第44節 アグネスの魔法教室
第40節に続くお話です。
魔法の穴についての、アグネス先生の魔法教室ですよ。
僕は、没頭していた。文字通り本の中にどっぷりと。
パラパラと魔法書をめくっていると、最初のほうは、補助的な魔法が多い。僕は魔法書と呼んでいるが、実際は博物書の一部だそうだ。アグネスさんは初級魔法入門書って言っていたが、ページが進むにつれて凄い魔法が出てくる。
これはフォイエル(ファイアー)だな。凄いぞ。なになに、体内の魔力を魔法の穴より放出する際に、炎に変換して噴出する魔法。火竜は、この魔法を生まれつき使える。
あれ、また魔法の穴だ。これは体のどこなのだろう。そうか、修道士おじいちゃんに聴こう。
「修道士さま?」おじいちゃんは、さっきまでそこに座って狭間から下を見てたのに・・・僕も挟間から覗いてみると、アポロニアさん達もいなかった。
「修道士さま・・・ルクス!」僕は、明りの魔法を唱えて、狭間のある坑道の先に歩いていった。しばらく行くと、この前僕が穿って開通させたところだが、既に石で塞がれていた。なんか悪いことしたなと思った。おじいちゃん、この先には行ってないのか・・・
仕方がないので、戻ることにした。また受付カウンターのところにいった。アグネスさんがいる。そうか、アグネスさんに、魔法の穴について聴いてみよう。僕が近づくと、アグネスさんがすぐに気づいて、ニコニコと視線を送ってくれる。
「アグネスさん、教えてほしいことがあるのですけど、今いいですか?」
「はい、どうぞ?」う~、やはり天使だよ・・・背中に羽生えているよ、きっと。
「あの~、例の本に書いてあったのですが、魔法の穴って体のどこにあるんでしょうか?」
「ああ、あれね・・・わかりにくいよね・・・私もね。子供の頃、分からなくてさがしっちゃったわ」
へー、アグネスさんでも分からないことがあったんだ・・・それからはアグネス先生の授業だった。まずは、高貴な血と呼ばれている魔法の源についてだ。血の中に流れている魔法の源から、魔力を練りださないといけないらしい。誰の血でも魔力があるらしい。ただ、それを力として返還できるかどうかは個人の能力や修行によるらしい。
火竜のことが本に例として出されているが、火竜の場合は、血液から肺へ魔力を送り、口から出すときに炎に変換しているとのこと。それが生まれた時からできるというのがすごいよね。
炎としてイメージされた魔力が、体外に出て外気に触れるだけでその魔力が炎に変化するので、それを息に載せて送り出すだけだそうだ。だから逆流すると魔力に戻るので消火されるらしい。それを吸収し、また血に戻すことも高度な魔法であるとか・・・うは・・・それって吸血鬼?
人間の場合も、口から出すのが一番簡単らしい。でも、人間の肺は、息の力で遠くに飛ばせないから、手のひらから魔力を放出して、あとは魔力を飛ばす力のコントロールを手で同時に行うのだって。口から出すのが簡単って、僕、信じられないよ。唇が火傷したりとか嫌だなぁ。
僕は、おじいちゃんが、鼻から炎を出すのを想像してニヤニヤしてしまった。おじいちゃんの鼻毛燃えちゃうよね・・・アグネスさんに、変なこと想像してるでしょって、ホッペをつんつんされた。
穴とは、人体の穴であれば、毛穴でも魔力が放出できるらしいけど。出しにくいところと出しやすいところがあるとか。でも、実際のところ、純然たる力なので、穴でなくても、どこからも出せるらしい。でも、イメージしにくい場所からは困難だって・・・やばい、今鼻から火を出すのをイメージしたということは・・・おお、ショック、僕の初フォイエルは鼻からだ・・・
僕は、さっきの「鼻からフォイエル」イメージを打ち消そうと躍起になっていた。
なんか消えたような・・・消えてないような・・・思い出さないようにしないと・・・
「悪者君、大丈夫?目が寄り目になっているよ・・・火竜は、火しか出せないけど、人間なら、訓練次第で色々な魔法が使えるようになるのよ。でも、向き不向きとかあって、氷が得意な人は得意ところを伸ばしたほうがいいの。
出来ないことや苦手なところを伸ばそうとすると無理があるわ・・・」
アグネスさん、なんか自分に言い聞かせてない?僕は寄り目かもだけど、アグネスさんは遠い目になっているよ・・・
「ありがとうございます。勉強になりました。アグネスさん、僕は何の魔法が向いているのでしょう?調べることはできますか?」
「うふふ、そう来ると思ったわ・・・試練の洞窟っていうところがあるのよ」
きた。きたよ、これ・・・いかにも下手な文章書きが設定しそうなベタな話ではないですか? 僕は期待して、次の言葉を待った。
「でもなぁ・・・教えちゃうと悪者君、すぐに行きそうだから、だめー!」
「そ、そ、そんなぁ・・・」ニヤニヤしながら言わないでくださいよ。アグネスさんは急に真顔になって言った。
「でもね・・・危険なのよ。死んじゃう人が多いのよ・・・でもうまくいけば、新しい属性の魔法を覚えたり、ひと皮むける人が多いわ」
ちょっと、脅かさないでくださいよ・・・
僕が、残念そうな顔をしていたら、アグネスさんが少し考えてから言った。
「今度、行く人がいたら、一緒に連れていってもらえるかもね。オットー様に話してみるわ。でも、期待しないでね。あら、修道士様だわ。悪者君呼ばれているみたいよ」
振返ると、左の小さい鉄格子ドアの陰から、おじいちゃんが覗いて手招きしている。僕はアグネスさんにお礼をいって吊鉄格子の下から左のほうへ回り込んだ。
「もう、どこ行ってたんですかぁ?探したんですよ」
おじいちゃんは、きょろきょろしながら、シーっと唇に手をあてて、「アポロニア君はおらんか?」
居ないですよ。どこにいったかは存じませんと答えると、ホッとしたようで、おじいちゃんは陰から出てきた。どうして苦手なんだろう。不思議な人だな。
「さて、訓練の続きをするぞ。準備はよいな?」
「はい、いつでもオッケーです。修道士様、何を教えてくださるのですか」
「うむ、そうじゃのぅ。まぁ、付いてくるがよい」というとスタスタと歩き出し、呪文を唱えた。「リヒト!デン ガンツェン ターグ!」おじいちゃんは、振り返って言った。
「ライトが消えて困るなら、こういえば一日持つからの・・・。魔法は要領じゃよ」
なるほど、一日中明りか。覚えておこう。
おじいちゃんは、どんどん歩いて下っていく。ハインリヒの大広間に出た。
「ここ、広いじゃろ?でも、全部岩塩を掘り出して広く高くなったのじゃよ」
へー、そうなのか・・・すごい量を掘ったんだね。
「かなり塩に近い岩石だったからのぅ・・・それに大攻勢の前じゃったから、結構あっという間に掘り出してしまったそうじゃ」
昔は、ドワーフ達が掘り、ガリアと呼ばれていた頃から数えても1,000年ぐらいだ。それだけ掘ればなくなるのだろう。現在はもっと深いところで掘っているらしい。この前塩の柱が沢山あったところは加工場らしい。水に塩を溶かして運び、再結晶させて、きれいな形に整えるんだって・・・
「ちょうどハインリヒの大広間の床自体が、岩塩でない大きな石の固まりなのじゃよ。だから、ここはこれ以上掘れない。そこで中継基地みたいにしたんじゃな。
人族の前は、ドワーフ達が掘っておって、地下に迷宮のような国を造りこんでいたのじゃ。そういえば、おぬしも行ったことがあったのぅ・・・時々鍾乳洞みたいなところがあるが、あれが、一番古い洞窟じゃ。あまり残っていないがの・・・」
「ドワーフさん達は、今はもういないのですか?」
「種族としては滅んだと聞いておる。ただ、一部は人間と交わり、人間の一部になったそうじゃ。時々先祖帰りする人間がおるじゃろう?」
僕には先祖帰りした人は思い出せないけどね。おじいちゃんは、また歩き出した。あれ、この坑道は来たことがある。地底湖にいく道だ。
「修道士様、もしかして、地底湖に行くんですか?」
「おお、そうじゃ。ちょっと炎の練習するのでな、坑道も穴を支えているのが木材だから、火は危険なのじゃよ。でも地底湖あたりは天然の洞窟だから燃えないんじゃ」
「あと、気づいておるか?」おじいちゃんが眉を片方だけグイっと上げて聴いてくる。
「え、何のことですか?」
すると、おじいちゃんは、ニヤとしてから正面を見て言った。
「おぬしが地下にもぐっても魔物が現れんじゃろう?」
「ああ、そうですね。すごく幸運なんだと思います」
「はははは、おぬしは目出度いのぅ」おじいちゃんが大声で笑うので洞窟内でこだました。
「修道士さま・・・大声を出したら、魔物を呼び寄せませんか?」
「いやいや、気づいとらんかったか・・・おぬしの聖なる波動が、魔物を寄せ付けぬということを」
なんのことだろう。僕が波動を出しているって?いつかアグネスさんがロタールさんに対して出したような冷たい雰囲気のようなものかな・・・僕が出しているって?なんか臭い匂いみたいなものだったりして・・・最近体洗ってないからな・・・
「さて、じゃ、始めようかの?聖なる波動を一旦解除するので、覚悟するのじゃ!」
「アブレヒェン ハイリゲ ヴェル」(聖波動 解除)
うわ・・・地底湖が波立ったと思ったら、沢山の赤い目が水面にどんどん集まってきた。左右の岸にもちらほらと魔物らしき影が出てきた。凄い数だ。これはやばいんじゃないの?
お読みいただきましてありがとうございました。
アグネスさんのモデルは、顔だけですけど、若い時のダイアン・クルーガーさんです。
どいつう~という感じの美女ですよ。
私、よく似てるって言われてるんです・・・嘘です。今、激しく悲しくなりました・・・
もしも私がダイアンにソックリだったら、本も読まないし、小説も書かないでしょうね。
明日は私事で申し訳ありませんが、ライブにいきますので、アップ遅くなりそうです。帰りの電車の中で書く予定です。
ではでは~宜しくお願いします!




