第67節 ベルンハルト枢機卿 砦にきたる その3
こんばんは・・・
昨夜は、ぽつんと一軒家と君の名をみてて、アップできませんでした。
ごめんなさい。
レオナルドは、予め採寸がしたいとのことで、場所が欲しいと言った。
カールは、傭兵寮の裏庭を提案した。裏庭は、南城壁と寮の間の狭い庭だ。
オットーは、砦の食堂でもいいと言ってくれたが、突然だったし、軽く測るだけなのでと、レオナルドは遠慮した。試着してサイズを合わせる際は、よろしくお願いしますとのことなので、オットーは折れて、砦に帰っていった。
レオナルドは、裏庭に着くと、おもむろにメジャーを出して、カールを測り出した。
「団長さんは、いい体ですね」
「そうですか?そこの双子には負けますよ」
「いや、仕事柄、沢山の武人の方の体を見ていますが、団長さんの筋肉はいいです。 素晴らしい筋肉ですよ。騎士に成るべくして生まれてきたって感じの身体です」
・・・レオナルドは、話しながらも、次々と数字を木柵に書き付けている。会話をしながら、相手が退屈しないように、また緊張しないようにしているようだ。職人というよりは、商人という感じだ。でも嫌味がないのがいい。
「さぁ、お次は、えっと、槍使いの方、どうぞ」
アレクシスは、槍を持ったままで立っていた。
「おや、槍は必要ないですよ。それとも持っていた方がいいですか?」
「あ、いや、採寸なんてはじめてなので、槍を持って色んなポーズをとるのかと思ったんですよ」
これには、皆んなが笑った。
「あははは、それは一理ありますね。でも、私は職人ですから、ありとあらゆる動きができるように作りますので、ご安心下さい」
「あ、はい。わかりました」
「いや、恐縮です。アレクシスさんは、肩から肩甲骨にかけて、よく発達した筋肉をお持ちですね。成る程、投擲に特化している。うーん、胸もいい筋肉だ。おや、突き刺す時に捻りを入れるみたいですね」
「え、わかりますか?」
「アレクシスさんの右腕の筋肉のつき方で、わかります」
「・・・へー、マエストロ、奥が深いですね。やはりパパ様お気に入りの人っていうのは格が違うっていうのが、よくわかりましたよ」
レオナルドは、アレクシスの言葉に気をよくしたようで、饒舌になっていった。
「いやー、ありがとうございます。パパ様は、ご自身では、鎧など着られないのに、何故か可愛がっていただいております。今回ですが、当時は鎖帷子の上にサーコートを着るだけだったのですが、あのコートは紋章入りですので、新しく皆さんの紋章入りサーコートをおつくりするか、
・・・もしくは、最新の胸当てにするか、どちらかを選んでいただきたく思います。
サーコートは、紋章を入れるのに時間がかかります。胸当ての方が防御力が上がりますし、いくつかサイズを持ってきておりますので、調整すれば、即納できます。サーコート自体は戦闘時の識別用ですから、守備力あがりませんので、また、魔物と戦うので、識別は不要ですし、胸当てをお勧めします。お代はパパ様持ちです」
「皆んなは、どうしたい?」カールが質問した。
アレクシスが、レオナルドに訊いた。
「胸当ては重いのかな?戦斧が当たっても壊れない?矢は貫通しないだろうか。重くて身体のバランスが崩れないなら、胸当てがいいかな」
「そうですね。槍を両手で使う時には、胸当てがあれば、より有利かと思います。明日試着できますので、実際に試してみてはいかがですか?」
「え?そんなに早くできるんですか?」
「ふふ、最初から作るわけではないですから。鎖帷子の下に着る綿入れもサイズ直しできる状態です。鎖帷子は、その上から着てみていただいて、縮めたり伸ばしたりします。チェーンを取ったり足したりするのです。その時に胸当てつけてみて下さい」
「あのー、俺達は、胸当てがいいです」コンラート達だ。
「ふふ、そう、仰ると思っていました。カール様はどうされますか?」
「私も試着させて下さい」
「かしこまりました。さて、では双子のお二人、採寸致します」
「お願いします」また、唱和している。よく息があうものだ。
「いやー、素晴らしい身体ですね。腕力も凄そうです。うーん、これぞゲルマン戦士という身体です。あれ、でかいなぁ、これだと鎖帷子入らないですね」
コンラート達は、顔を曇らせた。
「ああ、大丈夫ですよ。解いて新しいチェーンを編み込みますから、ご心配なく」
二人は胸を撫で下ろしたようでホッとしている。
「さて、終了しました。では、これから砦の鍛冶屋さんのところで作業します。興味のある方は、ご見学もどうそお気軽に。では」
レオナルドさんは、スタスタと中庭を出て行った。
見送った全員は、結局、ついていくということになった。
砦の中庭には、鍛冶屋の小屋がある。職人はヘルマンだ。武器を直したり、鎧を直したりだけでなく、生活日用品も直したりしている。新作を造る時間的余裕はない。そうそう、新しいものを新調する経済的な余裕のあるものは少ない。
勿論、カール達とは顔なじみだ。クラウディアは、矢じりをよく発注しているし、アレクシスもジャベリンの先端を頼んでいる。コンラート達双子もしょっちゅう防具の調整をお願いしている。まぁ、砦に一人しか居ない鍛冶屋だ。知らない人はいない。
ヘルマンは、うろうろとカール達が近寄ってきて、きょろきょろしているので、文句をいった。
「なんだよ、おめえら、なんか落し物でもしたのか?」
「いや~、ヘルマンさん、レオナルドさん来ませんでしたか?」
「なんだ、俺に用はないのかよ・・・まぁ、ローマ帝国一の防具職人ってわけにはいかないけどよ。俺だって、半球ヘルメットぐらいは造れるぞ!」
「いや、ヘルマンさん、今日は綿入れなんだよ・・・」
「なにー、あのちくちく縫うやつか・・・俺は鉄一筋だからな・・・よけいなこと言うな!」
「おいおい、ヘルマンさん、そっちから聞いておいてそれはないよ・・・」
「ザクセン騎士は、ザクセン鍛冶屋の力があって強くなってんだぞ。いわば、俺らは一心同体だ。それだって、生活のために鍋の穴塞いでなければ、もっといい防具だって造れるんだ」
「そうだと思います」いきなりレオナルドが登場した。
「げ、でたな、ローマ一の職人。おれは負けないからな・・・」
「あははは、ヘルマンさんと勝負しようと思いませんよ。まず、私じゃ勝てません」
「なんだよ、それ、バカにしてるんだろう?」
ヘルマンに限ったことじゃないが、ザクセン人は気が短くていけない。
「マエストロ・ヘルマン。私はこの砦に来て、どうしてザクセン戦士が強いのか分かりました。そこには秘密があったのです。ザクセン戦士の強さは、鍛冶屋の腕の良さが支えているとね・・・この双子の装備を見てください。ここまで、手入れされた武具は見たことがありません。心を籠めて、磨きあげ、まるで鏡のような鋼鉄です。錆一つない。たとえば、このヘルメット。曇りの一つもなく、まるで心に曇りがないかのような、立派な決意を感じます。これは、彼らの神具であり、誇りであり、そして死に装束なのです。このゲルマン人独特の半球ヘルメットは、マエストロ・ヘルマンの作品だというではありませんか・・・」
周囲の人たちも、ヘルマンの機嫌が悪くなっては困るので、冷や冷やしながら見ている。
「それがどうしたっていうんだ。あんなもん、小僧だって造れるぞ」
レオナルドは間髪いれず返した。
「あまーい。あなたは、ヘルメットを叩いているときに、厚みや、使う戦士のことをよく考えて打っているでしょう?」
「まぁ、職人とはそんなもんだ」
「あなたのヘルメットは、一番攻撃を受ける部分の厚みが厚い。そして中の綿もそのことをよく考慮していれてある。今回パパ様に言われて、神聖騎士団のバケツヘルムを修理したが、果たして、今使っている半球型ヘルムとくらべ、バケツのほうが劣るのではないかという疑問が否めない。ノルマン人戦士の戦斧を受けたときに、その違いがでるであろう。今となっては比較の使用がないが、私の先祖は、貴方に勝てないのではないかと思う」
「・・・そ、それほどでもないぞ・・・おだてても何もでないぞ・・・」
レオナルドは、急に厳しい顔になった。今までとは別人のようだ。
「ヘルマンさん、私もマエストロです。命をかけて防具を作っているからこそ、見えるのですよ・・・防具に込められたあなたの魂がね。私は口先だけのイタリア人だと思われたらいやですな。私があなたに敬意を払うように、私も貴方に認めてもらいたい。だから、ここで、全身全霊を込めて、防具の調整をします。自分の作ったものではない、防具を、まるで、最初から特別にこちらの戦士たちのために誂えたように、したいのです」
もう誰もなにも言えなかった。
レオナルドは、にこっと笑って、また、元の柔らかい物腰に戻って、へらへらしだした。気さくなラテン人に変身したのだ。
砦の鍛冶やの前に、大きな箱が幾つか置いてあった。レオナルドは箱の一つから白い服を出して、木柵をみながら、裁縫を始めた。
「これは、鎖帷子の下に切る、綿入れです。衝撃を和らげる働きがあります。地肌に直接鎖帷子というのは無理ですよね。というか、今もそうでしょう?
全員がうんうんとうなづいた。
「さて、できましたよ。カールさんきてみてください・・・うん、ちょうどいいみたいですね、では、明日、鎖帷子を合わせましょう。さぁ、本縫いをしますので、仮糸が抜けないように、ゆっくり脱いでくださいね。次は、アレクシスさんのを作りますね。すこしお待ちください・・・」
そんな感じで、全員の仮縫いが終わった。これから、本縫いをするそうなので、今日はこれから部屋で作業するらしい。
「では、晩餐会でお会いしましょう」
レオナルドさんは4人分の綿入れを持って砦の部屋に戻っていった。
レオナルドが去ってから、ヘルマンがボソッといった。
「なんか泣きそうだぜ・・・俺の仕事に価値を見出したやつなんて、今までいなかった・・・はじめて現れたんだが、それが、ローマ帝国一の職人とはな・・・ちくしょう・・・酒だ、酒持ってこい」
カールは思い出していた。確かにヘルマンの仕事は地味だが、どんな仕事でも手を抜いたところは見たことがなかった。そこが抜けた鍋でも、神様に捧げる神具のように大切に直していた。
彼の道もまた、神に近づく道だったのだろう。カールはヘルマンと酒を酌み交わしたいと、はじめて思った。
君の名では、泣いてしまいました。
かなり引きずってしまって、小説書くどころでなくなってしまいました。
明日は、晩餐会です。質素ですけどね。
そして、鎖帷子やそのほかの防具を合わせます。
私も欲しいです。ではでは~




