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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第72節 リーゼロッテ様祭り その4

城塞都市に戻ってきました。

果たして吉とでるか、凶とでるか・・・


うまくいくといいですね。

 カテドラルの裏口の前に転移門は開いていた。

 幸い周りに人影はなく、誰にも見られることはなく、騒ぎにはならなかった。

 

 オットー様は、塩砦の前は、城塞都市に勤務していたとのことで、土地勘はバリバリあるようだ。僕は、数日しかこの都市にはいなかったので、皆目見当がつかない。


 あ、そうだ。僕た居た城塞都市は、この世界ではないんだよね。


 そういえば、このすぐそばに、火刑台が設置されて、僕は火あぶりになったんだった。なんか、地下室に監禁されて、そこから出てきたんだよ。思い出したよ。本当に酷い目にあったよね。周囲を見回して、出てきた地下室があるような建物を探したけど、わからなかった。


 オットー様は、周囲を見渡してから、移動を始めた。僕に手でついてくるように合図してくる。なんか格好いいよ。僕も戦士というか、騎士になったような気がしてきた。


 オットー様は、カテドラルの前の広場を通り過ぎ、すこし上りになっている道を北に進みだした。段々と立派な家が多くなってくる。途中で、巨大な家の前に止まり、扉のライオンの顔のようなノッカーを叩いた。


 ノッカーの上にある、細長い四角の羽目板が突然横にスライドして、人の目が現れた。じろりと一瞥すると、急に怖い顔が変わり、懐かしいものでも見るような目に変わった。


「オットー様ではないですか。お久しぶりです」


「・・・すまぬ。突然参って。レオポルト様か、フィリップ殿はいらっしゃるか?」

「もう、1時間ほど前に、お二人で城に出かけました。どうされます?お待ちになりますか?それとも、後を追ってお城にいかれますか?」

「そうだな、火急の用なので、城に向かうよ。また頼む」

「はい。奥様にはお伝えしたほうがよろしいでしょうか?あれ、そこにもしかして、ロッテ様がおられるのではありませんか?」

急に羽目板が閉まりドアが開いた。

「やはり、ロッテ様ではないですか。お帰りなさい」

「いや、ペーター、違うのだ。人違いなのだ」

 オットー様が珍しく慌てている。


「え?なにを、御冗談を。ロッテ様、白猫ちゃんは お元気ですか?」

ペーターさんは、僕を懐かしそうに見つめ、話しかけてきた。

「あ、猫ロッテの事ですね。シャルロッテ様は、可愛がっていらっしゃいますよ」

「???」ペーターさんは混乱しているようだ。すかさず、オットー様が説明した。


「だから、人違いと申しておる。こちらは、ミヒャエル王子だ」


「・・・え?そうなんですか。噂は本当だったのですね・・・いや~目がおかしくなったかと思いました。宮宰様が間違うのもムリがございませんね・・・

 確かに、変な服をお召しになっているし、髪もすこし短いかもしれません。しかし・・・目の色といい、髪の色といい。アグネス様の御幼少の頃のようだし、また、ロッテ様のようし・・・確かに、ミヒャエル様は、リウドルフィング家の御先祖様ですよ。このペーター、参りました」


 ペーターさんは白くなってしまった薄い髪を両手で後ろになでつけながら、あたふたしている、すっかり混乱しているようだ。

「私もレオポルト様にお仕えして50年になりますが、こんなに驚いたのは初めてですし、またこんなに喜ばしいことも、はじめてでございます。もう、すぐに天に召されても悔やむことはないと存じます」


「おいおい、ペーター頼むから死なないでくれよ。じゃ、城に向かうので、さらばだ」


その時、ペーターさんの後ろから、女性の叫び声が聴こえた。

「キャー、私の可愛いロッテなの?どうしてここにいるの?」

ペーターさんは、目を白黒させ、振り返って、その女性に敬意を示した。オットーさんもしまったという顔を一瞬した。

「これは奥方様。ご機嫌麗しいようで、オットー、大変喜ばしく存じます」

オットーさんは跪いて、女性の手を取り、キスをした。女性は手をオットー様に預けて、頷いてから、僕を見た。瞳孔が開くというのはこれなのかもしれない。女性の淡い、ブルーの瞳が大きくなった。


「はじめまして、ミヒャエル王子様。お会いできて光栄です。あなたに私の実家の血が深く流れているのを感じ、とても嬉しく思います。あなたは、私の先祖でありながら、でも、私の子供の用に感じるのは、不思議です」


 僕は、一瞬で悟った。この女性は、アグネスさんと、ロッテ様のお母様だと・・・もしも、僕のお母さんがここに居たら、こんな感じの人なんだろうとね。それくらい他人ではないような気がした。


 ロッテママは、僕に近づき、片膝をついて、僕の目と高さを合わせて、僕を覗き込んだ、

 左目を見て、右目を見て、そしておもむろに僕を抱きしめた。すごくいい匂いがする。ロッテママは僕を抱いたまま、小さい声で囁いた。


「不思議ね。はじめてお目にかかりましたが、王子さま、なんかずっと前から存じ上げていたような気がします。そう、肉親のような血の繋がりを感じます。あなたのエーデルスブルートをとても強く感じますわ。そう、私の亡くなった兄の血の脈動に似ているわ。

 ああ、誠に尊き私たちの主よ、貴方に、この出会いを感謝いたします」


 そして、ロッテママは、静かに、そして本格的に泣いた、僕は、手をロッテママに回し、抱きしめていた。嗚咽はやがて止み、ロッテママは僕を離した。しかし手は僕の両肩に置かれたままだった。

「ごめんなさい。ミヒャエル王子。あなたを歓迎します。どうぞ、中へ。シードルありますよ。焼き菓子がいいかしら?ゆっくりしていらして」


 オットー様が、やっと割り込んできた。


「奥様、突然の訪問、申し訳ありませんでした。これから公爵様のところへ、王子とともに参上しなければなりませぬ故・・・」


「殿方は、どうしてそう事を急ぐのですか?」ロッテママはきっとオットー様を睨みつけた。

オットー様の顔から血の気がひきつつあるようだ。


「いえ、ヴィッテルスバッハ家との重要な打合せがございまして、一刻を争う事態でございます」

「聴きましたよ。ハインリヒ様のお嬢様の御遺体が腐敗していない状態で見つかったらしいですね」

「ご存じでしたか・・・」

「私はすでに、リウドルフィング家の人間です。確かに、大切なお方ですが、ミヒャエル王子は、もっと大事です。なにしろ生きておられるのだから」

そういうと、奥様は、僕を見て、ニコッと微笑んだ。


「まぁ、使いを城に遣りますので、二人はすこしお休みになって」


 オットー様は、ペーターさんに目で合図を送ったが、ペーターさんは、首をブルブルっと細かく振って、拒否した。

 ペーターさんは、無表情に変わり、こう言った。

「では、奥様、王子様にはシードル、オットー卿にはシュトルムをご用意いたしましょう」

奥様は、満足したように頷いた。


「ミヒャエル王子は、沢山お飲みになりたいでしょう?シードルがお好きと家史に記載がございましたよ」ロッテママは嬉しそうだ。


「さぁ、こちらへ・・・あ、お洋服もお着替えしましょうね。王子様」

 侍女が呼ばれ、僕はオットー様と切り離されてしまった。玄関を入り、階段を上がり、客間のような豪華な部屋に通された。


 オットー様は別の部屋に通されたので、この後の会議というか、対策を練ることができなくなってしまった。


 侍女の綺麗なお姉さんたちは、信じられないほど豪華な服を持ってきて、僕の服を丁寧に剥ぎ取り、僕を着せ替え人形のように扱った。


 しばらく、ああだこうだとやってから、お姉さん達は、満足したようで、奥様を呼びにいった。奥様は、客間に入ってきて見るなり、大変満足した様子で、僕に、ぐるっと回ってお洋服を見せてくださいなっていった。


「まぁ、素敵ですこと。両家の血を引く、ミヒャエル様ならではの、高貴さというか・・・レオポルト様の仰る通り、シャルロッテのお婿様に最適だわ。同じ顔同志が結ばれるとどんな顔の赤ちゃんになるのか、楽しみね。そうそう、最初はアグネスと結婚して、教皇様に特別許可をいただいて、シャルロッテと結婚してとか、楽しみだわ。同じ顔の孫ばかりに囲まれるのよ」


 なんか酷いこと仰ってませんか・・・僕は、久しぶりにピンチという状態のようだ。オットー様もいなくなってしまったし、周りは知らない人ばかりだよ。どうしたらいいのだろう?僕の精神状態を読んだように、ロッテママは、僕に同情したような表情で近づいて、僕の耳にそっと囁いた。

「大丈夫ですよ、私の王子様。ずっとここにいてくださいね」


やばいよ。なんだかペットとして捕まえられた野生のウサギさんのような気がしてきたよ・・・誰か助けて・・・



いかがでしたか。シャルロッテママの怖い陰謀が

分かってしまいました。


双子が生まれやすい家系があるそうですが、

ロッテママは、同じ顔のお孫さんが沢山欲しいようです。

ロッテ愛が拗れてしまったのでしょうか。


次話は、明日の夜の予定です。スピンオフの

神聖祓魔師 聖ミカエルの戦士達 も読んでくださいね。

呼んでくださいね。


どちらも、ブクマお願いします。

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