悪役令嬢とヒロインの間違い探し
考え付いたままを書いてみました。
最後の方に、ざまあが入っています。
私はこの国の第二王子、ハヴィー・カッセンの婚約者に選ばれた、ローズ・リリアン。
そして、私は最近ある令嬢と対立しています。
「ローズ様。私に婚約者を奪われそうだからと言って、私に冷たく当たるのは卑怯だと思います!!もしかしたら、まだローズ様のことを好いているかもしれないじゃないですか!」
甘いピンク色の髪に、愛らしい顔立ちをして私を挑発しているのはシュシュ・マイナード。
学園に入ってから、私の周りの友人を取り巻きといって侮辱し、国に関わる重要人物、宰相の息子や騎士団の団長の息子、それだけではなく、私の婚約者、ハヴィー殿下まで誘惑しているあまり好ましくない令嬢なのです。
しかし、彼女は一応伯爵令嬢。
私の家‥‥‥公爵家であるリリアン家より権力は小さいものの、なかなか地位の高い貴族なので、見過ごすわけにはいかないのが難点。
「シュシュ様。私のことは何と言っても構いません。しかし、私の婚約者は第二王子でもあります。そう易々と口に出さないで下さいませ。」
「ふん。悪役令嬢がよく言うわ。」
私はこの方の口からよく悪役令嬢という言葉を耳にします。
町のところで売っている本をたまたま読んだところ、主人公をいじめる令嬢のようです。私は、悪役令嬢として認識されているようなのですが、シュシュ様からは他にも、『げぇむ』や『攻略対象』といったよくわからない単語が出てくるのです。
私はこの方と出会ってから、嫌がらせをしたことなどないのですが、学園では私がシュシュ様に嫌がらせをしていると有名みたいなのです。
普段は別に何とも思わないのですが、私の婚約者、ハヴィー殿下の耳に入ったら、私はどんな目で見られてしまうのでしょう。少し不安でもあります。
もう既にシュシュ様と仲が良さそうによくいる姿を見かけるので、私の悪口なんて耳に入っているのでしょうけど。
「ローズ様、彼は私を第一に考えて下さるので、そんなことは気にしませんよ?こんなにも長く一緒にいられるのに、ローズ様にはそういうことを伝えていらっしゃらないなんて…。
ローズ様、本当に愛されているのですか?可哀想に。」
私に対する嫌がらせなのでしょうか?
それとも、私を甘く見下しているのでしょうか?
どちらにしても、よくない態度ですね。けれど、彼女の言っていることも事実。私は最近、ハヴィー殿下に避けられているように感じるので、もしかしたら彼の心はシュシュ様に向いているのかもしれません。
「シュシュ様。そろそろ授業の時間です。教室に戻られてはいかがですか?」
「あ!もうそんな時間なのですね!お伝えしてくださり、ありがとうございます!ローズ様って本当に優しいのですね!」
周りの男性はそんな彼女の姿に、あなたこそ嫌がらせをされているのにそんな健気で優しいですよ、などと声をかける。
騙されているのに気付かないなんて、貴族として失格ですね。
こんなことを思いながら日々を私は過ごしていました。
そして、ハヴィー殿下が我が家に訪問に来たのです。
「久しぶりだね、ローズ。」
「お久しぶりです。ハヴィー殿下。」
彼は、まさにこの国のトップともいえる装いに、美しい顔で私の前に座る。
さらさらとした金髪に触れたい、と思うのも私だけではないはず‥‥‥。
「ローズ、いつになったら二人きりの時にハヴィーと名前で呼んでくれるのかな。」
「それは、時間を要します。」
「待ちくたびれちゃうよ。あ、そうだ。最近、学園でシュシュ嬢と会うのだけれど、嫌がらせをしているって本当?」
「殿下。それはもし私が嫌がらせをしていたら、嘘をつくに決まってます。そんな聞き方をしてはいけませんよ。」
彼は、私が注意しているにも関わらず、私を見てにこにこの笑みを浮かべる。
「その答えがもう、違うって言っているようなものだよ。しかも、私はローズを疑ってないからね。婚約してから今までどれだけ一緒にいると思ってるのかな?」
「それはそうですけど…。そういえばハヴィー殿下、シュシュ様に殿下がどこでも名を出して良いと許可したとうかがったのですが。」
「?」
「許可してないのですね。」
「待って、ローズ。シュシュ嬢と話したこと、あるの?」
「ありますよ。もちろん、ハヴィー殿下の心がシュシュ様に動いていることも知っています。あ、誰にも言ってはいないので気にせず…」
「っ!ちょっと、待って。いつ、誰にそんなこと聞いたの?」
やはり、私が思っていたことは本当なのですね。既に、ハヴィー殿下のお心はシュシュ様に向いているのですね。
「いえ。言う必要はありませんので。」
「いや、俺が知りたいというか。」
一人称が『俺』に変わりました。動揺されていますね。もう、この話には関わらない方がいいのでしょう。
「殿下。婚約解消をなされますか?あ、それとも彼女を正妻にし、私を側妃に迎え、私が政治を行いますか?」
「!?!?」
もはや、言葉もでないほど愛しているのですね。
「ローズ。落ち着こう。」
「私はさっきから落ち着いています。ハヴィー殿下は落ち着いていませんが。」
「うん、確かに。で、どこからローズは間違えているのかな?」
「私の言っていることに、誤りがありましたか?」
「あ、そこからか。わかったよ。」
なぜだか、彼の顔が青く見えますね。
「まず俺は、シュシュ嬢からローズとは話したことがないのに嫌がらせをされていると聞いた。」
「それは違いますね。私はシュシュ嬢によく話しかけられます。」
「まず、そこが違うんだね。で、俺はシュシュ嬢のことは好きではない。全く。ローズのことを悪く言うからね。」
「私がハヴィー殿下を見たときは、とても楽しそうにシュシュ様と話していました。」
「見てたんだ…。それは、シュシュ嬢の家はこれから大きく王家に貢献するだろう家だったから、表面上だけね。」
「そうだったのですね。」
「うん。でも、そうなることはもうないだろうけど。」
「なぜですか?」
「今は知らなくていいよ。そもそも、彼女は、根本的に間違っているから。指摘はしてないけれど。」
「間違っている?」
私の言葉には反応せず、ハヴィー殿下は、笑うだけだった。
「とにかく、婚約解消はしないし、私は必ずローズを正妻に迎える。側妃は作らないよ。」
「そう、なのですね。」
でも、私は知っているのですよ。シュシュ嬢が前に言っていました。
『彼は、あなたよりも愛する人がいるのです。彼はあなたを婚約破棄すると言っていました。あ、こんなこと、今の婚約者さんに言ってしまい…口が滑りました。ごめんなさい。』
そして、今も彼は言っていなかった。
婚約破棄はしない、と。
私は、それを口に出さず、ぐっと飲み込んだ。
もし、それを公にしたいのなら、もうすぐある卒業パーティーが一番良い機会ですね。
もうすぐ、彼とは一緒にいられなくなってしまうのですね。
私の目から、一筋の涙が溢れる。
「ローズ?どうしたの?」
私の前に座っていた彼は、私の横に移動してきて、私の涙をそっと拭ってくれる。
あぁ、優しい彼。私は、あなたを愛しているのです。どうか、私の少しの我が儘を許して下さい。
私は、彼のほっぺに、軽くキスをする。
すると、彼は暫く固まってしまった。
そんなにもショックなのですね。
分かってはいましたが、いざとなると…。
と、考えていたのですが。
彼は、私を思い切り抱き締めてきました!?
そして、さっき私が思っていたことは何処に飛んでいったのか、同じようにキスしてきました。
「あぁ、ローズ。可愛い。」
可愛い?嘘が下手ですね、ハヴィー殿下。私の目はややつり目ですし、体もシュシュ様と違い凹凸があり、お世辞にも可愛いとは言えませんのに。
「ちょ、ハヴィー殿下、やり過ぎで…!?」
彼は、流れのまんま私の唇にキスをしながらソファーに私を押し倒し……え!?
「ハ、ハヴィー殿下?」
唇が離れてよく見える彼の顔は、にこにこしているのに何故か優しい、というよりは、黒い?
「さすがに、この先はまだできないよね…」
な、何を言っているのか私には理解できません!!
「結婚したら、いいんだよね…結婚…」
彼は、ゆっくりと起き上がり、結婚、結婚、と呟きながら、帰っていきました。
もしかしたら、シュシュ様との時の予行練習にされたのでは!?それでも、唇にキスして貰えたのは忘れません。一生の思い出にします。
───卒業パーティー当日
「まぁ、ローズ様。美しい。ハヴィー殿下の瞳の色のドレスですのね。」
「きれいなブルーですわぁ。殿下から贈られてきたのですよね?」
「羨ましいです。私も、そういうドレスを贈られたいものです。」
「いえいえ。彼はそんなこと、思ってもいないと思いますよ。」
私が彼女達と話していると、シュシュ様が現れる。
普通、この国では愛する人の瞳の色のドレスを纏う。けれど、シュシュ様は金色のドレスを纏っていた。
「ローズ様は、彼の瞳の色のドレスなのですね。私にも、彼から贈られてきたのです。なんと、これからの流行のために、髪の色なのだと。」
「そうですか。」
「それより、卒業パーティーを楽しみましょう。」
彼女の笑顔は、楽しみ、というよりも私を嘲笑うような笑みだった。
そう、婚約破棄される日です。
しばらく経ち、ついにハヴィー殿下が舞台の上に上がり、皆の注目を浴びながら話し始めました。
「皆、今日は大きな発表があるんだ。」
皆はもしかして、と、私とシュシュ様を交互に見ます。
「まずは、私の婚約者ローズ・リリアン。舞台に上がってきてくれるかな。」
皆の視線を浴びながら、舞台に上がっていくと、彼は再び話し始めます。
「私は、今日までローズ・リリアンと婚約をしてきた。そこで、急な発表なのだけれど…」
皆が、キャーキャーワーワー言ってますね。
やはり私と婚約破棄をし、シュシュ様と結ばれようとしているのですね。覚悟はできてます。
ハヴィー殿下は、すうっと息を吸うと、はっきりした声で会場中の人々に向かって言う。
「私は、ローズと3日後、結婚しようと思う。」
すると、会場の皆が、思っていたことと反することを話し始めた王子に、会場中がパニック状態になる。
もちろん、私なんて固まったままです。
え?婚約破棄は無し?それより、結婚式が3日後?どういうことでしょう。
「待ってください!!殿下!私は、彼女にいじめられてきました。それなのに、彼女を正妻にするなんて、反対です!」
出てきたのはシュシュ様です。
それに賛成するのは男性の三割ほど。
「ほぅ。私はその証拠がないと信じられない。」
「なぜ!?私を愛してくれていたのではないの!?」
「なぜそう勘違いしたのかな?」
「だって、あなたは、私が名前を呼んだ後愛していますって言ったら、嬉しいよ、と言ってくれたではないですか。」
「言ったよ。
じゃあ、もう一度言ってくれるかな。」
彼女は、ぱぁぁ、と顔を明るくして大声で言う。
「ライヤ・カッセン殿下!私はあなたを愛しています!」
?????
会場中が静まる。
ライヤ・カッセン殿下?それは第一王子のことですか?
「嬉しいよ。兄上のことをこんなにも熱烈に愛してくれるなんて。」
「えっ!?」
まさか、まさか。まさかですよね?
「私は、ライヤ・カッセンではないからね。私の名前を言ってくれるかな、ローズ。」
「ハヴィー・カッセン殿下ですね。」
すると、彼女はみるみる青くなり、その場にぺたりと座り込んだ。
「兄上。どうやら、彼女が兄上を愛してくれているそうです。」
そこには、ハヴィー殿下とは異なり、俺様で顔が整っているライヤ殿下がいた。瞳の色は……金色。
「ありがたいな。だが、俺には愛しい愛しい婚約者がいるんだ。お前の愛には応えられない。すまないな。」
そこには、可愛らしい少女が抱き締められていた。
「そして、シュシュ嬢。あなたは、私の知らないところで色々やらかしてくれたそうだね。調べはついているんだ。じっくり話を聞かせて貰うよ。
衛兵。連れていけ。」
「なんで、なんで悪役令嬢のあんたが選ばれるのよぉぉっっ!」
叫びながら消えていく彼女に同情する者は会場にいなかった。
「さぁ、皆。パーティーを楽しんでね。」
また、会場がざわざわしだすと、私はハヴィー殿下に問う。
「殿下、前に我が家に訪問したときにしたことは…」
「結婚すれば、あの先ができるね。」
「っ!」
そういうことですか。私は、赤くなっているだろう顔を手で隠す。
「私は、また、あなたと一緒にいられるのですね。」
「?うん、また、何か勘違いしているのかな。部屋に帰ったら、じっくり聞くよ。今度は何を間違えたのか。」
「はい……あと。」
「何かな?」
「愛しています。ハヴィー。」
再び彼にキスする。今度は、唇に。
「~~っ!卑怯だよ、ローズ!」
数ヶ月後、ローズは王家歴代最速で妊娠したのは、いらない情報。
また、ハヴィー殿下は、とてつもない愛妻家として知られており、どうやら、妻が何か勘違いする度に一瞬で気付くそうだ。
呼んでいただき、ありがとうございました。
気になる点や、誤字脱字などがありましたら報告をお願いします。
また、番外編のようなものとして、
悪役令嬢の間違い探し【ヒロイン版】
悪役令嬢の間違い探し【王子版】
も投稿させていただいています。気になる方は、そちらも読んで見てください