第66節 地底湖の異変
また、寝落ちしました。
遅くなりましたが、アップします。
宜しくお願いします。
「ザクセン人の使徒様だ。まぁ、気負うなよ。空飛ぶザクセン人の使徒様だから」
カールさんは、僕の表情を見て、言葉を足した。
「使徒様っていったって、12弟子のことじゃないから安心してくれ。でも、悪者君は、昨日、使徒と同じくらい、いやそれ以上の働きをしてくれたと思う。みんな心が弱っていたから、昨日は助かったよ。また、前を向かって進んでいけそうだ。ということで、これから巡回するんだけど、お弁当付きで、夕ご飯付きで、ポーターどうだい?」
「え?いいんですか?僕が一緒にいくと、魔物が却って出ないですよ」
「今日は狩りをするわけではないんだよ。巡回なんだ。だから出ないほうがいい。どうだい?行くだろう?」
「はい、よろこんで、ご一緒させていただきます。あ、クリステも一緒でいいですか?」
「まぁ、いいけど。お金までは出せないぞ」
「よかった。じゃ呼んできますので、すこし時間ください」
「急いでくれよ」
僕は返事もそこそこに、走り出していた。クリステがお父さんと住んでいる、鉱山家族寮にいくと、クリステが共同玄関に座っていた。
「どうしたの?クリステ?」
「あ、おはよう。これから、何か食べるの探そうと思ってたんだけど、お腹が空いて、なんとなく動けなくて・・・」
「お父さんは何か食べたの?」
「一応、パンがあったから、お水と一緒に食べてもらったの。でも自分のパンがないからね・・・本当、切っても増えるようなパンが欲しいよ・・・」
「はは、それいいね。僕も欲しい。あ、そうそう、鉱山の巡回にカールさん達が一緒にいかないかって。給金はないけど、お弁当と夕飯付だってよ」
「いいお話だけど、私がいっていいの?お情けで呼んでもらって嬉しいけど、足でまといじゃないのかな・・・」
「お弁当持ちすれば、いいんじゃない?僕と荷物を半分こにしよう。鉱山口でまってるから」
「う、うん。ごめんね、いつも・・・じゃ、お隣のおばさんにちょっと言ってくる」
鉱山口に戻ると、アポロニアさんは、まだ、聖水を配っていた。カールさんが、アポロニアさんの準備が終わったら、巡回に出ようって言っている。待っているうちにクリスタがやってきた。砦から兵士が包を持ってやってきた。お昼のお弁当のようだ。結構大きい荷物だ。僕は近寄って、浮遊を掛けた。荷物が急に軽くなったので、兵士さんが驚いていた。なんだ、最初から来てもらえばよかったなぁって言って、カールさんに挨拶して帰っていった。お弁当はぷかぷか浮いている。これに大き目な布をかけて、自分の体に縛ると、まるで、背負っているように見えるんだ。荷物を二つに分けて、クリスタに小さめのほうを背負わせた。
「浮遊が切れると急に重くなるから注意してね。ま、切れないようにかけなおすけどね」
もう一つのお弁当の包みを、今度は僕が背負うと、ちょうどアポロニアさんがやってきた。
「お待たせ~。あ、クリスタちゃんもいくのね。そうだ、さっき、鉱夫のおじさんに、おやつパンをもらったんだ。あげるね」
「ありがとうございます」
アポロニアさん、ナイス! さすが聖職者だね。人の痛みというか、そういうのが分かるのって、聖職者にとって大事だと思う。貴族出身の聖職者だと、そこらが最初のハードルだろうなぁ・・・なんて偉そうなことを考えていたら、アポロニアさんが僕の方に向き直って話しかけてきた。
「我らの使徒様、昨日は美しい歌、ありがとう。今日、歩きながら回復系の練習しようね。それと、はい、これあげる。昨日食べてないんでしょ?」
「う、ありがとうございます」僕は、おやつパンをもらった。嬉しかった。
「さてと、出発するから、クリスタも使徒様もパン食べちゃって・・・」カールさんが言った。なんだか気を使ってもらって嬉しい。クリスタも、僕が昨日から食べてないことに気づいていたようで、自分がもらったパンを食べないでいた。僕らは目で合図して、食べ始めた。全部食べないで、すこし残しておこうかな・・・
さて、アグネスさんのカウンターに届け出を済まして、さあ 行きましょう。シャルロッテ様が、なんか言いたげに僕のことを見つめている。僕は、目礼をして、カールさんの後ろについていった。まずは、ハインリヒの大広間まで歩いた。なんかまだ臭い。
今日は、ここから最短距離で、迷宮まで行き、軽く迷宮を巡回してから、戻ることになっている。いわゆる地底湖コースだ。以前、カールさん達がドロップした品物を運ぶのに、僕が手伝った時のコースだね。そろそろ地底湖だったはずだ。
坑道を抜けると、大きな湖がある筈だった・・・
僕らは目を疑った。湖がない。そこにあった桟橋はある。舟が2艘、あるのだが、ロープで繋がれたまま、だらしなくぶら下がって、湖の底だったところに、半分横たわっているのが見えた。そうか、水が無くなっているんだ。
「これ、どういうことだい?」アレクシスさんが、カールさんの顔を見て呟いた。
「いや、わからん。ともかく、船で行けなくなったので、岸辺に沿って歩いていこう」
カールさん達は、歩きながら相談を始めた。
「アレクシスは、この湖の奥がどうなっているか、聴いたことがあるろう?」
「ああ、崖になっていって、そのまま溢れた水は地獄の底まで落ちていくんだろう?」
「見たことはあるのか?」
「はははは、見ることができたら、今頃地獄の底で生活しているだろうって・・・骸骨にでもなってね・・・」
皆笑っていたが、不安を押し消すためでもあった。
「昔、俺の親父の生きていたころだが、調べた学者がいたんだよ。落ちないように、すごく長いロープを伸ばして、伸ばして、滝の直上まで行くことができたらしい。ここの湖は、スープボウルを傾けたような構造らしい。そして、その片側が、数十メートルにわたって地下へ向かって口を開いているとか。落ちる水の量というのは、その日に地底湖にそそがれる地下水だとか雨水の量だろうということになった」
「へー、そうなんだ。その注がれる水ってどこからなんだろうね?」
「そこまでは発見できなかったらしい。学者は、恐らく、地底湖の底に湧水なり、吹き出し口があるのではないだろうかって言ってたそうだ」
「あ、この石、見覚えあるよ・・・」クラウディアさんが、人がしゃがんでいるような形の石を差していった。
「そうだな、岸辺にあった石だろう。この石より左側を歩こう」カールさんが応えた。
「つまり、岸辺の方ってことね・・・使徒様が歩いているところは、もと水底だよ」
僕は、びくっとして、左側に2歩横ステップした。
「あははは、なんか可愛いね。使徒様、びびりだ」
クラウディアさんにつられて皆笑った。
「まぁ、もと水底だから、歩かないほうがいいかもな。でも、結構乾いているから、水がなくなったのは、ついさっきというわけではないな・・・」カールさんが言った。
「カール、ということは、水が減りだしたのは・・・」アレクシスさんが訊いた。
「うむ。恐らくスタンピードの日からではないだろうか・・・だから5日前だよな」
皆、何で水がなくなったのだろうかと、想像しているようだ。カールさんが、呟いた。
「魔法陣を描いた暗黒魔道師って、ここの水底から来たのかもな・・・その吹き出し口の穴をせき止めてきたとかも・・・ということは半漁人魔道師だったりして・・・」
皆想像している、僕もだ。水かきの付いた足で、ぺったら、ぺったら、歩いて、ハインリヒの大広間までいって、水かきの付いた手で、魔法陣を描いているところだ・・・
なんかあり得ないんじゃない?目立ちすぎるよ。
とりあえず、先に進もうということで、僕らは、どんどん歩いていった。
反対側の桟橋が見えてきた。石がゴロゴロしてきたので、こけそうだ。クリスタが踏んだ石がごろって動いたので、転びそうになったが、背中の荷物が浮いているので、転ばないで済んだ。結構使えるね。この魔法、いいじゃん。
鍾乳洞エリアに入った。もうここから少し行くだけで、迷宮だ。迷宮に入る前に、お昼ご飯にしようということになった。
やったー。ごはん、ごはん、ごはんだぁ~僕はクリスタと僕の荷物を背中ら降ろして、ぷかぷかしているところを、双子にもってもらって、呪文を解除した。鍾乳洞の広くなっているところで、ピクニックみたいな感じだ。
皆でご飯を食べるのって楽しいよね・・・スモークしたお肉をカールさんがスライスして配ってくれる。皮袋の水を飲みながら、パンにお肉を挟んで食べた。クリスタも食べている。しっかり、お父さんの分も持って帰ろうと、食べた振りして隠したので、お替りをもらってあげた。僕も2個目をもらった。大人たちは皮袋に入ったワインを飲んでいる。
迷宮の方から金属音がした。カールさん達が立ち上がって武器を構えた。
「注意しろ、先で戦闘があったようだ。盾は防衛ラインを作ってブロックできる場所を作ってくれ。アポロニア、祝福を頼む。クラウディア矢をつがえて待機。アレクシス、退却できそうか確認してくれ。使徒様達は、お弁当を仕舞ってくれ」
迷宮のほうから、バイエルンのメンバーが後ろ向きで歩いてきている。
「どうした?バイエルン」
「おう、ザクセンのカールじゃないか。地獄で天使にあったような気がするぜ」
バイエルンの一人が言った。
「迷宮に、骸骨がいる。両手剣つかいの骸骨だ。動きが鈍いから剣は避けられるが、差しても叩いてもだめだ。突然現れたので、パーティが前後に分かれてしまった。この先、どんなのが湧いているかわからん。湧いたのは今のところ1匹だ」
最初に逃げてきた人が、カールさんに言った。
「ザクセンのカール、悪いが加勢してくれないか。分断された残りの連中は、後衛なんだ」
「わかった。皆いいな?」
皆、頷いたところに、アレクシスさんが帰ってきた。
「カール、地底湖まではクリアだ」
「ありがとう。先でバイエルンのメンバーの中に骸骨剣士が湧いて、パーティが前後に分断されたらしい。救援に行く。アレクシスは後方を警戒しつつ、ポーターの二人ときてくれ。クラウディア、骸骨に弓は効かないかもしれん。矢を温存してくれ」
「カール、来たぞ」バイエルンの一人が叫んだ。
骸骨剣士が歩いてくる。両手剣を前に構えている。
「こいつ、どんな太刀筋だった?」カールがバイエルン達に訊いた。
「至極まっとうな太刀だな。教科書のようだぜ。スピードがないので、動きが読めるが、意外と力がある。あと、ターンを使って裏から切りつける切り方はしてこないようだ。まぁフェイントかもしれないが・・・体が骸骨なだけに、動きに制限があるようだ」
「ダンケシェン。ちょっと戦ってみたくなったぜ。バイエルンの二人は、うちの盾職の後ろに控えてくれ」
「カール、骨は拾ってやるから、骸骨剣士になるなよ」バイエルンの一人がふざけた。
「はははは、俺だったらワイトになるから、覚悟しとけよ」
「おおお、上等だ。任せた」
骸骨剣士の黒い眼窩のそこには赤い光が怪しげに光っている。
カールさんは、盾を背中の後ろに回し、剣を腰に戻し、背中に斜めにさしていた、両手剣を抜いた。
さて、苦手な戦闘シーンが始まりますよ・・・次回ですけどね。
また宜しくお願いします。




