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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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閑話 アーベントイラー 無くした帽子

閑話ですが、実は前話と呼応しています。

「ニコーレ、先に行ってるわよ・・・」

「まって、一緒に行こう?」

 私はドアのところで、準備が遅い、ニコーレを待っていた。

「早くしてよ。今日は街道まで点検にいくのだから、みんなを待たせることになるわ」

 ニコーレは、帽子を手にとって、室内を走ってきた。この帽子の形が、私たち姉妹のトレードマークだ。縁があって、鳥の羽飾りがついている。この飾りが右についているのが、私で、左についているのがニコーレ。毛織物だ。古いけどね。


家の外に二人で出ると、今日の遠征隊のメンバーがすでに集まっていた。

「やっと出てきたな。双子。すぐに出発するぞ」

 遠征隊長は、部族長の息子だ。先祖から受け継いだ、皮鎧を着ている。私達の装備は、本当にお粗末だ。武器も先祖から受け継いだ昔のものばかり。だから、古いものだけど、手入れは行き届いている。外はあまり明るくないが、これが日常だから、気にならない。私たちの村は、古い銀鉱山の中にあるのだ。洞窟の一部が、掘削されて前後左右に、横に広くなっている。

 洞窟の天井は20メートルぐらいの高さで、丸い大きな穴があいている。これは、昔は露天掘りだった名残だ。つまり、昔の人が銀を掘り当て、どんどん採掘していったら、洞窟を掘り当てたという話らしい。露天堀りしていたのは、私達、アルマン人ではなく、かなり前の人たちだそうだ。どこかに去ってしまった人々だ。いまだに、その人々の痕跡は、残っているので、他人のような気がしない。ケルト人というらしい。


 余談だが、この穴から、時々猪が落ちてくる。大抵即死だ。そして、その夜は、村では猪肉が配布される。昨日は、たまたま、そういう当たりの日だった。でも、魔物猪だったが・・・


 私達、アレマン人は、もう、160年ぐらいは、この穴に住んでいるらしい。


 もともとは、ライン川に向こう側の小さな村に住んでいたとか・・・バイエルンだったところからライン川に向かう古代ローマ人の造った街道のずっと先だ。しかも険しい高山地帯に村があったらしい。

 私たちの先祖は勇猛果敢な強い部族だったらしいが、悪魔に率いられたデーモンの軍隊に成す術が無く、流れ流れて、この銀鉱山にたどりつき、ここに潜伏した。

デーモンが進軍してくる前に、街道の北に逃れられた部族は幸運だったと思うが、私たちの村のアレマン人は、行く手を悪魔の大軍に阻まれたのだそうだ。そして、鉱山の洞窟に逃げ込んだわけだ。かつて、このあたりを治めていた古代のケルト人たちが、おそらく鉱夫を生業とする人間だろう、住んでいたので、快適だった。冬は多少雪が入るが、洞窟内は一定の温度に保たれている。私たちが住み着いてから作った小屋は、料理の火で暖まるような小さなものだからだ。

 この料理の匂いを如何に外に出さないかについては、私たちの先祖は、相当苦労したようだ。炭をつくり、高温で調理し、煙突には匂いを吸収する設備を使っている。大したものではないが、生活の工夫だ。炭焼きというのも、ここに来てから始めたそうだ。


 洞窟の外は、魔物だらけだ。もう、160年、魔物だらけだ。ひっそりと生活しているが、やはり、手にいれたいものは、時々ある。例えば、白柳の枝、菩提樹の葉や実、ラベンダーなどだ。これらで薬草を作るのだ。私は、子供の頃、よく熱を出したので、母は苦労したようだ。しかし、薬師が作ってくれる薬草が面白いぐらい熱を下げてくれた。部族としては、これらの植物を洞窟内で育てたいが、日光が足りない。


 遠征隊は、時々、近くの同じアレマン人の村だったところに、薬草などを採取に向かう。ここの住民だった彼らは帝国の領土に逃れることができたのだろう。しかし、街道を北上した、デーモンの軍勢はものすごい数だった。もう、帝国は滅ぼされてしまったかもしれない。私たちも家畜を連れて逃げていなければ、帝国領に入れて、そして、追いかけてくるデーモンたちに殺されていたかもしれない。家畜を洞窟で育てるのは大変だ。日光にあててやるためにも、一番日当たりのいいところは家畜が住んでいる。


村はずれに、皆が集まっていた。私達が着くと・・・

「本当にすまん。できれば、例の村までに行きたいのだが、無理なら諦める」族長の息子だ。

 この前、採取に向かった南の村で、ゴブリンに襲われ、どこかの木の根元に、先祖伝来の剣を置き忘れてしまったのだ。採取している間に、剣を木に立てかけておいたのだが、ゴブリンに急襲されて、逃げてきてしまったという次第だった。置き忘れたら、ゴブリンが放置するはずがない。もうないだろうな・・・族長の一族は、ノルマン人の血が入っているらしい。ノルマン人の襲撃略奪部隊から追放されて逃れてきた一人の戦士を、族長の娘が拾ったらしい。そのノルマン人が持っていた剣だそうだ。鉄が取れないこの洞窟では、鉄でできているだけで、超貴重な剣だったのだが・・・


私たちは、南側にある洞窟の出口まで歩いていった。この出口が異常に狭い。そして、ドロドロだ。匍匐前進しないと通れないので、出るときは、いつも、顔、手、服が泥まみれになる。大雨が降ったときは、泥水の中を潜水しないと外出できない。これがまた、実に嫌なことではあるが、私たちの部族を守ってきたのだろう。


「もう、髪の毛に泥がつくって嫌よね・・・」ニコーレがぶつぶつ言っている。


今日は、定期的にしているパトロールだ。私たちの村は、南にゴブリンの巣穴と、北に悪魔軍、西には、アンデッドの群れ、東はリザードマンと、四方敵だらけだ。一番の敵は、アンデッドだろう。これは、私たちの村の裏切り者の集まりなのだ。


彼らは、160年の間、ずっと存在し続けている。そして、私たちがここに住んでいることを知っている。だから、実に厄介な連中だ。もともとは、悪魔と契約したダークプリースト一人だったのだが、死体を盗んでは、アンデッドを増やしたのだった。しかし、これらは、アンデッドというよりは、死体ゴーレムというべきだろう。腐敗に耐えられず、数十年は持たないのだ。じきに物理的に動かなくなる。


今は、墓場を洞窟の奥に移し、火葬するようにしているので、死体ゴーレムは居なくなったが、果樹園や家畜の餌採集、小麦の農場などにこっそりと出かける村人に甘言を囁き、誘拐して、仲間にするということを繰り返している。永遠に生きることができるというのは、穴で暮らす人間にとっては、魅力的だ。永遠に生きられるはずがないのだが、理解していない村人は多い。教会学校もないので、教理も、キリスト教徒としての常識もない。

それに、村には神父様がいないのだ。かつては居たが、死んでしまった。そして、神父様は、誰もが、なれるわけでなく、叙階の秘跡が必要だ。でも、叙階ができる、司教様もいない。洗礼はできたとしても、罪の許しとか、様々なことができなくなったままだ。このままだと、地獄に落とされてしまうのではないかという恐れが、甘言に耳を貸してしまうきっかけになるようだ。実際は魂が地獄に連れ去られるのを伸ばしているだけなのだが・・・



村をでた遠征隊は、途中で、農作業をしている村人を見回る。小麦は、耕すことなく、他の植物の中に生やす方法だ。そろそろ冬になる前に、種をまく。そして、その後はまわりの雑草を間引いていく。結構収穫できるのだ。他にライ麦だとか、ゲルマン人らしい作物は、自然農法とやらで育てている。

農作業隊には、警備隊がついている。何人かとあいさつした。うちの部族では階級がない。というかフラットな組織だ。もともと土地を持つのは貴族の領主だったのだが、彼らはとうに館を捨て、北に逃げた。残された村人は、自由民になったのだ。実質捨てられただけだ。


街道は歩かない。リザードマンの斥候部隊が歩くことがあるからだ。トカゲなのだから、土や草の上のほうがいいかと思うのだが、彼らは街道の石の上を歩くのが好きなようだ。しかも日当たりがいい石のところに長く居座る。猫みたいだ。猫は、村に多く暮らしている。作物をネズミから守ってくれるからだ。彼らも家畜と一緒に逃げてきた。あとは、アレマン人の捨てられた村から拾ってきたりしたようだが。


パトロールコースを進んで、例の防衛ラインに着いた。

「おい、ゴブリンの死体がないぞ」

「魔物か動物に食われたんじゃないのか?」

 私たちは、街道の傍まで下りてきていた。村から来ると、ここからまで街道は山道になっているのだが、このあたりから平地になる。もともと、東西を走る街道が、造りやすい平場を通していたからだろう。私達は、ここに迎撃用の拠点を設けている。木の上に弓の発射台があるのだ。


 私たちの間に衝撃が走った。


「どうする隊長?」

「あぁ、剣は諦めるよ・・・」

「そうじゃなくて、調査するとか、逃げるとか、指示してくれよ」

 みんな子供のころからの付き合いだ。仲はいい。

「ごめん。ニコーレとシュテファニーは、発射台に乗ってくれ。それから・・・アンドレアスと俺で街道を調べよう。カミルは、発射台の近くで援護を頼む。落とし穴に落ちるなよ。他は街道の東西を監視してくれ」

 族長の息子は、意外としっかりしているのだが、剣を無くしたことから、自信を喪失して、腑抜けになっているようだ。無理もない、今彼が装備しているのは、銀の穂先の槍だけだ。鉄ではない。ゴブリンを見事に射抜いた私たちの矢も銀製だ。できれば回収したかったのだが、仕方ない。


 ニコーレが、先に発射台に上っていった。その後ろを一緒に私が上る。実は、東の木の下には落とし穴がある。さも登れるような手掛かりや足がかりがあるのだが・・・


 だから、一旦西の木に登ってから、東の発射台に乗り移る。もう、何年もやっているので、得意だ。ニコーレが隣の木にうつってから、私は発射台に乗った。

「ニコーレ、やばい。誰かが上った跡があるわ・・・」

 私は、急いで鳥の鳴きまねをした。危険があるときにする合図の鳥だ。


カミルが、慌てて周囲の警戒を始めたようだ。穴に落ちないといいのだが。

みんな木の下に集まってきた。ニコーレがこっちの木に移ってきた。

「シュテファニー、だれかって?魔物?」

「わからない。少なくともゴブリンじゃないわね。ゴブリンなら汚すし、壊すし。いや、ここの手すりに薄く粉をつけておいたのよ・・・誰かが触るとわかるようにね・・・とにかく下におりましょう・・・」

 私たちが下りると、そこにはアンドレアス達が戻ってきていた。

「どうした、シュテファニー」アンドレアスが心配そうに緑色の瞳で見つめてくる。昔、私が好きだった人だ。一瞬、発射台に刻んだ文字を思い出してしまった。見られたらマズイ。いや、上から刻んで消したから大丈夫か?

「だれかが発射台に上って手すりに触ったのよ。つけておいた粉が無いの」

「気のせいじゃないかと言いたいが、君の習慣は侮れないからな・・・」アンドレアスがそう言った。

「で、どんなやつらなんだ?」

「ゴブリンじゃないわ・・・アンデッドじゃないし、リザードマンじゃ台が壊れるし、登れる体じゃないし・・・ていうか、隣の落とし穴を察知して避けている・・・相当なレベルの敵だわ・・・この付近に居なかったような新手の敵だと思う・・・」

「未知の敵か・・・一番厄介だな」族長の息子が、暗い目で私を見た。

「そうね・・・私も見たけど、手すりの上の粉は、落とされていたは、だれかが触って強度を確かめたみたいな触り方だった。あの粉は白いのだけど、人肌ぐらいの温度に上がると無色になるのよ。だから、触った相手も気づきにくい」ニコーレが援護射撃的に発言した。

 アンドレアスが、族長の息子を見ていった。

「どうする、マルコ」

「一旦引こう。接触は絶対避けたい。発射台を見られたということは、やつらも俺たちのことをある程度察しているはずだ・・・今も、どこかでここを監視しているかもしれない。後をつけられないように、南に渡り、森を抜け、東のほうがいいか?西には向かわず、街道を渡って、崖地帯を登って村に戻ろう。

「崖を登るのは危険だぞ」

「わかっているが・・・そうだな、カミルもいるし・・・すこし、潜伏して、街道を渡ってから、東に戻って、街道をわたって戻ろう・・・それでいいな?」

「おう」

「いいぜ」みんなが納得した。

 こういう柔軟性と、論理的なところが族長の息子マルコのいいところだと思う。それから私たちは、一人ずつ街道を渡り、南の森に移った。ここから東に向かって、また北の森に戻るのだ。


「伏せろ」アンドレアスの声がした。私たちは、しゃがんだ。もちろん剣などは抜いたままだ。アンドレアスが、街道のほうを指で指した。青ざめている。


 そこには、青い卵のような大きなものがあった。そこには黒い穴が開いている。次の瞬間、そこから戦士が出てきたのだ。

「にげろ、南に行こう。音を立てずに走れるか?」

 私は見てしまった。私たちの新しい敵を・・・最初に出てきた魔物は、大きな盾を持ち、大きな斧を持っていた。輝く兜をかぶって、鎖帷子を着ている。それどころじゃない。光る金属の、多分鋼鉄の籠手を着けて、足にも同じ金属の部分鎧だ。そして、みたことのない、これも鋼鉄のような胴鎧を付けている。続けて出てきた戦士も、まったく同じ背の高さで同じ装備だった。こいつらって、魔物の軍隊?いや悪魔軍の正規部隊じゃないの?


 ニコーレが、私の袖を引っ張った。しまった。逃げ遅れたか?もうみんないない。私は、ニコーレを追いかけて走った。気づかれたかもしれない。でも振り返ることはできない。低い姿勢で、泥だらけの服で、ゴブリンのように地面を這うように逃げた。しかも、帽子を途中で無くしてしまった・・・


 惨めだった。悲しくなってしまった。窪んだ地形の中で隠れていた皆に、やっと合流できたが、泣けて泣けて、どうにもできなくなってしまった。しかし、音を漏らすわけにいかない。ニコーレが頭から袋を被せてくれた。採集用の袋だ。


「見たか?」マルコが小さい声でみんなに確認した。

「一人目が出たとこは見た」アンドレアスが更に小さい声で答えた。

「シュテファニーがばっちり見ちゃったみたい。でも、敵には見つかってないわ」

「本当かよ・・・ま、追手がこないからな・・・」マルコは理論的なので助かる。変な言いがかりはつけてこないのが、いいところだ。

「シュテファニー、見たものを教えてくれないか。落ち着いてからでいい。カミル、追手が来ていないか確認してくれ。窪みから頭を出すなよ。木の切り株の陰を使えよ」

「わかった」


「あいつら、地獄から来ているんだろうな・・・」

「恐らくそうだろう・・・しかし、アンドレアス、よく気づいたな」

「マルコ、音だよ。空気を吸い込むような音がしたんだ。一体なんの音だか、わからなかったんだが、ピーンときたよ。敵だってね・・・さっきのシュテファニーの一件がなければ、突っ立ってボケっとしたままだったろう」

「そうだな・・・どうだ?そこの袋の人・・・」

「もう。やめてあげて」ニコーレが怒った。


 袋の人と呼ばれた私は、落ち着いてきたが、まだ震えが止まらなかった。怖い。とても怖いのだ。やっと落ち着いてきたので、私は袋を取った。みんなが私に注目している。


「絶対逃げないとダメよ。あんな魔物に勝てるわけないわ」

 私は見た姿をそのまま皆に伝えた。全身鋼鉄で覆われた戦士の姿を。あれでは、私の銀の矢じりじゃ倒せないわ。鋼鉄の装甲を銀の矢じりが貫けるわけがない。得意の弓が通じない敵なんて初めてだった。ヘルメットの、あの細いスリットのところに目があるのだろう。あの隙間を射抜けるだろうか? いや首か? でも首まで隠れていて、射貫けそうになかった。胴鎧も着ているし。毒矢を使うにしても、今日は持ってきていない。


「そうそう、2匹目が出てきたんだけど、1匹目と全く同じだったわ・・・そっくりね。あの後にも出てきたら、みんな同じだったんじゃないかな・・・」

「お前たちみたいにか?」アンドレアスが冗談を言った。

 笑えない。私達姉妹は双子だが、あの魔物は多分、魔術で同じように何匹も造られた、生き物じゃないだろうか。まずい、震えが止まらない。みんなは見てないから、怖くないのかもしれない。


「しかし、参ったな・・・どうする?森の中に結構痕跡残しちまったぜ。走ったからな。先回りされる可能性もあるが、そいつらでかいんだろう? そして見たことのないような金属の鎧なんだろう・・・多分走れないんじゃないか?」マルコが楽観的に言った。

「ともかく、遠回りしても、村に連れて帰らないようにしないとな」アンドレアスが言った。

「このあたりまでは、来たことがないからな・・・どんな魔物がいるか見当がつかねぇな」

「あとさ、あの卵だったら、どこにでも移動できるんじゃないのか? 地獄から直接来たんだろう?」

「いやだね・・・地獄の精鋭部隊っていうのか? とにかく、青卵をみたら逃げろだな」やっと、他の人たちも言葉がでるようになってきたようだ。


 どれだけ、その窪みに座っていただろう。お腹が空いてきた。それから、私たちはやっと重い腰をあげて歩きだした。恐々だけど。どうやら追手はいないようだ。私たちは、来た道を引き返しつつ、さっきの走ってしまった痕跡を消して歩いた。


「ちょっと、なんだか、いかにも消しましたに見えない?」連続で大勢の足跡を消すので不自然な感じだ。枝でこすったあとが、つながって道のように見えるのだ。そこだけ自然な感じがない・・・無理もないが。

「そ、そうだな・・・雨でも降ってくれるといいのだが」マルコが答えたが、特になにもしようとしない。何もできないと言った方が正解だろう。


 段々、街道に近づいてきた。そして、さっき私が動けずに、魔物の戦士を見ていたところにたどり着いた。

 私は、レンジャーだから、色々なものが見えている。普通の兵士なら見落としてしまうサインとでもいうべきものだ。

「ニコーレ、来て・・・」

 ニコーレが私の只ならぬ様子に気付き、近づいてきた。そして、状況を観察し、私と同じ結果になったのだろう。小さい声でこう叫んだ。

「やばい。気づかれている」ニコーレの言葉は、想像した通りだった。


「どうした?」マルコとアンドレアスが心配そうな顔でやってきた。


「奴らは、私達がここにいたことに気付いているわ。ここに3匹の足跡があるの。で、一匹がしゃがんで検分している感じ。足跡をね・・・やつらは、自分たちの足跡を消していない。恐らく斥候ではないわ。自分たちの痕跡を消そうともしないって、おそらく正規軍で、悪魔の王の一人の直属だと思う。ここに、地面に突き刺さった穴があるの・・・見て」


 マルコとアンドレアスは、枯れ葉を横にどけて、地面そのものを露出させた。


 確かに、地面の一部になにかが刺さった跡があった。マルコは質問した。

「これって剣を地面に差した跡なのかい?」

「剣ではないと思う。怒らく、大きな盾の下端についている刃だと思う・・・しかも、重い、大きな盾の・・・」ニコーレがそう答えてくれた。私も決心して事実を言おう。

「ここだけでなく、こっちにもあるわ。2体の魔物が、左右に立って、警戒しつつ、調査をしている仲間を守っているのよ。つまり、敵の組織力とか連携がすごいってことよね・・・あんなくだらないゴブリンをやっつけたぐらいで、悪魔の正規軍が来るなんて、思わなかった・・・ごめん。私、調子にのっていたんだわ」

「いや、そんなことないよ。降りかかる火の粉は払わないと、村を危険に晒すんだから」

「アンドレアス、ありがとう。でも、私たちを狙っているのは、ゴブリンより千倍は賢く、しかも強い悪魔軍の兵士よ・・・どうすればいいの?」


 みんな回答ができなかった。160年、なんとか生き抜いてきた、私達、アレマン人の村は、絶対絶命の危機に晒されてしまったのだ。


「あ、帽子・・・」私は、帽子を無くしたことを、最悪のタイミングで思いだした。

戻りながら探していたのだが・・・無いのだ。


いかがでしたか?やっとアレマン人の登場です。

謎のアーチャーですね。


フランス語でドイツのことをアルマーニュといいますが、

これは、アレマン人が語源です。


アレマン人は、スイス、オーストリア西部、ドイツ南部に

暮らしていました。


古代ローマ軍を打ち破るような部族です。


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