朝、目覚めたら
カーテンが閉められていて薄暗い部屋の朝。
なんだか心地良い感触がしてレインが目覚めると、腕の中にラヴィがいた。レインは、いつの間にかラヴィをを抱きしめながら眠っていたのだと気づいて、あわてた。
「はっ・・・なんで!?」
いや、こうなってもおかしくはないことは、した・・・した・・・けれども・・・いっかい、確かに離れたぞ? あのあと一人で寝たよな・・・。
目を泳がせながら、レインはこの不可解な現状をあれこれと考えた。
それにしても・・・これもあれだけど、俺としたことが、なんで気づかなかった?ちゃっかり抱きしめてまでいたのに??? 俺・・・寝ぼけて???
ふわっと甘い匂いがした。ラヴィの体から漂うイイ匂い。
まあ・・・いいか。ラヴィが起きないなら、もう少し・・・。
レインは驚きのあまり解いた腕をそっと組みなおして、ラヴィの頭に頬ずりをした。美味しそうな血の匂いも気になるものの、それとはまた違う、胸があたたかくなる優しい香りがする。そして思わず、ラヴィとこうなることを想像してしまった。それはレインの本来の目的だ。
これまではみな、毒の催淫効果のおかげで行為のあいだはおとなしく気持ちよさそうではあった。だがその表情には死への恐怖も混じっていた。どんなに優しくしても信じてはもらえなかった。快楽に溺れておきながら震える声で「止めて、離して」と泣きながら命乞いをされることもあった。
同意のうえで、こんなふうに愛しい女性を抱きながらその甘美な血をすすったり舐めたり・・・。そして、ただ愛情と快感だけに満たされて輝く顔が見たい。ラビィの、そんな・・・純粋で最高に艶めかしい・・・。
うん・・・落ち着け・・・妄想がすぎるとマズイ。
欲望と食欲を紛らせようとしきりに鼻先をすり寄せ、調子に乗って勝手に堪能していると、ようやくラヴィが目覚めた。冷静に考えてみれば、寝ぼけて連れ込んだ・・・は、ないな。と判断したレイン。結局のところ、背後から抱きしめているそのまま、もう堂々と頬に朝の挨拶をした。
「おはよう。」とレイン。
「あ・・・おはよう。」
「で・・・これ・・・どういう状況?」
ラヴィは恥ずかしいというより、何か悪いことをしてしまった子供のような顔をしている。
「あの・・・やっぱり心配になっちゃって。最初は横で椅子に座ってたんだけど、私も眠くなってきて、つい・・・。」
つい・・・ね。
レインは額をおさえて、はあ・・・と長い嘆息をもらした。
こういうところ・・・その気がないのは困るんだけど。
「我慢できなくなる。」
レインは小声でひとりごちた。
「そうだ、今夜はお祭りよ。」
ラビィが急に振り向いて、言った。
あんなこと ―― 恋人のようなキス ―― をしたのに、今、一緒のベッドにいることに照れる様子もなく、もう無邪気な声をあげたラヴィに、レインは呆気にとられた。つい数時間前に見せてくれた恥じらいは錯覚か気のせいか。ラビィにとって、自分はどの程度でどういう存在なんだろう。レインは滅入った。まだまだ時間がかかりそうだ・・・。