「はい、でも、最近の灯油の価格の高騰で、生活が厳しい様なのです。」
「そうだね。私の家は、ムーンのおかげで、とても裕福だが、この周りの屋敷でも、侍女の部屋の灯油を減らすという話だ。とても、苦労している。」
私から、コーリアに、あるお願いをした。
「この屋敷に特別価格で、灯油を仕入れてきます。それを、近所や、私が治療した家に販売してやって欲しいのです。」
「私は、いいが、何故、ムーン、そなたが自分自身で行わないのだ。」
「私は、まだ、社交界デビューしたばかりの新参者です。ですから、よからぬ噂を立てられる恐れがあります。折角の好意を変に思われるのは嫌なのです。」
「なるほど、まだ、ムーンの名は、それほど、知られていないからな。分かった、私が表に立って、売っていくよ。」
「ありがとうございます。よろしく、お願いします。」
こうして、フットーヒ家の善意を浸透させていった。しばらくすると、フットーヒ家が私財を投げ売って、救済に手を差し向けているという、良い噂が流れた。そして、貧しい貴族が続々と、フットーヒ家にやって来た。
「ムーン、もう、すごい数になって来たよ。資金の方は、大丈夫なのか?少し、心配になって来た。」
もう、灯油の価格は、当初の3割増しになっていた。そのため、フットーヒ家の支出が膨大な物になっていると考えるのが普通だ。でも、フットーヒ家には、他国と同じ価格で降ろしているだけなので、フットーヒ家の支出は全くない。全く問題がない。でも、これは、フットーヒ家の主には内緒だ。
「コーリア殿、全く、問題ありません。私も、少しは、商売をしているので、この程度では、全く影響がありません。」
「そうだったね。詳しくは聞かせて貰っていないが、我が家の借金も社交界デビューの費用も、すべて、ムーンが出しているのだからな。無理だけは、しないで欲しい。いいかな。」
「はい、大丈夫です。」
「コーリア殿、もう一つ、お願いがあります。」
「何だね。ムーンの頼みは、最優先だよ。何でも言ってくれ。そろそろ、嫁探しかな。」
「そうですね。私も、もう、23才ですから、嫁を貰わないと、だめですね。それも、コーリア殿に頼んで良いですか?」
「もちろんだよ。それは、親の義務だよ。頼まれなくても、喜んで探すよ。何か、希望はあるかな。」
「こんなお願いを言っていいか、わかりませんが、王族の末裔でも、大丈夫ですか?お金がなくても、いいです。それは、私が持っていますので。」
「うーん、王族か、それなら、没落した王族になるぞ。それでも、いいのか?なんの権限も持っていないぞ。」
「ええ、構いません。よろしく、お願いします。」
「分かった。それでは、ムーンのお願いは、何かな。」
「実は、平民の生活を支援してやりたいのです。」
「それは、いい考えだ。それは、どうやって行くのだ。」
「おそらく、仕事をなくしているのだろうと思います。そこで、私が、工場と商店をコーリア殿の名前で、創ります。そこの従業員として、雇ってください。社長は、コーリア殿にやって貰います。ただし、コーリア殿には、給料として、お金を渡します。経営は、私がやりますので、その点だけ、ご了承下さい。」
「名前だけ、貸せということだな。分かった。了承した。」
私は、ナターシャに思念伝達で、連絡をとり、新たに、コーリアの名前で、工場と商店を創らせた。
工場は、貴族向けの新たな商品を作ることにした。テラ・ワールドの本部の周りの豊富な木材を利用して、高級家具を作ることにした。そして、家具作りに必要な道具をつくり、流れ作業で、仕事が誰にでも出来る様にした。
ガーベラから、突然連絡があった。至急、会って話したいそうだ。
私は、転移魔法で、ガーベラの居る王宮に移動した。
「コン、コン。ムーンです。」
「どうぞ、あいているわ。」
私は、ドアを開けて中に入っていった。すると、ガーベラがベッドに座って、手招きをしている。
私は、ベッドのガーベラの横に座った。ガーベラの横顔を見たが、何やら、真剣な表情をしている。何か、トラブルでもあったのか?でも、ベッドに座らすかなぁ?
「先日、レイカにあって来たわ。」
「それで、どうだった。」
「テラの子供だと、話したの。そしたら、本当に喜んでいたわ。死んだと思っていたから、その形見の子供を自分が生んだって、今まで以上に、テラjrを大切にすると思うわ。」
「良かった。無理やり生ませたので、どうなるか、心配だったんだ。そうか。喜んでいたのか。」
「そうよ。テラの子供を産んだって、自慢していたの。私だけだってね。正妻のガーベラには、子供がいないけど、レイカは、テラの子供を産んだんだって、本当に、憎らしいほど、喜んでいたのよ。」
「あれ、ガーベラ、怒っているの?」
「そうよ。あの時は、魔法のことを言われて、納得したけど。今は、だめよ。納得できない。」
私が、抱いても、何をしても、ガーベラの怒りは収まりそうになかった。私は、本当に困ってしまった。