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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第33節 魔術の本

アグネスの秘密が明かされます。


おとろしい人やったんや~って感じです・・・

僕は、すぐに本を服のなかにしまった。これは凄い宝物で、他の人に盗られてしまうかもしれない。


何もなかった振りをしないと・・・キョドッてるとバレル・・・先の方で、ロタールさんの僕を呼ぶ声が聞こえる。はーい、今向かってますと答えた。中腰の小走りで駆けたが、筋肉が痛い。全体的に紫色のような古代の洞窟だが、先のほうで白い光が差し込んできた。魔法ライトの光だろう。ロタールさんが呟くのが聴こえる。


「うは・・・これってドワーフが作ったんじゃないの?」


「ロタールさん。お待たせしました。ご心配かけてごめんなさい」


「おお、坊主、よかったなぁ・・・とりあえず、出ようか」


ロタールさんは普通ぐらいの身長なので、かなりきつそうだ。まだ、階段部分にいるから立ってられるけど、古代の洞窟を進むには、それこそハイハイだろう。レオン様の事をまた思い出してニヤニヤしてしまった。


「おいおい、何笑ってるんだよ。心配したんだぞ」


「ごめんなさい」


これでなにかあったりしたら、アグネス様に殺されるからな・・・気が気でなかったよって呟いている。どういうことなんだろう。


「坊主知らねえのか?」呆れた顔のロタールさんだ。


「あの方はこの砦で一番身分が高いんだよ・・・公爵様の宮宰様のお嬢様なんだ・・・それだけじゃないぞ、アグネス様は、氷魔法の使い手で、おそらく公爵領一の威力なんだぞ・・・恐ろしいんだからな。あの人のアイスボルト、いいか、一番低級魔法のアイスボルトでさえ、こんなに太いんだぞ・・・」


ロタールさんは両手で一抱えの形をつくってみせてくれた。


「俺、一回鉱山の出口に現れたオーガをアグネス様が、きゃっなんて言って、一発で仕留めたのを見たことあるんだ・・・」


ロタールさんはひと呼吸置いてから言った。


「一瞬で、バラバラだぜ・・・肩から上の首と下半身しか残らなかったんだ・・・」


ロタールさんはカタカタ震えだした。


「坊主、オーガって見たことないだろう?レオン様が随分デカいと思うだろう?あのレオン様より一回り大きいんだぜ・・・レオン様の足が、腕みたいに生えているんだよ。うーこわこわ・・・」


その時のことはトラウマとなって、ロタールさんの心に焼き付いてるらしい。

なんでもそのあとのアグネスさんの一言が更に怖いらしい。


「あ、ごめんなさい。魔石がとれなくなっちゃいましたぁ~。的が大きいので当てるの簡単すぎですものね・・・でもアイスボルトより難しい魔法だと、鉱山こわれちゃいますものね・・・てへぺろっ」


てへぺろって感じで可愛い仕草だったそうだ・・・それ以来、女子のてへぺろを見るたびにちびりそうになるらしい。


「おっと脱線したな・・・ともかくアグネス様に要注意だぞ。ともかく上に戻ろうぜ」


上に戻ると、トロッコの横に出た。親方を始め、さっき話題にでた塩柱加工のおばさんや傭兵さんもいた。みんな、僕の無事の帰還を喜んでくれた。親方さんが僕に質問してきた。


「あの、坊ちゃんは、アグネス様とご親戚かなにかで?・・・あと恐縮ですが、ベルタさんとはどういう御関係なんですか?・・・」


いや、なんかすごくかわいがっていただいていますとだけ答えたが、親方さんは何か引っかかるらしく、何かに怯えているようだ。


「おい、ロタール、早いとこお坊ちゃまをアグネス様のところにお戻ししろ」


ロタールさんは、へいって言って舎弟ちっくに動いた。困ったな、お坊ちゃまよりは悪者くんのほうがいいぞ・・・なんだろ、親方さんは何びびってるんだ?


僕はロタールさんに先導されて、ハインリヒの大広間を抜けて、鉱山口の受付まで戻った。


カウンターではアグネスさんがニコニコして迎えてくれた。


「あら、お帰り~。ロタールさん、ありがとうございました」


「げるん げっしぇーん・・・」(Gern geschehen!:どういたしまして)


あれ、母国語なのに、すごいたどたどしかったし、その貼り付けたような笑顔・・・僕は申し訳ない気持ちでいっぱいになったので、フォローしようと思った。


「アグネスさん、すごくロタールさんにお世話になったんですよ。ロタールさんは優しいお兄さんみたいなんです」


ロタールさんが真っ青になって、小さい声でバカバカバカって言って首を小刻みに振ってる。あれ、まずいこといったかな・・・


「ロタール、何があったの、報告しなさい」途端に氷河の傍にいるような冷たい風が吹いてきた。


「ひぃ~、実は・・・」


それから、ロタールさんは、僕が裂け目に落ちたこと、自力でいにしえの坑道にたどりつき、上に生還したことを語った。裂け目に落ちた話は親方さんからの使者がきて、知っていたし、無事に救出されたのも、伝わってたらしい。ところが、僕がなんかフォローするような言い方をしたので、まだ何か隠しているんではないかと、アグネスさんが勘ぐったようだ。とりあえず、誤解は解けて、話終わったところで、ベルタさんもやってきた。


「やべ、ベルタねえさんだ・・・」ロタールさんの顔は完全に土気色というやつになっている。


「あら、悪者君、裂け目に落ちたって聞いたけど、元気そうじゃない」って言ってから、ロタールさんをギロリと睨んだ・・・ロタールさんは顔が土気色からミイラみたいな色になって、赤くなって、青くなって、土気色みたいに顔色変化を繰り返した。


「ねえさん、申し訳ありません!」平謝りだ・・・古代の奴隷が王の前でひれ伏すようなスタイルってゲルマン人で、はじめてみたな・・・なんか申し訳ないというか可哀想になってきたよ。


そしたら、ベルタさんは急に愛想よくなって、ロタールさんの顎を人差し指で持ち上げて言った。


「わかってるわよね。すこしは色つけなさいよ。そして悪者君に御馳走してあげてね。明けの明星亭から請求書行くので、よ、ろ、し、く」


「か、か、かしこまりりましましたぁ~」なんか、ロタールさんドイツ語おかしくなってませんか。それから、ロタールさんは、ぴゅーって音がするように走っていった。なんか足がぐるぐる回転してた。


なんなんだろう、この雰囲気。二人とも美しいし優しいし・・・大人にならないとわからないことなのかな・・・


それから、ベルタさんがアグネスさんを誘って、僕と三人で、明けの明星亭に昼ごはんに向かった。



「いらっしゃーい」

明けの明星亭に入ると、聖母様の像の前で、明るい元気なアーデルハイドが声をかけてくれた。


「なーんだ。悪者くんじゃん・・・」


それはないよ。僕はさっき裂け目に落ちて生還したばかりなんだよ・・・なんだろ、この舎弟感・・・


女将さんも出てきた。


「今日は豪華メンバーだね・・・」


「ロタールのおごりなのよ。マンシャフト・ザンクト・ルペルトに、つけといて」


「あいよ~じゃぁ今日の日替わりね」


なるほど、チーム聖ルペルトっていうんだ。ロタールさんの鉱夫団・・・聖ルペルトって、ババリアの司教様で聖人だったような気がする。確かフランク王族だったんだよね。


最初にザウワークラウトがでてきた。あ、これ好きなんだ。乳酸菌とか沢山とれるらしいじゃない。ソーセージも出てきた。なんだかうれしいなぁ・・・あ、そうだ、例の本のこと聞いてたほうがいいよね。この二人なら、多分大丈夫だよ・・・


「あの、ベルタさん、アグネスさん。相談したいことがあるんですけど・・・」


「どうして、あたしに相談がないのよ・・・」


あれ、アーデルハイド、君は給仕じゃないの?カワイイエプロン外してるどころか、なんかフォークで僕のソーセージまでグサグサ差して食べてるよ・・・ちょっと、もう・・・


こうやって、僕ら男は、飼いならされていくんだろうな・・・そのなれの果てがロタールさんとかなんだろう。


「で、悪者君って相談はなに?」


あまりに凶悪なアーデルハイドのせいで、忘れてたよ。


「今日、魔法の本を拾ったんですよ・・・古代の坑道でなんですけど」


僕は、服の中から皮の表紙の本をだした。


へ~って感じでアグネスさんが手に取ってぱらぱらと見ている。


「これ、プリニウスの博物誌の別冊写本じゃない?」


え、なにそれ・・・プリニウスって古代ローマ人の人だよね。


「悪者君、ここにさ、ぷりにうすって書いてあるよ・・・」


あれ本当だ。なに博物誌の38巻って。さっき暗かったから、見えなかったのか・・・


「これなら、私も持ってるけど・・・写本だけどね」


ベルタさんが興味深々に聞いてきた。


「なにそれ、悪者君、どうやって見つけたの?」


裂け目に口をあいている小さな古代の坑道の途中にあった、岩の裂け目に隠すように挟んであったと正直につげた。しかも最初はルーン文字だったのに、手で埃を払ったら、文字が光ってラテン語に変わったって言った。


「すごい。これ写本じゃないのかな・・・まって、プリニウスってさ、1100年ぐらい前の人でしょう?ルーン文字で書かれてたっていってたじゃない?実はこの本がオリジナルだったりして」


アグネスさんはもう夢中だ。


「ちょっと中身見せて・・・」


アグネスさんの本は城塞都市の自分の屋敷にあるらしい。テキストの比較とかできないので中身を記憶と照らし合わせようというわけだ。


「うーん、なんか同じ感じね・・・」


最初はライトから始まるから、やっぱり同じらしい。イラストもついているが、絵の感じがソックリだそうだ。プリニウスって謎人物だということで決着した。最後にアグネスさんは、


「悪者君も、魔法覚えないとだね」


ベルタさんが言った。

「悪者君は字が読めるから楽勝よね・・・。アーデルハイドも字のお勉強しましょうね」


アーデルハイドはソーセージを2本くわえたまま、ぬぐぐぐと唸りながら僕を睨んだ・・・


酷いよ。どうしてなの?




お読みいただいてありがとうございます。


プリニウスは実在の人物で、博物誌で有名です。


この博物誌の中にはサラマンダーとかファイアードレイクなどに関して、真面目な解説がなされています。全部で37巻まであります。


ルーン文字は実在の文字です。是非、ご興味のある方はググってみてください。


次回の投稿は、明日の夜の予定です。

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