第66節 地底湖の異変 その2
骸骨剣士が現れたところです。
カールは生き延びることができるでしょうか。
カールは先制して、両手剣を振り回した。骸骨は剣を受け流したので、その反動を利用して体を回転させ、骸骨に反対側から切りつけた。これを躱すことができず、剣は骸骨の首に当たった。首が跳ね飛ばされて地面に転がった。
バイエルン達も喜んで歓声を上げたが・・・しかし、地面に落ちた首はそのまま空中を飛び、もとの骨の上に納まった。
「げ、まいったな。不死というか、特殊能力持ちだな・・・オットー様のような聖剣が欲しいところだぜ。ま、時間はある。弱点をみつけさせてもらおう」
両手剣使いは、基本的には叩きつける技が多いが、意外と決め技は突き刺しだ。特に首元への突き刺しが一番多いだろう。接近線に持ち込み、押し倒してから突き刺すとか、相手の剣をつかみ、動きを封じて突き刺すなどが多い。お互いに剣を叩きつけるので、刃が欠けないように意外と鋭くない。先端だけを特に細く鋭くしてある。体術との組み合わせが多いのが両手剣のセオリーだが、カールは、相手の体には触れたくなかった。骸骨が気持ち悪いからだ。骸骨は、体術は使おうとせず、ひたすら、剣で叩きつけるだけだった。
だんだん、カールさんの疲れが見えてきた。アポロニアさんが、ニコニコしている。なんか楽しんでいるみたいだけど、大丈夫なの?
「エアスト・ヒルフェ」アポロニアさんが唱えた。カールさんが淡い光に一瞬包まれた。
「使徒様、今のが、自己治癒力を高めるやり方ね。一層、刺されてくれれば、止血魔法使えるんだけどね。残念だわ」
カールさんが、おいおいって言ってる。
「でも、体が楽になったぜ、ダンケシェン、アポロニア」
「うふふ、軽い傷でなくても、疲労もある程度は治せるの。さて、出血しないかしら・・・」
カールさんんが青ざめた・・・
今の呪文というか、魔法?って、聖霊を呼ぶ前文を省略してたよね・・・でも、波動のパターンは感じた。アポロニアさんから出て、確かにカールさんに飛んでいった。
僕は飛んでいく波動をイメージしてみた。うーん、聖なる光が飛んでいくイメージだ。そして、アポロニアさんは、右手を振って、カールさんを指さしていたよね・・・
イメージ練習だけでもしてみよう。えーい。僕は聖なる光が僕の指から飛んでいくイメージで、カールさんを指さした。すると・・・
指先から眩い光の球が飛び出して、カールさんに飛んでいった。カールさんの全身が光り、それは剣の先からつま先まで覆い尽くした。次の瞬間には、カールさんの剣を防いだ骸骨の両手剣は折れてしまった。カールさんはそのまま、また骸骨の首をはね、胴の背骨のところを切り取った。骸骨は、そのまま崩れ落ち、砂になっていく。
「なんなんだ、今のは」
全員が僕を見ている。まだカールさんは光っている。
カールさんは、顎を落としそうなぐらい、口をあんぐりあけていたが、我に返って言った。
「まぁ、なんでもいいが、光っているうちに、他のバイエルン達のところにいこう」
「応!」
全員が走ってついていくが、アポロニアさんは、ゆっくり歩いていくよって、僕とクリスタに言った。そして、アレクシスさんを呼んで、経緯を説明してから、一定の距離を置いて歩いていった。
「前衛が走っても、ぴったりついていかなくてもいいの。罠があることもあるから、私達は、盾もないし、鎧もヘルメットもないでしょう・・・分断されないようにしつつ、自分の身も守らないとね・・・」
そういうと、アポロニアさんは、表情を変えて、訊いてきた。
「ねねねね、話変わるけどさ、さっきの何?はじめてみたよ・・・ていうか、聞いたことない術だよ。どうやって無詠唱できたの?」
「いや、アポロニアさんの波動を真似してイメージして・・・その・・・エアスト・ヒルフェを習ったら、やってみようと、予行演習してみたんです。でも・・・」
「すごいじゃない?もう一回できるかしら・・・さぁ前衛陣に追いつきましょう」
僕らは、急ぎ足でカールさん達を追いかけた。すこし後ろからアレクシスさんが付いてくる。フォーメーションというか、チームワークってこれなんだな・・・すこし学んだよ。
僕らは瓦礫の坂を下って、迷宮内に降りていった。下りたところのすぐ先で、バイエルンの後衛の人たちと合流したカールさん達が、皆でガヤガヤ話していた。バイエルンの人が、僕らが来たのを見て、おお、使徒様だと言った。
そういうの困るんですけど。カールさんはまだうっすらと光っている。バイエルンのアーチャーが、カールさんに触ったら、怪我が治ったと興奮気味だ。
骸骨剣士は、一人だったようだ。この間、死霊術師が出た近くだ。やはり、この辺りは呪われているのかな・・・
傭兵団、バイエルンの星のメンバーは、遠回りルートで、迷宮内に入り、このまま下へと進もうとしていたらしい。
「カール、ちょっと来てくれ」アレクシスさんが呼んでいる。
「どうした?」
「これを見てくれ」
「魔法陣か・・・」
皆が集まってきた。アポロニアさんが、見てすぐに言った。
「すぐに聖水で消さないと、また骸骨がでてくるわよ」
その通りだった。魔法陣は暗い光で明滅すると、目の前に、長剣を胸の前に立てて構えている骸骨剣士が現れてきた。地面から浮かび上がるようにだ。まだ体が光っているカールが、現れてくる骸骨をそのまま輪切りにしていった。骸骨は砂になって崩れていった。そして、アポロニアさんが魔法陣に聖水を掛けて叫んだ。
「みんな煙を吸ったらだめよ。悪魔に身体をとられちゃう」
みんなさっと後ずさりして、口を塞いだ。魔法陣は一部が消えたことにより、機能を停止したようだ。それからは、骸骨剣士が現れることはなかった。
アポロニアは、魔法陣が完全になくなるまで、聖水をかけ続けた。
「これって周囲に人がくると、感知して骸骨を送り込むタイプね・・・みんな、気を付けて、まだあるかもしれないわ。私の聖水はなくなったから、他の人が次はお願いね」
クラウディアが、なにか聞きたげだ。
「ね、アポロニア、煙を吸うとどうして悪魔に身体を取られちゃうの?」
「ああ、それはね。この魔法陣って、分からないけど、暗黒物質でつくられているのよ。この暗黒物質って、地獄とつながる性質があるから、転移門のような働きができるの・・・ということは、暗黒物質を体内に取り込んじゃうと、そこから悪魔が転移していくる可能性があるのよ・・・あなた、まさか吸っちゃったの?」
「まさか?大丈夫よ。そんなヘマはしないわよ」
「ならいいんだけど・・・」
カールが、すこし考えて、皆に言った。
「バイエルンの星がどう思うか分からないが、俺たちは一旦街に引き上げようと思う。まずは、この一件の報告が必要だし。安全性の確認作業の中に、魔法陣の発見と消去がなかったから、すこし鉱山が不安だ」
バイエルンのメンバーは、顔をお互いに見て、帰ろうといった。
僕らは、足元に注意しながら、バイエルンの人たちと、彼らが来た道で帰った。それからは、なんか落とした財布を拾う人達のように、きょろきょろしながらだ。
アポロニアさんは、さっきから、話しかけてくるばかりだ。分からないんですって答えているんだけど。
アポロニアさん的には、恐らく、エアスト・ヒルフェの凄い版じゃないかって言っている。つまり、身体の治癒能力を活性化するのだけど、活性化しすぎて、外に溢れてでてしまう。それが、他の人のキズまで治してしまうし、アンデッドにすれば、死の力を纏った剣で切られるのだからたまったものじゃない。生きている者には生の力が、アンデッドにすれば、死の力に反転してしまう。
やっと、ハインリヒの大広間にたどりついた。皆下ばかり見ていたので、肩が凝ったようだ。そして、鉱山口について、カウンターに退出届を出した時には、もう夕方だった。そのまま、アグネス様を通じて、オットー様に面会を申し込もうとすると、既にオットー様からの招待状が届いていた。
「うわ、どういうことだ。これ・・・」カールは戸惑っていた。メンバー全員に招集が掛かっているのだ。クラウディアさんが、目を輝かして、招待状を覗き込んだ。
「なになに・・・空飛ぶザクセン人のメンバーは、砦に参集されたし。北街道の探索についての打ち合わせを食事とともに行うって?やったー美味しいのが食べられる。クリステもいいでしょう?カール?ポーター足りないんだから・・・」
「まぁ、一緒にいって目立たないように食事していればいいだろう。クリスタは、探索へのポーターとしての参加は、今回はやめたほうがいいと思う・・・危険すぎる。俺たちだって無事に帰れるかどうかわかんないのだからな・・・」
ちょっと、それ怖いんですけど・・・クリスタは危険だからダメだけど、僕は強制参加ですか?
今夜から明日にかけて怒涛の連投をしたいと思っております。
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