レインとラビアン
カーテンが閉められた部屋のベッドに寝かされていたレインは目を覚ました。
とたんに背中に強烈な痛みが走った。おかげで息がしづらくて苦しい。ハァハァと浅い呼吸を繰り返していると痛みは落ち着き、ゆっくり深呼吸することができた。
上着が脱がされていて、代わりに胸から背中に白い包帯がぐるぐると巻かれている。ああそうか・・・背中にクロスボウの矢が命中したんだっけ。
だんだん思い出してきた。あの夜は確か、討伐隊に待ち伏せされて撃たれて、森まで逃げてきたところで・・・どうなった?
それから呆然と見回すと、どこだか分からない部屋にいる。陽はまだ落ちていない時間だが、幸いカーテンが閉められているおかげで薄暗い。助かった・・・。
そうか・・・吸血鬼と気づかずに、きっと誰かが助けてくれたんだ。気を失ったおかげで能力がきれて、変身もとかれていたのか?
ドアの向こうから足音が聞こえた。それは部屋の前で止まり、ゆっくりとドアが開いて、知らない女性が顔をのぞかせた。
「あ・・・ごめんなさい。起きてるとは思わなくて。」
レインは思わず息をのみこんだ。目の前に現れた彼女は、理想的な年の頃で、容姿も好きなタイプだ。彼女の周りがキラキラと輝いて見えるほど。
可愛い人だな・・・それに、優しそうだ。きっと、血も美味いだろう。ああ・・・傷も痛むし、今すぐにでも欲しい・・・けど・・・。
レインが見惚れながらそんな葛藤をしていると、彼女はスタスタと入室してきて、窓と向かい合い、カーテンに手を伸ばした。
「待って!」レインはあわてて言った。「カーテンを開けてくれようとしてるなら、お願い、そのままで。えっと・・・実は皮膚の病気で・・・太陽の光がダメなんだ。」
「体が弱い・・・ってこと?」
「そうなるかな・・・。」
「・・・・・・。」
「え・・・なに?」
疑われてる・・・? もしかして、吸血鬼って分かって・・・。
「あなたの背中の傷ね、とても深かったの。子供たちも心配して、一人が背中に突き刺さっていたものを勝手に抜いちゃったんだけど、出血が思ったより大したことなかったっていうか・・・。だから、意外と丈夫なんだって思ってたから。」
人間なら出血多量でショック死する重傷だろう。この子・・・かなり暢気で鈍いのか? 天然?
「えっと、私はラビアン。ここではラヴィって呼ばれているわ。」
「俺はレイン。助けてくれて、ありがとう。で、ここは・・・?」
「孤児院よ。私が管理人。」
ということは、大人はいないのか・・・? そう推測したレインの頭は一瞬で計画を立てていた。生まれつきの性と習慣のせいだ。
もしそうなら、都合がいい。美味しそうな彼女の血と、それに、新鮮な子供の血も手に入る。そうすればこんな傷、すぐに癒えるだろう。
今夜・・・。