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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第68節 ペーターと悪魔の剣

よく、吸血剣とか、ありますよね。実際に私も拾ったことがありますが、愛用してますよ。HPが戻るので、便利です。ポーション節約じゃぁ

カールさん、アポロニアさん、僕の三人で、ペーターさんの部屋に行った。


ペーターさんは傭兵家族寮に住んでいるそうだ。僕はこの建物に入るのは初めてだ。傭兵団・空飛ぶザクセン人達は、皆独身だからだ。


家族寮というのは、鉱山口から砦に向かって左側にある最初の建物で、下をくくるトンネルみたいな通路がある建物だ。通りを挟んで、同じような建物があって、そっちが独身寮だ。1階は石づくりだけど、2階、3階と上にいくと少しずつ幅が前後に広がっている。 木造になっていて、白い壁に黒い木の柱とか、斜めの部材なんかが見えるやつで、伝統的な建築らしい。


独身寮も家族寮も、一階に入り口らしきものが二つあるけど、一つが通路だけの扉で、もう一つが玄関だ。砦から歩いていくと、手前側が玄関なのは、どちらも同じだ。つまり、城壁にいくための通路がついているけど、それにはブロックドアがついているというわけだ。城壁側から攻められても、メインストリート側から攻められても対応できる作りなんだね。


僕らは建物の玄関にはいった。壁には内部の見取り図があり、各部屋に名前が書かれている。バイエルンのペーターさんの名前を探すと、2階の一番奥にあった。カール達の住んでいる独身寮は中廊下式で、暗い中廊下の左右に部屋がある。ここは方側廊下式で、廊下の左側にしか部屋がない。廊下には所々に鎧戸があって、開け放たれた窓からは北城壁と裏庭が見えていた。


 独身寮は、一つひとつの部屋が小さいけど、2段ベッドで、一部屋に数人が住んでいた。スタンピードのあと、少しだけ避難させてもらい、小さな部屋に、元奴隷の子供と寝ていたから、知っているけど、家族寮は初めてなので、すこし好奇心で期待していた。


廊下には、日用品やいろんなものが置いてある。扉の周りに棚が作ってあり、かなりごちゃごちゃしている。どの部屋にも子供のおもちゃみたいなのが置いてあり、僕は興味を持って観察していた。廊下の奥まで行った僕らは、ドアをノックした。

中から女の人の声がして、ペーターさんの奥さんと思われる人が出てきた。なんか思いつめた表情をしている。


「こんにちは。ザクセンのカールです。ペーターの具合が悪いって明星亭の女将さんから聞いて、心配になってきたんだけど、ペーターいるかい?」

奥さんは少し表情を緩めて、口を開いた。

「カールさん、どうか見てやってください。おかしいんです。今も寒いらしく、ずっと暖炉に火を入れたまま、火の側でずっと寝ているんですよ。でも熱はないみたい・・・」


奥さんはそういうと、僕らを部屋の中に招きいれ、部屋の中に案内してくれた。


独身寮と比べ、幅もあるし、奥行きもある。一番奥に暖炉があるのは変わらないけど、かまどもあるところが家族寮ならではなんだね。暖炉の前が居間みたいになっていて、手前の左右に木の箱みたいなベッドが置いてある。箱の中には藁が詰められていて、暖かそうだ。子供がいるみたいだけど、外に遊びにいっているのだろう。持ち物をいれる箱がいくつかあって、その上に、子供用の下着が畳まれて置かれていた。いいな、替えがあるんだ。


ペーターさんは、暖炉の前に置かれた木の長椅子に横になって眠っていた。例の剣を抱きしめたままだ。


アポロニアさんは、ペーターさんの顔を覗き込むなり、エアスト・ヒルフェと、唱えた。それからカールさんに、小声で囁いた。

「かなりまずい状態だわ。どんどん体力が消耗しているのよ。応急処置の効きが悪いわ。何回もかけないと。カール、ブルーノ神父様に相談したほうがいいわ」

アポロニアさんは、そう言ってまた、回復魔法をかけた。

「よし、呼んでこよう。砦の野戦病院に連れて行った方がいいかな?」


「・・・そうね。まぁ、神父様の判断だけど、受け入れ準備はしておいた方がいいかもね」

「わかった。その時は、使徒様、浮遊頼んだぜ」

僕は、急に話を振られたが、頷いておいた。まぁ、そういうことで連れてこられたのね。


カールさんは、部屋を出ていった。アポロニアさんは、またエアスト・ヒルフェと唱えたが、あまり効果がないので、首を振った。焦りの色が伝わったのか、奥さんが心配して見ている。


「あの、うちの人大丈夫でしょうか?」

「なんとも言えませんが、今ブルーノ神父様にきてもらえると思うので、少し待っていてください。回復魔法の効きが悪いので、別の処置が必要だと思います」


奥さんは、顔に手を当てて、俯いてしまった。どうやら泣いているらしい。

すごく時間が経ったような気もするが、この場にいることが、なんかいたたまれなく感じるよ。


アポロニアさんは、はっという表情をして、僕に言った。

「悪者君、あ、いや、使徒様?この前の、骸骨剣士の時にさ、カールにかけたやつ、またできるかな?」

「え、どうでしょう。わかんないです」

「うふふ、できるわよ。ねぇ、見せて欲しいなぁ」


うーん、アポロニアさんって、時々、こういう言い方するよね。なんか、ちびっ子の機嫌を取っているような感じがして嫌なんだけど、僕はできることを、出し惜しみしているわけじゃないし。へそなんか曲げてないしね。


「やってみますが、あまり期待しないでくださいね」

僕は、この前のイメージを思い出しつつ、目をつぶって、一回、脳内でリハーサルしてみた。そうそう、人差し指で施術する相手を指差すかんじね。そして、アポロニアさんの言った言葉でやってみた。

「エアスト・ヒルフェ」

指先から、何か空気のような、光のような流れが飛び出していった感じがあった。

「凄いよ、使徒様。ペーターさんの顔色がよくなってきたよ」ペーターさんの奥さんが泣き止んで、顔を上げた。


その時、ドアが開いて、カールさんが戻ってきた。後ろには、ブルーノ神父様?あれ、ダミアーノ神父様だ。

「アポロニア、ブルーノ神父様が捕まらなかったんだ」


「・・・カール殿、ペーターとやらは?」

「こちらです」


アポロニアさんが、ダミアーノ神父様をみて、顔をそらした。そしてそのまま答えた。

「ダミアーノ神父様、今、使徒様が応急処置をしまして少し安定しました」


ダミアーノ神父様は、アポロニアさんをみて驚いたが、すぐにいつもの無表情に戻り、ペーターさんをみた。

「これはまずい。原因はこの剣だろう。生気を吸い続けているな。まずは剣を体から離さないと命が危ない。砦の礼拝堂に連れていきたいが、カール殿、済まないが、力を貸してくれませんか」

「神父様、使徒様の術を使うと楽なので、いいですか?」

「ほう、術とは?」


カールさんは、僕に目で合図した。はいはい、浮遊ですよね。僕はペーターさんを長椅子ごと浮かせた。カールさんは、紐をどこからか出してきて、長椅子の足にかけて、引っ張り始めた。 すると、音もなくペーターさんが長椅子に寝たまま空中を滑空しはじめたので、神父様は驚いていた。


「本で読んだことはあるが、初めて見たよ。よし、行こう。ペーターの体やその剣には触れないでくれ」

僕らは、ペーターさんを長椅子に乗せたまま、階段を下り、玄関を抜け、鉱山街のメインストリートを通って、砦の礼拝堂に向かった。


礼拝堂に着くと、ダミアーノ神父様は、浮遊を無効化した。すごいな、さすが教皇庁の神父様だ。

「アポロニア、また応急処置をお願いしたい」

「はい、神父様、使徒様にお願いしていいですか?」

「構わないが、さっきの連続する応急処置は、使徒殿の術なのか」

「はい」

「では、使徒殿、頼む」

僕がまた唱えると、悪くなりつつあったペーターさんの顔色がよくなってきた。

「よし、いいぞ。剣の吸収が弱くなってきたぞ。剣を外してみよう」


ダミアーノ神父様は、首にかけていた紫色のストールの端を持ち、ペーターさんの体に掛けた。そして、剣の柄をストールごと掴んだ。

「父と子と精霊の御名により、命ず。ペーターより離れろ」


ダミアーノ神父様は、聖水をペーターさんの全身に撒いた。小さな可愛い聖水撒きだ。これが本当のサイズなんだね。ブルーノ様の聖水撒きは、10倍ぐらい大きくて、殆ど武器だもん。


「・・・使徒殿、もう一度、処置をお願いしたい」僕はすぐに唱えた。


ダミアーノ神父様は、先程と同じようにした。 今度は剣が取れた。


周囲から、感嘆の声が漏れた。ペーターさんの奥さんが、名前を呼んだ。

ペーターさんの顔に少しずつだが、赤みが戻ってきているようだ。


ダミアーノ神父様は、紫色のストールで、剣を持ち、祭壇の前に置いてあった金色の箱をあけて中にその剣を入れて、留め金をかけた。

それから、祭壇前に跪いて、神に感謝し、十字架の印をしてから、僕らの方を向いた。


「ふぅ・・・皆さんのお陰で、なんとかなりましたね」ホッとしている感じで、いい笑顔だ。真面目で冷徹なイメージの神父様だけに、そのギャップが凄くあるよ。


「ペーターさんの奥さん、しばらくしたら、ご主人は意識を取り戻すでしょう。そしたら、また、使徒殿に浮遊魔法をお願いして、家に一緒に戻っていいですよ。


・・・ただし、この危険な剣は教皇庁が没収します。代わりに少しですが、お金を支払いますからね。対して出せませんが・・・」


ペーターさんの奥さんはぶるぶると首を振って話す。

「いえいえ。そんな・・・お金なんか要りません。この剣のせいで、身体がおかしくなっちゃうし、バイエルンの仲間とも喧嘩しちゃうし・・・とんだ災難ですから。いい厄介払いです」


「この剣は、魔剣です。使ったものの命を蝕みます。そして、ある程度生気を吸うと、次の段階に成長します。そうなると、剣の使い手は、剣に体を取られ、人でも動物でも、片っ端から連続して殺さないではいられなくなるのです。実に恐ろしい剣で、悪魔が造り、わざと人に拾わせると言われています。

 この剣の危険なところは、最初は、相手を攻撃すると、生命力をすこしずつ使い手に与えます。すると、どんどん倒したくなるのです。しばらくすると、生命力を逆に使い手から吸い出します。ここで、休むことなく生きているものを倒し続けないと、生命力を戻すようになりません。


 止めると吸い出す。倒すと戻す。これを繰り返すことにより、使い手をコントロールし、一定以上の生命力を吸うと、成長して次の段階に至るのです。その時には、使い手は完全に魂と身体を取られ、殺人鬼の完成というわけです。今回は、運が良かったようです」


 おや、神父様、段々と元の冷徹で有能な官僚風の話し方に戻ってきたぞ。でも、さっきの笑顔がこの人の地なんだね。皆それに気づいているようだ。アポロニアさんがじっと横顔を見て、ため息をついている。絶対この二人は過去になにかあったよね・・・子供の勘だ。


「さて、最後にこの箱は、魔を封ずる特別な箱です。決して開けようとはしないでください。あと、本当に少ないのですが、この剣は研究につかいますので、買い取らさせていただきます。


 いや、本当に些少なんで、期待しないでください。帝国で売ればそこそこの値段が付くでしょう。こういうのを欲しがるコレクターがいますからね。でも、市場に出回ることは絶対に避けなければなりません。多くの人が傷つき、死ぬからです。市場に出ないようにするためにも、買い取らさせていただきたいのです。もちろん、買った何十倍のも値段で転売しませんよ・・・たぶん・・・」そういって、またさっきの暖かい笑顔を見せた。


なんか人の心をつかむのが上手いね。神父さまって。


「ダミアーノ神父、どうした? 魔剣だそうだが・・・」枢機卿様が礼拝堂に入ってきた。ブルーノ神父様も一緒だ。

「はい、マーダーヘアシュテラーでした」うわ、殺人鬼メーカーみたいな意味だよ・・・


枢機卿様もブルーノ神父様も、驚愕の表情を浮かべている。

「なんと、剣なのだよな・・・短剣ではないのだな?」枢機卿様が尋ねた。

「はい、片手剣で長剣です。盾を使うものには、いいサイズですね。砦の兵士もよく使っている長さの剣です。第2段階に至る前に取得することができました」

「それで、剣は魔封じ箱に?」

「はい、封緘したばかりです」

「ふぅ・・・持ってきていてよかったな・・・」

「本当ですね。で、買い取り価格はいかがしますか?」

「そうだな、銀貨200枚ぐらいか?」


奥さんが驚いている。そりゃそうだよね。ソーセージ400本は買えるんじゃない?


「ブルーノ神父、研究のために、教皇庁で買い取りたい。砦では必要だろうか?」

枢機卿様が、ブルーノ神父様を見て、訊いた。

「いや、そんな危険なものは、不要です。逆にお持ち帰りいただけますと助かります。オットー卿には、私から話しておきます」

「助かる。実際に実験して、どのような仕組みで動くのか研究したいのだ。悪魔に対抗していかなければならない故、敵の手の内を知ることが肝要なのだ」


実験って、怖くない?やだな・・・重い犯罪を犯して、死罪になるような罪人が、使われちゃうのかな・・・急に、あの奴隷商人を思い出したよ。車輪刑になった人だ。


「さてと、では解散しよう・・・ダミアーノ神父、あとで部屋に戻ったら、顛末を詳しく聞かせてほしい。ブルーノ神父様もお聴きになりたいでしょう?」

「御意。枢機卿様、敵の手口とその対応、このブルーノ、是非、教えて頂きたく存じます」


三人の神父様達は、出ていくと、すぐにペーターさんが目を覚ましたようだ。


「俺は、いったい・・・どうなってたんだ・・・なんか酷い夢を見てたよ・・・」

「あんた、良かったよ・・・。明星亭の女将さんが、カールさん達をうちに寄こしてくれたんだよ。そうじゃなかったら、死んでいたんだよ・・・」そういって奥さんはペーターさんに縋り付いて泣いた。

「俺の剣は?・・・どこにやった」

「馬鹿言ってんじゃないよ。あんな悪魔の剣のせいで、死にそうになったのに・・・」

「・・・悪魔の剣?」


それから一部始終を奥さんは説明した。あの剣は人を殺人鬼に変えるために悪魔が造って、わざと迷宮に置いたものだと。不和と絶望をもたらすものだと・・・いいこと言うよね。その通りだと思う。


「それにさ、あんた、枢機卿様が、銀貨200枚で買い取ってくださるっていうんだよ」

「な、な、なに?200枚だと・・・」


「そうだよ、あんた。あれは世に出てはいけないんだよ・・・」

「わかった。じゃ、また同じの拾うぞ」

「馬鹿!」

奥さんは、本気でペーターさんを殴ってた。しかもグーパンチだ。


ペーターさんは、また気を失ってしまったようだ・・・


僕は、カールさんと目で合図し、また浮遊を掛けた。そして、僕らは、ペーターさんの部屋に戻った。



いかがでしたか?


ここのところ、1日の閲覧数が500を超えたりして、嬉しい、ウィンフリートです。


正直なところ、小説は自分のために書いています。頭の中に生えてくるキノコを収穫するようなものです。私は、拗らせオタクです。でもこういうのが好きな人にも、読んでいただきまして、一緒に拗らせることができれば、幸いです。

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