161.ナタ―シャの引き抜き
今日も、朝から、例の盾を作っておくことにした。森の中のテラ・ワールドの基地に転移魔法で移動した。早速、盾を500個作り上げた。出来上がった物をリンダに送って、今日のノルマは、果たした。
私は、転移魔法で商業都市ブューラナの商業ギルドに移動した。
「こんにちは。どなたか、居られませんか?」
「はい、私でいいですか?」
「私は、ムーンといいます。ヤガータ国で商人をしています。テラ・ワールドの従業員です」
「あら、テラ・ワールドの従業員ですか。私のギルドも以前から、取引をしていますよ」
「そうですか。えーと、ナタ―シャさんと言うのですか?」
「はい、そうです。あっ、名札に書いてますね。以前にお会いしたかと思いました」
「いえ、この国に来たのは、初めてです。出来れば、商業ギルドに登録したいのですが、いいですか?」
「それでは、こちらに記入してください」
私は、用紙に記入して、手数料をナタ―シャに渡して、手続きを終わらせた。ナターシャから、商業IDを受け取った。
「ナターシャさんは、この商業ギルドに何か、恩でもありますか?」
「ムーンさん、突然なんですか?」
「実は、これから、この国で、商売を始めたいのですが、私一人では、到底捌き切れないので、誰かを雇おうと思っているのです。そこで、この国の商業ギルドに努めておられるナターシャさんなら、適任だと思って、聞いたのです」
「そうですか。特に、この商業ギルドに居ないといけないわけではないですが、結構貰っているのです。ですから、余り、他の商店に移る気はないのですが」
「失礼ですが、いくらぐらい貰っておられるのですか?」
「ここだけの話にしてくださいね。月に金貨100枚貰っているのです。私の歳では破格の金額です。ですから、申し訳・・」
「1万、月に金貨1万枚で、どうですか?」
「えっ、今、何て」
「ナターシャさんに、月に金貨1万枚を渡すと言ったのです。どうでしょうか?」
「本当に、そんなに貰えるのですか?」
「はい、そうです。いかがですか?」
「分かりました。ただ、今すぐには、だめです。3日待ってください。いいですか?」
「いいですよ。取り敢えず、金貨を1万枚渡しておきますね。これは、今月分です。日数に関係ありませんので、遠慮せずに受け取ってください」
ナターシャは、金貨1万枚を商業IDで、受け取った。そして、家を1軒作業場として、借りる契約も結んだ。ナターシャには、準備出来次第そこに来るように指示をしておいた。
リンダの話では、この国の支店の展開は、まだ、途中だと聞いていた。そこで、ナターシャにその作業を任せようと思っている。
私は、リンダに会いに転移魔法で移動した。流石に、リンダの部屋に直接移動するわけにはいかないので、近くの場所から、リンダの店まで、歩いて行った。
「こんにちわ。ムーンといいます。リンダさんをお願いします」
「はい、少し待ってください」
バイオレットが、リンダを呼びに2階へと上がって行った。暫くして、リンダとバイオレットが下りて来た。
「お待たせしました」
「忙しい所、すみません。実は、この街の商業ギルドのナターシャを雇いました。つきましては、各街の支店展開を彼女に任せたいと思っています」
「あら、もう、ほどんど、完了してますよ。でも、この後の作業もあるようだから、ナターシャさんに引き継ぎますね」
リンダは、あっさりと仕事を手放してくれた。テラの後継者として、認めて貰えたのかな?それとも、感づかれたかな?
「まあ、どちらでもいいかな。リンダなら、知られても構わない」
私は、独り言を言って、自分を納得させた。
ナターシャは、1日で、新しい仕事にやって来た。そして、リンダから、仕事の引継ぎも終えていた。取り敢えず、当面は、その仕事を完成させて貰うことにした。その後の仕事は、その都度伝えることにした。
ナターシャには、空いている部屋を自由に使って貰うことにした。私は、2階の書斎とその隣の部屋を使うことにした。1階は、仕事場として、利用することにした。
テラ・ワールドの支店展開は、すぐに終わった。確かに、リンダの言っていたとおり、ほどんど、終わっていたのだ。リンダには、なんだか、悪いことをしたような気になった。まあ、そんな些細なことを気にしてはいられない。直ぐに、次の段取りを始めることにした。
「ナターシャ、次の仕事にかかって欲しいんだけど、いいかな?」
「はい、何でしょうか?」
「この国の貴族を買いたいんだ」
「貴族を買うって、そんなこと、出来るのでしょうか?」
「何、簡単だよ。お金に困っている貴族に、お金の代わりに私を養子にさせるだけだよ」
「わかりました。お金に困っている貴族を探すのですね」
「そうだ。一人目は、急いでくれ。どんな肩書でもいいよ」
「わかりました。心当たりがあるので、すぐだと思います」
「それは、どんな貴族なんだ?」
「実は、貴族の間に病気が蔓延していまして、その病気を別名『金喰病』といいます。その病気に掛かっている貴族の子供を探せばいいのです」
「そんな病気が流行っているのか。医者では、治せないのか?」
「治せる医者は、居るのですが、高額を治療費として要求するらしくて、なかなか、見て貰えない様なのです」
「わかった。どの貴族にするかは、ナターシャに任せる。とにかく、急いでくれ。お金の額は、相手の言い値でいいよ」
「はい、すぐに始めます」
私は、一人書斎で考え事をした。
「おかしいな、この国には、サルビアがいるはずなのに。サルビアの身に何か起こっているのか?」