第3章:闇の中で…
目を覚ませ…ソラ!
落ちていく…深い深い闇…
どこまで続くの…?
私は…誰なの?
感じる…心に入ってくる暗闇ー…
やめて…私の中に入ってこないで…
「スイ、よく帰ってきたね。」
俺が深い深い眠りについているソラを部屋の中心にある石台に寝かせると1人の少年が奥の部屋から現れた。
「カイルか…
あの方はソラをどうするつもりなんだ?」
カイルは横たわっているソラに近寄る。
「あの方が言うには…こいつには何か特別な力があるらしい。」
そう言いながらカイルはソラの額を触る。
…!?
「ソラに触るな!」
俺はカイルを殴り飛ばした。
「いってぇ…」
カイルは殴られた拍子に口が切れたらしく血を拭き取りながら起き上がった。
「ハァ…ハァ…
きたねぇ手でソラに触るんじゃねぇよ!」
「スイ、お前こいつに心惹かれてんの?」
スイは俺の肩に手をかけた。
「…うるせえ…」
「ククク…でももうむーだ。
こいつの心は既に闇に奪われてるからもう目を覚まさない。」
「うるせえ!!」
俺はカイルに全力を込めた回し蹴りを放った。
こいつ…俺の回し蹴りを片手で受け止めやがった!?
「あーあ…
熱くなっちゃって。
戦いにおいて頭が熱くなったら負けだぜ?」
突如、カイルは反対の手を俺の顔の前に突き出した。
「我が友は風。我が敵はそなたの敵。
…切り刻め、【旋風の胡蝶。】」
「ぐ…」
カイルの手から竜巻が放たれ、俺は吹き飛ばされた。
見た目には酷い怪我はないが恐らく、内部への衝撃が強かったのだろう。
起き上がろうと力を入れるが動けない。
「く、くそぉ…」
「ククク…
スイー、手を抜いてるとはいえ、俺の魔法受けて起き上がれると思ってんの?
いくらお前があの方のお気に入りだって言っても所詮お前は【子】にはなれなかった存在なんだよ。」
あの方の【子】ー…。
特別な力を分け与えられ、あの方の手足となる選ばれし者…。
「それに、お前があの女の心を闇で染めたんだ。」
起き上がれない俺の元にカイルは歩み寄ってくる。
俺はその一言で怒りが頂点に達し、理性が吹っ飛んだ。
「おい…カイル…
俺が何故【子】でもないのにあの方と共にいて、何故俺が自我を奪われてないかわかるか?」
体中にとてつもない量の力が巡り、痛みが引いていき、俺はゆっくりと起き上がった。
「ど…どういう意味だ…
なんで俺の魔法をもろに受けて、立っていられる!?
お前…本当に人間なのか?」
俺はその言葉を聞き不適にも笑いをこぼす。
「俺が人間か…だと?
ああ、俺は人間だ…だが…」
俺はここで俺としての意識は途切れ倒れ込んだ。
「!?」
「俺様はガネル。
愚かしい人間などではない。」
そう言うとガネルと名乗ったスイは右手の中指と薬指につけている二個の指輪を外した。
「お…お前何者なんだ!?」
カイルがスイを見ると頭から一本の角が、臀部からは尻尾が生えていた。
そして何よりも、今まで茶色だった瞳が緑色に輝いている。
「俺様は空間の大乱獣ガネル。
ガキ…貴様みたいな奴が子とはなぁ…
死にたくなければ消え失せろ。」
カイルは恐怖のあまりに腰を抜かしている。
ガネルはカイルを睨みつけると一歩…また一歩とソラに近づいていった。
「おお…時の番人か。
やっと見つけ…!?
スイ!?もう目を覚ましたのか!?
…お前…に…ソラを…殺させない!」
うっすらとスイとしての意識が戻っていく。
ガネルの姿のままの俺は眠り続けているソラの胸の上に手を乗せた。
ーガネル…貴様、俺との契約を忘れたのか?ー
ー契約?
ククク…そうだったなぁ。俺様はまた思う存分暴れられれば今はそれでいい。ー
ーガネル。今急に番人を目覚めさせるのは危険だ。ー
ーそういうものか?
まあ、任せる。ー
「空間の大乱獣ガネル。俺に力を貸しやがれ!
【封開放心】」
「ソラ…目覚めろ…
目を開けるんだ…ソラ!!」
俺がソラの体に魔力を注ぎ始めてから数十分が経過した。
人間が生命活動を行うにも少なからず、もちろん魔法を使うにも誰しもが大小に関わらず持っている魔力を消費する。
つまり、魔力を限界以上に消費するということは最悪死を招いてしまうのだ。
封印や開放の魔法は莫大な魔力を消費してしまう。
「ぐ…この姿でももう限界か…
起きろよソラ…起きろよ!」