第2章:旅立ちの宴
この時に私の運命は変わったのだろうか…
スイが私の鞄をベッドの上に置いた。
「もう起きて大丈夫なら帰ろうぜ?
心配だから今日は一緒に帰ってやるからよ。」
「…そうね、もうすぐ日も暮れちゃうから帰った方がいいわ。」
先生の声に促されて窓の外を見ると空は綺麗なオレンジ色に染まり、烏が辺りで鳴いている。
「もうこんな時間!?
スイ、帰ろう。」
スイはその言葉を聞くとニカッと笑い立ち上がって私の手をとり、外に出ていった。
駐輪場ーー。辺りには、帰宅する者達で溢れている。
「…ちょっと待ってろ。」
そう言うとスイは自分自転車をとりにいった。
「そっか、スイは自転車だもんね。」
スイと私の家はこの高校に歩いてでも通える距離にある。
私は自転車通学ではなく歩いて通学している。
チリンチリンー…
いつの間に帰ってきたのだろう…
スイが鳴らした自転車のベルの音でハッと気がつく。
「何ボーっとしてんだ?
乗れよ。」
スイは私の荷物をとり前カゴに入れる。
私はそしてこの自転車の後部座席に腰をかけ夕暮れの町へ出発した。
帰り道の途中にある公園でスイはペダルをこぐ足を止めた。
「スイ?」
「…ソラ、降りろ…
時は満ちたんだ。」
スイは私の手を引き公園の中央へと歩きだす。
「…なに…あれ…」
中央部の地面から黒い靄がモクモクと上がっている。
私は怖くなり、逃げようと走り出すと、スイは鈴を一回鳴らした。
たった一回鳴らしただけなのに…そこで私の動きは止まってしまう。
「…スイ…その鈴は何…?」
動けない私がぎこちない声でそう言うとスイは鈴をもう一回鳴らした。
「これは、俺にとって大切な物。
怖がる必要はないんだ。
闇は俺達の味方だから…
さぁ…行こう。」
私達の足元を見ると、膝下まで黒い沼のような物に埋まっていた。
「…スイ!?
スイー!」
スイは笑顔で私に手を差し出した。
「さぁ…手を出して…
一緒に行こう…」
私はスイの言葉を聞き、半泣きになりながら、手を伸ばす。
スイは私の手を握り、強く抱きしめた。
「心配すんな…
お前のそばにいつもいつもいるから…
俺が…絶対守ってやるから…」
スイがそう言うと、何故か説得力があり…少し落ちつく。
だが、私達を飲み込もうとする闇は待ってくれない。
私達は完全に飲み込まれてしまった。