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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第75節 アーベントイラー 鎧の行方

いつもご覧いただいてありがとうございます。

Ⅰ 練習


「じゃ、あとで明星亭で飯くおうぜ。それまで、俺、槍の練習するからよう」

「私も弓練習しようっと」

(アレクシスさんとクラウディアさんは、バトルマニアか・・・)


 カールさんが、そんなアレクシスさんを見て首を傾げた。


「アレクシス、鎧探すんじゃなかったのか?」

 アレクシスさんは、あっ という顔をした。すっかり忘れていたらしい。

「ダンケ、カール」

そう言うと、そのまま独身寮に向かって歩きだした。僕は、武器類をしまうので、遅れて後をついていくことにした。双子たちも付いてきた。彼らも自分たちのドロップ品がどうなっているのか、気になるようだ。カールさんも後を追った。


「おい、もうすこしゆっくり歩けよ。なんでお前はいつもせっかちなんだ」

「カール、俺はこういう性格だから長生きできているんだよ」

 まったく歩く速度を緩めるどころか、段々速くなってきたようだ。灰色のマントが、風がないのに、ひらひら後ろに棚引くほどだ。どんどん後ろ姿が小さくなっていく。


 僕は、クリスタを待つために、すこし止まった。クリスタはお弁当の入っていた籠をまだ拾っていた。もちろん背中の荷物は紐でつながって、ぷかぷかと浮いたままだ。

僕は、戻って、拾うのを手伝って、一緒に砦に歩いていった。

彼女の荷物の中身は、メインが食品だ。毎日、砦のキッチンに取りにいくと、今日のような、お弁当が渡されるのだ。そのほかに、アポロニアさんの傷手当セットや、ポーションなどが入っている。


 僕の荷物は、ほとんどが、矢とジャベリンだ。本当に商売で売りにいくような数だ。あの二人は、用意周到で心配性なのだ。練習の鬼だしね。僕の荷物は、今日は補充なしだから、独身寮の倉庫の中に置いておくだけ。本当に浮遊は役に立つ呪文だ。これが使えなければ、僕やクリスタはポーターにはなれなかったよ。


 武器倉庫につくと、中から大声がした。


「やったぁ!あったぞ!えへへへへ」アレクシスさんの声だ。

 もぞもぞと双子の二人の声も聴こえる。あの二人にしては、声が大きいから、彼らの鎧も見つかったのだろう。

「大きな声だな・・・どうした?あったのか?」

 カールさんが独身寮のトンネル裏口から出てきた。サーコートだけ脱いでいて、鎖帷子のままだ。フードはとっている。

 よいしょ、よいしょと、アレクシスさんたちが、大きな箱を抱えて出てきた。箱は長方形で、普通に使われている衣装や鎧などの具足一式を入れる箱だ。僕も自分の部屋に一つある。もらいものだけどね。ただ、彼らが運びだしたものは、普通の箱ではなかった。


きれいに着色されていて、正面と上面に、複雑な紋章が描かれている。多分パパ様の教皇紋だろう。あちこち金属で補強されている、立派で頑丈そうな箱だ。


「おお、すっかり忘れてたよ。勿体なくて使えねぇって思ったんだよな」


 僕も思い出した。イタリアから難民でパパ様と一緒に逃れてきた鎧職人さんの箱だ。パパ様の御用達なんだよね。神聖騎士団の鎧を、ドロップした、空飛ぶザクセン傭兵団の4人のために調整しなおした品物だったはずだ。そうだ。あの鎧を造った職人さんの子孫だった筈。


「開けるぞ! 驚くなよ~」

 アレクシスさんが、勢いよく箱を開けた。ぷーんと良い油の匂いがあたりに広がった。


箱の中には、綺麗に並べられた、鎧のセットが入っていた。バケツ型のヘルム。部分鎧の胸当て。右の肩用の部分鎧。手のひら部分が皮でできている左右の籠手、これは肘までを守るものだ。そして、脛から足の甲を守る部分鎧。

「すげぇ・・・つけてみっか・・・おい双子兄弟、手伝ってくれ」

 ところが二人は、自分たちの箱を開けて、ただ眺めて悦に入っていて、なにも聴こえないようだ。

「コンラート、えっともう一人双子! ダメだ・・・」

(クレメンスさんだよ・・・よく忘れられるけど・・・)


 アレクシスさんは、とりあえず、胸当てを出してみた。ずっしりと重いが、そんなに重いわけでもない。普段、盾も使っているので、これで十分だろう。後衛職だが、乱戦になったら、後衛とか言ってられない。矢だって槍だって、前衛と後衛なんて区別をしないで飛んでくるのだ。アレクシスの盾は、体力的に木製だ。槍を投げるのに、大きく重い盾は装備できないからだ。しかし、木製の盾は、斧が刺さっただけで抜かないとバランスが崩れて使えなくなる。薄い鉄板では貫通して木の部分に刺さるので意味がない。


 アレクシスは、なるべく指紋をつけないように触っている。従者を雇えるような身分ではないから、自分の装備の手入れは、自分でやらねばならないためだ。

「うーん。そうだった・・・これって剣士用なんだよな。槍投げるのに、この装備は動きを制限しそうだから、使わないで取っておいたんだよ・・・


 その装備は、騎士が馬上で戦い、また下馬して白兵戦を戦うことを想定したものだった。


「騎士様はいいよな。装備が重くても、現地まで馬だからな。おれら戦士はそうもいかねぇよ。まして俺は槍使いだし。投げ槍が専門だもんな」


 地下迷宮は、パーティの中での役割分担があった。どちらかというと遠投はなく、手持ちで刺すとか、近接するまえに槍を投げて倒すとかだけだった。防御は基本双子の盾使いが担当していたから、大楯を構えた大男達の後ろから隙を見て刺すような戦い方でよかった。

ところが外で戦うとなると、地形が味方ではなくなる。洞窟や迷宮では、地の利を生かして戦えたが、外となると何もない地形はむしろ不利だった。

そこに気づいたからこそ、より遠投できるような武器を開発したり、一層の練習に励んだりすることになった。つまり、不安がそのように仕向けたといってよい。

「なんだかな・・・」


結局、またお蔵入りになりそうだった。だが、胸当てだけは使おうと思った。矢が飛んできて、盾で避けられなくても、致命的なところに刺さらなければいい。飛び道具を使う魔物は限られている。アレクシスは、あと、籠手を使おうかどうか迷っていた。

槍を投げた直後に右から剣で切られたら、つい右手でカバーしちゃうよな。でも、俺の鎖帷子は、半袖だし・・・まてよ。そうだ。あの死霊使いに操られていた霊は、鎖帷子着てたよな。

アレクシスは、箱の底のほうをまさぐった。あった。そうだ。鎖帷子も貰ったじゃん。


 体に合わせて網を直してもらったんだったよ・・・忘れてた。


「俺は部屋に帰るぞ。夕方から作戦会議を食事しながら行うからな。じゃ」

「お疲れ~」

 カールは部屋に戻っていった。まだ、アレクシスは迷っていた。

「毎日、少しずつ試せばいいか」

 とりあえず、明日は胸当てを試そうと決めたアレクシスであった。


 そのころ、クラウディアは、砦の兵士達の訓練を見ていた。練習する者たちは、射出場所が定められているのだが、等間隔で並んで5人だ。それ以上だと、風によって流されて危険なので、禁止されている。的はいくつかあり、距離に応じて前後に配置されている。木の板で作られた的は兵士たちの手作りで、ゴブリンだったり、アンデッドだったり、オーガだったりと、下手くそだが味のある絵が並んでいる。


 的の近くには、監視官がたっていて、旗を持っていた。危険がある場合には監視官が旗を掲げるというやり方だ。監視官は、監視塔のような木製の塔の中にいる。矢を打つような塔

で庇が張り出し、その下に横長の監視穴が設けられている。こちらに向いている側以外は何もなくて周りが見えるようになっている。そして、その後ろには、石の壁がずっと並んでいて、通路を通る人を守るようになっている。

 クラウディアは、射出場が空くまで暇なので、監視塔の後ろを通って、通路の方へ歩いていった。監視官がクラウディアの後ろ姿に声をかけた。

「クラウディアちゃん、もうすこしで訓練終わるよ・・・横で待ってた方がいいかもよ」

「あ、そうなの? でも、矢を拾うんでしょう? 手伝うわ」

「おお、助かる。じゃ、待合で座ってて」

「はーい」


 兵士たちの間で、クラウディアは人気だった。昔は、どこの街でも村でも、そういう娘がいて、だれが、その娘のハートを射止めるかが、話題となったものだ。悪魔の侵攻によってコミュニティはガタガタになったが、常に戦争中でも、やはり人間は変わらないものだ。


 待合は、数人の兵士たちが、たむろしていた。

「こんにちは~お邪魔します」クラウディアは礼儀正しい。

「おや、クラウディアちゃん」

「練習に来たの?」

 兵士たちの目の色が変わった。クラウディア獲得レースに参戦しようという奴ばかりだ。中には妻子持ちもいるが、やはり、可愛い娘には弱いものだ。

「矢を拾うのを手伝おうかと思って来たんですう」クラウディアもすこし可愛く答えた。

「いいよ、危ないからそこに座ってなよ」

「そうだよ、矢は俺たちで拾うからさ」

「手、怪我するといけないからね」


 訓練が終了したと告げられて、矢を射っていた兵士たちが矢を拾いに集まってきた。これから訓練場を歩いて、的に刺さった矢や、途中に落ちている矢を拾うのだ。


「あれ、お前もう訓練、とっくに終わってたんじゃないの?」

「いや、俺、お気に入りの矢を無くしてね。探しに来たんだよ」

「よく言うよ。俺の腕前なら、どんな矢でも完璧に打てるとかいってたじゃねぇか」

「うっ、いや、えーっと、この辺に落ちたんだよな」

「ごまかしてやがら」


 全員で拾って、矢のストック籠に入れていく。中にはうっかり矢を踏んでしまうものもいて、バキッと音がする。見つかったら罰金なので、気づかないふりをするのだが。


「ああ、これ折れているぜ」

「どうせ、誰か踏んだんだろう」

「そうだろうな、あっちの籠にいれておけ」

 

 兵士に交じって矢を拾うのも楽しいものだ。この兵士たちは、城壁組だ。城壁の上をパトロールし、魔物を見つけたら、注意を喚起する。上官が魔物を調べて、退治するかどうか指示をすると、彼らが矢を放つルールだ。

基本的に城壁の外に放った矢は、回収が難しいので、退治する魔物は限られている。打ち損じるのはアーチャーとしてはプライドにかかわるので、皆、切磋琢磨して、かなり腕がいい。クラウディアも勝てないような名手が何人もいるが、皆、限定されたシチュエーションでの上手さだ。狭い洞窟や、魔物との乱戦などでの戦闘経験がない。

例えば、弓が打てないような接近戦となると、城壁組は対処できず、剣を抜くことになる。しかし、クラウディアは、そんな場面でも弓で戦えるのだ。場合によっては、右手で矢を持って、そのまま刺すこともある。確実に急所にだ。

城壁組はクラウディアの他の能力にも気づいていない。傭兵と兵士の違いなのだろう。


「ありがとう。助かったよ」

「今度エールおごるぜ」

「クラウディアちゃん、またね」

 皆、嬉しそうだ。兵士達の独身寮は砦の中にある。結婚をすると、鉱山街にある、家族寮に移ることができるが、これは、至難の業だ。女性の数が少ないのもある。兵士は死ぬ確率が高いので、あまり人気がないというのが一番の理由かもしれない。鉱山だって確率は高いのだが。

 

 クラウディアは、射出場に立った。的の近くにある、風向きを見るための旗がはためいている。今は、山から吹きおろしの風が吹いているようだ。ここは、かなり高い山に挟まれた谷になっている。実際の戦場では風は見れないから、感じるしかないよね。

 クラウディアは、まずは一番遠い、オーガの的を狙った。実際にオーガを見たことがない兵士が描いたのだろう。思わずぷっと噴き出してしまった。何回見ても笑ってしまうようなオーガの的は3枚ある。今日の弓はコンパクトな複合弓だ。ヘルマンが姪のために作ったものだ。ヘルマンの本職は鍛冶屋なので、よくこのレベルまで作れたと思うのだが、実際によくできていた。重さ、バランス、弦を引く力、弦の取り外し、すべてが申し分ない。

(そういえば、おじさんは若い頃は冒険者だったんだっけ・・・)


 戦争なら、大量に矢を放ったほうが強いが、クラウディアがやっているのは、団体戦ではなく個人戦だ。この1本で倒さないと仲間や自分がやられる。傭兵もそうだが、冒険者もそうだ。自分で武器を扱った経験がないと、いい武器は作れないというのは、ヘルマンの持論だが、本当にそうだなと思った。


 とりあえず、1本撃ってみた。放物線を描き、矢が飛んでいく。遠いところへの矢は、音さえ聞こえれば盾で防げる。近接して撃たれると、まず避けられないものだ。

 街道に横たわるゴブリンの死体は見ていないが、予想がつく。街道を渡ってくる4人のゴブリン? (あれ、ゴブリンって匹でかぞるのかな。頭かな?)


 おそらく、矢筒は使っていない。木の枝に乗っているのだとすると、木の幹に刺しておいたのだろう。次々矢を番えて撃つって、かなり難しい。多分2人の射手なんだろう。

 矢は的に当たった。首の真ん中だ。首をやられると声が出せないし、うまく中枢神経に当たると、即死だ。血すら殆ど出ない。カール達の話では、血が流れていた。


 やはり現地で確認したい。今夜の作戦会議で、主張しようと思って、クラウディアは次の矢を撃った。今度は手前のゴブリンの絵の的だ。こっちの絵は、見たことがあるから、かなり上手い。数か月前に、スタンピードで、襲われたばかりだからだろう。


 ゴブリンの的は近いところにあるので、よく当たるのだろう。ぼこぼこだ。憎らしい目を狙ったのだが、当たった瞬間に板が割れてしまったようだ。なんだか、気が萎えてしまったので、今日はもう止めようと思った。弓の弦を緩めず、頭を通して肩から下げた。


 矢を拾いに行った。もう、やぐらのようなところに監視官はいない。少し先のゴブリンの的の近くに、クラウディアの矢が落ちている。少し先にゴブリンの右目から上部分の絵が落ちていた。(ふふ。ゴブリンも災難よね。実生活でも、的に描かれてもひどい目に合うんだから・・・)

 クラウディアは、矢と割れた絵を拾い、もとの的のところにまで戻って、根元においた。

それから、一旦矢除けの壁のほうへ向かい、扉を開けて通路に入った。壁は、城塞都市の石工達が作ったものだ。色々な大きさ、厚み、あと石本来の色、バラバラだった。それらが、またいい味わいを出している。城壁に使用できなかった石を使って作ったと聞いている。白いのは接着材だそうだ。古代ローマ人と同じ製法だと聴いた。すごいな。


 待合室というか、待機所には、だれもいなかった。入口の反対側に通り抜けて、新しくできた西城壁沿いにあるく。城壁には矢が当たっても矢じりが壊れないように、板が貼られ、更にその前に植え込みが植えられている。そして、その前に大き目な的が並んでいる。

 少し前は、丸い円だったのだが、消耗が激しく、時々交換された。そして、城壁組のアーチャーによって、オーガの絵が作られて今に至っている。


 クラウディアは、念のため、射出場をチェックした。遠くから見るだけだが、誰かが撃ってこないとも限らないからだ。監視官がいないので、気を付けないと、危ない。幸いにして射出場や、練習場付近にも人はいない。オーガの前に立ち、矢を抜く。これが抜けない。腰からナイフを取り出して、木をほじって取り出した。


 クラウディアは、帰り道で、矢を点検した。傷んでいないようだ。羽も良いコンディションのままだ。腰から下げた矢筒に戻した。ゴブリンの矢は質が悪いといわれている。スタンピードの時に落ちていたので見てみたが、確かにいいものではなかった。


 まず、軸が真っすぐじゃない。これで真っすぐ飛ばすのだから、名人並みなのだと思う。次に羽がひどい。羽はどうしても傷むので、交換が必要になるが、ゴブリンの矢羽は、3つとも違うとか、ボロボロな羽が多い。そして矢じりのバランスが悪い。まず、金属ではなく、石か、動物の骨だ。クラウディアは、ゴブリンが可哀想だとまた思った。気づいたら、女子独身寮の入り口にいた。


Ⅲ 作戦会議


 クレメンス、俺のことだが、俺は、コンラートの兄だ。でも誕生日は同じだ。よく似ていると思う。双子だからだ。もしも結婚できるのなら、双子の女の子達が希望だ。これがまた、縁遠い原因になっている。まず、双子なんて鉱山街に居ないからだ。

 俺達の両親は、すでにこの世にいない。今は二人で鉱山街の独身寮に住んでいる。父親の先祖は、もともと北方の一族だったらしい。先祖は、ザクセン族が部族国家を形成しだした頃に、ある騎士の荘園に身を寄せたと聴いている。そのまま大侵攻まで、農民兵荘園を逃げて、この街にたどりついたのが、もう170年ぐらい前だ。

 クレメンスは、もう会議の時刻だろうと思い、立ち上がり、ベッドの脇にあるテーブルにノルマン型のヘルメットを置いた。それから徐に隣のコンラートの部屋に行こうとドアをあけた。その時、同時に隣の部屋からコンラートが出てきた。こんなシンクロはいつもだ。

「よう、いこう」

「よう、いこう」

二人は同時に同じ言葉を発した。微妙にコンラートのほうが音が高い。僅かな差だが。


二人は廊下を進んだ。大抵、途中でアレクシスとカールが合流する。いつものパターンだ。カールもアレクシスも、二人の後ろを歩くのが嫌なのだ。戦闘中は好きだが・・・


 それは、圧迫感だとカールが言っていたのを覚えている。カールだって身長はあまり変わらないのだが。自分でも、カールが前を歩いていると壁みたいだと思うこともある。ただ、たいていアレクシスが横にいるので、すこし目通りがよくなる。


「今日の一皿はなんだろうな?カール。まさか魚料理じゃねぇよな・・・あれ、今日は何曜日だ?」

「アレクシス、金曜日じゃないか?」

「やべ・・・魚だな。昼も魚。夜も魚だ。明日、朝起きたら、鱗が生えているかもしれねぇぞ。朝、半魚人だ出たら俺だから、刺すなよ」

「あはは、夜のうちに、お前の槍をトライデントに変えておこう」

「冗談じゃね」


「ふふ」俺たちは同時に静かに笑った。

「なんだよ、双子。いつも笑うタイミングが遅ぇんだよ」

 アレクシスが笑っている。やはり、ここの連中は面白いし、いいやつが多いよな。


4人で寮の階段を下りていく、軋み音がすごい。安普請なのではなくて、4人の合計体重が重いからだろう。なんで石の階段にしないのか、そうしたら軋まないのにと思っていたが、今回の砦の増築で訳がわかった。石を積み上げて壁だけを造るのが、一番早いのだ。

床と階段は、石工の後に大工がやる。屋根の梁を付けたら、あとは屋根屋だ。


 建築の世界も分業なんだなと感心したよ。俺らもそうだ。迷宮なんかで、敵と当たるときは、まず、遠目から、アーチャーやランサーが飛び道具攻撃をして、それでも倒れなければ、敵の攻撃を俺らが盾で防ぎつつ、剣士やランサーが攻撃する。もちろん俺ら盾職も片手剣や片手斧で攻撃する。シールドバッシュのほうが、強いかもしれないな。俺らは、無口だから存在感がないのかもしれない。また盾という職業もあるかもしれないな。


「おい、コンラート」

「ん?」

「決めたのか?」

「決めた」

「あれか?」

「あれだ」

「俺もだ」

「うむ」


 アレクシスが振り返った。ちょうど寮の玄関を通るころだった。

「おめぇらさ、何話したんだ、今。よくそれで会話が成立するよな」

「アレクシス、だからだよ。このシンクロ関係だからな。結婚できないんだよ。相手は双子じゃないと無理だ」

「ぎえ~、想像しただけで恐ろしくなるぜ。4人のうち二人が同じ顔で、同じような会話しているんだぜ・・・」


 俺は、アレクシスの言葉に触発されて、まだ見ぬ、嫁さんの姿を思い描いてみた。顔はクラウディアだが、顔と肩幅が合わないな・・・それに、背がでかくて、口数は超少ないぞ。しかも双子だ。おう。

「いいね!」

「いいね!」

おや、コンラートのやつ、また同じこと考えていたな。


「おいおい、今度は何がいいんだよ・・・面白い兄弟だな。うらやましいぜ。俺にも双子の弟がいたら楽しいぜ、ぜってぇ」

 カールがぼそっと言った。

「うは・・・耳に綿つめたいぜ。まったく」


「なんだよ。どういう意味だよ?カール」

「いや、今はまだアレクシスが一人だから、右耳から入った言葉は左に抜ける。でも、両側にアレクシスがいたら、出ていかなくなるだろう? 俺の頭の中が、アレクシスで一杯だ。だったら、最初から耳栓しておこうってことだよ」

「なんだ?それ? よくわからねぇが、いい意味じゃねぇな・・・ま、いいか」


 そんなことを二人が話しているのを聴いていたら、明星亭についた。店に、まだほかのメンバーは来ていなかった。


最近多角的な視点を目指しています。

やりすぎかもしれませんね。


実は次の話も書き終わっていますが、推敲しないとです。

随分と変な間違いをしている時がありますので、

ご迷惑をお掛けしていると思います。


ブクマお待ちしております。


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