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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第75節 アーベントイラー アレマン村の防衛強化

なんか、今日は暖かでしたね。

風が強くて寒かったけど、ガラス越しに日を浴びていると

ぽかぽかして気持ちよかったです。

Ⅰ 女将さん


 食事のあと、僕たちは、これからのことについて作戦会議を始めた。

例のダークプリーストは、教皇庁からのエクソシスト待ちだ。相当やばいらしい。

ゴブリンが攻めてくる可能性について、オットー様から指摘されたので、正直ビビっていた。西や東にいって、リザードマンやアンデッドと戦って自滅してくれるならいいのだが、こういう時は大抵、最悪のパターンになることが多い。

 だから、はぐれゴブリンの大軍が、住処を求めて押し寄せる可能性について、そのまま実際に起こるものとして、計画を練ったほうがいいということになった。


 まず、防衛強化策として、丘というか山の下の方の出入口だ。見た目が、穴という形状で、ゴブリンの巣と変わらない感じだそうだ。だから、彼らは、すぐに入ろうとするし、もしかしたら、今も入ってきているかもしれない。もう、公爵領に変わることを前提として、入り口を改修したほうがいいだろうということになった。費用や職人は、オットー様に相談することとなり、その担当は、僕になった。げ、なんで?


 一番の問題は、村の天井の大穴だった。ゴブリンなら野生の蔓をつなげたロープを使ってやすやす降りてくるだろうという予想だ。

 クラウディアさんが、天井を木でふさいだらどうかと提案したが、大穴の直径はかなり大きく、最低でも30メール級の大木を倒さないとふさげないようだ。これは難しいだろうということになった。

広口の壺のように、穴の周囲の内側を掘り込んでいるらしく、大木を穴の縁に載せると、縁ごと壊れて大木が落ちてくる可能性があるとのこと。長年の雨水の影響で、もろくなっている土の部分もあるらしい。


 そこで、結界装置を沢山穴の周りにつけたらどうだと、アポロニアさんが提案した。しかし、結界装置は、宮宰様の配下である、騎士で、錬金術師のフィリップ卿の領分だ。ただ、地上種のゴブリンの場合、聖結界に慣れているものもいるらしく、効果は不明とのこと。

 これも、フィリップさんとの関係から、僕が担当になった・・・なんでなの?いじめ?


 次は、村の若者の軍事訓練だ。装備強化と基本的な剣の扱いなどの訓練が予定された。これは、担当がカール団長になった。明日、朝から村の若者を集めて、適性を見ることになった。これは全員参加。

 なぜか、族長さんが張り切って、わくわくして、目をキラキラさせている。


 訊くと、聖騎士になりたいそうだ・・・すっかり、オットー様のファンになったようだ。

(困ったな・・・心酔するのはいいんだけど、実力伴わないと、死ぬよ、マジで)


 次は、ブロックドアの建設だ。敵に侵入されたときに、命を守る?いや延命措置だよね。そう簡単には、破れないドアを随所に造っておくと、逃げるのに時間を稼げたり、味方や援軍が来るまでの時間稼ぎになる。手始めに、各家の玄関ドアや窓の強化が図られることになった。この担当はダブル双子チームになった。守備の専門家と、村人の組み合わせということだ。族長は、これを機会に、双子同士の結婚を村人に認めさせようという魂胆だ。


 あとは、アポロニアさんの提案だが、毒薬に対抗するための、解毒薬づくりだ。

これのために、塩砦付近の森で、薬草を集めることになった。もとはと言えば、アレクシスさんの毒水事件から着想されたそうだ・・・確かに、ゴブリンたちは毒を使う。呼吸ができなくなる神経毒とかが多いそうだ。このあたりは、教皇庁で研究されているらしく、教科書まであるとのこと。


 なんだかすごいことになってきたよ・・・


 いざ、お開きとなった段階で、女将さんが挨拶にやってきた。

「いつも御贔屓にしていただいて、誠にありがとうございます」


 げ、女将さんがいつものドローンとしたジャージみたいなワンピースじゃなくて、民族衣装と思われる服を着ている。しかも、どやって顔が言っている。


「す、素敵で、無敵ですね」あ、カールさん、減点ですよ。


 そのあたりは、女性陣に任せておけばいいのにね・・・

「しゅ、しゅご~い、素敵ぃ~」

「うあ、刺繍が手が込んでますね、これは、晴れ着ですか?」

「そうなのよ・・・シュテファニーちゃんやニコーレちゃんに影響されて、探しちゃったわよ。もう何十年も着てなかったけどね~、着れるものね~」

(いや、着れるじゃなくて、切れてますよ・・・ウエストとか)


 だれも、視線は送るが、切れているところには、絶対触れなかった。

「ちょっと、アレクシス、ウェストばかり見ないでよ!」女将さんが怒っていた。

(さすが、アレクシスさんだね・・・)


「今回ね、アレマン双子の二人が、誇らしげに着ていたでしょう?あたしね、感動したの・・・

 今までさ、ザクセン人に気を使って、着ていなかったけど、私はバイエルン人だって、どうしようもないじゃない?バイエルン傭兵団のバカ達みたいに、もっと主張してもいいんじゃないのかなって思ったの。これね、ディアンドルっていうのよ。農家のお嬢さんっていう意味なのは、皆ゲルマン人だからわかるでしょう?

 私たちの晴れ着はこの作業着なのよ。これで、ごミサだって出ちゃうのよ。これしか服が無かったからね。あなたたち戦士が、リウドルフィング家の紋章の服を着て戦うのを同じなのよ。私は、バイエルン人の服を着て、この聖戦を戦うの・・・料理でね。だってそれしかできないんだもの・・・」


 皆が感動していた。自然と拍手が起きて、なんかしんみりした。思えば、この170年にわたって、僕ら人間は戦い続けていたんだよね。


 お開きとなって、帰る間際に、僕は、女将さんに呼び止められた。何か訊きたいことがあるようだ。


「ね、ね、使徒様。アーデルハイトにも、民族衣装を作ってやりたいんだけど、どうかしら?」

「はい。いいのではないでしょうか・・・しかし、彼女がどの部族出身だったかは、僕、知らないんですよ」

「あ、そうなんだぁ・・・アーデルハイトに訊いても、わかりませんっていうのよ」

「うーん、ブルグンド王国の末裔とか言ってましたけどね・・・」

「なにそれ?まさかブルグンド族のことじゃないわよね・・・もしかして、オットー大帝の奥さんのブルグンドの聖アーデルハイトのこと? それじゃ、民族衣装なんて着たことないわよね。王族だもの。ま、200年も前の話だけど、それだと、多分フランク族ね。まぁ、あれぐらいの年の女の子っていうのは、夢見がちだからね・・・

 私も孤児だったけど、随分と妄想には助けられたわ。実は、ぼろぼろの服をきた、この私が、バイエルン大公の娘だったという設定ね。今思えば顔が赤くなる話だけどね・・・

いつかは、このどん底の暮らしから助けてくれる騎士様が現れるって思っていたから、耐えられたのよね・・・」

 女将さんも苦労したんだね。この街に暮らす人は皆、生活の基盤を持たない人が多い。それは、大侵攻で、着の身着のまま流れてついて、そのままだからね。まぁ、僕もそうだけど。



Ⅱ 族長さんの家で


 その日の夜は、族長さんの家に泊まった。マルコやアンドレアス、それに、カミルとその友達も遊びにきた。男ばっかりだ。


「皆さん、細やかですが、食事を用意しました。ワインとともにお召し上がりください」


 でもね。さっき食べたのよ? 入らないよ・・・


 族長さんは、留守番をしていた、マルコ達に、玉ねぎケーキを食べさせたかったらしい。女将さんがお土産で持たしてくれたのだった。


 食事が一段落したところで、唐突にカールさんがマルコ達に話し出した。

「マルコ達は、強くなりたくないか?」

 突然の話に、マルコ達はどう返していいのか分からないようだ。それで、族長さんが、今日あったことを話だした。彼らは、外回り組みだ。もともとアーベントイラーとしての素質を持っているからこそ、志願したわけだ。興味深々で、自分たちも見に行きたいと言い出した。

「明日、朝に、ちょっと装備や武器を見せてもらうよ。ある程度のレベルに達していないようなら。一度砦にきて、訓練を受けてもらうし、それに装備を少し良くしたい。お金は気にしなくてもいい。聖騎士オットー様より、公爵軍持ちで、支給していただく許可を得ている」

「お~」

「すげ~。いいんですか?」

「やったぁ」

 カールさんは、皆の反応を見て、嬉しそうな顔をした。しかし、すぐに顔を引き締めて眉間に皺を寄せて言った。

「ともかく、生き延びることが一番大切なことだ。そのためには、無茶をしないことだ。

蛮勇はカッコいいことではない。俺が、俺様が、といって飛び出していったやつが生き残った試しがない。自分に技量がないのなら、頭を使え、攻撃力がなくても、防御さえできれば、生き残れるからな。わかったか?」

「はい」全員の良い返事にカールさんはまた表情を緩めた。

「よーし、明日は朝から塩砦にいくぞ。今日は早く寝ろ、じゃ、解散!」

「おう!」

 いいね。なんか、みんなが、やる気満々だ。


 その夜は、砦に帰らないで、族長さんの家に泊めてもらった。男性たちだけだ。女子たちは、転移門で戻ってもらった。


Ⅲ 漏れだす邪気


 その夜だった。夜中に、僕は、急な悪寒で目が覚めた。全員が、暖炉の前で藁を敷いて、一緒の雑魚寝だったのだが。

僕が目を覚ますと、カールさんが、暖炉に薪をくべていた。パチパチを音を立てながら、炎を上げて燃えているのに、寒いらしい。盾職の二人とアレクシスさんは、マントにくるまって寝ているが、起きる気配はない。

「おや、使徒様も寒かったかい?」カールさんは、微笑んでくれたが、どこかぎこちなかった。僕は子供ということもあり、暖炉の前で、しかも熊の毛皮敷きまで貸してもらっていたのに・・・寒さで目が覚めたのだった。

 眠れなくなってしまったので、暖炉の前に座って、カールさんと一緒に火を眺めていた。

「使徒様、なんとなくなんだけど、こう、視線を感じないかい?こうまとわりつくような冷たい視線なんだ・・・気のせいかもしれないのだが」

「うーん、視線は感じないのですが、なんか、右側だけ妙に寒いんですよ」

「体の右側かい?」

 僕は、すこし考えた。いや、身体の右側じゃないな・・・だって右を向いて寝ていたんだ。寒いから、寝返りを打って、そして背中が寒くて・・・

「右というのは、身体ではなく、こっち側です」僕は暖炉に向かって右側を指した。

「む?待てよ。そうか、そうかもしれないな。寒くて目が覚めた俺たちは、暖炉に向かって右側に寝ていた。こっちの壁が冷たいのかもしれないな」

 カールさんは、そう言いながら、立ちあがって、壁を触りには行かなかった。

「使徒様、明日もあることだから、寝よう」

「カールさんは寝ないのですか?」

「寝るよ、勿論だとも。昨日族長から貰った、ワインが革袋にあるから、少し飲んで、あったまってから寝るよ」

 カールさんは、そう言って、枕元に置いていた、革袋を取り出した。

「じゃ、使徒様、お休み」

「お休みなさい」

 僕は、カールさんがくべてくれた薪の暖かい火のおかげで、眠りにつくことができたようだ。目が覚めたら、皆が既に起きていて、藁の片付けをしていた。

「やぁ、目が覚めたかい? よく寝ることができたかな?」

「はい、お陰様で。カールさんはどうでしたか?」

 凄く疲れた感じがあったので、訊いたのだ。


「・・・寝れなかったよ。理由は・・・あとで、話すよ」


 簡単な食事を頂いて、広場に集合した。カールさんは何か気になるようで、族長の家のほうを何度もチラ見している。いや、隣の司祭館を見ているようだ。

「今日は、武装してきていると思う。予定を変更して申し訳ないが、今日の訓練は、塩砦で行うこととした。早速、転移門で砦に向かうが、なにか困ることはないか?」

「戻りは夜ですか?」カミルが質問した。

「なにか用事があるのか?」

「はい、親の面倒を見ないといけないので」

「そうか、昼飯だな?分かった。配慮しよう」

「ありがとうございます」

「うむ。では、使徒様。お願いします」



Ⅳ 新兵検査


僕らは、塩砦の第2門前広場にいた。

皆、鉱山の子供たちは、興奮冷めやらぬといった感じだった。

「これが転移門か・・・驚いたよ」マルコが驚愕の表情のまま言った。


シュテファニー達女性は、砦に泊まったので、先に正門前に、集まっていた。カールさんが皆に声を掛けた。

「おはよう。これから、砦の食堂を借りて、会議を行う。まぁ、会議というより説明会だな。とりあえず、砦に行こう。ついてきてくれ」


 皆が、カールさんに付いてゾロゾロと砦に歩いていった。歩きながらも、マルコ達はすげーばかりいっていた。


 食堂について、全員が着席すると、カールさんが話始めた。

「今日は、君たちに新兵検査を受けてもらう」

男子たちが、びっくりしている。その表情を見て、カールさんがにやりとした。

「これは徴兵ではないので、忘れずに・・・

あくまで、諸君らが、村を、そして自分の家族を、自分自身を守れるようにするための検査であり、その上での装備支給だ。これから、練習場で、全員を個別に診断する。

 剣士に向いているもの、アーチャーに向いているもの、盾職、槍職、など、適性を見て、そのあと、砦に戻り、装備を調達する。適したものが無い場合は、取り寄せ、もしくは誂えになるので、時間がかかる。どれも、お金は要らない。公爵様が揃えてくださる。いいな?」

「はい」

「よし、では、練習場に移動する。ついてこい」

「おう!」

 みんなニコニコだ。初々しくていいね。しかし、男子ばかりだ。これが、族長さんが言っていたことね・・・男ばっかりで、次の世代が生まれないってやつだ。


 最初は、クレメンスさんの装備診断だ。名前と年齢を訊いて、身に着けているものを、チェックしている。次は、コンラートさんの、身体測定だ。メジャーで、胴回りとか、腕の長さとか、顔の大きさとか、絵っと思うような、あちこちを測っている。


 次は、木剣による、剣士の適合試験だ。試験という大層なものではないが、動体視力や、俊敏性とか、戦闘への慣れなどを見る。マルコは、木剣で打ち込まれたのに、結構筋がいいと言われていた。


 そして、いよいよ、アレクシスさんの槍道場だ。

みんなビビっていた。見た目が狂戦士だからだろう。いや、正確にいうならば、狂った戦士そのものだった。木槍の先端に綿を詰めた布をつけて、突きまくる槍筋に、殆どの若者が破れた。おらおら戦法だ。こんな戦法をしているアレクシスさんを見たことが無かったけど。

アンドレアスだけは、間合いを詰めさせないフットワークで、何度か、おらおら槍を交わして褒められていた。

「おめぇ、槍やれ。筋いいぞ。運動神経がいいんだな」

 アンドレアスだけ、槍斧も訓練させられた。

「おめぇ、ぱりぃがダメなんだよ。俺ら槍を両手でもつと、盾が使えね、だから、槍で防御もするんだよ。こういう風にな」

 ぱりぃって、回避みたいなやつのことか・・・


次が、弓練習場だ。クラウディアさんが、講師だ。何人かが自前の弓を持ってきていた。

一番最初は、クラウディアさんが、模範演技をした。一番遠いところから、奥の的の中央にあててみせて、喝さいされていた。そういえば、この間、クラウディアさんが、スリングで壊した的はそのままだった。実は、怒られたらしい。今度、罰として自分で修理するそうだ。


 2番目に、シュテファニーさんがすこし近い的に挑戦した。そしてニコーレさんもだ。 そのあと、男子達が挑戦したが、的に届くことがなかった。

「双子の二人は合格ね。弓と矢を新しいものにしますので、練習を開始してください。今の矢とは重さとかバランスが異なるので、調整しないとダメです。まぁ二人ならすぐ慣れるでしょう。他の人たちは、弓を支給しますが、メインの武器を中心に練習してくださいね」

 クラウディアさんが、ウィンクした。あ、男子たちのクラウディアさんを見る目が・・・すごいな。若い女子が双子しかいなかったから、そりゃ、そうなるよね・・・ファンクラブでも結成される勢いだよ。


 次は、支給品だ。

 マルコは、鋼鉄製の剣を貰って相当喜んでいた。しかし、剣には封緘がされた。切れ味が良すぎるので、暫くは木剣による稽古が義務付けられた。封緘を解くのは、オットー様との稽古で合格するまでだ。

 アンドレアスは、槍を貰った。これもマルコと同じく、暫くは使わせてもらえない。カミルは、小さい手斧だ。防具に関しては、全員盾と、チェーンメールとヘルメットだが、これらの内幾つかは制作に時間がかかるので、待つことになった。カミルはまだ小さいので、装備は盾と小さめのヘルメットだけだった。泣きそうなカミルに、カールさんが気づいて、先で、立派な鎧をって約束してもらっていた。その代わり、大きくならないともらえないという話だけど。


 今は、全員が、ヘルマンさんのところにいる。ヘルマンさんは大忙しだ。細かい採寸をして、図面に書き込んでいる。


 シュテファニーさんの番になった。クラウディアさんが、張り付いてみている。

「おじさん、シュテファニーちゃんを測る時に、いやらしい目でみちゃだめよ」

「おいおい、頼むぞ・・・やりにくいよ・・・」

「そうだな・・・オットー様から、この二人は要になるから、致死率を下げるような装備にしてくれと、言われているんだよ。難しいよな・・・とりあえず、チェーンは不要だろ?アーチャーとして、あとは、レンジャーとしての装備とも言われているからな。

 順当なのは、なめし皮を強化させた皮鎧といったところだが、試作品のブリガンダインがあるんだけど、着てみるか?」

「えー、ブリガンなら私も欲しいんですけど・・・」クラウディアさんが主張している。

「クラウディアの今着ている鎧のコピーだよ。まあ、改良品だ。ほれ、着てみな」

 シュテファニーさんは、緑色のブリガンダインを受け取って、袖を通した。

「これは、微調整ができるし、さらに、部分鎧を追加できるんだ。ちなみに肩から籠手までな。あと、首にも、返しをつけたら完璧だ」

「すごいですね・・・いいんですか、頂いても?」

「礼なら、オットー様達に行ってくれ。微調整は飯食ったらやるから、またきてくれ

あ、双子のもう一人の姉ちゃんも一応着てみるかい?サイズ同じじゃねぇのかな?」

「一応着てみてもいいですか」ニコーレさんが、おずおずと尋ねた。

「いいよ。ほら。見た感じは同じだが、微妙に改良してあるんで、姉妹のは、少し違うんだ。防御性能に差はないがな・・・二人とも、微調整がすんだら、矢打ってみてくれ。打ちにくいようだったら、再調整な。あと、鋼鉄製の矢じりを使ってくれ。クラウディア・スペシャルと名がついているんだ・・・つけさせられたんだけどな」

 へー、ヘルマンさん、姪っ子可愛いんだろうな。すこし羨ましいよ。


 マルコ達は、短剣が沢山入った籠をヘルマンさんから受け取っていた。

「族長とか、長老とか、お前たちの両親なら、これで十分だろう。下手に長いと危ないからな。護身用だ」


 というわけで、お昼ごはんになった。明星亭は、これだけの大人数だと入れないので、砦の食堂を借りた。カミルは、お弁当を貰って、一人、村に帰った。勿論、親の分もありだ。


 カールさんが、食堂の片隅に僕を呼んだ。例の話だろう。眠れなかった昨夜のことだ。

「使徒様、今夜はもう泊まりたくないな・・・あの部屋はおかしい」

「でも、他の3人は大丈夫でしたよね」

「まぁ、あいつらは、繊細じゃないからな・・・」

「結局何があったんですか?」

 カールさんが、黙ってしまった。目は落ちくぼみ、何歳か老けたように見える。カールさんは重い口を開いて、ぼつぼつと話し出した。

「朝、起きて気づいたんだが、俺の寝ていたところは、外が、例のあれの家だったんだ」

「司祭・・・」

 カールさんが、人差し指を伸ばして、僕の唇をふさいだ。

「すまん、聴きたくないだけなんだが・・・寝ようとすると、声が聴こえるんだよ。誰の声かは分からないんだが、もう、誰だかは分かるよな?誘いの声だ・・・あれを聴くと生気を吸われているような感じだ。今日はブルーノ神父様がいないので、相談できなかったし・・・」

 カールさんは深刻な状態のようだ。放置するのは危険な感じがする。

「失踪して、アンデッドにされた村人が結構いるらしいが、恐らく、昨日の声を聴かされて、おびき寄せられたのではないかと思う」


 カールさんの瞳は生気が感じられなかった。すでに、アンデッドになりつつあるのではないだろうか・・・僕は、ものすごく不安な気持ちになった。


いかがでしたか?


実は、昨日1日だけで、1000PVを超えました。

本当にありがとうございます。

もっと頑張って書いていきますので、

ブックマークや感想お願いします。


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