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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第75節 アーベントイラー 悪魔の支配地で2

アーベントイラーとは、冒険者達という意味です

あまり勇敢ではなく、むしろヘタレ気味ですけど

生き残る戦略でもあります

Ⅰ街道を西に向かう


 悪魔やアンデッドが沢山いるんだということに、アレクシスは驚いていた。当然といえば当然なのだが・・・なんか不安を感じているようだ。表情から、そこを汲み取ったカールが口を開いた。


「アレクシス、心配事があるのか?」

「あ、いや。こう、森が多いと、ジャベリン投げられねぇなって・・・思ってね」

「なんだ、そんなことを心配しているのか」

「いや、放物線を考えるとな、木の枝にあたりそうなところばかりなんだよ。だから中距離も厳しいなって思ってね」

「近い敵にだけ真っすぐ投げればいいじゃないか。得意だろう?」

 アレクシスは、腰のバンドにさしていた、変な形の木を出して見つめた。

「飛距離を伸ばすための道具なんだけど、折角作って、今回の探索で試せると思ったんだよ。アンデッド相手じゃ、あまり効果なさそうだしな・・・槍の先端に綿でもつけて、火つけて投げてみるか?」

「あはは、それはいけるかもしれないが、そんなことを悩んでいたのか。お前らしいな」

カールは笑った。アレクシスは、根っからの戦士だ。常に技術の向上を目指している。みんなそうだといえるだろう。結局生き残るには、それ以外に道がないのだから。


 カールは木の陰に隠れているクリスタを見つけた。かわいい小動物のようだと思ったが、言わなかった。まあ、アポロニアも小動物系だ。

「あ、そうそう。クリスタちゃん、ちょっとこっちに来て」

 クリスタは、なんか怪訝な顔で近寄っていった。普段呼ばれることなどないからだ。


クリスタがカールの傍まで近寄っていくと、腰のひもで空中に浮かんでいる大きな荷物もぷかぷか動いた。カールは右手の人差し指で地面をさし、ぐるぐる円を描いた。クリスタはすぐに意味を理解し、ぐるっと後ろを向いた。

 カールが、クリスタの大きな荷物の蓋をあけて、なにか出した。

「じゃーん。団員たちよ、これを見よ!」


 皆、面倒くさいと感じだ。カールはサービス精神でやっているのだろうけど、まず面白くないから、いちいち反応するのも面倒くさいのだ。

でも、カールが取り出したのは、今までに見たことがない入れ物だった。黒い入れ物でだ。光を反射しないような暗い物質でできている。その円筒形の物体は皆の目を引き付けた。


「なによ、それ」クラウディアだ。どこか言葉にとげを感じる。


「それ、旨いのか?」アレクシスは食べ物というか、お弁当箱と思っているようだ。

 

 カールはガックシきてた。


「あのな、これ、フィリップ卿から頂いたんだぞ・・・ていうか、お貸しいただいたのだ」


 みんなきょとんとしている・・・クリスタには何かわかるような素振りだ。クリスタは円筒形の物体を見ながら何か言おうとしていた。


「その・・・なんか、滲みだしていますよね。使徒様から滲み出ているようなのと同じ感じがします。匂いというか・・・ガスのような」

「すごいな・・・そうなのか・・・見えるんだ」カールが驚いている。


「なんなんだよ。カール、おめえ、もったいぶらないで、皆が分かるような言い方しろよ!」

「なんだよ。アレクシス。俺だってよくわかんないんだ・・・俺には見えないんだから・・・」

「そうだったのか・・・それって、どういう風に見えるんだい?クリスタ・・・ちゃん」


 クリスタも上手く言えないようで、下を向いて考えている。

「だめじゃん。女の子いじめちゃ!」クラウディアが噛みついてきた。

「いや、クラウディアさん、私、大丈夫です。考えているだけだから。

 あの、使徒様の・・・」

 うんうんという感じで全員が近づいてきた。ぎょっとして、クリスタは少しのけぞったが、話は止めなかった。

「使徒様の肩というか、脇のあたりから、白い気体のようなものが出てくるんですけど・・・それと同じような感じなんです」



みんな、顔を見合わせた。

「使徒様って、体臭きついんだっけ?」

 クラウディアさんが酷いことを言っている。


(あれ・・・今回は静かにしてたのに・・・なんか酷いこと言われているんですけど・・・)

 僕は、存在を消して、荷物のようにしていたのに・・・


「ねねね、クリスタ? 僕っていつも臭いの? なんか脇から黄色いガスみたいのが出てるの? なんか酷いよ」

 クラウディアさんと、アレクシスさんが、ぷぷぷぷって感じで笑いを堪えている。アポロニアさんは、下を向いて咳をしている。苦しそうだ・・・絶対笑いを我慢しているよ。


「ううん、違うよ!そんなこと言ってないじゃん! いつも、使徒様って、脇というか肩のあたりから、白いというか、光っているというか、出してるでしょう。見えるの、私」


「それって、エーデルス・ブルートが実体化しているのが見えているんじゃないの?」アポロニアさんが言った。

「なんじゃそれ?」しかし、アレクシスさんは手も早いけど、反応とか口も早い。

「食べ物じゃないわよ」アポロニアさんが釘を刺した。

「ちっ、つまんねぇの・・・」

「使徒様は、生まれてすぐに、穴をあけられたのよ・・・穴といったって、血がでるわけでなくて・・・血液の中を流れているエーデルス・ブルート、高貴な血って意味そのままよ。

聖性の高い人なら体の中にあるのよ。命って神様から頂くでしょう?誰もが高貴な血は生まれながらに持っているの。でも、使徒様は、凄い量の持ち主だったみたいね。それを放出されるために、体のあちこちに穴が開けられたというわけ」


「・・・そうか・・・だから、魔物が出てこれなくなったりしたわけだ。最初はあまりに出なくて俺ら死にそうになったもんな。食べられなくて・・・」


(うは、カールさん、その話の蒸し返しは、傷つくんですけど・・・)


 僕が、彼らのパーティに参加した頃はそうだった。僕は、聖性があふれ出すという特異体質のせいで、僕が参加した日に限って魔物が出ないという不幸に見舞われた。それが分かったのは、自称聖人のウィンフリートじいちゃん修道士様のお陰だけどね。地底湖で練習したりしたよ。出したり引っ込めたりって練習ね。もともとは、幼い頃から沢山放出させて、エーデルス・ブルートの発生量とか保有量を増やすための措置だったらしい。これは、悪魔と闘わなければならないエクソシストに施されるとのことだった。


 僕の身元が分かったのは、そのあざのような、エーデルス・ブルート放出孔のせいらしいけど。


 カールさんは、思い出したように、その物体について打ち明けたんだ。


「えっと、発表します。フィリップ卿が貸してくださったのは、結界発生装置です」

 なんだか随分と淡々と発表したよね。どこかで受けを狙ったのかもしれない・・・外れているけどね。


「・・・やっぱりね・・・よく貸してくださったわね」アポロニアさんは薄々分かっていたようだ。

「うむ。そうなんだ。俺にも信じられないんだが・・・それだけ、俺らのやっている仕事が、つまり、パパ様の依頼が断れないってこと。言い換えれば失敗できないってことなんだろうな」


 カールさんは、そおっと、装置の入った円筒形の箱を、偶々そこにあった、切り株の上に置いた。


「いいか。みんなに使い方を説明する。難しくともなんともないからな。


こうやって、箱の蓋を開けて、宝石を剥き出しにして・・・」カールさんは蓋を開けた。

「うわ。すごい眩しい」クリスタが目を閉じ、手で顔を隠した。


「あのさ・・・クリスタちゃんの、その能力ってやばいんじゃない?聖性の発露が見えるってことでしょう?」アポロニアさんがマジな表情をしている。

「それもそうだな・・・でも最後まで説明させてくれないか?アポロニア」

「あ、ごめん」

「その件は、あとで話そう・・・この円筒形の入れ物は、2段になっていて・・・」

 そう言いながらも、カールさんは、周囲を見渡した。

「おっと、周囲を一応確認しよう。なにしろ、こんなところだからな・・・。そうだな・・・危険があるかもなので、解説だけするよ。

この中には、結界装置の本体である宝石と、その台座が入っているんだ。緊急避難的に使ったり、野宿しなければならない時に使用しろとのことだった。使い方は簡単で、台座を下の入れ物からだして、その上に宝石を乗せるだけだ」


「そうね。ここいらで使用すると、刺激的って、却って魔物を呼び寄せるかもね」

「そうなんだよ。アポロニアの言うことが気になったんで、ちょっと出すのを止めたんだ・・・クリスタがその、聖性の輝きが見えるということは、魔物も見えるのだと思う。

 もちろん、クリスタが見えるというのも驚きなのだが、フィリップ様がおっしゃるには、魔物は感じるのだそうだよ・・・痛みとしてね。近くなればなるほどだそうだ」

「へー、面白いわね。ということは、使徒様のことも感じちゃうのね・・・」

「いや、最近の使徒様は、もうだいぶ前から、放出量を抑えているから、魔物たちは、あまり感じないだろうって、フィリップ様の話だ」


 アポロニアさんは興奮しながら話を聴いているのが伝わるほどだった。

「これは、本部に報告しなきゃだわ! もう砦に帰ろうよ」

「おいおい・・・」

「冗談よ、冗談。でも、毎日砦に帰れるのは凄いことよね。使徒様のお陰です」

 そういって、アポロニアさんは僕にペコリと頭を下げた。


Ⅱ 昔の街の跡


 カールさんは、周囲を見回して、言った。

「一か所にとどまると危険だろうから、移動しよう。使徒様は、転移しやすそうなところを見て記憶してほしい。なんとなくでいいから」

「はい。お任せください」

「そうだな・・・なるべく安全が確保できそうで、物陰かな。目印になりやすいところが一番いいと思うが」


 僕は転移先という意味で、周囲を見ながら進むようにした。僕らは、街道を歩くことにしたが、広くなっているところや、物陰があるところ、印象的な目立つ木があるところなどで、休み休み進んだ。さっきから継続的に警戒を唱えているが、赤い点は頭の中に現れることはなかった。



 どれだけ進んだだろう。かなり進んだような気がしたのだが、カールさんは大して進んでいないと言った。

さっきのバリケードから1000ルーテ(約3キロ)先に十字路があるということなのだ。数百年前の地図では、そこを右に曲がると、ライン川に突き当たるらしい。

まずは、そこを目指して歩くことにしているらしい。


 また、その十字路近くに、かつては、小さな街があったので、探索しようという話もしている。森の中の修道院みたいに、惨殺された神父様達の骸骨がそのままっていうのは、見たくないけどね。



 相変わらず、街道の近くは森が多かった。このあたりの森は、下草などが殆どなく、鬱蒼としているが、森の中は歩きやすい。街道も200年近く手入れされていないわりに、意外と何もなく歩きやすかった。枯れ葉や枯れ枝があるにはあるが、大雨が降ると流されてしまうのだろう。古代ローマ人の技術の高さには感心する。

古代ローマ人は戦略物資運搬のために道路を建設していたと誰かがいってた。戦略物資だから大量に重量物を馬車で運搬しなければならない。

 したがって、石畳も頑丈なものが造られた。山側の北街道に面する砦の手前で、ゴブリンの大軍に襲われた時、僕はパニックになって、道をメテオ隕石で滅茶苦茶に壊してしまったが、その時の改修工事を見学したので、ローマの道の作り方は詳しくなったんだ。


 森を歩いたり、道を歩いたり、北の森だとか、南の森とかを交互に歩くものだから、1000ルーテじゃなくて1500ルーテぐらい歩いているような気がする。疲れたよ。


 突然、カールさんが手を挙げて止まった。右の森に入れという合図だ。前方に何かを発見したようだった。南側の森の中で、しゃがんで木の陰に待機した。

 カールさんとアレクシスさんが、腰を落としたまま、森の中を進んでいく。すぐに戻ってきた。

「戦闘のあとのようだったんだが、幾つか魔物の死体が転がっている。それもまだ、新しい。あまり近寄るのも危険なんで、すこし様子を見て、やり過ごそう」

「どんな魔物なの?」アポロニアさんが訊いた。

「ゴブリンだ。しかし、交戦相手が分からない。ゴブリン同士の争いかもしれない」

「なるほどね。ゴブリンってもともと地表種だからね。地獄から来た連中と馬が合わないかもね」

「その可能性もある。もう少し近寄って調べたいのだが、時間をずらしたいというのもある。襲撃した相手が戻ることもあるからな・・・一番怖いのは、俺らが近寄ったことに気づいて、隠れた場合だ。見たところ弓で殺されているようだ。一旦引こう。

 使徒様、砦に戻れるだろうか?」

「えっと、塩ですか?獅子ですか?」

「休みたいから塩だな」

「賛成」クラウディアさんが小さく手を挙げた。


 僕はちょっと低い転移門を出した。みんな次々と背を低く、腰を落としたまま入っていった。


 今朝出発した、第2門の前の広場についた。全員が転移門を出て少し進んでしゃがんだので、全員が広場の真ん中でしゃがんでいるという変わったスタイルになった。

「おい、もう立っていいんじゃね?」アレクシスさんが気づいた。

「あはは、そうだよな。ずいぶん間抜けな感じだよ」

 みんな、カールさんにつられて笑いだしていた。しかも、しゃがんんだままだ。


「ちょっと、オットー様に報告にいってくる。練習場で飯でも食っていてくれ」

「カールの分も食べていいのか?」

「アレックス、頼むよ」

「冗談だよ」


Ⅲ 塩砦でのランチ


 僕らは、立ち上がって、第2門を通りぬけ、弓の練習場に歩いていった。砦の兵士さんが数名訓練していたので、すこし離れた草原に座った。左から右に弓が飛んでいくのを見ながらご飯にすることにしたんだ。僕は、クリスタの荷物からお弁当というか、ランチボックスを出して配って歩いた。みんな喜んで箱というか籠で作った箱を開けて食べ始めた。


「ね? アレクシス。ゴブリンだったんだ。矢で死んでいたんでしょう?」

「おい、食べてる最中はやめようぜ」

「あ、ごめんごめん。気になっちゃってね・・・」

「まあ、いいよ。それより、今日は魚じゃねぇか。珍しいな・・・すごい久しぶりだぜ」

 アレクシスさんは嬉しそうだ。僕は魚が嫌いだから、いやだけどね。ニシンの包みパイみたいなやつだ。ニシンは塩街道で昔はどんどん入ってきていたらしい。北の海でとれるんだって。


「なんだか足りねぇなぁ・・・動くから腹が減るよ」

「アレクシス、ねね、教えてよ。食べ終わったんでしょ?」

「おう、みんなも終わったのか?」

 アレクシスさんは僕を見て、

「あれ、使徒ちゃま~、どうしたの? もしかして魚嫌いか?」

 僕は半分ぐらい食べた魚のパイを、そおっと差し出した。

「やりぃ。えへへへ。あんがとよ」

「だめよ、アレクシス」アポロニアさんが窘めた。

「いいんです。アポロニアさん。僕、気持ち悪くなっちゃうので。半分は食べましたから・・・」

「もう。探索中なんだからね。命に係わるんだから、食べれるときに食べておかないとダメなのよ」


「で、どうなのよ?教えてよ?」

「しつこいな、クラウディアは・・・触ったわけじゃねぇから、死んだふりだってあり得たんだが、矢が刺さって、血が流れた跡が黒く見えたんだ。それに、生きていたら、矢が呼吸に合わせて動くだろう? 背の高さは、クリスタとか使徒様ぐらいで、肌の色がもとは緑だったんだろう。色が悪くなってたけどな。

腰蓑となめし皮の短い部分鎧みたいの着てたな。全員じゃないがな。道路の中央ぐらいで4人。仰向けで、南側に頭が向いていた。北側から打ったんだろうな・・・

あれさ、道を渡っているところを、すごいスピードで次々射貫いたって感じだ。あれさ、一人の射手じゃねぇよ。矢はきれいな軸だったな。ゴブリンの使うような粗末な奴じゃねぇと思う」

「ほかに何か気づいた?」

「クラウディア、目が輝いてるぞ・・・あ、そうそう。倒れたゴブリンに刺さっている矢は、みんな上向きなんだよ。放物線から入る角度を差し引いても、あれは高い位置から下に下げ下したってやつだぜ・・・ということは」

「北の森の木の上から、射下したってことね?」

 アレクシスさんは、面白い表情で、クラウディアさんをニヤニヤ見た。

「おめぇ、頭いいな・・・だから、俺たちはすぐに引いたんだよ。血の塊具合からいって、まだ、あまり時間がたっていねぇ・・・もしかすると、まだ木の上かもしれねぇんだ」

 アレクシスさんは、表情を硬くした。

「まだ死にたくねぇからな・・・解せねぇんだが、ゴブリンを殺した奴らは、誰なんだ?」


 そこにカールさんが帰ってきた。

「お、旨そうだな。魚なんて超久しぶりだぞ」というなり、籠から出して食べ始め、あっという間に平らげてしまった。そして、皮袋に入っているワインを一口飲んだ。

「うひゃ~、生き返るなぁ。旨かったよ。あ、食前の祈り・・・」

 カールさんは、そういいながら、アポロニアさんのほうを見た。アポロニアさんは苦笑しながら言った。

「まぁいいわよ。思い出しただけでも立派よ。誰かさんなんて、生き残れて嬉しかったくせに、お祈りもしないで二つも食べたんだからね」

 自分も言われると予期していたアレクシスさんは、観念した表情で、下を向いて、祈り始めた。すぐに復活して、カールを質問攻めにするつもりだが。


「で、どうだったんだよ、カール。オットー様はなんだって?」

 カールさんは、もう一口ワインを飲んだ。

「わからないって・・・ただ、地上種と地獄種は、同じゴブリンでも仲は良くないらしい。縄張り争いもあるかもなって言ってた。街道の上だったからな。北側が別の魔物の領地なのかもしれないって」

 カールさんは、また一口、皮袋からワインを飲んだ。

「おそらく、まだ木の上にいるだろうって。つまり張り込みってわけだ。ちょうど十字路だからな、見張りには、うってつけなんだろう。それと、矢の特徴を言ったところ、ゴブリンではないかもしれないとも言っていた。ゴブリンは、技術レベルを上げようとしない習性がどちらにもあるからだそうだ」

「なんだよ、そうしたら、どんな魔物なんだ?」


「あくまでも可能性だが、ウン・ティーアの可能性もあるらしい」

「なんだ、その動物じゃないって・・・普通化け物って意味だろう?」


「これが、やっかいな話なんだが、もと、人間だよ」

 皆が、え?っという反応だった。


「ウン・ティーアについては、アポロニアが詳しいって言ってた。もともと修道会の目的の一つでもあるってね。そうなんだろ?アポロニア」


「うん。話せば長くなるんだよね・・・」


 そう言って、アポロニアさんは話始めた。


 紀元1000年ごろから始まった悪魔軍の大侵攻によって、多くの人が生活の手段や住むところを奪われた。多くの人が集団で民族大移動を行って逃れてきたのだが、中には、この前の森の中の修道院のように、下働きの修道院が所有した、荘園の農民達が、村ごと奴隷にされた場合もあった。

 司祭や修道士達は即惨殺されたが、エールの醸造を続けたい魔物たちによって、荘園農民たちは、エール醸造場や小麦畑などで、強制労働させられた。労働修道士達は、修道服を脱ぐことによって生きることができた。醸造技術は彼らがもっていたから、彼らが残らなければ、皆、殺されていただろう。およそ170年の間、醸造技術が彼らの生き残る手段だったのだ。あのエールが旨いはずだよね。生き残るための手段だったんだもの。


 まだ、彼らは魔物の食料にされることもあったが、人間として生き残り、奴隷の子は奴隷であるが、子孫を残すことができた。アポロニアさんが言ったのは、それ以外の人間だった。彼らは言葉を奪われ、文化を奪われ、心を奪われ、ほとんどが改造された。

魔術によって全く人間ではないものに作り替えられたのだ。改造により、異常に高い戦闘能力を身に着けた者たちもいた。指を増やしたり、腕を増やしたり、半身を別の魔物と融合させられたり、まさに悪魔の所業だそうだ。

 これらの改造された人間たちは、ウン・ティーア(動物ではないもの)とよばれ、教皇庁が密かに研究を続けているそうだ。どうやって人間に戻すかといった研究も含まれるそうだ。


「ウン・ティーアの可能性は捨てきれないわね・・・問題は、だれが操っているかだわ」

 アポロニアさんは元気だ。みんな、気持ち悪い話を聞いたばかりで、げんなりしている。


「アポロニア、ウン・ティーアとは決まっていない。ただ、矢の製造技術が高いなら、ウン・ティーアがかかわっているかもしれないということだ」

「でもさ、人間じゃなくなっても、矢を造る技術は美しいとか、素敵よね」

(クラウディアさん、なんかポイントずれてない?)


「さて、どうするか? また戻るか?同じ場所に? 今日?」

「明日にしようぜ。気分が重いぜ」

「そうするか?あ、コンラート達はどう思う?」

 訊いたカールさんは苦笑して肩を竦めた。二人は、ヘルメットを磨いて、夢見心地で、目は遠いところを見ていたのだ。


いかがですか。転移門はチートですね。

ヘタレな傭兵団と相まって、生き残りに繋がります。

蛮勇はヒーローものの世界のものですよね。


これからコンスタントにアップしていきますので

是非、ブックマークお願いします。


次回は、ドロップ品の鎧を仕舞いこんでいた話です

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