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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第39節 修道士じいちゃんは、サクソン人

坑道で倒れていた修道士らしき人に駆け寄る主人公。


いよいよ、師匠の登場です。

おじさんかと思ったらおじいちゃんだった修道士さんは、お腹が空いて動けないらしい。僕は腰に明星亭の女将さんが作ってくれたお弁当を付けていたことを思い出して、おじいちゃんにあげた。修道士さんは、喜んでペロリと食べてしまった。


「おかしいのう。お腹が空かない身体の筈なんじゃが」


「えっ?、なんですかぁ?」僕は聞き返した?


「いや、なんでもない」修道士さんは誤魔化した。


おじいちゃんは、ウェセックス王国のウィンフリートと名乗った。サクソン族だそうだ。なんか訛ってると思ったよ。ウェセックス王国というと、フリースラントの北西の島にある王国だよね。どうしてここに来たのか訊ねると、昔、本を鉱山に隠したらしくて、それを取りに来たという。


「さてと、お腹も空いた事だし、ご飯を食べに行こうかの?」


あれ、さっき僕のお弁当食べたじゃん!ライ麦パンのソーセージサンド。僕の方こそお腹空いたよ。


「じゃ、戻りましょうか?」


僕は振り返って戻ろうとして、唖然とした。うは、立坑やばいよ。さっき良く飛び越せたな。怖い。戻れないよ。


「何?怖いか?お主、浮遊の魔法使えるじゃろ?」


「あれ、なんで知ってるんですか?」


おじいちゃんは、しまったという顔をしたが、目を逸らして聴こえないふりをしている。あ、そうか、浮遊すればいいのだね。


「あ、あのなぁ・・・浮遊というのは、地面から一定の高さに浮くものなのじゃ、だから、その穴は飛び越えられぬ・・・わかるかのぅ?」なんか謎解きを出しているようなニヤニヤした表情で修道士じいさんは聴いてくる。


言ってることは字面的には理解したけど・・・あ、そうか、穴に落ちちゃうのか・・・


「ほほぅ、理解したようじゃの・・・こういう場合の浮遊はどんどん落ちちゃうのじゃよ。飛びたいのなら、フロッグとかフリーゲンと言えばいいのじゃ


練習なしで飛ぶのも厳しいだろうから、わしが別の見本を見せようぞ、これ坊主、わしの足に乗り、わしに掴まれ・・・よし」僕はおじいちゃんの靴の上にのり、腰回りにしがみついた。


「いくぞ、フライアフェル(自由落下)!」


おじいちゃんはそう唱えると、いきなり穴に飛び降りた。


「修道士様、おやめくだ・・・ギャーーーーー」よくそんな声が出たなって思うぐらい声を出してしまった。


「はははははは、大丈夫じゃよ」おじいちゃんは僕をしっかりと抱きしめてくれた。


どれくらいたったのだろう。僕らはゆっくり立て坑の中を落ちていく。ゆっくりと、ゆっくりと。最後は開けた場所に出たようだ。リヒト、いやさっきのはルクスだ。明かりの魔法が切れたように周りが真っ暗だ。光が届かないくらいの広いところに出たのだった。


僕らは地面にふわりと落下した。僕は怖くて着地する瞬間に目を瞑ってしまった。


「ほら、無事到着じゃ」


僕は目を開けた。見たことがあるところだ・・・えっと、地面に大きな地図が描いてあって、地図の中に入れないように鎖が・・・わかった。ハインリヒの大広間だ・・・


「いつまでしがみついておるのかのぅ?ついたぞ」


分かってはいるのだけど、おじいちゃんの温もりを感じていたかった。そういえば、人と体温を感じるほど接するなんて、記憶の限りない。でも、こんなにいいものなんだ・・・


「申し訳ありません」僕は腕をほどき、デッカイ足から片足ずつ降りた。


「いや、別に良いのじゃ・・・さ、さ、さ、ランチを食べよう。ランチ!ランチ!ランチ!」


「あの、そっち街じゃないですよ?」


「うおっと」おじいちゃんは、踵を返した。「なにしろ400年ぶりじゃからのぅ」


「えっ?、なんですかぁ?」僕は聞き返した?


「いや、なんでもない」おじいちゃんは誤魔化した。


僕らは、鉱山口を目指して歩き出した。


入り口に着くと、アグネスさんがつかつかとやってきて、膝をついて、僕をいきなり抱きしめた。で、こういった。


「どこへ行ってたの?心配したのよ」


「おっほん、怒らないでやってくれ。わしのせいなんじゃ」


アグネスさんは、驚いて、修道士さんを見た。僕の帰りが遅いので心配して見に行ったらしい。それで、危険なので石を重ねて閉じていた穴があけられているのを見て、急いで戻ってきたところで、僕と鉢合わせした。


アグネスさんは、すこし訳がわからないような表情をして、修道士さんをみてる。記憶を手繰り寄せているようだ・・・


「わしは、隠修士ウィンフリートじゃ。一応、司祭に叙階されておる」


「これは失礼しました。砦の文官、アグネス・フォン・ヴィッテルスバッハと申します。

ウィンフリート修道司祭様。私はこの鉱山の入退出記録を担当しております。務めですので、教えてください。神父様は、いったいどこから鉱山にお入りになられたのですか?」


そういうことか・・・アグネスさんは、仕事モードできりっとした表情だ。またそれが素敵だよ。僕は、まださっきの抱擁の魔法から解き放たれていなかった。アグネスさんのいい香り。お母さんに抱きしめられたら、きっとこうなんだろうな・・・妄想中なんだ。


「ふむふむ。わしは、この山の頂で修行をしておるのじゃ。山の中腹に通気口があるじゃろ?そこからちょちょちょいっと入ってきたのじゃが、ハインリッヒの大広間の上で、お腹が空いて倒れてたのじゃよ。そこをこの少年に助けられたというわけじゃ」


「えっ? あの通気口は大絶壁の途中に開いていると聴いておりますが・・・」


「アグネス様、修道士様は、魔法の使い手なんですよ」


「ふ、ふ、ふ、見せて進ぜよう。フリーゲ」


そういうと、おじいちゃんは、ぴゅーと空中に浮いて吊り鉄格子の外まで飛んでいって、またぐるっと回って帰ってきて着地した。お、どや顔ってやつになってるよ。


「失礼しました。ウィンフリート神父様。では、どうして鉱山へ?」


「お腹が空いてのぅ・・・いや、わし、本が好きで、山頂で汚してはいけないと思って鉱山の中にかくしておるのじゃ。で、すこし読み返したい本があるので、ちょっと寄って、ご飯を・・・いや、街をぶらぶらしようかと思ってたのじゃ」


おじいちゃん、食べたいって顔に書いてあるよ・・・アグネスさんは、すこし表情を緩めてニコリとした。


「では是非、この少年もご相伴に与らさせていただけましたら幸いに存じます」


「ふむ、相分かった。では、少年、参るぞ」


やったぁ・・・僕はありがとうって目でアグネスさんに合図して、スタスタと早足で歩きだしたおじいちゃんの後をおいかけた。おじいちゃん、なんかテンポよく歌ってるけど・・・なんだ?


「ラス ウンス ツミターグ エッスン♪ ラス ウンス ツミターグ エッスン♪」

(お、ひ、るを、食べにいこう♪ お、ひ、るを、食べにいこう♪)


なんか、直球でわかりやすい人だなぁ・・・行進してるよ・・・あれ、砦の入り口についたよ。


「神父様、美味しい食堂ならこっちですよ」


「あ、いかんいかん。400年も経つと変わるもんじゃのう?」


なんかまた変なこといってるよ・・・僕は明星亭がいいと言って、案内した。ドアをあけると、アーデルハイトが迎えてくれた。肩に白いもふもふが乗ってる。


「いらっしゃい。あら、悪者君と・・・修道士様?、ご案内!」


僕らは窓際のいい席に案内された。女将さんがびっくりしている。修道士なんてこの街にはいないからだ。挨拶に来たよ。


「いらっしゃいませ。女将のマリアと申します。わざわざ、当店をお選びいただきまして、誠にありがとうございます。ところで、修道士様はどちらからお越しですか?」


訝しげだよね・・・そりゃ結界馬車今日は来ない日だもん。


「わしか?わしはこの山の頂上で修行をしておる隠修士、ウィンフリートと申す」

「えっ、頂上?そりゃ、たまげた・・・そんな人がいたなんて・・・」

女将さん、口があいたままだよ・・・僕も少しフォローしようかな。


「女将さん、修道士様は、空も飛べるんだよ。さっきアグネス様に空を飛んでみせたんだ」


女将は、なにか言いたげだが、言いにくいようだ。でも意を決した感じできりっとしてから口を開いた。


「あの、修道士様、はじめてかと思いますので、ご存じないかもですが・・・あの、お足のことなんですが・・・」

「ふむ。金じゃろ?安心せい。グロッシェンもデナールもあるぞ」といって、懐からジャリっと皮袋を出して、中身を出してみせた・・・すごい。大銀貨はじめて見たよ。いったい何枚あるんだろう。ま、僕は、1デナールも持ってないんだけどね・・・


「いや、うちはツケなんですよ。で、月に一度ぐらい、物々交換で相殺してもらってます・・・」

「そうなのか・・・銀貨じゃダメかのぅ?」

「いえ、お受けしますが・・・あ、そうそう、そこの坊やに付けときますので」


えっ、何それ・・・女将さん酷いよ・・・修道士様がにやにやして言う。


「ごちになります! お坊ちゃま」


酷いよ・・・でも、お腹空いたから、お昼のセットランチを二人で食べた。ていうか、メニューがあるわけでなくてあるものが出されるだけだ。仕入れることができたもので作られる。だから、ミーノタウルスの牛肉もどきをカールさんたちが持ち込んでからは、ずっと、牛肉風ワイン煮だった。


砦では、貨幣経済がそんなに強くない。商人が外から来て、販売してくれるというわけではないからだ。実質、配給制のようなものだ。一応お金に換算しているけど、物々交換のほうが強い。だってお金を使おうと思っても、あまり買えないからだ。


食後のワインを修道士様が飲んでいる間、僕は水を飲んでいた。シードルなんて、高いからね。


砦や第2門の地下には、氷室が設置されている。リンゴは保存食でもあるので、沢山保存されているらしいけど、ワインやシードルは長城の向こう側から輸入されている。だから高い。輸入というのは、領主が違うからだ。ただ、公爵様には、皇帝陛下から予算が与えられていて、生活必需品は、一定金額までは無償だそうだ。超えた分は塩で払われるらしい。交換ではなく、お金に換算されるらしいけど。


ふと僕は、いったいどれくらいのツケがあるのか、気になったけど、女将さんとアーデルハイトに見送られてお店を後にした。あとで聞こう・・・夜お皿洗いのバイトにきたほうがいいかもな。もしかして一生タダ働きだったりして・・・ううう・・・


「どうしたのじゃ?ほれ、ちょっと買い物しようかの?」


修道士様は、女将さんに教えてもらった、なんでも屋にむかった。街に売店はこの1件だけだって。



あれ、もしかして、また僕のツケになるの?もう、助けて神様・・・

いかがでしたか。

お読みいただきまして、ありがとうごさいました。

今夜また、次話投稿するつもりです。


実は、プロットが沢山あります。伏線回収話もショートショートもあらすじができています。

ドミニクの話はかなり長くなる予定です。もう分割して、別のシリーズにすべきか悩んでます。

ドミニクのいる向こうの世界は、12世紀のドイツですので、結構、時代考証チェックに時間がかかります。12世紀はまだプレートメイルがないのですが、どうしてもプレートを着せたいとか・・・悩みますね。あと、ウィンフリードは末尾をトに変更します。アーデルハイドもトに・・・そのうち既存話を改訂する予定です。宜しくお願いします。

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