閑話「Side智美」
「うわぁ。びしょ濡れになった…。」
私は下着までずぶ濡れになりながら玄関に上がる。
「あれ?智美、あなたさっき帰ってきてなかった?」
「うん。ちょっと出てた。」
「びしょ濡れじゃない。風邪ひくといけないからシャワー浴びてきなさい。」
「うん。そうするよ。」
私のびしょ濡れ具合を見に来た母親から呆れ混じりの声をかけられ、私はシャワーへと向かった。
「思ったよりもすごい雨だったわ…。」
「ん?」
シャワーを浴びて、部屋に戻り、髪を乾かしながらベッドに仰向けになった。
「皆で集まる機会かぁ…。」
「高校行ってから、皆で集まろって…言ってたけど。そういえば集まってないなぁ…。」
(私は奏に壮馬君、それにリョータに普段から会うことがあるから違和感なかったけど…。)
(皆にしたら、ちょっと距離できたように思われてるのかな…。)
(とは言っても…、今の状態で集まるって、少し…、いや大分パワーが要るかな。)
(あの時こうしていれば、あの時こうしなければ…、その結果が今な訳で。)
(皆が集まろうっていうのなら参加はしようとは思うけど…、私から言い出す気にはちょっとなれないかな。悪いけど…。)
「はぁ…。」
(何がいけなかったんだろ。何でこうなったんだろ…。少し…しんどいや…。)
ピコっ。
「ん?」
(あ、スマホかな。えっとどこに置いたっけ…。)
智美は机を見るがスマホは見当たらない。
(あれ?どこだっけ…。)
ピコっ。
「あっ。カバンに入れっぱなしかも。」
智美は帰ってきて置いたカバンの中を探すと、スマホが出てきた。
「あった。」
画面を見ると、メッセージが届いているようだった。
(なんだろ。あれ。唯か。どしたんだろ。)
『ニュースです!』
『聞いて!!』
(何だろ?)
『久しぶり。何かあった?』
(早っ。もう既読になった。何だろう…。)
『彼氏ができました!!』
(えっ!!)
『誰誰?』
(ちょっと凹んでたからちょっと気分変わるかも)
『S高の子』
『どうやって知り合ったの?』
『友達の紹介ー』
『そうなんだ、付き合ってどれくらいなるの?』
『2日!!』
『あっ、付き合いはじめなんだ。おめでとう!』
『ありがとうー。』
『いいなー。どんな人なのかなー。』
『智美のほうはどう?彼氏は?』
『全然だよー。』
『そっかー。』
『うん。』
そこで、メッセージは止まった。
(そうだよね…。そろそろ皆も忘れつつあるのかも知れない。私ばかり暗くても仕方ないよね。)




