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16.従魔契約

 私は、スピアを連れて、冒険者ギルドに向かった。今日は、スピアの従魔登録をするつもりだ。


 冒険者ギルドに入ると、中は冒険者で溢れていた。依頼書の取り合いをしているようだ。


 できるだけ、効率の良い依頼を受けたいので、依頼書を張っているボードの前は、特に混雑している。


 「ボードの前は、非常に混雑しています。

 パーティーで来ている人は、代表者だけにしてください」


 ローララが、珍しく大きな声を出していた。受付はまだ、それほど、並んでいない。


 「ローララ、従魔登録したいんだけど」


 「はい、テラ。ワーキャットね。よく、従魔にできたわね」


 「うん。頑張ったよ」


 「それじゃ、これにサインしてね。それから、冒険者IDを貸してくれる」


 「はい、どうぞ」


 「次に、従魔の呼び名を書いてね。それから、従魔の血を取って、ここに押してね」


 どうやら、血判を押す様だ。私は、スピアの指を少しダガーで切って、出て来た血を書類に落とした。

 

 「これで、完成よ。それじゃ、従魔にこのIDをぶら下げておいてね」


 「ありがとう」


 ローララから貰ったIDをスピアの首にぶら下げてあげた。


 それから、スピアの装備を買いに出かけた。


 まずは、鍛冶屋に行って、武器を買う。私達は、近くの鍛冶屋に入っていった。


 「すみません」


 「はい、何でしょうか」


 「この、ワーキャット用の武器を買いたいのですが、お薦めはありませんか?」


 「そうですね。ワーキャットは、動きが素早いのが利点なので、重い武器は避けた方がいいですね。それに、強力な爪を持っているので、普通の剣も避けた方がいいですね」


 「それでは、何がいいですか?」


 「何がいいですかね?」


 「えーっと、お薦めは?」


 「だから、難しいね。何にする?

 逆に、ワーキャットに何をして欲しい?」


 「そうですね。素早く、証拠品やドロップアイテムを集めて貰いたいですね。

 それから、野生の感があるので、遠方からの攻撃ですかね」


 「それなら、装備は革の物を選ぶといいですね。武器は、短弓ですね。長いと動きの邪魔になるので」

 

 「それなら、そこの短弓とそれに合った弓を下さい」


 「はい、これでいいですか?」


 「これで、清算してください」


 私は、冒険者IDを渡して、清算した。


 「近くに、革の装備を売っている所はありませんか?」


 「ここの通りの外れに、革細工師の店がある」


 「ありがとう」


 私達は、鍛冶屋を出て、通りの外れにある寂れた家に入っていった。

 

 「すみません。革の装備を買いに来ました」


 「好きな物を持っていけ」


 「えっ、お金は?」


 「適当に置いとけ」


 「いいんですか?」


 「うるさい。黙っていろ」


 店の中はごちゃごちゃしていて、どれが商品か、よく分からない。


 スキル鑑定で、ましな物を探した。すると、机の下に掘り出し物があった。


 革で作った防具一式だ。しかも、特級品だ。どうして、こんな高価な物がここにあるのか、不思議だ。しかし、その防具一式は、薄汚れていて、どう見ても、特級品に見えなかった。そのせいだろう、誰も買おうとしなかったのだと思った。


 「この机の下の防具一式を貰っていくね。お金は、金貨20枚置いとくよ」


 「おい、お前、今なんて言った」


 「金貨20枚じゃ足らないの?」


 「金なんか、どうでもいい。何故、その汚い防具を選んだんだ」


 「何故って、これが気に入っただけだよ」


 「だから、何故、気に入ったんだ」


 「理由なんて、ないよ」


 「この野郎。俺が酔っていると思っているな」


 「えっ、酔っていないの」


 「酔っているよ。酔わずにいられるか」


 「それはどうも、それで、この防具は買ってもいいの。ダメなの。どっち?」


 「だから、金の問題じゃないって言っているだろう」


 「だったら、何が問題なの?」


 「お前、時間はあるか?」


 「酔っぱらいの相手をするほど、暇じゃないけどね。少しぐらいなら、付き合うよ」


 「実は、わしも、以前は、立派な店で働いていたんだ。その店では一番の職人だったんだ」


 「へぇー、さっきの防具は、酔っぱらいが創ったの?」


 「酔っぱらいと言うな、コプトという名がある」


 「それで、こんな立派な防具を創れる革細工師がどうして、昼間から、酔っぱらっているの?」


 「その店の店主がまがい物を高値で貴族に売っていたから、意見したんだ」


 「そうなんだ。りっぱだよ」


 「でも、それで、店を追い出されて、挙句の果てが、おれの商売の邪魔をしたんだ」


 「どんなにいい物を作っても、俺の物をまがい物だと言い張る貴族がいて、だれも、俺の物を買わなくなってしまった」


 「いくら、俺が良い物だと説明しても、無駄だった。誰も、本物を見抜くことができない。

 諦めて、俺は、昼間から、酒を飲む、酔っぱらいになってしまった」


 「そうか、大変だったね。でも、お酒を飲んで、良くなるの?」

 

 「わかっているよ。よくなんか、なるわけないよ。分かっちゃいるんだよ」


 「それなら、もう一度、頑張ったら?」


 「そうだね。って、お前、子供だろう、偉そうに」


 「でも、酔っぱらいのコプトより、偉いと思うよ。これでも、冒険者だよ」


 「そうだな。お前の言うとおりだな。ところで、お前の横にいるのは、お前のお母さんか?」


 「そんなわけないでしょ。目も悪いの?スピアは、私の従魔よ」


 「そうか、大したものだな。りっぱだよ。

 お前と話せて、すっきりしたよ。もう一度、頑張ってみるよ」


 「それじゃ、これ、貰っていくね。また、来るよ。バイバイ」


 革細工職人の家を出て、また、店の地下に転移魔法で移動した。


 買って来た装備一式を光魔法で、クリーンにしてから、スピアに着せてみた。


 「スピア、似合っているよ。かわいいよ!」


 「うん。スピア、かわいい」


 色んな店に行って、今日は疲れてしまった。


 私は、スピアに添い寝をしてもらい、ベッドで寝てしまった。スピアのふさふさの尻尾が気持ちいい。

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