第30節 魔物肉って美味しいの?
すみません。遅くなりました。ちょっと先のプロットから書いて、戻る書き方をしてたので、整合性チェックで時間がかかりました。
魔物肉でます。砦では鶏やヤギは飼育しているようです。どうしても狭い街の中だけとなると、大型の家畜は厳しいようですね。
外の明るさがまぶしい。空気がおいしいよ~
帰りの坑道は、何気に勾配があって結構きつくて息があがっちゃうぐらいだった。だから外に出られてほっとしていた。
僕らは、第2門の近くまで、てくてく歩いていった。第2門の前の広場は、門の側に広がっていて、鉱山から歩いて右側の街並みは真っ直ぐだ。Pの鏡文字みたいな感じ。そのでっぱりの中央あたりに第2門があるのだが、その正反対側にその食堂兼宿屋はあった。
『明けの明星亭』だ。随分古い感じがする宿屋だ。1階は石造りで、2階以降は木造だ。いわゆる、ハーフティンバー造りだ。というか、この街は同じ造りが多い。太い木材で骨組みをつくり、その骨組みの間に石やレンガなどを埋め込んで、漆喰で塗り固めている。壁の白さと木材の黒さのコントラストが綺麗だ。2階にいくとすこし幅が広くなって、3階にいくとまた少し広くなっているので、なんか見た目が不安な気がした。
しかも、明けの明星って、堕天使ルシファーのことだと思ったけど・・・
1階には、どこでも見られる重厚な木と鉄板で補強されたドアがある。閉められていたので、休みかと思ったら営業中だった。ドアをあけると正面に聖母様のご像が安置されている。そうか、聖母様も明けの明星って呼ばれるんだっけ・・・よかった。
「いらっしゃい。お、ベルタにアーデルハイドじゃないか」
「マリアさん、こんにちは。ご飯を頂きにきました」
「おや、その男の子が悪者君かい?」
体格のいいおばさんだ。レオン様を小さくしたような感じ。髭が生えてたら大柄なドワーフといったところか・・・
ああ。ここでも悪者呼ばわりか・・・僕は努めてニコニコしようと思った。
「はい、噂の悪者です。以後お見知りおきを・・・」
「あいよ。私はマリア。ここの女将さ。ベルタとは親戚でね。ほら美しい女がよく生まれる一族なのさ」
うん、あと30キロぐらい痩せてたらねって思ったけど、ぐっと堪えた。僕偉いでしょ?必殺愛想笑いで、この場はやり過ごした。
「マリアおばさん、今日のランチは何かしら」
「謎肉の赤ワイン煮だよ。うちによく泊ってるパーティ、『空飛ぶザクセン人』が仕留めたらしい。あ、君たち、そのパーティは、空を飛ぶわけではないわよ。なんだか少年のころの悪い癖がぬけない可哀想な大人たちさ・・・がははは・・・強いけどね・・・まぁ謎の肉とは、牛系の魔物のものらしいけど、肉の状態だと魔物とはわからなかったし、美味しいんだよ。」
なんだ、その謎の肉って・・・なんだか食欲が・・・ベルタさんもアーデルハイドもテンションが上がってるようだ・・・平気なのか・・・う~ん。ローマにいるならローマ人のようにしろって格言があったよね。ベルタさん達に聞くと鉱山街では魔物肉はよく食卓にあがるらしい。
「さぁさぁ、そこのテーブルにかけておくれ」
僕らは、丸い大きなテーブルに陣取った。料理はすぐに出てきた。
「昨日から煮込んでるからね・・・もうお肉がボロボロとろけるよ」
うわーい。ベルタさん達から歓声というか、なんといっていいのだろう。肉食獣の雄叫びのような・・・あ、これは内緒にしておかないとね・・・あれ、アーデルハイドがじろっと睨んだ。聴こえた?いやいやそんな馬鹿な・・・
二人が食べ始めたのを見て、僕も食べた。まず、赤ワイン煮の香りがいい。食欲がもりもりと、盛り返してくる。まずはスプーンで肉の固まりを掬って口に抛りこんだ。
美味しい・・・口の中で溶けてしまうようだ。ほっぺが落ちるってこれか・・・
なんか、英気を養うっていうのも、これかな・・・
食後は、眠くなったけど、ベルタさんがもう一度鉱山口に行こうということで、また歩いていった。アーデルハイドは、食堂で食器洗いとか水汲みとか手伝うらしいので、ベルタさんと二人だ。
「アーデルハイドは、働き者よね・・・私、実家が同じ商売してたけど。あの子と同じくらいの時はまだ遊んでばかりだったわ」
それから、またベルタさんがこの街での生活の知恵というか、色々と歩きながら教えてくれた。魔物が溢れたら、各店の門がロックされるまでは、どこも入れてくれるということ。そして、中に入ったら、3階に上がって城壁側に抜けると、バルコニー通路があって、城壁にも渡れる橋があるらしい。それで城壁沿いに砦の方まで逃げられるとのこと。
今度実際に案内してくれることになった。
鉱山口につくと、受付に連れていかれた。で、受付のおねえさんを紹介された。
「砦の文官のアグネスよ。よろしくね。朝、女の子と来てたよね」
「は、はい。よ、宜しくお願いします」
アグネスさんは、朝もいた人だった。そう、鎧着てた人だ。皮鎧でなくて、鎖帷子の上にスケールメールを付けている。まだ16歳ぐらいかな・・・きれいな人だ。ゲルマン風の上半分の兜をつけていたからわからなかったけど、今は兜をとり、鎖帷子のフードを首の後ろに垂らしてて、四つ編みにした金色の長い髪を前に2本出している。籠手は外している。そうか文字書けないもんね。
やはり文官さんだね。手が白くて細い。しなやかな感じだ。
アグネスさんに見とれていると、ベルタさんが、僕を現実に引き戻してくれた。
「悪者く~ん、何に見とれてるのかな~大事な話があるのよ~」
アグネスさんが笑ってる。悪者くんでもいいか・・・アグネスさんならそう呼ばれてもいいや。
ベルタさんが説明してくれた。ポーター用に手持ちの看板があって、それをカウンターで貸してくれるらしい。傭兵用の手持ち看板もあるとか。つまり、必要な文面が書かれた看板を持ってカウンター横に立ち、客から声がかかるのを待つらしい。これは、客引きをされると、混乱するし、通行する人に迷惑がかかるから作られた制度だそうだ。
知らない大人に声をかけるなんて、できないと思ったから、これは便利なシステムだなって感じた。アグネスは実際の看板を見せてくれた。
「荷物持ちます。応相談」
いくつか文面はあるようだが、すべて、俗ラテン語で書かれてる。さっきの坑道のプレートは、古バイエルン語、ラテン語、ルーン文字とか、色々使われていたが、ここではラテン語なのね。話言葉はバイエルン語っぽい訛りの人が多いようだけど。ま、坑道のプレートは、昔からそのままのようだけど・・・
「最近はあまりパーティの変動がないから、専属さんばかりみたいなのよ・・・だからあまり期待できないけど、私もパーティに声かけして協力するわね・・・」
アグネスは申し訳なさそうに言った。
おおお、いきなり悲惨フラグ立ったかも。やばいよ僕。今夜は、ご飯たべられないかもしれない・・・
とりあえず、ベルタさんも仕事があるとのことで、僕らは解散した。
アグネスさんが、看板を貸してくれるというので、夕方まで客引きをすることにした。
「なんでも持ちます。引き取ります」
「これが午後夕方用ね」
鉱山から塩の固まりを上げてくるのに、人手が足りない鉱夫さん達がいる時にも、倒した魔物の骸を引き上げるときに人手が欲しい傭兵さん達がいる時にも使えるタイプだそうだ。
僕は、看板を持ってカウンターの近くに立っていたが、結局夕方まで声がかかることはなかった。どのパーティも専属ポーターがいるものね・・・ほんと、さっきのアグネスさんのいうとおり、今日は無理かもね。目の前が暗くなってきた。
「悪者くん?」
「はい?」
お、なんかいいことがあるのかな・・・僕は顔を輝かせた・・・
「もう時間なので、受付閉めるわよ。まだ可能性あるからガンバってね。看板は、カウンターの上に置いておいてね。じゃまた」
がっくりきたよ。その時、ガラガラと鉄格子を落とす音がした。ちょっとびっくりした。先に外側から閉めるのね。僕はぼうっと外側鉄格子を見ていた。アグネスさんはすぅと消えるように帰っていた。
まいったなぁ・・・お腹空いてきたよ。
「お、いたいた。助かったよ」
その声はいきなり後ろから聞こえた。もしかして、ご飯は僕を見捨ててなかったのかな・・・
お読みいただきましてありがとうございます。
いかがでしたでしょうか。
次話は4日の夜予定です。貧乏神のほうは、すこし休筆予定です。
あちらの世界のエピソードを織り込みたいというか割り込ませたいのですが、どうしようか考えてます。




