118.湯沸かしポットの販売
今日は、リンダから、思念伝達で連絡があった。
「テラ、湯沸かしポットを受け取ったよ。」
「どうだった?売れそうかなぁ。」
「売れると思うよ。でも、あの商品は、マテーダ王女の所にあったものよね。」
「そうだよ。」
「大丈夫?何か言われないかなぁ。お金を要求されるとか?」
「でも、あそこにあったのは、お湯を沸かすだけだよ。それだけの物なら、他にもあるのじゃない?」
「確かにね。お湯を沸かすだけなら、色んな物があるね。でも、余り売れていないのよ。」
「それは、どうして?」
「一つは、時間が掛かるということ。普通に火でお湯を沸かす方が早いの。」
「それは、だめだね。早く沸かなければ、意味がないもの。」
「そうでしょ。だから、売れないのよ。それと、保温が効かないということ。沸いた直後しか、だめなのよ。直ぐに冷えてしまうの。」
「私のは、保温機能もついているよ。半日は、持つよ。」
「最後に、魔法を使える人用なのね。普通の人には使えないの。貴族は代々魔法を使えるけど、自分でお湯を沸かす人はいないでしょ。だから、全く意味がないのね。」
「今回は、魔石を埋め込んでいるので、魔法を使えなくても、起動するよ。」
「そうでしょ。だから、売れるって。」
「大量生産するための製造キットを作って送るよ。それを使ってみてくれる?
もし、追加の要望があれば、遠慮せずに言ってね。」
「分かったわ。それから、加盟店への参加は、好調よ。多くの商店が既に加盟店になったわ。」
「それで、商品の方は大丈夫?」
「何とかなっているは、もうすぐ、新しい農場からの薬草も利用できるようになるので。これからは、余裕よ。」
「錬金術師の方から、クレームは来ていない?」
「少しはあったけどね。赤のポーションしか作れない錬金術師は、テラ・ワールドで雇っているので、概ね大丈夫ね。それに、今までの稼ぎの倍ぐらいは、給料を払っているので、却って、感謝されているわ。」
「それじゃ、引き続きよろしく。」
私は、リンダとの思念伝達を切った。直ぐに、大量生産するため神具づくりを開始した。
まずは、土魔法でポットを作る神具を作った。
次に、保温機能を持たせるための魔法陣を刻印するための神具を作った。
それから、3段階の温度に切り替えてお湯を沸かすための火魔法の魔法陣を刻印するための神具を作った。
3つの神具をセットにして、10セットを作って、リンダに送った。後は、リンダにお願いすることにした。
レンゲーから、思念伝達で連絡が入った。出来上がった戦う船(戦艦)と兵士の運ぶために船(軍隊輸送船)の試運転を兼ねて、大陸を一周して来たいらしい。そこで、軍隊輸送船を1隻と戦艦2隻でなら、許可すると言っておいた。レンゲーは、準備ができ次第出航するそうだ。おそらく、来週になると言っていた。
今日の授業には、もう、間に合わないが、取り敢えず、転移魔法で、魔法学院の自分の部屋に戻った。
部屋のベッドの上で、横になった。目を閉じて、暫く、じっとしていた。しかし、何も起こらない。大丈夫みたいだ。眠くならない。これで、以前のように、徹夜でも出来そうだ。
暫くすると、レイカが部屋の中に入ってきた。そして、そのまま、ベッドの中に潜り込んで来た。
「テラ、今日はどうしたの?」
「うん。少し、用事があったの。」
「今日の授業は面白かった?」
「いつもと同じよ。それより、もうすぐ、前期末考査を行うって言っていたよ。それが、終わったら、夏休みだって。」
「へぇ、もう、夏休みか。長期に渡って、休みになるんだね。」
「テラ、その前に、前期末考査があるのよ。心配じゃないの?」
「何を心配すことがあるの?普段の授業と同じだよ。特に、レイカは、すべての授業を受けているから、余裕だよ。」
「そうかなぁ。少し、心配。だって、初めてだから。」
「それは、私も同じだよ。魔法の試験って、初めてだよ。」
「前に、テラに行ったかもしれないけど、私、光魔法が心配なの。」
「どうして?治癒魔法も、この間の薬作りも、よくできていたよ。」
レイカが急に抱き付いてきた。そして、耳元で囁くように、言った。
「私、ミュー先生に、嫌われているの。私も嫌いだけど。私以上に、嫌っているの。」
「そんなことないだろう。だって、ミュー先生は、レイカの担任でもあるんだから。」
「でも、絶対そうよ。治癒魔法の時だって、すごく意地悪だったのよ。テラは、居なかったから、知らないのよ。テラが居る時と、居ないときで、全然違うのよ。ミュー先生は。」
「そんな、裏表があるように思えないけどね。」
「やっぱり、テラは、ミュー先生のこと、好きなんだ。」
「良い先生だよ。」
「ほらね。テラは、私だけを好きになってよ。」
「だから、レイカが、一番好きだよ。いつも、言っているだろ。」
「ほらね。2番目も、3番目もいるんだ。テラは、何人、好きな人がいるの?」
「何をバカなことを言っているんだ。」
「どうせ、私はバカよ。」
また、怒り出しそうだ。私は、レイカを抱きしめて、ほほにキスをした。
「テラったら、そんなことで、誤魔化さないで。」
「いいだろ。」
もう一度、ほほにキスをした。
「いつも、一緒だよ。」
レイカも少し安心したようだ。