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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第67節 ベルンハルト枢機卿、砦に来る

現役エクソシストが砦に到着しました。


高位聖職者で、エクソシストは珍しいですよね。

まぁ、現代でも、司教様でエクソシストはいらっしゃいます。


悪魔は今も活躍しているからです。

朝起きて、うろうろしだした頃には、すでにフィリップさんは、砦を去った後だった。シャルロッテ様が、残念そうに、カウンターでアグネス様にそう話している。

「ロッテが、もうすこし早起きさんだと、よかったのにね」

「フィリップも意地悪です。私に声を掛けてくれればいいのに・・・」

「すこしでも寝かせてあげたかったのでしょう?あの人は昔からあなたには甘かったから」

「もう、お姉さまの意地悪」

「あれ、使徒さまじゃない・・・」

アグネスさんは、僕がカウンターの前に立っていることに気づいた。


「アグネスさま、シャルロッテ様、おはようございます」

「おはようございます」二人の声は唱和している。


「ちょっと、すごいよ寝癖・・・」ロッテ様が僕に言った。

「本当ね・・・ちょっと、こっちに来て」


僕がカウンターの内部に入ると、アグネスさんが、櫛を出して、僕の髪を梳いてくれた。

「ずるい。私も梳かしてほしいわ・・・」

「ロッテ、貴方にはアンナがいるでしょう?」

「でも、たまにはお姉さまに梳いて欲しいわ・・・」


シャルロッテ様は、ダダのコネかたが上手い。なんか、可愛いんだよね。お父上の宮宰レオポルト様がメロメロなのが、なんとなくわかるよ。


「はい、今度は向こうを向いてくださいな。そうそう。うわ、こっちはすごい絡まってるわよ。櫛じゃ無理みたいね。ちょっとじっとしててね」

アグネスさんは、手で絡まった髪の毛を解し始めた。

「ふふふ、こうやってみると、ロッテの髪質に近いわね・・・なんでこんなに似てるんでしょう・・・」

「えー、似ていないです。私の髪のほうが、美しく輝いているから」

シャルロッテ様は、いつもこうだ。僕は似てないと思うのだけど、周囲からはよく似てると言われる。鏡持ってないから、自分の顔をまじまじと見たことはないんだけどね。


「はい、終わり。うん、綺麗になったよ。だいぶ伸びたよね」


ゲルマン人は、大人になるまで、髪を切らない風習があった。僕も伸ばしたままだ。でも男の人は、みんな手入れをちゃんとしてないから、汚らしいと思う。僕は縮れてない、ストレートな髪なので、櫛を通すと、女性のように見えるようだ。


「アグネスさま。ありがとうございます。フィリップ様は、帰られたのですね」

「そうです。どうしたの?急に様をつけて・・・アグネスさんでいいのよ」

「だって、使徒様って呼ばれるようになったので、僕もアグネス様にしようかなって」

「そうなの・・・まぁ、任せるわ。そうそう、カール達は、枢機卿様が帝国から来られるということで、朝から準備しているみたいよ」

「そうなんですか・・・僕、することないので、ここに居ていいですか?」

「勿論よ。今夜から、またここの2階に泊まるんでしょう?」

「はい、いつかは、自分の部屋とかベッドとか欲しいです・・・」

「明星亭の裏庭にでも作ったら・・・小屋というか。許可がでれば、城壁にくっ付けて、壁として使うといいかもね。暖炉がないと寒くて寝れないと思うけど・・・」


なんですか、それ。急になんか夢が広がるじゃないですか・・・僕は想像してみた。猫ちゃんとも遊べるし、夜も一緒に居られるな・・・いや、待てよ。暖炉があると、アーデルハイトがきそうだぞ・・・


そういえば、今は納屋に住んでいるが、冬になったら、住めなくなるだろうな・・・ここのあたりは雪も沢山降るし・・・でも考えておかないと、凍死しちゃうよね。今度彼女にあったら、話しておかないと。僕は、鉱山口の壁にもたれながら、考えていた。


-----


ルンハルト枢機卿様がやってきたようです。


オットーは砦の城壁の兵士から報告を受けた。塩街道の北に、枢機卿様の車列と思われるものが見えるらしいと。


ベルンハルト枢機卿様は、馬車に乗ってきたが、実は結界馬車ではないそうだ。この人自身が結界を生み出すので、必要がないそうだ。護衛の騎士が四人、騎馬で付いてきている。


ベルンハルトの乗る馬車は枢機卿とは思えない普通の馬車だった。護衛の騎士が付いていないと商人の行商隊かと思うぐらい質素だった。


ベルンハルトも、やはり貴族の出身であったが、質実剛健で質素な方だそうだ。


かつて教会が腐敗する原因となった、聖職の売買が横行した時期があったが、勿論、大攻勢以来、パタリと無くなった。デーモンの襲う主要なターゲットが聖職者だったからだ。


第二の大攻勢が起これば、帝国が築いた長城も易々と乗り越えられてしまうだろう。その時、一番デーモンに狙われるのが、教会関連施設であり、聖職者だということは、前回の経験から分かっている。


そんな中でワザワザ聖職者になるということがどういうことか、余程の信念が無ければならないし、また勤まらない。まぁ、貴族であるからこそ、騎士か、聖職者しか選択肢がないというのもあるが。実質、司教と世俗領主はそう変わらない。支配下の土地から上がってくる収入で食べているのだから。城塞都市では、公爵様と司教様は兄弟なので、争いはない。悪魔の支配地だからこそ、諍いはまずい。悪魔のつけいる隙になる。


オットーは、砦の門で、枢機卿を出迎えながら、そんなことを考えていた。


実は、ベルンハルト様は、カール達が迷宮で死霊使いを倒した時にドロップした、具足一式を届けにきたのだった。


騎士達が下馬し、馬車を囲み警戒体制を取った。皇帝陛下直属の騎士のようだ。見ていて隙がない。手練れと見た。


馬車の扉があき、ベルンハルト様が降り立った。砦のオットー達は、はじめて会う。そもそも砦にいれば、高位聖職者に会う機会がない。初老の優しそうな雰囲気の人だった。しかし、体格はよく、護衛の騎士達のように、隙が無いさまは、武人のようでもある。オットーは身のこなしから、もともとは騎士となるべく教育を受けたように感じた。


「普段からストーラを掛けているのか?しかも紫色だ。根っからの祓魔師なのだな」

横に立っていたブルーノ神父が呟いた。普通、祭服を着るときのみ、ストーラを身に付けることが多い。枢機卿服の上から首に細く長いストーラをかけているということは、デーモンとの臨戦体制にあるということなのだろう。


紫色のストーラは、エクソシストが使うものだ。デーモンは、このストーラに触れると強烈な痛みを感じるらしい。腰には随分大きな十字架を下げておられる。ロザリオのようだ。杖を手にしており、その先端には十字架がつけられている。


枢機卿の後から、お付きの司祭らしい人も降りてきた。馬車はもう一台あり、そちらからは職人風の男が弟子のような若者を連れて降りてきた。


オットー達、いつもの砦の三人が、枢機卿様御一行に近寄って挨拶する。

「ベルンハルト枢機卿様、ようこそお越し下さいました」


もう一人の聖職者は、ベルンハルト枢機卿が束ねる聖戦担当省の補佐官で、ぺトルス・ダミアーノと名乗った。文官っぽい感じの青年だ。ラテン人だそうだ。

職人風の男もラテン人のようだ。武具職人とその息子とのこと。今回見つかった具足一式を元々製作した工房の親方の子孫にあたるらしい。今回の下げ渡しに際し、具足を修理し、体に合わせて調整するために教皇様のお望みで同行したらしい。


親方はレオナルドというらしい。元々ローマに工房を構えていたが、大攻勢で北に避難した教皇庁とともに、避難したそうだ。


とりあえず、御一行には、砦の貴賓室に入ってもらった。今夜はカール達、空飛ぶザクセン人も一緒に夕食を食べて頂く予定だ。


オットーの執務室に、枢機卿お付きの司祭がやってきた。ダミアーノ神父は、執務室に入るなり、本題に入った。

「オットー卿、ベルンハルト枢機卿が、例の少年に早速お会いしたいとのことです。お取り計らいをお願いしたい」

「今日の夕飯会に参加しますが、すぐにお会いされますか?」

「恐らく人払いをされるようですので、食事の時でない方がよろしいように思います。少年の都合もあるでしょうから、そちらのご都合のよいプランをご提案いただきたく思います」


オットーは、無駄のない、合理的で理知的なこの青年に感心していた。優秀な文官とは、こういうものなのだろう。立場を笠に着たりしない。それでいて、妥協はせず、目的を遂行しようとする。オットーの教皇庁の実務者に対するイメージでは、もっと役人的で融通の利かないような人達だと思っていたが、偏見に気付かされた次第だった。


「直ぐに状況を確認して、交渉してまいりますので、枢機卿にご報告お願いします。

「ありがとうございます。本当に段取り替え申し訳ない。よろしくお願いします」ダミアーノ神父は、部屋に戻っていった。


オットーは、少年を探すために、鉱山口のアグネスのところに向かった。


先程のダミアーノ神父のことを思い出していた。あの人は軍で言えば参謀なのだな。

我々軍人と変わらない。確かに聖戦担当省は、悪魔と戦争しているのだから、役人的には、やっていられないだろう。妙に感心しつつ、橋を渡り、鉱山口の中に入った。


カウンターの中にアグネスが立っていた。


「あら、オットー卿、いかがされましたか?ここまで来られるとは珍しいですね」

「アグネス様、枢機卿様が、使徒殿に直ぐにでもお会いしたいとのことです」

「ふふふ、誰か兵士のお使いでもいいのに、ご自身で来られるなんて、流石ベルンハルト枢機卿のお力ですね。アポロニアが言っていたわ」

「ほう、アポロニアがなんと?」

「軍人頭の誰かさんと、枢機卿様は、似た者同士だから、意気投合しちゃいますよ、絶対って」

「あはは、アポロニアは預言者ですな。あっ、少年はどこに?」

「オットー様は、広い視野をお持ちなのに、残念ですわ」

「えっ」


横に目をやると、少年が熱い眼差しでオットーを見つめていた。オットーはショックを感じていた。何故目に入らなかったのだろう。軍人の観察能力として、これでは終わっている。少し落ち込んだが、直ぐに気をとりなおした。


少年は開店休業中だそうだ。いつもチームを組んでいる、空飛ぶザクセン人達は、夕方のお食事会に備えて、今日は終日休業しているのだそうだ。コーテシーだとか、会話の内容とか、身嗜みとか、どの服を着るかとか、悩んでいるらしい。あいつら・・・こんなことで浮足立つとは、ザクセン人は田舎者と思われるぞ?


「使徒殿、枢機卿様が君にお会いしたいとのことだ。一緒に来てくれないか?」

「はい」


「じゃ、アグネス様、使徒殿を借りていきます」

「あら、どうぞ、お持ちください。煮るなり焼くなり、お好きにどうぞ?」


少年の顔が引きつっている。そんな脅かさなくてもいいと思うが、これが彼女なりの愛情表現なのだろう。確かに少年は、からかいたくなるほどかわいい。特にあの、ぷくぷくほっぺは、つんつんしたくなる・・・


オットーは我に返り、少年を促して砦に戻った。街の真ん中を真っすぐ砦に向かってあるきながら、すこし会話した。


「使徒殿、そんなに緊張しなくても大丈夫だぞ。枢機卿様は怖い人じゃない」

「オットー様、悪者君とか変態君のほうがいいです」

「そういうわけもいくまい。悪者とか呼ばれているとなると、悪魔と関係があるように思われるぞ。火あぶりだ」

「ひー」


びびってる、びびってる。オットーは、なんか使徒殿が好きだ。なんかからかいたくなる。


貴賓室に行くと、枢機卿様は、礼拝堂におられるので、そちらにお願いしますと、ダミアーノ神父に言われた。


礼拝堂は、砦正門を入って直ぐ右側にある。砦自体が建設されている台地の大きさから拡張が難しく、礼拝堂もとってつけたような、小さなものになってしまっていた。教区も置かれていないし、司祭は従軍神父一人なので、個人的な礼拝と、結婚式や、葬式ぐらいにしか利用されない。デーモンの攻撃がなければ、この礼拝堂も拡張工事をしたいのだが・・・できれば、教区として認定していただき、教区司祭を派遣していただきたいのだが・・・ブルーノ神父様と馬が合う人はいるのだろうか・・・


砦の維持は公爵様の裁量だが、教区の設置や教会建築費用は、司教様の許可範囲だ。もちろん予算がないとどうにもできない。


街の参事会も、教会は欲しいようだ。本来は下の丘陵地に村があり、小さな教区と教会が置かれていた。今は見るも無残な残骸が残るのみだ。これを復活する形で、砦に教会と教区をつくるのも手かもしれないな・・・礼拝堂に向かいながら、オットーはそう考えていた。枢機卿様に相談してみるか・・・、

お読みいただきまして、ありがとうございます。


悪魔の活動は、現代のほうがすごいかもしれませんね。皆さんも気を付けてください。

次話は、夜にでもアップできると思います。


こちらの世界のベルンハルトと同一人物です。こちらのベルンハルトは、十字軍戦士でしたが、平行世界のほうでは、十字軍はありませんでした。聖地もどうなっているのかわかりません。イタリアより南は悪魔の支配地ですから・・・

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