142.シジン魔法学院へ
私は、久しぶりに魔法学院に行った。学院長の部屋に行き、ドアをノックした。
「コン、コン。テラです。」
中から、シルバの声がいた。
「どうぞ。」
部屋の中には、学院長のシルバと、ミュー先生がいた。何か、相談をしていたようだ。
「テラ、久しぶりね。元気にしていた?」
「そうでね。もう、1月ほど経っているね。色々と、迷惑を掛けたね。」
「そんなことは、いいわ。それより、少し、手伝った欲しいの。」
「いいよ。何?」
「前に言っていたように、新しい教師を招きたいの。でも、なかなか、了承してくれなくて、困っているの。」
「別に、他の人にしたら、いいのでは?」
「実は、その教師は、魔法学院間では有名で、生徒が国を超えてやってくるのよ。」
「そうか、それで、何故、うまく交渉できないの?お金?」
「いいえ、お金は問題ないの。もう、言ってもいいかなぁ?」
「何を?テラが伯爵で、この学院に融資して貰っているってこと。」
「そうだね。もう、私は、ここの生徒じゃないし、結婚の事は、もう公のことだからね。」
「それじゃ、お金は、どうせ、テラがいくらでも出してくれるでしょ。」
「そうだね。シルバの言いなりだものね。」
「そんなことはないわ。」
ミュー先生は、初めて聞いたようで、少し、驚いていた。多分、魔法学院は、シルバのお金で、経営していると思っていたようだ。本当は、私、テラのお金が流れていることを、今知ったようだ。
「でも、お金の心配は、する必要はないよ。」
「そうでしょ。テラなら、そういうと思ったわ。でも、お金の問題じゃないのよ。」
「その人は、どんな条件を出しているの?」
「テラ、ミヤーコ王国のシジン魔法学院の見学を覚えている。」
「覚えてるよ。それがどうしたの?」
「あの時、教室に案内した教師がホーン先生なの。それで、教室の中の様子を見ていて、大変興味を持ったってわけ。それで、この魔法学院に転勤してもいいという話になったの。」
「だったら、良かったじゃない。来てくれるって言ったんでしょ。あれ、それじゃ、何が問題なの?」
「テラ、あなたよ。あなたが、問題なの。折角、ホーン先生が来るって言ったのに、肝心のテラが止めるって、向こうのシジン魔法学院にまで、伝わったっていうわけ。」
「えっ、それじゃ、私の退学が問題なの?」
「そうよ。でも、退学は、もう、仕方がないわね。だから、テラに処理して欲しいの。ホーン先生の本当の希望を聞いて欲しいの。」
「シルバが聞いたらいいのでは?ないの?」
「どうしたわけか、誰にも、条件を言わないの。」
「それじゃ、私が行ってもダメじゃないの?」
「それはないと思うわ。テラになら、話すと思うの。」
「本当かなぁ。シルバは、私をこき使いたいだけじゃない?」
「そんなことはないわ。ちょっと、面白いとは思っているけどね。本当に、困っているのよ。」
シルバは、同意を求める様に、黙って傍に立っているミュー先生を見た。ミュー先生も、頷いている。
「まあ、いいよ。でも、期待しないでね。」
「会ってくれるだけで、いいわ。お願いね。出来れば、早い方がいいの。」
「いいよ。今から、行こうか?」
「じゃ、お願いね。」
「それじゃ、また。」
私は、そのまま、部屋を出て行こうとしたときに、後ろから、声が掛かった。
「シルバ学院長、私も同席していいですか?」
「そうね。その方がいいわね。魔法学院のことなのに、退学した生徒でけで行くのは、まずいわね。」
「テラ、ちょっと待って。」
私は、振り返った。
「ミュー先生と一緒に行ってくれる。」
「ちょっと、待ってよ。それじゃ、時間が掛かりすぎるよ。」
私は、ミュー先生の前で、転移魔法を使いたくなかった。
「テラ、あれのことね。」
シルバは、私が渋っている理由を察したようだ。
「あまり、知られたくないの。」
「テラ、いいのよ。ミュー先生は、知っているのよ。」
「えっ、どうして?」
「実は、ミュー先生には、この魔法学院の仕事だけでなく、テラ・ワールドの仕事も手伝って貰っているの。それで、転移魔法は、知っているの。実際に、ミュー先生だけでも、使っているのよ。」
「そうか。それで、よく、ミュー先生が、この部屋にいるんだね。」
「そうなの。私の仕事は、テラから、任されているでしょ。それで、ミュー先生が私の補佐をしているというわけよ。」
「わかった。それなら、いいよ。」
「それじゃ、お願いね。」
「それじゃ、ミュー先生、行こうか。」
ミュー先生が、私の所まで、やって来た。私は、ミュー先生の腰に手を回して、転移魔法を使った。
ミヤーコ王国の都市シジン にあるテラ・ワールドの支店に移動した。そこから、馬車で、シジン魔法学院に向かった。
シジン魔法学院には、すぐに着いた。私達は、受付で、ホーン先生を呼んでもらった。すると、研究室に来て欲しいと返事があった。
私とミュー先生は、受付にやって来た係員に案内されて、ホーン先生の研究室に入っていった。
ミュー先生が、ホーン先生に挨拶をした。
「忙しい時に、会っていただいて、ありがとうございます。こちらが、テラです。見学の時に、魔法を披露した生徒です。」
「こんにちは、私がホーンです。よろしく。」
ホーン先生は、ミュー先生を見もしないで、私の前にやって来て、手を出した。
「はい、私は、テラといいます。よろしく。」
私とホーン先生は、握手を交わした。
「テラは、私をホーンと呼んでくれ。先生は、要らないよ。」
「分かりました。ホーン、デンロン魔法学院の事ですが、話してもいいですか?」
「いや、およその事は、分かっている。だから、一つだけ教えてくれないか。」
「はい、何でも訊いてください。」
「ありがとう。一つは、テラは、デンロン魔法学院に来ることはあるのか?」
「シルバ学院長に呼ばれれば、行きますよ。」
「そうか、シルバ学院長が言えば、来てくれるのだね。」
「はい、退学はしましたが、シルバ学院長には、頭があがりません。」
「それでいい。それでいい。私は、すぐにでも、シルバ学院長に了承したと伝えたいよ。」
「それじゃ、これから行きますか?」
「テラ、何を言っているんだ。今からって、すぐには、無理だろう。」
「私は、転移魔法を使えます。」
「えっ、転移魔法を使えるって、本当か?」
「はい、本当です。でも、内緒にしてくださいね。」
「もちろんだ。他に知れれると大変なことになる。」
ホーン先生に、馬車を返すように、係員に伝えた。係員は、馬車を返すために部屋を出て行った。
私は、ミュー先生を抱き、ホーン先生の手を握って、転移魔法で、デンロン魔法学院に移動した。