第75節 アーベントイラー 菩提樹
こんばんはぁ~
菩提樹です。そう、思い入れあります。菩提樹。
「あれ・・・ね、アポロニア、人がいるよ・・・」
クリスタは、私の袖をつついて、つぶやいた。
「え?どこに・・・」
私は小声で聴き返した。それからクリスタの視線の先を見た。クリスタの視線はまっすぐ前方を見ている。そこには大きな菩提樹がポツンと立っているだけだ。かなり樹齢のある様子が見て取れる。広葉樹だ。
「見えないけど・・・どこに、どんな人がいるの?」
「あれ、暗いからかな・・・正面の木の根元に座っているよ。木に背中をつけて下を向いている」
私はもう一度、目を凝らしてみたが、人なんていない。でも、少し上のほうなら、なんとなく黒い布みたいなものがぶら下がっているような気がするけど・・・
「そうなんだ。ごめん、私には見えないみたい・・・ちょっと見に行ってみる?」
クリスタは、ぶるぶると首を振った。
「いや、行かないで・・・動いちゃだめ。カールさんも言ってたでしょ・・・怖いからそばにいて」
「わかったわ。ここにいる限りは結界装置があるので、大丈夫。座っていましょう?」
「うん。そうして・・・ください」
クリスタは、前方から視線を外して、下を見た。足元には結界装置が置いてある。赤い宝石が台座から浮かんで、ゆっくりと回転している。結界馬車用の予備の装置をフィリップ様が貸してくれたのだった。
二人は、森の中に開いた小さな広場のようなところに向かって、周囲の森の縁に幾つか残された古い切り株にそれぞれ座っていた。日は暮れてはいないが、もう時間的には夜なのだろうか。段々と空気が冷えてきた。私は心配でクリスタを見ていると、視線に気づいたクリスタが、私のほうを見た。唇が青い色になりつつある。
「クリスタちゃん、大丈夫? 顔色悪いよ。寒いんじゃない?」
「うん。大丈夫」
私は彼女の眼を見た。瞳には、不安が宿っているものの、怯えている感じはなかった。クリスタは左右の瞳の色が異なる。右目が薄い青で、左側が珍しい赤だ。ピンクのほうが近い色だが・・・充血しているわけではない。初めて会ったときは、両目とも青だったと記憶しているのだが、ある時から、オッドアイになったようだ。
確かに、年を取って、瞳の色が変わるというのは聞いたことがある。私も昔は父によく似ているといわれたが、最近は母に似てきたようだ。月日は風貌も変えるのだから、瞳の色だってそうだろう。クリスタは、オッドアイになる前から、邪眼だって悩んでいた。彼女の色が変わってしまったのは、すこし前の山の砦の探索の時だった。見てはないのだが、使徒様が言っていた。ゴブリンを目の力で焼き殺したと。私はクリスタに微笑んで、また前を向いた。私はクリスタと二人で探索にでた皆を待っているのだ。クリスタの向こう側には、二つの大きな荷物が背負子に載せられて置かれている。多分、クレメンス達の身長ぐらいはあるだろう。
ひときわ大きなほうは、使徒様が背負う。小さいほうはクリスタが背負うのだ。実際に持とうとしてみたことがあるが、とても持ち上がるような重さではない。しかし、彼らは楽々背負って運ぶのだ・・・使徒様のエーデルスブルートの力だ。空中に浮かんでいるだけなので、それを引っ張るという単純なことなのだが、見た目は圧倒されるような光景だ。
「しかし、その荷物はでかいよね」
クリスタは私の視線の先を見るために振り返り、それから小さい声で笑った。
「そうだよね・・・初めて見たときは、無理って速攻でいっちゃったもん。でも、使徒様がなんか言ったら空中に浮かぶんだ。2度びっくりしちゃった」
「ふふふ。使徒様には驚かされることばかりだよね」
その時、後ろのほうから足音が聞こえてきた。誰かが帰ってきたようだ。振り返ると、大きな盾が二つ並んでいるのが見えた。その後ろに、アレクシスの槍が見える。本人は見えない。
三人がかえってきたのだった。少し遅れて、右から弓を構えたクラウディアとその横に使徒様、一番後ろにカールが歩いてきている。分散隊形というやつを試しているのだって。
盾職の二人は、そのまま歩いて、私たちの前後に立ち、盾を塀のように立てて、その陰に隠れるように座った。アレクシスは、よおっと小さく口を動かして、私の右横に座った。槍は外に向けて構えたままだ。アーチャーのクラウディアは、つがえた矢を筒にしまって、クリスタの横の荷物の後ろに座った。その後ろには使徒様がいる。カールは、すこし離れて歩いてきて、私たちの後ろに立った。
「待たせたな。まず、報告だが、何かが近くに居たのは間違いなかった。何人かの足跡が残っていた。巧妙に消されていたがな・・・」
「カール、デーモンだったの?」
「いや、違うようなんだ」
「え? このあたりに人なんか住んでいないのよね」
「そうなんだ。結界装置は人は防げない。だからすぐに帰ってきたんだよ」
「カール、今日はもう砦にもどりましょうよ。なんだか嫌な予感がするわ。デーモンではないということは・・・人間だけど、人間でない・・・」
カールは、少し考えて、うなずいた。
「そうだな。もしかすると、例のやつらかもしれない。とにかく想定外な感じだから、無理に危険を招くこともないだろう。殿下、転移門を頼む」
「はーい」
カールは、ずるっと、バランスを崩して肩をすくめた。あまりに能天気な使徒様の返事だったからだろう。
すぐに使徒様は荷物を浮かして、背負い、クリスタにも背負わせ、転移門を開いた。最初に盾職が一人入って、次に槍を構えたアレクシスだ。
数秒おいて、転移先に異常がないようなのでクリスタと続き、次に使徒様、クラウディア、コンラート、最後に私とカールという順で続いた。転移門は塩砦の第2門の前の広場に開いていた。そう、丁度、明星亭の前だった。
私は、カールが青い転移門から出てきて、門が消えてしまうと、ほっとしてため息をついた。そのため息をカールは耳聡く聞きつけた。
「おいおい、アポロニア、どうしたんだ?ため息なんて」
「・・・いいえ、とにかくホッとしたのよ。あんなところに人間は住んでないんでしょう?」
私は、クリスタが見たという人について話そうかどうか悩んでいた。なにしろ見えていないのだから、説明のしようもないし、信じてもらえない・・・いや、自分も信じることができない状態なのだから。しかし、クリスタの特殊な能力なのかもしれないし・・・
「そうなんだよ。人間だとしたら、どうやって悪魔の支配地で生き延びているのかが問題となる。自然に考えると、デーモン側の人間なのではないかってことになるよな・・・最悪は悍ましい魔術で変えられてしまった人間の成れの果てか・・・」
そこにアレクシスが口をはさんだ。
「また、森の中の修道院みてぇに、奴隷にされているんじゃねぇの?」
「うん。俺もその可能性を考えていた・・・しかも、かなり高度な訓練を積んでいるぞ。軍の斥候部隊というレベルじゃないよな。レンジャー部隊という感じだ。奴隷というのは考えにくいのじゃないか」
「そうだな。自分で考えて行動しないと、レンジャーに成れないし、高い能力が発揮できないよな」
ふーっとカールがため息をついた。
「カール、上に相談したほうがいいよね・・・」と私は、視線を砦のほうへ向けた。
「そうだな・・・ちょっとオットー様に相談したほうがいいだろう」
「その前に飯にしようぜ。腹減ったよ。なあ、使徒様も減ってるだろ?」アレクシスは強引だ。いきなり話をふられた使徒様は、目を大きくして、しかも喜んだ瞳で即答した。
「おなか、ペコペコですよ」
カールは目が点になっていたが、すぐに笑って、答えた。
「じゃ、オットー様の予定だけ聞いてくるので、先に明星亭に入って待っててくれ」
「やったー」
「うおー」
私は、喜んでいる、クリスタと使徒様の背中を押して、お店に向かった。そして、ふと、クラウディアが浮かない顔をしているのを、視界の隅で捉えた。
(あれ、どうしたんだろう。クラウディアにしては、おかしいな。ご飯だというのに。年齢的にも食べるのが楽しい年だ。私にも経験があるからわかる。もしかして恋なの?)
明星亭のドアには、ドアベルが付いている。牛や羊が首につけるようなやつだ。ドアを開けると、カランカランと音が鳴って、来客を知らせるのだ。
「いらっしゃ~い。今日はどうだった? たまには魔物肉でももってきてくれてもいいのよ」アーデルハイトだ。例の白い猫も一緒だ。入口の正面の棚に座っている。
なんだか急にほっとした気分になった。非日常を旅していたからこそ、あまりに日常的な風景に癒されるのだろう。私たちは、いつものテーブルに案内された。私は、クラウディアの横に座って、浮かない顔をしている彼女の様子をうかがった。
「まずは、全員エールね。ちびっこは、蜂蜜種の水割ね」
「アポロニアさん。僕らは、ちびっこではないですよ」
「ふふ。ごめんごめん。いいじゃない。一応お酒を頼んだんだから。それともシードルにする?」
「いや、いいです」使徒様は素直で可愛いね。
すぐに大きなジョッキになみなみと注がれたエールと蜂蜜酒がやってきた。みんなで乾杯する。
「お疲れ~」
私は、クラウディアに話しかけた。
「どうしたの?浮かない顔してるじゃない?」
クラウディアは、即答しないで、うつむいて、すこし考えてから答えた。
「・・・怖いのよ」
「え?」私は聴き返してしまった。今まで彼女の口から聞いたことのないような言葉だったからだ。クラウディアは、自信に満ち溢れ、いつもチャレンジングだ。弓術を極めることに人生を駆けている。
「どうしたのよ。あなたらしくないわね。一体、何があったの?」
「・・・感じたのよ・・何かに見つめられているの。何かが私をターゲットにしている感じ・・・今にも矢を放つような・・・私からは見えないところから、私を見ている感じがするの。今にも、木と木の狭い間から矢が飛んでくる感じがするんだけど・・・」
「あー、なんとなくわかるな・・・クラウディアの感じた感覚っていうのは・・・俺も今日は少し感じたよ。おれら飛び道具屋は、結構、敏感だからな。剣とか斧とか怖くねえけど、飛んでくる槍とかは怖いぜ・・・一番怖いのは、俺が投げた瞬間を狙って、俺に向かって飛んでくる矢とか槍だよ。ほんの少し敵のほうが遅く投げるから、躱せないってやつだな。投げた瞬間に刺さるんだよな。怖い怖い」アレクシスが同調した。
クラウディアは、アレクシスを見た。すこし安心した感じだ。
「・・・そうなんだ・・・今日さ、特にどこで感じた?」クラウディアが蒼い顔のまま訊く。
「カールが下手糞な字の看板の足元を調べてただろ?」
「うんうん。枯れ葉をめくってた時?」
「そう・・・これって罠じゃね?って思ったんだよ。ワザと痕跡や何かを残して、調べているうちに飛び道具で・・・」アレクシスは、そういいながら、グサッと胸に何かが刺さる仕草をした。おどけているようだが、目は真剣だった。
そうだった。私は思い出した。
広場に立つ、大きな菩提樹を見つけて近寄ったのだが、なにか違和感があったのだ。その違和感が、どこからくるのか分からないのだが、一番最初に言い出したのは、クラウディアだった。極度に緊張しすぎると、精神のバランスが崩れることがある。何しろ、吟味したかったゴブリンの死体がなくなっていて、謎の狙撃台みたいのを見て、落とし穴の存在を知り、木に打ち付けられたゴブリンの哀れな姿を横目でみて・・・誰もがおかしくなるよね。
確かに、広場は整然としていた。170年という月日を感じさせない、手入れされている感が漂っているのだ。広場の手間で石畳の舗装は途切れていたが。
私は、ラテン人だし、ゲルマン人ほど樹木に対しての愛着はないと思っている。しかし、話す言葉も、頭の中で考える言葉もゲルマン人の言葉だ。イタリアから逃れてきて、私も土着化したのかもしれない。違和感を感じるのだから。実際は、クラウディアだって、菩提樹と生活を共にはしていない。かつて、ゲルマン人はそうだったのだが。塩砦の中庭には樹木がない。そんな余裕がないのだ。
私たちは、広場を一周した。そして奇妙なものを見つけた。手書きの看板だった。菩提樹の根元の反対側に立っていた。
綺麗なラテン語で、「人間でないものは、立ち入り禁止」と書いてあった。そして、アレクシスが、その看板に相対するように書かれた、汚い字の看板が、広場の反対側に立ててあることに気づいた。
「下手くそな字だなぁ、おい」
カールがすかさず突っ込む。
「お前に言われるぐらいなんだから、相当なものだな」
「うるせぇ」
汚い字の看板の前に、皆集まった。
「ちょっと待て、アレクシス動くな。罠があるかもしれないぞ」
皆がその言葉に凍った。カールは長剣を抜き、看板の手前を斜めに刺し、枯れ葉をめくりだした。
「これだ・・・よしアレクシス、ゆっくりと足を抜いて、バックしてこい。置いていた足のところに戻すんだ。ここに縄があるので、引っかけないようにしろよ」
アレクシスは2歩戻った。
「よし、どこかから、長い枝を探してきてくれ」
「これでいいんじゃねぇか?」
アレクシスはパイクを差し出した。カールは頷いて、その場から下がり、パイクを受け取った。
「皆下がって。盾を持っていないものは、クレメンスとコンラートの盾の陰に隠れてくれ」
アレクシスも、背中に回していた、大きいラウンドシールドを出してしゃがんだ。
「よし、発動するぞ」カールは、パイクの根元のほうで、その罠らしきテンションロープのようなものを押し、罠を発動させた。
パシュッという音と共に、なにかが看板の後ろから飛び出してきた。それは、クレメンスの盾にあたって、刺さった。
「うひょ~ヤバかったな。多分毒矢じゃねえか・・・抜くときは触んないように気をつけろよ」
クレメンスはショックだったようだ。まさか刺さるとは思っていなかったようだ。それに大事な盾に穴まで開けられたのだ。貫通しなくてよかったが。
「普通じゃねぇな・・・すげぇ殺意だ。俺の盾だったら貫通していたかもな・・・カール、恩にきるぜ・・・ダンケ・シェーン」
「いや、なんか変だからな、ここいら辺。気を抜けないぞ・・・しかし汚い字だ・・・罠に気付かせない工夫かもな」
「そうだな・・・すげぇ狡猾で底意地の悪いやつだぜ・・・俺は嫌いだな、そんなやつ」
クレメンスが、短い矢を抜こうとしていた。棒の先に矢じりだけがついている。思ったより簡単に抜けたようだ。針が太くなったような矢だった。クリスタの背中に載せてもらっている、試薬キットを取り出し、毒かどうかの判定を行ったが、毒は検出されなかった。勿論、未知の毒だと反応しないので、触らないように、盾を革袋の水で流して洗った。
カールが仕掛けを調べにいった。ロープが地面に渡してあり、引っかかると、看板の後ろの木にセットされた、平たい弓のような発射台から、さっきの短い針が発射される仕組みだ。ローマのバリスタの模型のような仕組みだった。
「これ、最近のものだよな・・・つい最近だよ。なんだ?人間立ち入り禁止って。この付近に人間はいない筈だよな」
私もそう思ったので、カールに意見を言った。
「そうよね・・・帝国でも報告されていないし、ここの北側のバイエルンでも、もっと東のオーストリア大公領でも、聴いたことがないもの。170年前に、人間は殺されるか、帝国領か、城塞都市の傘下の砦に逃げ込んだ筈よ」
「で、反対側の綺麗な看板だが、なんか近寄りたくないが、見に行くとするか・・・」
カールは調べに行った。私は冷や冷やして、気が気ではなかった。カールはすぐに戻ってきた。
「向こうは、人間でないもの、通るな見たいなことが書いてあるよ。罠は見当たらなかったが、注意するに越したことはないな」
「うーん。人間でないものって?ゴブリンのこと?それとも魔物全般かな?悪魔も?」
クラウディアが首を捻っている。
「なんか、気持ち悪いわね・・・綴りも間違えているし・・・」私も呟いた。
「これさ、さっきのゴブリンと何者かの争いなんじゃないかな」クラウディアが推理している。
「なんで、そう思ったの?」
「あの汚い文字ってゴブリンが書いたんでしょう? で、あっちの看板は、あのアーチャーの一族じゃないかな・・・人間かどうかは分からないけど」
「あ、それ、俺もそう思うぜ」
「そうよね。まずさ、アーチャーって、正確で丁寧で緻密じゃん。私もそうだけど。あの綺麗なラテン文字は、そうなのよ」
「すげぇ怖い顔した、デーモンかもしれねぇぞ」
「アレクシス、いじわる」
「まぁまぁ、人間ってことは考えにくいけど、人間に近い種族かもね」
「え? そんなのいるの?」クラウディアが目を丸くしている。
「いや、可能性としては、弓が得意なら、すでに絶滅したと言われているエルフか、地獄から来たならダークエルフよね。地獄から来たとなるとエリート意識が半端ないだろうから、地上種のゴブリンと反りが合わないかも・・・全部推測だけど」
「地獄から来た奴らが、ラテン文字 かけるか?」アレクシスがそう思うのも無理がないが、私は反論しておいた。
「エルフってさ、古代ギリシャ人でも比べ物にならないぐらい賢かったって言われているわよ」
「アポロニア、いずれにせよ。地獄からきたのなら、聖波動は苦手だよな」カールが訊いてきた。私は少し考えて、答えた。
「まぁ、ダークエルフという仮定でも悪くないと思うけど、いずれにせよ、魔物だったら、苦手よね。人間がこの地域に住むのは無理だろうし・・・」
「ちょっと待てよ・・・少し前に見た、アンデッドってことはないのか?」
アレクシスが、急に思い出したように言った。
「うーん。可能性は無きにしも非ずね。でも、そいつらこそ、結界装置は苦手だと思わない?」
「そうか・・・それもそうだな」アレクシスは実は頭がいい。理詰めの会話が成り立つから、そうであることが分かる。最初の頃は、野蛮人って感じたけど。かつてローマを滅ぼした、蛮族の末裔って思ったけど・・・悪かったと思う。
「じゃ、結界装置の実験をしよう。ここは、どうも好きになれないので、向こう側にしよう」
カールがクリスタに声をかけて、左周りで、元来た方向へ戻った。菩提樹を中心に90度回ったというわけね。
カールは、クリスタの背中の荷物から、例の黒い円筒形の入れ物を出した。そして、蓋をあけて、宝石と台座を出した。
「よし、ここの切り株に置くぞ」
台座の上に宝石を置くと、台座に触れることなく、赤い宝石が一瞬光り、空中に浮かんだ状態で、ゆっくりと回りだした。
「おおお・・・」
一度、嘆息してからは、皆、暫く無言で眺めていた。
「どうだ?クリスタ? 見えるかい?」
「うん。金色というか、白に近い色ね」
え? 私には赤く見えるけど。
「じゃ、アポロニアとクリスタが、ここにいて、装置を守ってくれ。他は二手に分かれて、周辺を探索しつつ、アポロニアたちを守る。見える位置までしか行くなよ。くれぐれも、罠に注意してくれよ」
「おう」
「アポロニアさん、アポロニアさん」
私は今日の出来事を思い出していて、すっかりみんなの話を聴いていなかったようだ。クリスタちゃんの呼びかけで我に返った。
さっき、見えない敵に怯えていたクラウディアは、テーブルの上に突っ伏していた。これは、部屋まで、使徒様の浮遊を掛けてもらわないと、運ぶの大変よね・・・ともかく今日を生き延びたことを、神に感謝。アーメン。
いかがでしたか?
謎が謎を呼ぶほどまでの、スリリングには出来ませんね・・・
文体もあるのでしょうが。
今回は修道女アポロニア目線で仕立ててみました。
お気に召しましたら、ブクマお願いします。
ではでは、グリュース ゴット!