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133.魔人族の冒険者

 私達は、リーダーを捕まえようと思っていたが、その代わりに魔人族の冒険者だと名乗るモリーロを捕らえた。だが、魔人族を見たことがない私達には、魔物でないと断言できなかった。


 そこで、新規に作った基地に連れ帰って来た。


 「レンゲー、ちょっと来てくれる?」


 「はい、テラ、何でしょうか?」


 「近くのダンジョンを制圧してきたのだけど、そこに、魔人族を名乗る者がいたの。だけど、私には、魔人族か、魔物か、区別がつかなくて、困っているの。」


 「私は、分かりますよ。」


 「それじゃ、見てくれる?」


 私は、レンゲーと共に、捕らえて者の前に行った。


 「レンゲー、どうですか?」


 「確かに、魔人族ですね。間違いないです。でも、魔人族だからと言って、我々の味方とは限りません。一部の魔人族は、魔物を操って、人間に攻撃を仕掛けてくることがあります。」


 「魔人族も、魔物を操るって、言っているよ。」


 「私は、決してそんなことはしません。」


 「それなら、何故、魔物がいるダンジョンにいたの?」


 「隠れていたのです。灯台下暗し、って思って。」


 「レンゲー、どう思う?」


 「さあ、なんとも言えませんね。」


 「先ほど見せた、冒険者IDはどうですか?あれは、私のものですよ。」


 「テラ、冒険者IDを持っていると言っていますが、本当ですか。」


 「はい、先ほど確認しました。確かに、本人の物です。」


 「それなら、心配ないですよ。冒険者ギルドのお墨付きですから。」


 「そうなの?信用してもいいの?」


 「そうですよ。早く、縄を解いてやってください。」


 「スピア、放してあげて。」


 スピアが、モリーロのロープを解いた。やっと、信用してもらい、モリーロは、ほっとしたようだ。


 私は、未だに、納得していないけど。ダンジョンの中に隠れるって、可笑しいよ。


 「実は、我々の村が、この少し北西の所にあるのです。それが、最近急激に魔物が増えて、安心して暮らせなくなったので、私は、冒険者になったのです。」


 「それが、どうして、また、戻って来たの?」


 「逃げ遅れていた魔人族の子供達が、魔物の隠れ家に連れ去られたと聞いたので、何とかして、助けてやりたいと思って、戻って来たのです。」


 「それで、子供達は、見つかったの?」


 「見つけるどころか、隠れるだけで、精一杯でした。」


 「モリーロは、結構強そうだけど、それでも、だめだったの?」


 「はい、それなりのレベルでは、あるのですが、やはり、一人では、太刀打ちできませんでした。それに、魔人族の癖に、私は、魔力が余りないのです。」


 「そうか、疑って、わるかったね。許してね。」


 「はい、気にしないでください。ダンジョンの中に隠れるなんて、誰も思いませんからね。」


 「それじゃ、モリーロは、自由にしていいよ。好きな所に行っていいよ。」


 「あの、一つお願いがあるのですが。」


 「食事なら、食べて行っていいよ。スピア、何かあげて。」


 「いえ、食事ではなくて、助けて貰えませんか?」


 「えっ、何を助けるの?」


 「魔人族の子供達を救い出して貰えませんか?」


 「それは、いいけど、私には、魔人族か、どうか分からないよ。だから、無理だよ。スピアもダメだね。」


 「うん、だめ。分からない。」


 「ほら、分からないって、言っているよ。だから、無理ね。」


 「あの、私は分かります。」


 「でも、逃げるんでしょ。それじゃ、無理だよ。」


 「あの、テラが居れば、逃げませんよ。」


 「本当?逃げない?」


 「はい、テラが、守ってくれたら、逃げません。本当です。」


 「面倒なのは厭なんだけどね。それじゃ、私の傍を離れないでね。」


 「はい、離れません。」


 「それから、魔人族だったら、すぐに言ってよ。でないと、殺してしまうよ。」


 「はい、それは、大丈夫です。少し離れたところからでも、同胞の事は、感じることが出来ます。」


 「それなら、行こうか。スピア、仲間を10人だけ一緒に連れて行きたいけど、いい?」


 「うん、いいよ。10人で大丈夫?」


 「大丈夫だよ。残りは、休ませといて。よく働いてくれたからね。それに、好きなだけ、食べる様に言っておいてね。」

 

 「モリーロ、北西の所にある村に先に行くよ。案内してね。」


 「はい、こちらです。」


 私達は、モリーロの案内で、魔人族の村に連れて行ってもらった。途中で、魔物に会うことはなかった。村は、すべての家が壊されており、一部の家は、火がつけられていた。未だに、燻っているようだ。


 「モリーロ、魔人族は残っている?」


 「何か、感じます。微かですが、感じます。」


 私は、モリーロの行く方向に付いて行った。


 「テラ、この下です。家の下敷きになっているようです。」


 「分かった。」


 私は、土魔法で、上に乗っている岩などを取り除いた。すると、地面の小さな窪みの中に2人の子供が蹲っていた。怪我をしているようだけど、命に別状はないようだ。念のために、私は、光魔法で、治癒魔法を2人に掛けておいた。


 「大丈夫か?」


 「「はい。大丈夫です。」」


 2人とも、元気な声だ。大丈夫そうだ。


 「他の人はどうしたの?」


 「大勢、連れていかれたの。子供ばかり、連れていかれたの。」


 「そうか、怖かったね。もう、大丈夫だよ。」


 連れていかれたのは、子供だけの様だ。おそらく、大人は殺されたのだろう。子供2人をスピアの仲間に頼んで、基地に運んで貰った。


 「モリーロ、どちらに行ったらいい?」


 「こっちだと、思います。」


 モリーロは、北の方角を指示した。すこし、疑問に思ったことを聞いてみた。


 「モリーロ、歩きながらで、いいから、少し、教えてくれる。」


 「はい、何でしょうか。」


 「こんなことは、今まででもあったの?」


 「魔物に攻撃されることはありましたが、子供が連れ去られることはなかったです。」


 「魔人族の他の村は、どうしているの?」


 「魔人族は、村同志の交流をしていません。それぞれの村が独立して、行動しています。だから、他の村の様子は、全くわかりません。」


 「そうか。ありがとう。先を急ごうか。」


 「はい、お願いします。」

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