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第N^1話:異世界転生チートハーレムを築く予定...だったかもしれない無個性主人公(僕)

最近見た悪夢をベースとしたお話です。

作者の未完結作品がプレッシャーでもかけてきたのかしら・・・!

 

 

 

 

 

 わからない――――僕が違和感を感じたのは、そう、ごくごく変哲のないその日だった。

 部活動の帰り道。幼馴染の女の子の後姿を交差点の手前で見かけたその時だ。

 既視感、デジャビュといったらいいのか、この後に一体何が起こるのかというような話が、おぼろげに脳裏を駆け巡る。

 それも明らかに常軌を逸した内容が。

 この後に彼女は交差点に猫を見かけ、それがスピード違反で走ってくる車にひかれそうになるのをみて思わず飛び出し庇い、そんな彼女を殺されまいと僕も足を踏み出す――――そして死んで神様とやらと会話して、ファンタジー要素ましましの中世ベースの世界観に転移、冒険者ギルドに入って、と。

 なんとも妙な、高校生にもなって中学二年生がノートに描く妄想めいたものが脳裏をよぎる。

 普通は何を馬鹿なという話なのだろうけど、なぜか僕はその妄想に「確信」をもっていた。

 だが、その妄想にも僕は更に違和感を抱いている。

 ――――先が、ないのだ。

 そう、違和感の正体はそれかもしれない。そしてそれに気づいた瞬間、僕は僕の世界が崩壊するのを理解した。

 どうにも僕には何かしらの能力があるらしい――――転生した後に発覚するのだが、その能力が何であるかが「わからない」。

 いや、それ以前に。転生した世界でどんな会話を交わすのかも覚えているのだけど、その世界というのがどういった情景をしているのかが「わからない」。

 神様はなにやら僕を転生させる意図があったようだが、その理由が「わからない」。

 そして――――転生した後の僕の容姿の一部が「わからない」。

 その違和感に気づいた瞬間、僕は、僕自身のアイデンティティそのものが「わからい」といった状態に陥った。

 僕の容姿は? 年齢はわかるけど、体格や、身体能力が「わからない」。声がどんなものなのか「わからない」。学校の成績が「わからない」。今までどんな人生経験をしてきたかが「わからない」。何より――――自分自身の名前がわからない。

 そしてここが日本のどこかが「わからない」。地図上でどうなっているかが「わからない」。さっき交差点といったけど、どういった形をした交差点なのかが「わからない」。幼馴染の容姿が「わからない」。

 そうだ――――僕は、わからないことに気づいてしまった。

 わからないのだ、本当に。

 意味が分からない。

 視覚に入ってくる光景は絶対にあるはずなのに、それを僕は文字情報をベースとしてしか認識できない。そしてその文字情報は、まるで想像の余地を残したように厳密なものじゃない、つまり「わからない」。

 わからない――――僕自身が「わからない」。身長は? 体重は? 性別は? 生まれは? 通ってる学校の名前は? 初恋の相手は? 好きな食べ物は? 嫌いな食べ物は? ――――徹底して僕という人格から、本来ならば「必要があれば思い出すだろう」情報が「わからない」。

 違う――――「存在していない」。

 そういった発想に思い至った瞬間、僕の目の前の世界が急激にモザイクでもかかったように、あやふやな何かにしか見えなくなってしまった。

 

「何だ、これ……、」

 

 恐怖のままに一歩後ろに下がるが、交差点と自分との距離が「わからない」ので本当に一歩下がったかさえ「わからない」。

 わからない、わからない――――空が何色をしているか「わからない」。地球が太陽の周りをまわっているか、太陽が地球の周りをまわっているか「わからない」。今が西暦何年なのかが「わからない」。僕が持っている携帯電話がスマホなのかガラケーなのかPHSなのか「わからない」。

 いや、そうじゃない。事の本質に僕は思い至ってない――――いや、気づいてしまった。たった今気づいてしまった。

 僕は世界のほとんどが「わからない」。普通ならわかっていてしかるべき事柄さえ「わからない」。

 そもそも僕とは何だ? 高校生、十六歳、これ以上の情報が「わからない」。たぶん男っぽいことはわかるが、それ以上のことが「わからない」。

 僕は、何だ?

 この世界は、何だ?

 急激な立ち眩みを覚えて僕はその場で膝をつく――――膝をついた地面の感触が「わからない」。

 

 丁度そんなときだった。

 

 僕の目の前にいた幼馴染がこちらを振り返る――――幼馴染の姿が「わからない」。たぶんセーラー服、僕より背が小さいきもするが、それくらいしか「わからない」。

 彼女はくつくつと笑って、バッグの中からお面を取り出した。それは、時代劇とかに出てきそうな狐のお面だった。

 それをつける。

 あくまで相対的にだが、そのおかげもあって、僕にとって彼女の姿はほかの何よりもくっきりとして見えた。

 

「そっか……。ヒロくんも気づいちゃったか」

「何を……?」

「んー、真実? この世界の真実とか、そういう感じのやつ」

 

 僕の手を引いて立たせると、彼女はぎゅっと、僕の体を抱きしめた。

 

「――――おめでとう、そして残念だったね。ようこそ『エタるびと』の世界へ」

 

 ……彼女の体がどういった輪郭か「わからない」ので、グラマラスな気持ちよさかスレンダーな柔らかさかさえ「わからない」。

 

 

 

 

 

 

※第三話くらいまでは確実にエタりません(白目)

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