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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第46節 アグネスさんとランチ

アグネスさんがお昼に誘ってくれました。

手作りお弁当かも・・・悪者君はわくわくしていますよ。

 それから、フォイアー、フォイエル、イグニスと、かわりばんこに連続して練習したがどれもダメだった。僕は炎の魔法、相性が悪いのかもね。ずっと手を伸ばして手のひらから出そうとしているんだけど、腕が疲れてプルプルしてきた。


 「フォイエル!」

 「出ないの・・・ちょっと、エルを巻き舌にして」

 「フォイエ~る・・・あっ」ちょっとだけなんか出たぞ!

 「出たのぅ。巻き舌が発動タイミングをつくるのかもなぁ。引き続き鍛錬じゃ」

 「はい、フォイエ~るるるるる」僕は巻き舌を可能な限り長くやってみた。


 なんだか1センチぐらいの火が、短く連続で、ぼ、ぼ、ぼ、ぼって感じで情けなく出ただけだった。


 「なんか、10センチぐらいの赤ちゃん火竜のブレスみたいじゃのぅ・・・今日はもうおしまいにしよう」

 「ありがとうございました」


ぐったりのがっかりだよ。才能ないのかなぁ・・・落ち込んでいたら、


 「えっと、わし、ちょっと用があるから、おぬし、一人で帰ってくれ。これ使うのじゃ」

そういっておじいちゃんは、ぶつぶつ言って、なんと僕のすぐ1メートルぐらいのところに、白く輝く転移門を出した。


 「修道士様、これは?」

 「転移門じゃよ。大丈夫じゃ、アグネスのところにいけるから。門の上を見てみるのじゃ」よくみると、転移門の上に下手な字で「あぐねす」って書いてある・・・

 「ほら、急がないと消えてしまうぞ・・・」

 「は、はい」僕は目の前にできた転移門に進んで、目を閉じて歩いてはいった。


 転移門に入ったと思ったら、もう鉱山口にいた。ここは吊り鉄格子の前だな・・・振り返ると転移門は小さくなって消えようとしていた。

 「悪者くん?」アグネスさんの声だ。声の方向、右をみると、カウンターの中から、アグネスさんがこちらを見てる。驚いた顔をしているけど、美しいなぁ・・・


 「びっくりしたわ、悪者君、いったいどうしたの?今の・・・」

 「あ、転移門ですか?修道士様が地底湖から一人で帰るのじゃって、出してくださったんですよ。一瞬でここに出たので驚きました。でも便利ですね」

 「転移門なのね・・・はじめて見たわ・・・すごい・・・ウィンフリート様は本物の賢者様だったのね・・・」

 「賢者様ですか・・・確かにそんな感じですね」

 「そういえば、地底湖でなにしてたの?」

 「魔法を教わっていたんですよ」

 「ね、ね。なにか見せて。習ったやつ」


 アグネスさんの瞳がきらきら輝いている。これは格好いいとこ見せないとな・・・でも、ちゃんとした、いかにも魔法っぽいのて、できなかったんだよ・・・


 「えっと、リヒトとブリッツシュラーグを習いました。あとフォイアーを練習したんですけど、ダメでした・・・だから、お見せできるのって無いんです」

 「あら、あなたも炎系苦手なの?やっぱり私達、似てるのかもね」


 ちょっと、すごく嬉しいこといってくれるじゃないですか。今の言葉、何回も繰り返し聴きたいです・・・って言えないよ。アグネスさん、炎系魔法との相性が悪いのか。それでさっき複雑な表情だったのか・・・その時、砦の鐘が鳴らされた。


 「あら、お昼ね。私ね、お弁当作ってきたんだ。でも作りすぎちゃったの。よかったら一緒に食べない?」


 うはぁ~なんだか今日はすごいラッキーだよ。神に感謝!


 「いただきます」即答しました。

 「うふふ、気が早いわね・・・ちょっとお昼の当番さんが来るまで待っててね」


 少し待つと砦の兵士さんが一人やってきた。お昼の間は代わりにカウンター番をしてくれるらしい。アグネスさんの提案で、鉱山街の城壁の上で食べようって話になった。


 「眺めがいいところがあるのよ」鉱山口を出て、橋を渡り、鉱山街に入ると、すぐ右側の家の玄関をアグネスさんは開けたが、石畳みの廊下が続いていた。その先に同じようなドアがある。どちらのドアにも小さな鉄格子の嵌った窓があるので、中は暗いけど、歩ける明るさだ。反対側のドアをあけると、正面に城壁が見える。奥行が5メートルぐらいしかない細長い中庭だ。城壁の一部が厚くなっていて、そこに階段があった。階段には手すりがない。上がったところだけ踊り場として広くなっていた。城壁の内側にも壁がない。これは、敵が城壁を超えたとき、並んで建っている鉱山街側の建物から矢を射かけるためだと、アグネスさんは言った。だから中庭もすぐには敵が建物に侵入できないようになっている。


 ところどころに建物と城壁をつなぐ橋があるが、緊急時には落とされるらしい。この街の警備の難しさは、外からの攻撃だけではなく、鉱山口からの魔物の侵入にも対処しなければならないことだと言っていた。


 階段を上ると、一気に視界が開けた。


 この街は小高い丘の上に築かれている。城壁は200メートルぐらい続き、砦の城壁に連なっている。砦の城壁はもっと高いので、街の城壁からは城には登れないらしいが、スタンピードの時には、縄梯子が下されると聴いた。


 「ここが一番眺めがいいのよ。ここに座ってたべましょう?」


城壁の上には、木製の物見やぐらが作られていた。その足に補強のために横木が渡されているが、そこはちょうどいいベンチのようになっている。そこにアグネスさんは座り、バスケットを開いた。自分の隣の板をポンポンと叩いている。ここに座っててことね。よいしょっと。あれ、ちょっと、僕、足が届かないよ。

バスケットからアグネスさんがお皿を2枚取り出した。ザワークラウトの上に、蒸したソーセージと厚く切ったベーコンが乗ってる。

「はいどうぞ。遠慮しないですべて食べていいのよ」

僕はお皿を受け取り、ナイフを借りて食べた。美味しい。朝からおじいちゃんに振り回されて散々だったからな。すごくお腹が空いてる。


「あら、もう食べちゃったの?パンもあるのに・・・私の分もあげようか?」

「いや、パンだけで食べます。ありがとうございます」


アグネスさんは、丸い硬い皮のパンを渡してくれた。これって、下の街でアーデルハイトがくれた歯が折れそうなパンじゃないの?


僕は警戒しながらひと齧り・・・あれ柔らかくて、しかも、おいしい。僕が、ハムハムしながら食べていると、僕の横顔をアグネスさんが見ている。照れるなぁ。

「悪者君って、なんか可愛い・・・とくに、食べている時のほっぺ。つんつんしたくなるわ。シャルロッテに負けないわね・・・」え、僕、動物ですか・・・

「僕、猫じゃありません」といってぷうっと頬を膨らますと、可愛いって・・・


「ふふふ、シャルロッテって、この間話してた、私の妹の本当の名前なのよ。ちびっこってさ、すぐに大きくなって、顔が細長くなっちゃうじゃない・・・妹のぷくぷくほっぺ、つんつんしたいけど、残念ね・・・」

「ああ、なんか僕が似てるので、スカートを履かせてみようとか言ってた時の・・・」

「そうそう、もうずっと会ってないの。会いたいわ・・・」


寂しそうに前を向いたアグネスさんが、可哀想になった。僕は、なにかしてあげたいと思って、僕、スカート履きますって言いそうに・・・なんとか踏みとどまった。やばいやばい・・・砦中の笑いものだけは嫌だ。そうでなくても砦の人みんなに悪者君と言われているのだ。スカート履いたら変態君の名前もつきそうだ。


アグネスさんは景色を楽しむことにしたようだ。寂しい感じがなくなった。


本当にいい眺めだ。右側に高い険しい山。これが鉱山の山だ。ここの頂上でおじいちゃん修行しているんだね・・・左にも高い山がある。ここに来るときはシート被ってて景色みてなかったな。山と山に挟まれた丘陵地は、軽い凹凸を繰り返しながら緑の絨毯に覆われている。その中を一本の道が通っていて、灰色っぽい色がいい感じ。時間がゆっくり流れている。でも、ここは、悪魔の支配地の中の、人間たちの最後の砦の一つなんだよね。


「あれ、なにか動いたわ・・・気のせいかしら」アグネスさんが警戒モードに入ったようだ。お弁当をさっと手早く片付けた。あ、この美味しい料理ってアグネスさんが作ったのかな。貴族の娘だから自分で作ってないよね・・・聴こうと思ってたんだ・・・でも、そんな隙がないや。


城壁から少し離れたところにまばらな森があって、アグネスさんが何かを見かけたようだ。兵士さんを呼んでいる。こんなに長い城壁で挟間も沢山あるのに、警備している人は4人しかいない。兵士の数は足りないのだろう。兵士の一人がやってきて、アグネスさんと話している。兵士は緊張気味で、なんか恐縮しているね・・・やはりアグネスさんの身分が高いからなんだろうな。僕、すごく気安くさせてもらっているけど、いいのかな。


砦の鐘が鳴らされたので、鉱山口へ戻ることになった。鐘はハンマーでたたくタイプで、兵士が叩いているんだって。そうか、教会ないんだもんね。砦だからかな。


帰りながらアグネスさんがさっきの兵士さんから聴いた話を教えてくれた。最近、城壁のすぐ下で、ゴブリンのような死体が見つかったらしい。何者かに食い荒らされていたようだ。危険なので回収とか検分はできなかった。以前から、魔物を狩る魔物か、野生動物がいるらしいとは言われていた。悪魔の支配地では、魔物が出るようになったが、野生動物も生き残っているようで、更に激しい弱肉強食の世界になったとか。結界馬車の御者さんの情報によると、狼の群れは時々見かけるらしい。結界は魔物むけなので、むしろ狼のほうが脅威になりうる。しかし、狼が襲ってくることはないとか。おそらく、魔物がいる分だけ餌は豊富なのかもしれない。あと、大ヤマネコも時々みかけるらしい。いつだか馬車の上に乗ってきて、しばらく香箱すわりをしていたことがあったとか。砦が近づく前に逃げたらしい。


カウンターに戻ると、また例の看板を借りて、横に置いてお客を待ったけど。結局夕方まで誰もこなかった。魔法書の内容は読んでも全然頭にはいってこなかった。アグネスさんが、夕ご飯の心配をしてくれたけど、まだ待ちますといって、看板を借りたままで、アグネスさんが帰るのを見送った。


「そうは言ったものの、やっぱり甘えた方がよかったかな・・・」


結局、ほとんどの鉱夫さんたちが引き揚げ、傭兵さんからの声もかかることもなく、晩の鐘が鳴り、終には終課となってしまった。空腹がつらいけど・・・


仕方ない、上に上がって寝よう・・・僕はカウンターの内側にいって、看板が置いてある棚に看板をもどそうとした。そこには石板に文字が書いてあり、そのよこに包みが置いてあった。石板には、ほっぺ君、無理しちゃダメよ。包みの中のもの食べていいよと書いてあった。包みを開けてみると、丸い、柔らかいパンが二つとチーズが入ってた。


僕は不覚にも泣いてしまった。石板にお礼を書いて、包みをもって上の階に上がった。僕はパンを一つと、チーズを半分食べてから、藁布団を引っ張りだして、横になった。その夜の野宿部屋は僕一人だった。月の明るい夜だった。夜中にどこかで狼が遠吠えしているような気がした。夢だったかもしれない。独りで生きていくには、僕は弱すぎることに気づいていた。でも、僕はまだ6才なんだ。




お読みいただきありがとうございます。


現代ドイツ語口語では、炎は、フォイアーのようですよ。


日付変更線あたりで、アップできればと思っています。

宜しくお願いします。

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