第67節 ベルンハルト枢機卿、砦に来る。その5
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次の日、カールさん達は、具足の調整のために、朝から砦に呼ばれていた。僕もポーターの仕事よりも、鎧とかに興味があるので、見に行くことにした。
ヘルマンさんの仕事場の前に着くと、昨日のうちに、鎧下に着る綿入れを縫い上げたレオナルドさんが、4人に綿入れを配っていた。名前が刺繍されているんだ・・・へ~。
「さぁさぁ、着てみてください。着終った人から鎖帷子を合わせますよ。綿入れを着て、おかしいところがあったら教えてください。遠慮しないでくださいね。すこしでも変だとか、違和感を感じたら、いってください。これが基本なので、おかしいとすべてがダメになりますから・・・」
「よし、俺が一番だぁ!」アレクシスさんが名乗りを上げていた。普段から着替えだけでなくても、色々と要領がいいから、こういう時も早いんだね。
「じゃ、これを着てみましょう」今日は、レオナルドさんに助手がいる。アレクシスさんが鎖帷子を着るのを手伝っている人は、なんかレオナルドさんに似ている・・・親子かな?
アレクシスさんが鎖帷子を着ると、なんかもっさりして、余り気味だった。
「うーん、すこし詰めたほうがいいですね。まず、着丈はこれぐらいですね。ズボンのほうは、どうかな・・・問題なさそうですね。では次は胸当てを付けてみましょう」
次に鎖帷子をつけているのがコンラートさんだった。なんかパッツンパッツンしている。
「ああ、やはりな・・・これはだめですね。足しましょう。えっと、もう完全に切り開かないとだめです・・・着丈が足りないですね・・・足も長さが足りないか・・・意外と足は細いんですね・・・さて、まずは、鎖帷子を直してからの胸当てなどの試着ですね。今日はこれでおしまいです。クレメンスさんは、もう着なくてもわかります。綿入れがコンラートさんとほぼ同じでしたからね。
次は、カール様ですね。おお、なんかぴったりですね。うーん、平均的なゲルマン戦士体型なのでしょうか・・・直すところは・・・ああ、ここか」
レオナルドさんは、具足を色々持ってきた。肩当に、肘あて、籠手と、それに、脛あてから腿まで一体になっている前だけの靴のような具足、ガチャガチャさせて、次から次へとつけていった。
「おお、いいですね。胸当ては重くないですか?」
「重くないです」
「それは、よかった。うちの最新モデルなんですよ。かつてのノルマン人の強烈な斧の一撃を、腹に食らっても耐えることでしょう」
ピカピカの胴というか胸当てだ。なんか恰好良い。更に強そうに見える。わいわいがやがややっているものだから、非番の兵士達まで出てきて見学している。オットー様達も
出てきて、ジロジロ見ている。横にいて興味津々のレオン様となんか話している。
「レオナルド殿、砦の兵士の分も発注したいのだが、あとで商談頼む」
レオナルドさんは嬉しそうに返事していた。砦の支払いは塩なんだけど、いいのかな・・・
なんかコンラートさん達双子が寂しそうにして、小さくなっていた。カールさんは、その様子に気付いて、レオナルドさんに耳打ちした。レオナルドさんは笑って、わかりましたっていってる。そして、双子に声を掛けた。
「さて、盾のお二人さん、ヘルメットかぶってみますか?」
わかり易いね。とたんにニコニコしてる。
綿入れの帽子を出してきて、鎖帷子のフードを二人にかぶせてあげた。そして、バケツヘルメットを持ってきて二人にかぶせた。
「これは調整しなくてもよさそうですね。意外と頭が小さくてよかったです。それはもうお持ちになっていいですよ。あとでフル装備にして点検するときに、また持ってきてください」
二人は、どこからか、布を出してきて、嬉しそうにヘルメットを磨き始めた。元の持ち主だった、神聖騎士団の人も喜ぶだろうね。大事にしてくれるよ。
「ははは、ああして、おもちゃを与えておけば、あの二人は静かで楽なんだ」カールさんが笑った。
「なるほど、おっしゃった通りでしたな・・・さて、ではカール様、ヘルメットを着用しましょう」
カールさんも、綿入れの帽子の上に鎖帷子を被って、ヘルメットをかぶせてもらった。
「どうだろう」
「お待ちください。いつもの剣を下げてみましょう。おお、いい感じだ。すこし剣を振ってみてください」
「わかった」
カールさんは砦の中庭まで歩いて、剣を振って動きを確認していた。
「バケツヘルメットは、視界が今一ですな・・・他は、今使っているのと比べ、動きやすい。いい感じだ。この籠手はいいなぁ。両手剣を使うのにも腕の具足が邪魔にならない」
「それはよかった」レオナルドさんはニコニコだ。
オットー様達がカールさんを囲んで、色々品評しているようだ。バケツ型のヘルメットは、今でこそ最新鋭のものだが、神聖騎士団が採用していたとは、驚きだったようだ。ただ、最新鋭のものは、もうすこしバケツっぽくないけど、これは、本当にバケツというか、円筒形だよ。
ゲルマン人たちの戦士が、今使っているヘルメットは、一枚の鉄板から叩きだすものだ。これもまた、高度な技術を要するもので、この砦の鍛冶屋ヘルマンの得意とするところだった。まぁ、鍋をつくる過程の中で身に着けた技らしいけど。ヘルマンさんの特技は厚みのコントロールだそうです・・・
そのヘルマンさんは、さっきから着替えを手伝っているふりをしつつ、技術を盗もうと研究しているようだ。目つきが鋭い。レオナルドさんは、横目で見ながらニヤニヤしている。
あれ、剣と剣がぶつかる音がしている。カールさんにオットー様が挑んでいる。うは、すごいすごい。ちょっと怖いです。
「よし、カール、ちょっと胸に一太刀あてさせろ。きっと死なないから大丈夫だ」
「ご勘弁を、オットー様。死ぬのは嫌です」必死でオットー様の剣を凌いでいる。
「じゃ、頭を叩かせろ、ちょとだけでいいから・・・」
「えー、オットー様のちょっとは信じられません」
脳筋の戦闘マニア達の遊びは、スルーしておこう。
なんだか、中庭は、滅茶苦茶になってきた。そんな混沌とした中でも、レオナルドさんと助手さんは黙々と仕事をしているから、見に行こう。
レオナルドさんと、息子さんは、双子用の鎖帷子をペンチみたいので、切り裂いている。
そして、例の大きな箱から袋を出してきた。なんか油臭い袋の中から、小さな輪っかを出して、接続し始めた。結構複雑で面白いや。そうか、鎖帷子ってこうやってちまちま作るものなんだね。ヘルマンさんも観察している。
「ヘルマン殿、修理のためにも、よくご覧になってください」レオナルドさんが声を掛けた。
「は、はい。すこし質問してもいいかい?」
「どうぞどうぞ」
やはり、職人さんは、プライド高いけど、お互いに認めあうと仲良くなるものだね。
お昼休憩になった。クラウディアさんとアポロニアさんがやってきたので、僕はカールさんに声をかけてもらって、食事に皆と一緒に出掛けた。といっても、砦正門のすぐ近くの明星亭だけど。
中に入ると、アーデルハイトが出迎えてくれた。
「今日は魔物猪の骨付き脛肉よ」
明星亭では、メニューなんてない。いつも一種類のみだ。他にスープがつく。あとは飲み物は選べるけど、大人はエールか蜂蜜酒だ。女将さんは、バイエルンの出身らしいので、基本的には、バイエルン料理らしい。
おお、お肉だ。美味しい。魔物猪って、ゴブリンがよく馬にしているやつだよね。味は豚と変わらないと思う。付け合わせにシュペッツェレが付いているけど、これ好きなんだよ。もちもちしてて美味しい。
あ、猫ロッテだ。ととととっと、テーブルの間を通って、聖母様の像の置いてある、棚に飛び乗った。すごいしっぽだね。かなり大きくなっているよ。僕も自分の場所があれば、子猫を引き取れるのだけど。
女性陣がテーブルを立って、猫ロッテのところにいっちゃった。もうデレデレ、もふもふしてる。いいなぁ。でもどうして、猫のような言葉を話しだすんだろう、不思議だにゃん。
食事が終わったら、女将さんがやってきて、テーブルに座って、お茶を皆で飲みながら、カールさん達と世間話を始めた。おまけみたいに僕も座って話を聴いていた。
バイエルンの星傭兵団の一人が、迷宮で、武器を拾ったらしい。ペーターさんという人だ。彼は、その剣を、しばらく使わないでしまっておいたが、愛用の剣が折れたので、最近使いだしてみたところ、どんどん体調が悪くなってしまい、今は寝た切りだそうだ。どうもおかしいので、見に行ってやってほしいとのことだ。
カールさんはお人よしだから、軽く返事をしていた。バイエルンの星では特になにも面倒を見てないのだろうかと聞いたが、その剣のことで一悶着あり、ペーターさんはメンバーと疎遠になっているらしい。バイエルン出身の女将さんとしては、心配らしい。
カールさんは、アポロニアさんと僕についてきてと言った。まぁ、アポロニアさんは、回復魔法とか使うからだろうけど、僕はなんなんだろう。
「カールさん、どうして僕なんですか?お役に立てます?」
「いや、終わったら飯食べたいだろう?付き合えよ」
「わーい、ありがとうございます」
カールさんは、ふふふって笑った。他の皆は、砦に戻って、レオナルドさんの作業を見ることになった。レオナルドさんにすれば、邪魔じゃないのかな・・・
僕が将来商売するなら、レオナルドさんのようなことはできないよ。
難しいね・・・
バイエルンといえば、シャウエッセンですね。私はいったことがないのですが、オクトーバーフェストとか、すごく行きたいです。ビールとソーセージはベストな組み合わせだと思います。次回は、ペーターさんちです。宜しくお願いします。




