閑話「Side唯」
拓君が学校の来なくなったのが、夏休み前だから7月後半。
リョータとちょっと揉めたらしい。
リョータに聞いたけど、リョータ自身も何だったのかよく分かってないらしい。
一方的に拓君がリョータを殴ってたとも聞いた。
私も家に電話してみたら、お母さんが電話に出てくれたけど、拓君には取り次いでもらえなかった。
そして、秋本君。
彼も突然学校に来なくなった。夏休み明けてすぐだったから、9月初旬。
こっちは全く分からない。
何かあったというほどでもないけど、劇の練習で剣太と喧嘩ってか、ちょっと険悪になった。
でも、あれは秋本君ってか、みんなと剣太だ。
秋本君の家にも電話したけど、お姉ちゃんが出たもののガチャ切りされてしまった。お姉ちゃんと仲が悪いって言ってたけど、弟のクラスメートの電話をガチャ切りって、人としてどうなのって思う。
そう。うちのクラスには現在2人の不登校の生徒が居る。
もちろん他のクラスにも居るので、別に私のクラスだけってわけじゃないんだけど。
2人には2人なりの事情があるんだけど、私はやっぱり学校に来て欲しいなと思う。
別に私が2人のことを好きだとかそんなんじゃない。
夏休みにも遊んだクラスメートが来ないのは純粋に寂しいなって思う。
だって、そうでしょ？
せっかく仲いいクラスになれたって思ってたのに、すごくすごく悔しい。
遊園地での計画は失敗しちゃったんだけども、あれは仕方がない。
それに、もし私が知らないだけでイジメとかがあったんだとしたら、私は許せない。
私自身、小学校の時に、無視されたりして嫌な気持ちになったことはある。だから、もしそうなんだったら許せない。
…でも、剣太だったら、こんなに気にしてないかも知れない。
前からちょっと嫌だって思ってたけど、文化祭の準備で決定的に嫌いになった。何なのアイツ。まじあり得ない。
自分で言うのもなんだけど、私は余り人を嫌いにならない。
そんな私でも彼は無理だ。
リョータとか秋本君はよくあんなのを相手にしてたなって思うよ。
しかし、リョータはともかく、秋本君は剣太のためっていうより、智美のためだったのかな。
遊園地に行って以降、何度か夏休みに遊んだけども、秋本君は智美狙いって感じがした。
ご飯食べるときは近くに座ろうとするし、グループで会話してるときは智美の近くに居る気がする。
あれ？って気付いてからはチェックしていたけど、これじゃ何だか秋本君のストーカーみたいだ。
でも、あの日、私は見たんだ。
練習が終わって、塾があった私は真っ先に飛び出したものの、忘れ物をして、いつも使う階段ではなく、裏側の階段から教室へと向かった。
その時、2階の廊下の隅で、秋山と智美がぎゅってハグしてた。
キスしてたとかそんなんは分からなかった。
けど、ヤバって思って、ダッシュで階段を上がった。
あの2人って付き合ってたっけ？今、告ったとこかな。
などと色んなことを考えながら、私はダッシュした。
直で聞いたことはないけども、私は智美はリョータが好きなのかなって思ってたからちょっと意外だった。
リョータも智美が好きなのかなって思った時もあったけど、今は違う気がする。
うまく言えないけど、たまにリョータが急に大人っぽい感じになったりすることもあったり、そんな風に考えることができるんだみたいな時がある。
本人に言うと怒るだろうけど、私のお母さんの方が話合うんじゃないのコイツ？って時がある。
何というか、大人の余裕？みたいなのを感じることがある。そうまるで、うちのお父さんみたい。
やっぱり、一度、私のお母さんと話してみないかな。あげないけど。
まあ、頼りになるし、良い奴だから、私的には保留かな。うん。
もし告ってきたら、ＯＫしてやってもいいかな。なんてね。
今度、奏にも聞いてみよっかな。
けど、そうなるとますます分からない。
あの日から秋本君は学校に来ていない。
直前に何か嫌なことがあって、それで学校に来なくなるという理由が成り立たないなあ。
秋本くんと智美のことは、秋本君が不登校になってる今、智美にはちょっと聞きづらい。
他の皆はどうかな。
まずは、奏。
前に奏とそんな話をしたときには、壮馬が好きって言ってた。
壮馬はカッコいいしね。確かに奏ともお似合いだ。
でも、壮馬は人気がある。志穂も壮馬がいいって言ってた。
奏と志穂がバチバチやるのかな。うー、怖そうだ。
そして智美は、秋本君なのかリョータなのかちょっと謎。
恵ちゃんは勇人だね。あれ以来、別に付き合うとかそんな風はないけど、前よりも喋るようになった気がするよ。結果的にだけど、奏と私の作戦成功かな。
私はベッドでゴロゴロしながら、不登校の2人のことを考えていたつもりが、1人で恋バナしていた。
そして、咲ちゃんはなんと剣太らしい。
咲ちゃん、眼科に行くのをお薦めするよ。
詳しくは聞いてないけども、何かで助けてくれたり、ああ見えて優しいところがあったりするって言ってた。
私は全く信じられないけど。
咲ちゃんにはごめんだけど、うまくいって欲しくないや。
そして…、私。
私は、誰なんだろう。
私は、小学生の時に秋本君と付き合っていた。
もっともそれが原因で、女子の仲でハブられたので、私にとってはほろ苦い思い出だ。
今思えば、小学生っぽい付き合いしかしてないけど。
付き合ってから、1週間ぐらいだったか。
急に女子の輪に入れなくなった。
なんでって、問い詰めたら、クラスのボス的位置にいた、葵ちゃんが秋本君を好きだったって話だった。
何それって思ったけど、結局、それに気づいた秋本君が別れようって言ってきて、葵ちゃんにボロクソ言って泣かして、結構な大事になった。
それ以来、ちょっと男子を好きになるのが怖い。
いつか、また自然と男子を好きになれるのかな。
そのいつかがやってきた時には、いつかの私がいい出会いをしてたらいいな。
今は、今の私が後悔しないようにしたい。
ん？電話だ。土曜の朝から誰だろう。
はいはい、今出ますよっと。
