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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
178/293

第75節 アーベントイラー 探索の目的

プロットを変更したので、調整に時間がかかってしまいました


どうぞ

Ⅰ アポロニアさんの変化


 それは呪文ではなかった。小さい声でずっと唱えられている祈りだった。アポロニアさんは、跪いて、すこし俯きながら、両手を合わせて祈り続けている。神々しくて、話かけられない。そんなアポロニアさんをじっと見つめている瞳があった。クリスタだ。


 アポロニアさんは集中しているので、話しかけにくいから、僕はクリスタに話しかけてみることにした。

「クリスタ、アポロニアさんのことずっと見てない?」

「あ・・・うん。そうなの。ちょっと、凄いよね。やっぱり修道女って、祈るのが仕事だものね。兵士さんが武器で戦うように、シスターは祈りで戦うのよ」

「あ、わかるな・・・祈りって、すごいパワーがあるよね」

「うんうん。私も自分でどうにもできない時、何度も、祈りで神様に助けてもらっているからさ」

「アポロニアさんは何を祈っているのだろうね?」

「え~、多分だけど、御加護を祈っていると思う」

「神様に守ってくださいって?」

「自分のことじゃないのよ。皆のことよ。今日は特に兵士さん達のことね。きっと」

 クリスタは、直感的にそう思っているというか、感じているようだ。クリスタはやっと僕のことを見てくれた。何か言いたいことがあるようだ。こういう時って、どっちの瞳を見ていいか、気になるのだけど・・・蒼いほうか赤いほうか・・・


「使徒様?」

「なに?」

「アポロニアさんは、絶対聖女になると思うわ・・・」

「え? どうして? 聖人というのは、亡くなったあとだし、認定はパパ様だよ」

「ふふふ、女の勘ってやつよ」

(女の勘って・・・クリスタ、まだチビッ子じゃん)


「使徒様、あのね、最近、アポロニアさんが祈ると、こう、なんていうのかな、場の空気が変わるのよ。この前気づいたの・・・空気っていうのか、雰囲気っていうのか・・・」

「何か見えてるの?クリスタは・・・」

「ううん、見えないけどね。なんていうか、びびびってくるのよ」

「ふーん。びびびってね・・・」

「ほら、雨の日って、髪の毛が爆発するじゃない? そんな感じ。アポロニアさんが祈りだすと、私もなんか祈らないといけないような感じがぐぐぐぐってくるのよ」


 僕には理解不能だったが、感覚的にクリスタがそう感じているのだというのは、分かった。確かに、最近のアポロニアさんは、すこし変わったと思う。確かに、神様は、祈ると必ず応えてくださるって、どこかで教えてもらったよ・・・どこ?どこでだろう・・・誰だったのだろう・・・まぁ、いいか。


「集合!」オットー様が言った。

皆がざっと、立ち上がった。兵士さん達は、小走りで動き、さっきと同様に、同じ位置で同じ陣形を組んだ。あ、アポロニアさんは? 陣形の中にいれてもらわないと。


アポロニアさんは、まだ、さっきと同じ位置で、祈りをささげている。

「修道女様!」兵士の一人が声を掛けた。アポロニアさんは、目をあけ、微笑んで、そして立ちあがった。修道服の裾をパッパッと叩き、土を落としている。


「修道女様、こちらへ」兵士が陣形を崩し、三角の真ん中を開けた。

「すみません。ありがとうございます。皆さんに守っていただいて、ありがとうございます」


「いいえ、俺たちのほうが、修道女様のお祈りで、守られている感じがすごくするんですから、どうぞ、われらの陣形の中へ、さ、さ、お入りください」

 アポロニアさんが、三角の陣形の中に入ると、ざざっと兵士さん達が陣形を閉じて、今日、ここへ歩いてきたときのように、陣形を戻した。

 

 それを見守っていた、オットー様が、口を開いた。

「これより、本隊は、村の外れまで、探索を行う。基本的には、陣形は崩さず、傭兵団が、遊撃部隊として探索を行う。先ほどより、進むスピードは落とし、私の指示で動き、止まること。あと、殿下に、お願いがあります」

 オットー様は、僕の姿を探して、見つけてから、話し始めた。


「なにかが、起こりましたら、このエリアから、危険退避のため退去します。

その場合は、あの陣形の中央付近に転移門の設置をお願いします。最初に傭兵団が退去し、次に兵士たちが順に盾を構えながら後ろむきに入るものとします。私と殿下は最後に入ります。よろしいでしょうか?」

「はい。了解しました」

 拒めないよね。作戦としては、隙がないって感じだし。なにしろ、片方の敵の姿が見えないのだから。


 オットー様は、三角の先頭の少し先に立ち、手で出発の合図をした。アレクシスさんや、クラウディアさんが、盾の双子達と、探索を開始した。しかし、兵士さん達から、姿が見えなくなるところまでには、進まなかった。

僕らは、すぐに例の汚い文字の前を通り過ぎた。

広場をぐるっと回ると、菩提樹の広場から伸びた道は、東方向にまっすぐ伸びていて、僕らは道なりに進んでいった。


 道の傍らには、家々が並んでいたが、どれも屋根はなくなっており、壁だけになっていた。壁があるのはいい方だった。石で造られた壁は残るが、木軸に石やモルタルを塗り込んだ家は殆どが崩れていた。中には、燃えたような家もあった。


「襲撃されて、略奪されたって感じの家ばかりだね」クリスタが悲し気な表情でそういった。

「悪魔の手先か、酷い人間たちか、どちらかの仕業なんだろうね」

僕は、想像すると気持ち悪くなるので、何も感じないように、自分を仕向けた。朽ちた家の中は覗かないように心がけている。この間の森の中の修道院のように、いきなり骸骨とか見つけたくないもん。この村だって、誰も死にたくなかったろうに、可哀想だよね。


 すこし先に、村の教会の廃墟があった。鐘楼がある造りだ。鐘はすでに落ちている。


かつて、ヴァイキングがヨーロッパに侵攻してきた時代があったらしいけど、その時も、教会や修道院は集中的に狙われたらしい。まぁ、村や街で、一番立派な建物は教会とか修道院だし。それに税金や寄進で、お金や財宝が沢山あったらしいからね。


 その当時は、皆、殺され、略奪されたらしい。なんだか、悪魔軍のやったことと同じだよね。大体、人間だって、悪魔みたいなやつらは沢山いるしね・・・悪魔が侵攻していない、帝国側では、未だに、盗賊とか強盗、殺人は多いらしい。

逆に、悪魔の支配地である、こちら側は、そういうのは滅多にいない。城壁の外は、悪魔や魔物が蔓延る、そういう世界なんだ。

流れ者とかは入ってこれないし、入れたとしても、すぐに魔物に食べられる。だから、逆に帝国よりも、街の中は、安全かもしれないよ・・・


 急に思い出したけど、僕って悪い大人につかまって、奴隷として売られそうになっていたんだものね。思い出したよ。どうしてそうなったのか、覚えていないのだけど・・・

そう、ドミニク神父様に助けてもらって、孤児院に入ったんだ。

 でも、袋を被せられて誘拐されて・・・思い出してきた。でも・・・それよりも昔のことは、相変わらず思い出せないな・・・とにかく、悪魔の子とか言われて、火あぶりになる直前に、誰かに助けてもらって、気づいたら、そうそう、転移門をくぐったんだよ。あれは、僕が開けた門じゃなかった・・・


暫く進むと、廃墟が無くなった。村はずれにきたようだ。

「カール、殿下もこちらへお願いします」

オットー様が、小さく、僕らの名前を呼んで、こっちに来てってジェスチャをした。僕とカールさんは、お互いに顔をみて、オットー様のところに歩いていった。


「カール、地図を持っているか?」

 カールさんは頷いて、盾の裏側に丸めて挟んでいた地図を出して、僕らの前に平らに広げた。ていうか、その高さだと、僕覗けないんですけど・・・

「今は、地図だと、このあたりですか?」

「そうだな」

 僕は覗こうと思って、一生懸命に背を伸ばしたが、目の高さぐらいで、よく見えなかった。僕の仕草に気付いたカールさんは、地図の高さを下げてくれた。

(ふぅ、やっと見える)

「地図によれば、ここからは農地か森だ。そして、道は大きく曲がりながら、もとの南へ向かう街道に戻るようだ。どうだろう?ゴブリンが、俺たちを待ち伏せするなら、この先だと思うのだが・・・」

「本来の巣があるのなら、この先でしょうね。あの村は、彼らにとって、緩衝地帯なのかもしれませんね。例のアーチャーの連中にとっても、緩衝地帯で、彼らの防衛ラインがあの街道なのでしょうか。

 しかし、連中は襲ってきませんでしたね。南の森で木に打ち付けられたゴブリンの死体がありましたが、アーチャーの連中、どういう行動原理で動いているのか、解せません・・・」

「そうだな・・・あの広場で気づいたのだが、菩提樹の葉や実が、誰かに採取された跡があったんだ。菩提樹自体は、季節的には、もう遅いのだが、明らかに刃物で切った枝などがあった。それに、このあたりは、かつて人間が暮らしていたから、有益な作物、ザクロやリンゴなどが、そのまま残って自生している可能性も高いと思う。その他、薬草などもあるだろうな・・・

 そうすると、その作物などをめぐる争いなのかもしれぬ」

「なるほど。オットー様の案の可能性は、著しく高いですね。アーチャーの一族が、作物を採りにいって、ゴブリンと戦闘になり、自分たちのエリアに逃げる。それを深追いしたゴブリンが、返り討ちにあったって感じですかね?」

「そうだな。・・・殿下はどう思う?」


 急に振られてたじろいだけど、なぜか不思議と会話できるんだよな・・・僕って。


「あの広場付近が、魔物たちの入会地のようなものだということですね」

「ほう、また随分と専門的な言葉をご存じですな。さすが殿下だ」

「え?入会地・・・なんですか、それ?」カールさんは、分からなかったようだ。


「あ、すみません。本来は、村人など、そのエリアに暮らす人々が、森の恵みを、自由に採取していいような共同の共有財産のことなんです。

勿論、独りで多い量をとってはいけなくて、あくまで、自分が使う分のみを、自然にダメージを与えない量のみ採取していいんですよ。

 例えば、薪なんかもそうですね。独りで全ての枯れ枝を集めると、皆が困るでしょう?」

「なるほど、それが入会地か」

「もしも、人間もどきだとすると、入会地の感覚は残っているだろう。しかし、ゴブリンは、行動原理的に、分かち合えないし、全てを独占しようとするだろうな。悪魔的だ」


「はい。オットー卿のおっしゃる通りだと僕は思います。この先にゴブリンの巣がある可能性はかなり高いですね。まぁ、自分たちの縄張りの目印があったら、すぐに引き返すべきかと思います。巣を滅ぼすのなら、もう少し、人手というか、増援部隊が必要でしょう」

 オットー様は、感心した様子だった。

「ほほう、殿下、二つ訊きたい。わかればで、いいのだが・・・

 一つは、ゴブリンの縄張りの目印とは、どんなものだろう。

 もう一つは、ゴブリンの巣穴には何匹のゴブリンがいると思う?」


「プリニウスの博物誌にも記載されていますが、まず、動物やゴブリン、そして人間などの頭蓋骨を杭の上に晒すそうです。これは、なるべく強い大きな生き物の頭蓋骨が、好まれるそうです。自分たちが強いことを示すそうで・・・

 あと、彼らは文字を持たないそうなので、自分たちの部族を示す記号のようなものを、大抵は象形文字だとか、人間の使う文字を真似したものを、刻むのだそうですね」


「・・・え、使徒様。広場の看板は、ラテン文字でしたよね?」カールさんから疑義だ。

「ああ、ゴブリンの中にも、時々高い知性を示すものがいるらしいですが、おそらく、人間もどきの看板を真似たのかと。プリニウスの記述によれば、人間の言葉を話すゴブリンも一定数観測されています。その中には、文字がわかるものもいるようですね。


 あと、ゴブリンの頭数ですが、多産ですので、数は60とか、100とか書かれていましたよ。それに、ゴブリンの群れに襲われたことが、2回ありましたが、どちらも凄い頭数でしたよね。ゴブリンは、頭数が増えすぎると、部族を分割して、巣穴から旅立ち、新たな巣を作るそうですから、塩砦の襲撃の時も、山城の探索の時の襲撃も、相当な数でしたから、たまたまそういう時が重なり、悪魔に上手く仕組まれて、襲ったという感じかもしれません。

真相はわかりません。山城の時は、明らかにあの城を巣として取ろうとしてたみたいですね」


 オットー様は、考えていた。

「60なら、問題ないが、100になると、すこし犠牲者がでるかもな。よし、避けよう」

「は、御意」カールさんは、すぐに返事をした。やはり、軍人っぽい思考だね。


Ⅱ 帰還


 オットー様は、満足いく回答が得られてたからか、機嫌がよかった」。

「殿下、ありがとうございます。あ、そうそう、このあたりに、何か他の脅威はありそうですか?」

「その質問への回答は、フィリップ卿にお任せするのが一番いいのでしょうが、おそらく、ゴブリンを狙う狼や熊が可能性ありますね」

「うむ・・・オオカミは大丈夫ですが、熊には会いたくないですな。特に冬眠も近いでしょうし。では、このあたりで、一度撤退しますか。カールはどうする?」

「私たちも一旦引きます」

 オットー様は、撤退する意思を固めた。

「よし、これから一旦帰還する。殿下に、修道女様の近くに転移門を開いていただくので、傭兵団のメンバーから転移門に入ってほしい。それまで、盾で襲撃に備えよ」

「おう!」


 僕は、転移門を作った。最初にアポロニアさんが消え、陣形を崩してもらって、中に入った傭兵団のメンバーとクリスタが次々消えた。そして、オットー様の命令にそって、兵士さん達が転移門に消えていった。

 残るは、3人だ。カールさんが最初に入った。オットー様は、周囲をぐるっと見て、異変がないことを確かめてから、僕の背中を押して一緒に転移門に入った。



 広場には、兵士達と傭兵団が転移門の出口に向かって整列していた。

クリスタも一番後ろに並んでいるのが、なんか違和感があって面白いと思った。僕も後ろに回ってクリスタのあとに並んだ。転移門が消えた跡に、オットー様が皆の方を向いて立ち、カールさんはその隣に少し下がって立っていた。

「今日はご苦労だった。今日はゴブリンとの接触がなかったが、ゴブリンがやがて脅威となり得るようであれば、討伐する。その場合は、最前線の砦との共同作戦になるだろう。。

 これからは、砦に籠るだけでなく、出陣もしていくことになるので、各自精進すること。よいな?」

「おう!」

「今回の遠征に参加したものには、少ないが、報奨がでる。では、解散!」

「おう!」

 皆小走りに砦の第1門に向かって駆けていった。


 オットー様は、残った傭兵団に対し、感謝の意を伝えた。そして、傭兵団との会食を所望された。皆は真面目な顔をして話を聴いていたが、会食と聴いて、顔がほころびかけている。やはり、貴族の食事は美味しいからだ。僕らは、準備が整うまで砦の中庭で待機することになって、ぞろぞろと歩いて行った。


 僕らは、砦のオットー様の執務室の隣にある、会議室兼食堂に通された。


Ⅲ 食事会


 お誕生日席に、オットー様が座っていた。そして細長いテーブルの反対側には、僕だ。

ここのところ、食事には困っていない。これは嬉しいことだよね。


 テーブルには、また、玉ねぎケーキだ。何回食べても美味しいから好き。

「さぁ、大したものは用意できなかったが、食べてくれ」

「いただきま~す」

明星亭の玉ねぎケーキを食べたばかりだったが、また、砦のキッチンは、味が違う。皆、夢中で食べている。


「さて、食べながらでいいので、聴いてくれ」

 オットー様は、なにか話したいことがあって、この会合を持ったのだろう。果たしてこれからどういう事が話されるのか・・・カールさんは、食べているが、味わってないような感じだ。

「今日は、本当にお疲れ様だった。一種のデモンストレーションだけになってしまったが、犠牲もなかったので、よかったよ。謎のアーチャー達にも遭遇しなかったしな。

 狙撃されたら、必ず犠牲者が出ただろう。こういう戦いに備えて、防具や装備を改良していく予定だが、君たちからも後に意見をもらおうと思っている。

 外部に遠征する場合は、任務に応じて装備などを支給するつもりだ。予算に都合がつく範囲だが・・・

 さて、今回の君たちの任務は、分かっているとは思うが、ライン川の渡河ポイントの探索と、その周辺の悪魔軍の調査だ。おや、その辺、飲み物が空いているじゃないか。おい、どんどん飲ませてやってくれ」

 従者さん達が、すぐに対応してくれて、アレクシスさんや双子に飲み物が、勿論、お酒が運ばれた。アレクシスさんは、エールを美味しそうに、飲んでいた。例の、塩砦で醸造されているエールだ。

「ありがとうございます。このエールは格別ですね」

「お、アレクシス。実は味にうるさいんだな? これは、輸出用なんだ。今度は、もっと旨いのを、砦配給用にするからな。金が欲しかったんだが、それよりも身内の待遇をよくしないといけぬと気付いたのだ。

 そのうち、耳に入るだろうが、いつか一緒に探索した、山城だが、あそこの補修費用をこの塩砦で捻出しなければならなくなりそうだ。岩塩の埋蔵量は、まだ大丈夫そうだが、あまり大量に掘っても価格が下がるからな。

 一番困ることになりそうなのが、警備の負担だ。今年の冬は、準備期間が少なすぎるので、閉鎖しようと思っているのだが、春になり、警備が開始になった時が悩みの種だ。

 最悪、帝国で募集を掛けるしかないのだが、あまり知らない連中を入れるのも嫌だしな。といって、傭兵を鉱山から移すのも無理がある。人を減らして、スタンピードが再び起きれば、壊滅することになるだろう。

 まぁ、そういった事情なので・・・」

 オットー様は、やっと食べ物を口に運んだ。

「お、旨いな・・・いくつか、依頼があるので、団の中で、周知徹底してほしいんだ。

 まず、なるべく、今日行ったあたりでの紛争や衝突は避けてほしい。戦線の拡大はしたくない。人が割けないからだ。我々が魔物との軍事衝突を起こせば、フリードリヒ伯は、こちらで処理してくれ、人手は回せぬと成り兼ねない。無理もないがな・・・」

 オットー様は、また食べた。今度は一口が大きかった。

「無理もない。一度、あの砦は、落城しかけたことがあるからな。

援軍は望めないどころか、あの砦に悪魔軍が押しかけたら、俺たちが救援にいかねばならなくなる」

「それは無理ですよね」カールさんが言った。

「カール、その通りなんだ。新しい塔砦に兵士を割き、そして、君たちを鉱山から引き抜き、そして次は山城の警備となると、もう、人手不足感、やばいだろう?

 だから、なるべく紛争にならぬようにって、無理だがな。かかる火の粉は払うべきだし、ましてや、必ず生き残って生還してほしいが、ことを荒立てて欲しくないんだ」


 オットー様は、言いたいことを、言ってしまったのだろう。今度は本格的に食べ始めた。静かに、オットー様の玉ねぎケーキが減り続つけて・・・ついに無くなり、オットー様が、エールをおかわりした。

「次にだ。無茶振りだとは思うのだが、今回の遠征で、なにか金になりそうなものを、探してほしい」

 カールさんが困った顔をしている。確かに、それは、傭兵団の仕事じゃないよね。

「オットー様。お金になりそうなものって、どんなものですか?」


 オットー様は、もう一度エールのおかわりを呷り、ふぅと言ってから口を開いた。

「銀山だ」

「え?銀山ですか?」

「うむ。カールもあの地図を見ただろう? あの十字路の北側に、銀山があったはずなんだ。少し前、山城の手前に新しい鉱山が発見されただろう?


 このあたりは、岩塩だとか、銀とかの鉱山が結構あるはずなのだ。しかも、地図に載っていたのは、比較的実績のあった鉱山だ。これからという時に、採掘できなくなったのは、悪魔軍の進駐のせいだからな・・・埋蔵量は昔のままだと思う。


 表向きは、皇帝の依頼通りだが、その過程で古い鉱山を見つける分には、文句を言われぬ」


 うーん。なんだか、皆、微妙な顔だ。美味しかったけど、話の内容は、なんか、不味いよね。皆がカールさんを見ている。どう答えるのだろうって感じだ。


よく、映画で古代ローマ兵の戦闘が描かれますが、

蛮族って、大抵裸ですよね・・・なんでも、戦いは裸で行うという

文化があったそうですよ。それに対し、ローマ兵は鎧も着てますし、

ビシッと統制とれた集団戦法ですし、強いはずです。


それでも、大負けすることもありました。


さて、オットー様の思惑が伝えられましたが、なんだか無茶振りです。


どうなっちゃうのでしょうか・・・

続きはまたブクマの後で!

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