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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第23節 大天使 聖ミカエルの光る聖剣

また少年は悪魔憑きとか、疑われてしまいました・・・


貧乏神でも憑りついているのでしょうか・・・

オットーは、第2門の前にいた。円弧を描きながら登る坂道を、シーツを被った二人が歩いてくる。

まだ見習い前のあどけない子供だ。しかし、だからこそ、悪魔に利用される可能性がある。悪魔が体に巣食うこともありうる。まぁ下級悪魔なら対処できるが・・・


2人は疲れているようだが、頬を紅潮させ、達成感で満面の笑みを浮かべている。申し訳ない気持ちがオットーを責めるが、心を鬼にして、二人に詰問した。


「そのシートはどうやって手に入れたのだ?」


二人の顔に狼狽が浮かんだのを、オットーは見逃さなかった。


「疲れているのに申し訳ないが、一応どろぼうの疑いもあるので少し話しを聞かせて欲しい。いいな?」


二人は神妙にしている。ゴルトムントを呼んで、女刑吏に来てくれるように依頼した。ここで犯罪はないが、喧嘩や分け前の争いは日常茶飯事だ。そんなときのための下級官吏がいるのだ。今回は小さい女の子もいるので、女官吏がいるのは非常に助かる。


「君達が被っているシートは公爵様のものなのだ。ぬすんだものではないんだろうが・・・念のため話しをお部屋で聞かせて欲しいんだ」


結構子供向けの話し方は難しい。オットーには息子が3人いるが、皆、貴族の子弟なので、躾ができていて、対処しやすい。平民の女の子は、話したこともないので、やはり苦手意識がある。この砦には、貴族は数人しかいない。平民の感情は無視できない。女の子をいじめる悪い貴族みたいな立場にはなりたくない・・・


とは言え、本当は悪魔か悪魔憑きかもしれないから、緊急を要するのだが、そうでなかった時の二人への影響が怖い。表向きは窃盗容疑のように見せかけておけば、後で誤解でしたで済む。しかし、ここで悪魔憑きとでも宣言すれば、今度は、この子達が危険に晒されてしまう。こんな狭い街では危険すぎる。


オットーは、門の横にある面会室に二人を案内した。やはり、シートは守備隊の備品だった。文字が刺繍されている。そこへ女刑吏が入ってきた。


「隊長、お呼びでしょうか?」


刑吏はうなだれている二人にちらっと視線をやり、要件を悟ったようだ。そして赤毛の女の子をまじまじと見て、「あれ、アーデルハイドじゃないの?・・・一体どうしたの?」


女の子はビックリしていたが、女刑吏を見つめ返した。


「あ、ベルタさんじゃないですか?どうしてここにいるんですか?」


「それはこっちが聴きたいわ」


オットーも理由が聞きたかった。しかし、馬車隊の御者が知っていたり、この女刑吏も知り合いだとは、この子は顔が広いようだ。概して女性というものは、小さい頃から社交的だからだろうか。


事情を把握するため。まず、刑吏のベルタを別室に呼んで話しを聞いた。


ベルタは下の街の宿屋の娘だった。実家は姉が継いでいる。前回の馬車隊が、城塞都市に戻る際に、下の街まで同行し、次の鉱山街への補給便が着くまでの間に実家に滞在したらしい。


その際に母親を亡くして途方に暮れていた、アーデルハイドと出会い、相談に乗っていたようだ。ベルタには小さな娘がいる。結婚もしていたが 、傭兵をしていた夫を鉱山で亡くしている。それで娘を実家に預けているのだ。ベルタにすれば、とても他人事ではなかっただろう。実家の姉に、面倒をできる限りでいいので頼んでいったらしい。


オットーは、待合室に戻った。どうやら女の子は悪魔ではないようだし、悪魔憑きでもないだろう。とりあえず男の子とアーデルハイドを離し、ベルタに別室で経緯をアーデルハイドからきくように命じた。後で聴いて最終判断をすればいいだろう。


どうやってシートを入手したか。オットーは尋問ポイントを絞っていくことにした。


「お主、あのシートはどうしたのだ?」


少年は、下の街で、アーデルハイドが鉱山街へ行きたいということで、馬車隊に潜り込もうと荷車に二人で隠れていたらシートごと縛られてしまって逃げられなくなった事などを話した。


そして、峠の前の九十九折で、何度も大きく左右に振られているうちに荷車の連結が取れたようで道をそのまま下っていったが、ジャンプして藪に落ちたことなどを話した。そこでロープが外れ脱出出来たこと。アーデルハイドが魔物に食べられるとパニックになったので結界シートにくるまっていけばと思い、あのようなスタイルで歩いて来たと語った。


オットーは考えた。辻褄は合っている。ただ解せないことがひとつある。あのシートは守備隊のものだ。オットーは聖騎士だ。天使の力を剣に宿し、どんな硬い魔物でも一刀両断できる。だから、あのシートが結界をつくれない単なるシートであることがわかっていた。


どうやって魔物を防いだのだろう・・・シートが単なる布だったことは黙っていた。


「お主、喉が渇いたであろう。水が飲みたいか?」


少年は、素直に、そして嬉しそうに、「はいっ」といった。


ふふ、可愛いな。オットーは、城塞都市で留守番している息子達の事を思い出していた。

うちの2番目の子と同じくらいだ。あいつはどうしているだろう。


水を取りに行くふりをして、ベルタを呼び出し、二人の子供の話しを擦り合わせた。ぴったりと符合するが、アーデルハイドは、少年が一口と言っているのに、ゴクリゴクリと二口飲むのだと文句を言っていたそうだ。あの時聴こえたのはそれか。あははは。杞憂なのか。


しかし、悪魔の狡猾さを侮ってはいけない。オットーは、ゴルトムントに、従軍司祭に聖水を頂いてくるように頼んだ。そして部屋に戻った。少年はニコリとオットーに微笑んだ。


「待たせたな。水、今頼んだからもう少し待て」


「はい、ありがとうございます」少年は即座によどみなく答えた。


いい返事だ。この子は気品があるし、躾もよい。貴族の子弟かもしれないな・・・そういえば結構質の良さそうな服を着ている。かなり汚れているが・・・。ま、聖水を飲んで何事もなければ、白だな。


部屋がノックされ、ゴルトムントが入ってきた。あれ、しまった。飲むのだといってなかったか。ゴルトムントが持ってきたのは、壺とその中に入った聖水撒きだった。


少年は、一瞥すると、「あ、聖水ですね」と事も無げに言った。恐れている素振りなどみじんもない。


オットーは、ゴルトムントと一緒に、一旦、部屋を出て、実は聖水を飲ませるつもりであると伝えた。


暫くしてゴルトムントが帰ってきたが、今度はビアジョッキを持ってきた。木のコップがなかったらしく、門番のお気に入り特大ビアジョッキを借りてきたらしい。木を切る聖人がレリーフとして描かれている、陶器製のジョッキか・・・絵の主はボニファティウス様か・・・仕方ない。


「すまん。これで飲んでくれ」


「ありがとうございます」


少年は、ゴクリゴクリと飲んでいる。苦しみ出したりはしないな。悪魔憑きは異常に喉が乾くと聞いた事があったが・・・聖水を飲んだ大丈夫なはずがない。いいだろう。残る謎は、魔物が特に増えていたあの峠をどうして何もなく通ってこれたかだ。


少年はまだ聖水を飲んでいる。しかし、陶器製だから中身が見えないので、どう見ても酒飲んでるみたいだ。しかも、でっかいジョッキでだ。オットーは笑いが堪えきれなくなってきた。


「ふう・・・ごちそうさまでした」少年はニコニコだ。つられてオットーもニコニコとした。


さて、どうするか・・・迷っていたオットーは立ち上がった。考えようとする時の癖だ。


少年を見ていると腰の聖剣が気になるらしく、ずっとみている。これぐらいの男の子は興味あるのが普通だ。オットーも家に帰ると子供らが寄ってきて見せて見せてのコールが始まるが、それがまた、楽しみでもあった。


「どうした。剣が気になるか?」


少年の顔が輝いた。


「はい、格好いいだけでなく、何か特別な力を感じます。


「ほう・・・お主わかるか」


私は、剣を抜いて見せることにした。


「触ってはならぬぞ、わしの剣はものすごく切れるからな」


少年は喜んでいるだけでなく、うっとりしている。オットーは息子の事を思い出した。少しサービスしてやろうと思った。


「これは聖剣だ。大天使聖ミカエル様の破邪の剣なのだ。ご像でミカエル様が足元に悪魔を踏みつけ、剣を構えているのをみたことがないか。ミカエル様にとっては短剣だが、人間には大剣なのだよ。で、実際に聖ミカエルにご加護を祈ると、刀身が聖なる力で光り出し、切れ味が恐ろしい事になる」


少年は目を輝かせ頬を紅潮させている。・・・息子なら、聖なる光が見たいと言うだろうな・・・よし、危険だから、鞘に戻して、少し鞘から抜き、根元だけ光らせるか。


オットーは、聖ミカエルに祈り始めた。


「熾天使の長たる大天使聖ミカエルよ。我らの為に汝が御力をこの剣に宿したまえ」


剣が光り出した。それと共に凄まじい力が剣に宿り、剣が振動し始めたのだ。通常よりも励起される力がすごいので驚いていると・・・


同時に、少年の身体も光り出した・・・額に光る十字架が現れ、両肩が光り出した、服を着ていてもそれは通過して溢れだしてくる。どういうことだ。一体何か起きたのだ・・・


オットーは直ぐに剣の励起状態を解除し鞘に納めた。なんだ今のは・・・額に十字架が・・・肩の辺りが光っていた?


「ちょっと見せなさい」少年の服を些か乱暴に剥ぎ取った。いや、ボタンとかは外してだが・・・少年の両肩には青いアザがあった。


「これは・・・」


少年も困惑している。オットーは直ぐにゴルトムントを呼びブルーノ神父様に来ていただくように伝えた。


いかがでしたか?


次節では、いよいよ、少年の正体がなんだか、推察できる人が現れます。


ブクマお願いします。やる気でます・・・


次節は、なんとか日付変更線あたりでリリースできるよう頑張ります!


貧乏ちゃんはすこし遅れます・・・明日の朝になるかも。


宜しくお願いします。

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