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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第36節 帰還

迷宮の浅い層に突入です。


傭兵団のほかのメンバーが紹介されます。


 少し歩くと、3人の人影がいた。


 二人が大きな男性で、大きな長方形の盾を持って、腰に剣をさしている。もう一人はシスターのような恰好をして腰にロザリオをぶら下げている。クラウディアさんが駆けていって、シスターと手を取り合ってキャーキャーいってる。なんか女子会っていい。見てるだけで癒されるなぁ。


 カールさんが、残りの3人を紹介してくれた。シスターはアポロニアさんだ。背が低い。たぶん160cmぐらいじゃないかな。まぁ、僕はもっと低いけどね。でもこれから伸びるんだから・・・アポロニアって変わった名前だなって思ったら、アレクサンドリアのアポロニアっていうらしい。修道女名だって。


 アポロニアさんが、笑うと真ん中の歯の間隔があいてて、目立っていた。そうか、アポロニアって拷問で歯を抜かれた殉教者だったよ。ひどい修道女名のつけ方するなぁ。でも忘れられないかもね。スキッ歯のアポロニアさんだ。無いわけじゃない。


 大盾の二人の大男は、驚いたことに同じ顔をしていた。双子だそうだ。


 一人がクレメンス、もう一人がコンラートだそうだが、区別がつかないよ・・・二人とも同じ鎧に同じ兜で、騎士団のように同じ格好だ。しかも無口だ。


 カールさんが、双子を見て困惑している僕に話しかけてきた。


「まぁ長く付き合うと違いが分かるようになるんだがな・・・俺でもいまだにわかんなくなることがあるぜ。だから、こっちきてみな」


カールさんがこっちへ来いとジェスチャーする。クレメンスとコンラートの後ろ側だ。


あ、背中に字がかいてある。くれめんす・・・こんらーと。わかり易いや。


「これいいだろう。クラウディアが書いたんだよ。字が下手だがな」


「あー、そんなこと言うならもう書かないですよ」

クラウディアさんが、ぷーってふくれている。


「ごめん、ごめん、助かるよ。この二人は盾職だろ、俺らは常に後ろに立ってるから、背中に書いてたほうがわかり易いんだよ。話しかける時もわかり易いしね・・・でも、上にあがるとこいつら鎧の手入れで消しちゃうから、毎回クレヨンでかいてるんだ」


「名前を書かれるの、嫌なんでしょ?」

クラウディアが聞いた。


二人とも黙ったまま目を伏せた。うーん、話しにくいな・・・そうとう恥ずかしがり屋さんなのかな。


「カール、早いとこ片付けちまおう」アレクシスが言った。


「そうだよ、急がないとな。悪者君、こっちに来てくれ」


 すこし先にいくと迷宮の廊下の端に、背負子に鎧だとかが、載せられて背負える状態になっている荷物が6つあった。それ以外に大きな麻袋にまとめられているのが一つある。


・・・そうか、大人が6人いて、背負子が6つ。大きな袋が僕が背負うのかな・・・


 「えっと、実は結構なドロップでな・・・死霊使い・・・だと思うんだが・・・が出たんだよ。でさ、アポロニアの神聖魔法で楽に倒せたんだが、問題が二つある。


 死霊使いは消えうせた。つまり悪魔系ということで、塩砦法しおとりでほう32条に則り、砦に報告の義務がある。そして、ドロップなんだが、死霊使いが操ってたのは、4体の鎧の化け物だ。鎧だけが残ったんだ。で、捨てるには惜しいぐらいの立派な鎧なんだよ。背負子はみんな持ってあるいていたんだが、荷物をまとめても載せきれなくてな。


 さて、背負子は君には無理かな・・・アポロニアだって無理に背負ってる感じだから・・・消去法で、悪者君は、袋かな・・・まぁ、季節外れのザンクト・クラウスになってみるか・・・」


 みんな背負子を背負いだした。体の小さなアポロニアさんなんか、後ろから見ると、背負子が歩いているような感じだ。彼女の背負子には鎖帷子1枚と、籠手が四つ載っている。


 クラウディアさんの背負子には、銀色のブーツばかり、4足だ。その下に鎖帷子が敷かれている。横に重ねて左右互いに、無理に縛ってる感じ。結構かさばるんだね。あれ、他の鎖帷子はどこかな・・・あと剣とか盾もないのね。プレートの胴と前垂れを各自男性が背負っている。防具オンリーだったのか。


「まずは背負えるといいんだが・・・サンタさんの袋には、バケツ型のヘルメット四つと鎖帷子2枚入ってるんだ」


 とりあえず、お腹空いたし、ご飯のためにも背負ってみよう。よいしょっと。


 うーん。やばい、腰痛めそう。これ、中身の形が悪いから安定しないや。揺れるたびに、背中からずりおちそうになる。ヘルメットが軽いのに、鎖帷子が重いからかな・・・


 ベルタさんが言ってたっけ。重い荷物は腰を入れるって。あれ、なんか腰が前にいって、格好悪そう・・・これって、へっぴり腰かも・・・


 「さぁ、いこう。気合いいれてこうぜ」カールさんが言った。


 なんとか肩に袋を担ぐことができ、すこし安定させることができたが重い。袋の口を握る手とか、腕はすぐにしびれてきてしまう。困った。ここで荷物を落としたりしたら、クビになってしまうよね。


 一番きついのはクビよりも、今夜、ご飯が食べられないことだ。僕はふらふらしながら必死で持って歩いた。酔っぱらいのサンタさんみたいだ。


 クラウディアさんが心配して振りかえって僕をみた。なんかカールさんに話しかけたようだ。


 「・・・男がこれぐらい持てねえでどうするんだ!ていいたいけど・・・やっぱり無理だったかもな・・・背負うことができたんだから、あとは気合いだ」


 脂汗っていうのが出てきたよ。ともかく、荷物を取り上げられて置いて行かれることが一番怖い。松明もない、魔法ライトも使えない。


 もうヤケクソだ。重さ減っちまえとか、荷物軽くなれとか呟いてたら、急に荷物が軽くなった。


 あれ、何が起きたのかな・・・これって限界を超えたのかもしれないぞ・・・あとは、実は腕が伸びちゃって痛みを感じなくなったとか・・・いや、確かに軽くなってきてる。どの言葉が効いたのだろう。えっと、僕なんて言ってたっけ。これってあの本に載ってた魔法かな・・・魔法覚えたのかな・・・


 クラウディアが振り返って話しかけてきた。

「なにぶつぶつ言ってるの?大丈夫?」


 アポロニアさんが話しかけてきた。

 「ねぇねぇ、悪者君って、さっきラテン語で浮遊かけてたでしょ?」


 「そうなんですか?気づいていませんでした。すごく動転してたので・・・」

 

 「あ、そうなの?悪者君ってラテン人なの?」


 「いや、わからないんです・・・」


 「なんか、色々だったよ。シュヴェーベンとか、クラビトールとか、ドイツ語とラテン語の混ぜ混ぜだった。浮遊魔法とか使おうとしてたみたいな感じだったけど・・・」


 「ふーん、浮遊だと自分が浮くんでしょ?」クラウディアがアポロニアに訊いた。


 「うーん、わたし修道女なんで、魔法はあまりわかんないけど・・・そうなのかもね」


 「でも、ライトは使ってるじゃん」


 「まぁね、ライトとかファイアとか、修道院内では使うからね。昔だったら考えられないのよ。異端とか魔女とか言われちゃう・・・私はそういった疑惑で追い出されたんだもん」


 「へ~そうなんだぁ。今じゃ普通になったよね。神聖魔法だって凄い威力だったじゃない?」


 「そうよね・・・私は下級神聖魔法しか使えないけどね。どちらかと言えば回復の方が得意。さっきも、まさかあんなに下級の聖霊加護が効くと思ってなかったわ。あとさ、ブルーノ神父様の前で神聖魔法というと、機嫌悪くなるから注意したほうがいいわよ」


 迷宮からの出口、崩れた石を踏み分けて上るのが難所だったけど、なんとか鍾乳洞を通りぬけ、地底湖の桟橋まで来れた。


 「さあ、荷物を降ろしてボートに積むぞ。2艘に分散しよう。ボートの沈みに注意してくれよ。どっちも同じなるぐらいに調整しよう」


 背負子2、サンタさんの袋1、盾職2人と僕だけで、船が沈みそうだ。


 他の背負子4大人4人のほうのボートはそんなに沈んでない。


 もともと浅瀬用の喫水が低いボートだが、僕らの船はちょっと傾いたら水が入って沈没しそうだ。カールさんは、誰がそんなに重いのか?って顔でじろじろみてる。もちろん、盾職の二人をだ。重装歩兵でしかもデッカイ金属製の盾だから、重いのかな・・・


 「しかたねえな・・・2回に分けて行こうか?メシ遅くなるけど・・・」


 なに、聞き捨てならないことを・・・僕は考えた。よし、ダメ元で魔法だ。浮遊魔法ね。


 Fugere Etiam in aeri! (フジェーレ エティアーミナーリ) 空中に受けと唱えた。


 すると喫水線がどんどん下がっていく。しまった。船が水面から離れそうだ。みんな見てたから、しっかりと僕が魔法を使うところを見られたていた。あれれ、かなり適当に言ったのに・・・クラウディアさんが、驚いて大きな声でいった。


 「やるじゃん、悪者君・・・すげぇ、惚れたよ~。でもどうやって進むんだ・・・」


 しまった。水から浮いてたら漕げないじゃん。あちゃー格好悪いよ・・・


 でもクレメンスがぼそっと言った。

 「俺らのリーチなら櫂で漕げると思う」


 そうか、体でかいもんね。腕も長いんだ。コンラート二人で漕ぎ始めた。どんどん進みだした。そりゃ重さがほとんどないようなもんだもんね。


 「なんてこった。おめーら、速すぎだよ。悪者君、こっちにも掛けてくれよ」


 急いでクラウディオさんが舫いを外してる。僕は自信がなかったけどもう一度浮遊の呪文を、カールさんたちのボートが浮かぶことをイメージして、10メートルぐらい先から唱えた。


 むこうのボートも同じくらいに浮いた。


 「よっしゃ、さっさと帰ろうぜ」

 アレクシスが猛烈な勢いで漕ぎだした。うぉ~って感じだ。みんな負けず嫌いだね・・・


 僕は、今起きた現象を振り返っていた。今、僕はラテン語を使ってたよね。魔法の穴ってなんだかわからないけど、僕にも開いているんだろう。あとで、アグネスさんに聞いてみようっと。なんだかんだ考えていると、あっという間に対岸の桟橋についてしまった。カールさんが首をかしげていた。


 「なんだか変だな、全然魔物が現れなかったな」


 「そうだな。浅瀬のミニドラゴンもこなかったもんな」


 浅瀬のミニドラゴンとは、体長50cmぐらいのワニみたいな目の退化した生き物だそうだ。


 時々餌をもらおうと、ボートに近づいてくるらしい。人馴れしているらしく、魔物肉とか、保存用の干し肉とかを投げてやると喜んで食べて帰るとのこと。特にクラウディオの声を覚えているようで、一番彼女の声に反応するとか・・・


 なんか、荷物を降ろして僕らが下りてもボートは浮いたままだった。どうしよう・・・まずくないかな・・・カールさんが、そのうち下りるだろうから、放置ねって。よかったよ。下す呪文知らない・・・


 しまった。またザンクト・クラウスの袋持たないとだった・・・仕方ない、さっきのやってみるか・・・おおお、袋が浮いたよ・・・なんか担がなくても引っ張っていけばいいみたい。僕は嫌がる犬を散歩させるような感じで袋のふちをもって歩いてみた。おお楽勝じゃん。みんながじとっとした視線を送ってくる・・・はい、わかりました。みなさんの背負子にも掛けます。というわけで、帰路はみんな速く歩いた。


 傍からみたらおかしな光景だったろうな・・・


 僕らが鉱山口についた時はとっぷりと日は暮れて、アグネスさんたちはいなかった。当番兵の人に書類をお願いした。カールさんが緊張した感じで報告を開始した。


 「塩砦法32条により報告します。本日、悪魔の配下、もしくは眷属と思われる魔物と遭遇し排除しました。魔物は私たちの眼前で消えたため、報告することとしました」


 カウンター前に緊張が走った。ハルバートを持っていた別の警備兵さんが、ハルバートを隅に置いて、砦に向かってがちゃがちゃと走りだした。もう一人の警備兵さんは、即座にカールさんに応えた。


 「33条に基づき受理した。すぐに砦から担当係官が参るので、しばらく待機されたし」


 警備兵は、背負子とか、袋が浮いたままなのを見て、目を見開いていた。


 10分もしないで、オットー様、レオン様、ブルーノ様がやってきた。皆、顔が緊張している。でも、レオン様だけ、飲みかけのエールのデッカイジョッキを手から放していない。三人がドアを通り、鉄格子の閉まる音がガチャンと静寂の中に響きわたった。


 「悪魔の眷属か?」オットー様がカールに訪ねる。


 一旦片膝をついたカール達に、なおってよいぞとオットー様がいった。カールは再び立ち上がり、説明を始めた。


 「鍾乳洞側の迷宮入り口で、我ら、傭兵団、空飛ぶザクセン人は、魔物と遭遇しました。魔物は、死霊使いと思われ、4体の彷徨う鎧を引き連れていました。


 「彷徨う鎧とな?」ブルーノ神父様が質問した。


 「はい、こちらに、その鎧がごさいます。4体分ございます。剣、盾などはありませんでした。というより、剣は消え去りました」


 「よし相わかった、見せてみろ」


 「はっ、こちらです」


二人の視線の先にはぷかぷか浮いた背負子とサンタさんの大きな袋・・・


 「なんで浮いておる・・・」

 

 「こ、これは、悪者君がかけた魔法でして・・・」しどろもどろってこんな感じなんだね・・・

 

 魔法嫌いのブルーノ様の前でその言葉をつかってしまったことで、カールさんはきょどりだした。


 うーん、また僕ってピンチなのかな・・・











お読みいただきまして、ありがとうございます。


いかがでしたか?


1172年のころは、まだ、フルのプレートメイルなどは開発されておりません。


十字軍のころに、バケツ型のヘルメットが開発され、広く使われるようになったそうです。


テンプル騎士団というとよく出てくるヘルムですね。


本作でも、テンプル騎士団をモチーフにしています。でも場所が南ドイツからオーストリアなので、チュートン騎士団のほうが近いのかもしれませんね。


明日は、一旦オヤスミして、35節36節をカールの視点でお送りします。宜しくお願いします。

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