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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
196/293

第75節 アーベントイラー 秘密の部屋

なんだか、ポッター君みたいですが、

秘密の部屋です。

今回もグロなので、苦手な方は避けてくださいね。


改稿しました。11/16

Ⅰ 夜が明けて


全ての作業が完了したのは、結局、朝だった。何回か魔物の襲撃があったようだが、全て傭兵団が片付けたそうだ。長くなりそうだったので、交代で休む事になったのだ。

 仮眠をとった僕と枢機卿様が見に行った時には、かがり火の設備を片付け終えたところで、転移門で砦に持ち帰りがてら、バイエルン傭兵団が先に撤退した。

最後に最終確認を枢機卿様が行い、焼却は完了となった。

徹夜をしたブルーノ神父様は、仮眠を取ったアポロニアさんと交代して砦に帰った。カールさん達は完全な徹夜だが、体力があるので、まだ、平気な様子だった。


「そりゃ、ねみぃけどよ。寝たら、魔物にやられて死んじまうかもしんねぇからな」

 大きい声で、徹夜が平気なふりをしているのは、アレクシスさんだ。

「一旦、銀鉱山に帰るぞ・・・撤退だ」

カールさんが疲れた顔でみんなに告げた。


 アレマン人村広場に着いたら、これから、兵士さんの交替をするので、転移門を出すことになった。ブルーノ神父様は、仮眠をしてから、同じく仮眠をしている、バイエルン傭兵団と、例の五芒星の消去を行うらしい。僕も転移門の関係で、砦に戻った。


 砦の中庭で待っていると、クリスタがやってきた。

「あ、クリスタ、おはよう。昨日はよく眠れた?」

「ううん。駄目ね・・・どうも火が燃えているのを見ると、興奮しちゃうみたいで、眠れなくて・・・」

「そうなんだ。昨日はアポロニアさんの部屋に泊まったんでしょう?」

「あれ、よく知っているのね。クラウディアさんのとこは、双子のおねーちゃんが泊まったのよ。マルコ兄ちゃんたちは、カールさん達の部屋を借りて寝たらしいわ。家族寮もいっぱいだからね」

「そうか・・・どうなるんだろうね」


 兵士さんがやってきた。出発の準備ができたそうだ。転移門を開いたら、どんどん入っていった。彼らが着いたら、カールさん達が、族長さんのうちで仮眠するらしい。

 兵士さんと入れ替わりで、転移門を通って、レオン様が帰ってきた。レオン様は僕を見るとウインクをした。全然徹夜した感がない。体力の塊みたいな人だものね。

 レオン様は僕の側に来た。

「殿下、お願いがあるのだが・・・今日の午後に、北街道の山城砦に、物資とアレマン人たちを送りたいんだ。転移門をお願いできないか?わしも行くのだよ」

「はい。わかりました。転勤なんですか?」

「いやいや、軌道に乗るまで、管理するだけだ。だから、物資で一番重要なのはエールの樽なのだ!」

「なるほど・・・」

「じゃ、わしは少し寝るので、また会おう」

「はい」


Ⅱ 火がぼうぼう


 ふと見るとクリスタが、居ない。あれ?あ、ヘルマンさんのところにいる。少し心配したよ。最近は、クリスタが妹のような気がしてきたよ。僕はヘルマンさんのところに歩いていった。

「ヘルマンさん、おはようございます」

「おう、使徒様じゃねぇか。クリスタちゃん、ほれ、お兄ちゃんがきたぞ。あぶねぇから帰んな。これから火ぼうぼうやるからな」

 それを聴いてクリスタの炎魂に火がついたようだ。

「火ぼうぼう、見る!」

「え?」

 ヘルマンさんと僕は顔を見合した。

「クリスタ、ダメだよ。お仕事なんだからね」

「いいじゃん・・・」

「だめ~」

 クリスタが睨んでいる。僕はたじろいでしまった。

(やば、火つけられる)

「じゃ、燃える石に火をつける!」

 なんだ?燃える石って?あ、帝国から輸入している石炭ってやつか・・・僕は困ってヘルマンさんの顔を見た。お気の毒みたいな表情をしている。

「わかったよ、クリスタちゃん。ほれ、こっちだ、燃え燃え石に火をつけてくれるかい?」

「やったぁー。うん、喜んでぼうぼうにする」

 クリスタは、鉄を取り出すために造られていた炉のところに連れていってもらった。


「ほれ、ここだ。この粘土のとこね。じゃ、ぼうぼうってやってもらおうじゃないか?」

「は~い、任せて。でも届かないよ」

「あ、そうか、ほいよ。脚立」

「ありがとう」

 鍛冶小屋の隣には、城壁を背に、炉ができていた。シュトゥック炉というらしい。クリスタは、いきなり火をつけた。一気に石炭が真っ赤になっていく。

「すげぇ・・・すげぇな、クリスタちゃん」

 ヘルマンさんはどんどん石炭をくべている。

「ほれ、どんどん、ぼうぼうにしていいぜ!」


 僕は、後ずさりしながら、すうぅと消えるように中庭に戻った。

 さてと、アレマン村にいかないと。


 後で聴くことによると、クリスタの眼力で高温になった石炭のお陰で、かなり質のいい鉄ができたらしい。それからというもの、鉄を作るときは、必ずクリスタが呼ばれることになった。その鉄はクリスタ鉄と呼ばれるようになり、それから造られる切れ味のよい剣や刃物は、クリスタ剣と呼ばれ、塩砦の名物となり、高値で取引されることになった。勿論、クリスタ一家の生活向上に寄与することになったのであった。


 僕は、逃げるように砦の中庭から、アレマン村の広場に転移した。


Ⅲ アレマン人の村、再び


(いや、怖かった・・・勿論、クリスタのことだよ・・・最近、なんだか、子供に逆戻りしたかのような時があるからね)

 僕は、クリスタの置かれていた環境を考えていた。

ずっと生きていくために、大人にならなければならなかったことに気づいた。彼女は幼年期を大人に甘えて過ごすことができなかったのか。だから、ご飯が食べられるようになって、邪眼であることに苦しまなくなって、こう、やっと彼女らしくなれる時間ができたのだろう。だから、甘えられる相手には、無邪気に接するんだろうね。


僕は、ぼーっと広場に立っていた。なんだか急展開だったからね。考えて、整理して、自分なりに納得しないと、もやもや状態になるし、これは、健全じゃないからね。一番引っかかっているのは、例の暗黒司祭だ。何故、悪に転んだのか。考えても分からないからね。例の日記のような書物を読んだら、すこしは理解できるのかもしれないと思ったけど、呪いの言葉かもしれないって枢機卿様がおっしゃっていたから・・・

リーゼロッテ様のお父様、プファルツ伯様だって、国を守ろうとして、悪魔と契約しちゃったんだから、追いつめられると人はそうなってしまうのだろう。人の弱みに付け込むのって酷いよね・・・

「使徒様? どうしたの?」

「アポロニアさん、おはようございます」

「あれ、明け方に会っていなかった?」

「ああ、そうでしたね。そういえば、クラウディアさんはどこに?」

「彼女は、私と昨夜、砦に帰ったわ。アレマン人たちのお世話をする係になったのよ」

「護衛ですか?」

「ふふふ、シュテファニーとニコーレがいるから、大丈夫じゃないかしら。クラウディアは純粋にお世話するのよ・・・女性の要望をうまく砦の役人さんに伝えないといけないでしょう?男ばっかりだと気が利かないから。だから、砦のほうも、ベルタさんを起用したわ」

「そうなんですか。じゃ、お昼には会えそうですね。レオン様が、アレマン族の人たちを、北街道の山城砦に連れていくそうですよ」

「らしいわね。ねねね?知ってる?」

「何をですか?」

「銀鉱山と塩砦の地底湖が繋がっていたじゃない。カールマンさんが、もしかしたら、あの水の流れつく先は、ライン川じゃないかって言うのよ。それでね・・・もっと面白そうなのは、北の山城の地下にも、繋がっているんじゃないかって・・・どう思う?」

 アポロニアさんは、なんか胸がときめいているように、キラキラと目を輝かしている。やはり、アーベントイラーなんだな。確かに、あの城の下には、地下があって、水の流れがあった。雪解け水が流れているのだろう。

「そうですね。あそこの地下の井戸って、まだ秘密があるかもしれませんね」

「でしょでしょ?朝、カールがちらっと話してたんだけど、ライン川を渡るルート探索は、中止になりそうなんだって。侵攻計画自体が無理っぽかったでしょう?」

「うーん。そうなると、資金の提供が・・・」

「そう、なくなるのよ・・・人のお金で動いていた探索だからね。どうなるかわかんないって、カールが不安そうだったわ。公爵様は、目的を達成しちゃったし・・・いきなり仕事なくなるかもってね。

 でもね。アレマン人さんに、北の山城砦に住んでもらうようにすれば、兵士の不足も解消するっていうのが、オットー様の意見なのよ」

「まぁ、話は分かりますが、それと仕事との関係はどうなんですか?」

 アポロニアさんは、もうっていうような口をした。

「最後まで聴いてね。男って、いつもそうなのよ。小さくても男ね・・・

 あ、だから、その地下道よ。あそこは寒さが厳しいから、冬は閉めたほうがいいなんて言ってたけど、昔は、冬も人が住んでいたのよね。北街道の峠は閉ざされてしまって、関税をかける必要もないぐらい、人が通らないけどね。

 つまり、地下道がもしもあるのなら、冬でも、銀鉱山と塩砦、そして山城砦と行き来ができるってことよ」

(驚いた。そうか・・・面白いね)

「すごいですね・・・」

僕はそれ以外に言うべき言葉を見つけられなかった。枢機卿様のお付きの兵士さんに呼ばれて、ふふふって感じの謎の微笑みを残して、アポロニアさんは、族長さんの家に戻っていった。


 地下道ね。洞窟じゃなくて、地下道か。太古の謎の民が残した地下道、地下遺跡。驚きの連続だったけど、ゆっくりと考える余裕がなかったものね。整備できれば、かなり有利になるし、僕も転移門係でなくても良くなる・・・問題は、塩砦の地下迷宮は、地獄に繋がっていることだ。でも、誰も繋がっているところは見ていない。以前はいなかった魔物が現れるようになったから、そうだろうというだけらしい。

 実際、こっちの地下遺跡は魔物が出ないのだから、やはり、原因は、地獄に繋がっていることだろう。

 そんなことを考えながら、ずっと立っていた。座りたくても、ベンチが封印されていたからだ。

族長さんの家から枢機卿様がアポロニアさんと一緒に出てきた。枢機卿様は、まっすぐに僕のところにやってきた。静かな微笑みを浮かべながらだ。

「おはようございます。ベルンハルト様」

「おはよう。兄弟ミヒャエル」

「今日はこれからどうするのですか?」

「西の森へのルートの遮断です。残った草も焼かないとですしね」

 アポロニアさんが毒霧のマスクを取り出して、装着した。

「準備できました。参りましょう」


Ⅳ 地下室の先に


 僕らは、兵士さんと一緒に司祭館に入り、地下に降りた。地下には、かがり火の準備がされていた。低めのかがり火だ。これは、死人草対策だ。白い粉を燃やそうという狙いだ。

 床に開いている穴には、切断された死人草の茎が覗いている。油がかけらているようで、ギラギラしている。アポロニアさんは、断面を見ている。

「なんだか、キノコみたいな組織ですね。植物じゃないみたい」

 枢機卿様は、顔を輝かせて、頷いた。

「さすが、博識ですね。これは、死人草と言われていますが、実はキノコの一種らしいですよ。白い粉は、胞子というらしいですね」

「へ~。シュタインピルツェみたいな感じです。私達、イタリアにルーツを持つラテン人の間ではポルチーニと呼んでいます。料理をするので切ったことがあります。博識ではなく、日常生活の常識ですよ」なんか、アポロニアさん、謙遜しているよね。

 枢機卿様はニコニコして応えた。

「ほうほう、秋の味覚ですね。まぁ、これを食べた人は聴いたことはないですが・・・」

「いや、さすがに、死体に繋がっているのは、食べたくないですよ」

 二人は、顔を見合わせて笑った。


「さて、気色の悪い話はやめて、善後策を考えないといけないですね」

「そこの本にヒントはないのですか?」

「いや、文章に呪いの言葉が含まれている可能性もあるので、見ないようにしているんです」

「あ、アカデミーで習ったことがあります。音読しなくても、意味を頭で、たどるだけで発動する呪いですよね?」

「ベーネ!その通りです。これは厄介なものなので、触れないでいます。教皇庁に持って帰って研究しますけどね。無意識になって、自動筆記で書き写すというやり方があるのですが、独りではできません。時々、エクソシストに持ち込まれる依頼の中にありますよ。

帝国にも少なからず、悪魔教の信者がいますからね。彼らは自分のことしか考えません。すべてを利己的に考え、自分の利益だけを考えて行動します。だから、人が呪われようが関係ないんですよね・・・実に頭が痛いのですよ。彼らは地下に潜伏しています。教会の内部にも、毒されたものが入り込んでしまっている可能性もあります。行いを見ればわかりますが、悪事が露見しない場合もあります」

「恐ろしいです・・・希望が持てない世界だと、そっちに惹かれてしまう者は出てしまうのでしょうか。絶望は罪ですが、そうだと分かっていても、それに囚われると逃げるのが難しいのでしょうね。そして悪魔に近づく・・・」

「その通りです。パパ様が常に世俗領主に説いておられますが、神の栄光を示すためにも、飢えるものや、病気で苦しむものを、救わなければなりません。

 聖マルティンのように、雪の中で半裸で凍えている貧しい者に、自らのマントを切り分けるといった行為を、貴族や領主ができなければならないとね。

 昨日は、ちょうど聖マルティンの記念日でしたね」

「こちらでは、帝国で行われているようなお祭りはできないですから、残念ですね」

 枢機卿様は頷いた。悲し気な眼差しは、床に注がれている。


「この哀れな司祭に対しては、どうすることもできなかったのですが、再び同じような者が現れることがないように、行動していかねばなりませんね」

「はい、私も、悪魔の支配地で働く以上、気を付けます」

「心強いです。あなたのようなキリストの花嫁(著者注:修道女のこと)が、もっと増えるといいのですが・・・」

「枢機卿様、祈るしかありません!」

 そういって、アポロニアさんは、ロザリオ(著者注:数珠の一種)を手に持って見せた。

「ふふふ、参りました。あなたの言う通りですね」


「さてと、本題に戻りましょう。

 この茎は引きずりだせなかったんですよ。そして、地面に開いた穴いっぱいに広がっています。この穴の下で、大きく広がっている可能性があります。もしくは根を下ろしているかもしれない。しかし、キノコの類の根というのは、大したことはないですから、恐らく前者でしょうね。まぁ、いずれにせよ、地下に降りなければならないでしょう。根絶させないと、危険ですし。あと、族長さんも呼んでいるので、少し待ちますか・・・それまで、地下の地下に降りる隠し階段でも探しましょうか?」

「はい。枢機卿様?」アポロニアさんが何か訊きたそうだ。

「はい」

「なぜ、更に地下室があると思われたのですか」

 枢機卿様は、目を細めた。

「ふふふ、ここに見ていて、なにかおかしいと感じませんか?」

 アポロニアさんは、部屋を見回した。

「うーん。悪魔の実験部屋だとしても、簡素すぎますよね。帝国で働いている同僚のシスターから時々手紙をもらうのですが、悪魔と契約するものの部屋は、凄いことになっていると書かれています」

「凄いこととは?」

 アポロニアさんは言い淀んだが、決心したように語りだした。

「人体の一部だったり、赤子の死体だったり、悪魔を呼び出した際に使用したと思われる部屋だったり・・・まぁ、酷く汚く、整理されておらず、雑然として混沌そのものだそうです」

 枢機卿様は、満足そうに微笑みながらうなずいた。

「そうですね・・・あなたの言う通りです。私もこの部屋に入ったとたんに、違和感を覚えました。机と書見台の上にある書きかけの本だけ。しかも、いかにも読んでくださいというような開きかけ、ところが、ペンやインク壺がない。すぐに罠だと思いましたね。

 元司祭ということもあり、多少は秩序を重んじたかと思いますが、これは明らかにおかしいと言わざるを得ない。まてよ・・・本は、読んでください状態だが、トラップ・・・」

 枢機卿様は、黙ってしまった。考え込んでいるようだ。


「すみません。護衛を増やしてください。かがり火を追加で用意して、族長殿を呼んでください。謎が解けそうですとお伝えください」枢機卿様は、急に早口で、お付きの兵士さんに依頼した。兵士さんは走っていった。


「さて、私は、今朝、地下の床を確認したのです。しかし、叩いても確かに空洞のような音はするのですが、それは、一定の幅をもって、全体であることが分かりました。つまり、地下に洞窟なり、空洞があるが、床に細工のような、つまり、入り口ですね。それはないと思うようになりました。となると・・・」

「壁ですか?」アポロニアさんが言った。

「おう、さすがですね」

「ていうか、枢機卿様、床がなければ壁しかないですよね?」

「まぁ、そうですよ。それで、階段のない側の壁、三面に置かれている机を観察したところ、書見台のある机と、それに対向しておいてある机は、脚元が固定されているが、階段に対向する机、まぁ作業台のようなものですが、固定されていないことが分かりました。ほら」

 枢機卿様は、各机をがたがたと動かそうとしたが、書見台のある机はびくともしない。そして、その対向する壁に面しておいてある机も動かない。

 ところが、階段に対向する壁、つまり階段をおりてから一番遠い壁の前に置かれている机は、手前に引くと、石の床にこすれて、ガガガガと音を立てて手前に動いた。

 丁度その時、族長さんが階段を下りてきた。

「どうしました?何かありましたか?凄い音がしたので、どうしたのかと思いましたよ」

 族長さんは、状況を見て、音の原因が分かり、ほっとして、胸をなでおろしている。兵士さんは槍を構えて降りてきた。

「いや。どうやら、隠し扉がありそうなんですよ」

 族長さんは、驚いた顔をした。その顔を確認してから、面白そうに枢機卿様は続けた。

「調べたのですが、開かないのです。ただ、明らかに、中央の壁だけ、変なんですね。

 ほら、この壁は、石を単純に積んだのではなく、一旦木枠をつくり、その間に石を積んでいます。この面は、三つのパネルからできています。左右の壁のパネルは、斜めに斜材が入れられています。ちょうどハの字のようにね。

 ところが、真ん中のパネルはただ、四角に木材が渡され、その中を補強するように、石が積まれ、モルタルで接着補強されているのです。まぁ、この部屋は長方形ですから、この壁は短辺方向ですし、斜めの木材は要らないのかもしれません。

 ところで、族長殿、ここの村で、地下室を作る家は、ほかにありましたか?」

「あります。ただ、倉庫とか、保管用のワインセラーとか、その程度です」

「なるほど、地下室の作り方は、普通はどうですか? あと、地下水位とかは?」

 族長さんは少し考えて答えた。

「まず、地下水位は低いです。この部分自体が丘の下で、周囲の地面より、高いんです。だから、地下水は、もっと下に流れています。大抵の家が、石造りの床の一部を壊し、そこから、掘り進めて、壁は、そのままですね。剥き出しが多いです。浅い床下収納庫みたいなものですよ」

「ということは、かなり、この部屋は特殊なんですね?」

「はい。すべてが驚かされます。まぁ、かつて、銀山を開発していた人たちが、鉱山用の資材を大量に持ち込んでいたので、モルタルにしろ支保工にしろ、結構ストックがありましたが、厳重に管理されていましたからね。家については、私達の先祖がここに着いた時には、すでにあったそうです。私たちの先祖は、暖炉の煙が出ないように、かなり苦心したと聴いています」

「なるほど、苦難の歴史なんですね・・・」

「でも、神様は、皆さんを連れてきてくださった。アレマン人の村は、滅びの道から、救われたのです。しかし、これからですよね。男ばかりの村ですから、なんとか、若い女性に来てもらって、子孫をふやさないといけません」

「ふむふむ。さて・・・」

「あ、枢機卿様、申し訳ありません。地下の探索ですよね」

「いや、いいのですよ。ともかく、探しましょう。わかった事実から、推論を積み上げますと、怪しいのは、本です。しかし、呪いが掛けられていると思われるので、まず、本を読まなくて済むように、布を掛けます。そして、書見台を動かしてみましょう」

 枢機卿様は、布の下に手をいれ、ページをめくってみた。変化がない。次に、書見台から、本を浮かしてみた。何も変化がない。そして、布にくるんだ状態で、本を左側の机の上に置いた。書見台だけ机の上に残った。


「見たところ、普通に修道院で使われている写本用の書見台ですね。膝の上にも置けるし、机の上にも置けるし。上の部屋のものは、机式でしたね。これは・・・」

 枢機卿様は、そう言いながら、書見台を持ち上げた。ガタ、ゴトリという音が机の下からして、ギリギリという音が、続けて、例の壁のあたりで聞こえた。

「おやおや、想定とは違いましたね。押さえられたバネが弾けるとは・・・

 まさか、機械仕掛けですか・・・なるほど」


 地下室の例の壁が、少しずつだが、後方に壁ごとへこんでいった。そして、一メートルほどへこんでとまった。かび臭い臭いが流れ込んできた。地下室の更に奥にもう一つの部屋が見つかった瞬間だった。


いかがですか?

次回は、かなりグロイので、どうしようかな・・・


なろう向けに、薄めますか・・・

あまり、悪魔の所業について、細かく書くと、

こっちまで、メンタルがやばくなります。


よかったら、ブクマしてくださいね。

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