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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第72節 リーゼロッテ様祭り その1

砦をあげての、聖女様いらっしゃい祭りを、

砦の要職、三人組とフィリップさんが計画しているようです。


嫌な予感しかしないよ・・・

次の日、僕は、朝一番で、チャペルに安置されたリーゼロッテ様に会いにいった。


会いにいくって、既に死体なのだから、なんか変だ。


でも、霊だった彼女と話した記憶というか、その時の印象が強くて、死んでいる感じがしない。看取っていないからなのか、彼女はまだ生きているような気がしている。骸骨とかミイラになっていたら、怖いというか、死んでいることを理解できたのだろうけど、僕が触った彼女は柔らかかった。神父様達は、腐敗していないって驚いていたよね。


 170年ぐらいは経っているのに、腐敗していないだけじゃなくて、今にも動き出しそうだったから、驚きだ。


 ウィンフリート、じいちゃん修道士様の場合は、新しい身体を神様から貰ったっていっていたけど・・・よく考えると、あの人も死者だよ。霊的存在だけど、肉体も持っているということだね。怖くないものね。


 しかも、おじいちゃんは異教徒に刺殺されたらしいから、新しい肉体は嬉しいだろうね。


 主は、復活したことを信じないトマスに、ほれ、この胸の槍の跡の穴に指を突っ込んでごらんとか言ったっていう記述が聖書にあるけど、おじいちゃんにそんなことされたら怖い。トラウマ級だよ。

 あ、はじめて鉱山でウィンフリートじいちゃんにあった時、スキップしてたのは、実は新しい肉体が嬉しかったからなのかな?


 僕は、明星亭と隣の建物との間の細い道を通って、一本しかない大通りを砦の正門に向かって歩きはじめた。


 リーゼロッテ様本人の言うことによれば、彼女の結婚したかった人?結婚する予定だった人?が、僕のお父さんで、お母さんが、リーゼロッテ様のお姉さんといっていたから、彼女は僕の叔母さんにあたるわけだ。そうだとしたら、記憶の中で、はじめての肉親だよね。なんていうのかな。この世とのつながりをはじめて感じた歓びが、なんとなく溢れてくる。


 すべてが俄かには信じられないような話だ。この世は不思議なことに満ち溢れているよね。叔母様とは、二人きりで話すことがなかったから、今一つ腑に落ちない感じだけど・・・まぁ、もう帰天してしまったのだから、会えないのが不満だけど。


 あの世に近いウンタースベルク山にいっても、呼ぶことは無理なんだろうね。煉獄にいる魂なら呼べるらしいけど。


 地獄の場合は呼べないんだろうね。悪魔が造りだす業火の中で焼かれているのに、急に連絡が入って、おーい、お前、面会だ。準備しろって呼ばれていくときに、炭だらけというか、いい焼き加減だなとか・・・そんな馬鹿なことを考えていたら、すぐにチャペルに着いてしまった。


 礼拝堂の扉の前に、盾の双子が、左右に分かれて立っていった。もともと砦になかった礼拝堂は、無理やり隙間に増築しているから、なんか狭苦しい。


 狭いところで二人を見ると圧迫感がすごくある。平均的なゲルマン人からすれば、頭一つぐらいは背が高いからね。


 普段の街の人は、よほどのことが無い限り、砦のチャペルまでは来ない。


 でも、リーゼロッタ様を見たくて、近くまでくるものの、双子がむっすりとした顔でタワーシールドを構えて、入り口に立っているので、諦めて帰る人が、ちらほらいる。凄い威圧感だ。まぁ、無理もない。悪魔の手先からご遺体を守らないとだからね。


 コンラートさんが、僕をぐりぐりと目玉を動かして見て、なんか言いたそうだけど、喋らないんだな ・・・この人たち。寡黙だよね。超真面目だ。ゲルマン人の美徳を持っていると思う。


 あれ、ゲルマン人にとって、美徳ってなんだろう?


 やはり、勇気とか名誉を重んじる行動そのものだろうね。


 特に、ザクセン族は、この勇気がありすぎるような気がするけど、兎に角、盾の二人は絶対に退かないというか、ことに職務を守ることに誇りを感じているはずだ。

 だから、誰も通すなと言われているだろうから、僕が破るわけもいかない。


 僕は、親族という特権を生かして、中にいれてもらおうかと思ったけど、周りの人に配慮して、すごすごと帰りました。


 今日の予定はどうするのかなと思って、隊長執務室に向かっていくと、フィリップさんが、階段から下りてくるところだった。僕を見つけてニコニコしている。


「王子、おはようございます。今朝もご機嫌がよろしいようで、なによりですぞ」

「フィリップさん、おはようございます。フィリップさんも、ご機嫌じゃないですか?」

「まぁ、お陰様で、人生の楽しみが増えていますからね」

「へぇ、それはいいことですね。人生の楽しみですか・・・」


なんなのだろう。フィリップさんの楽しみって。気になるけど、上から誰か降りてきたようなので、その先を聞くことはできなかった。


上から降りてきたのは、砦の要職、三人だった。リーゼロッテ様のことについて話しているようだ。彼等は、フィリップさんと僕を見つけて、止まった。


「皆さん、おはようございます」

「使徒殿、おはようございます」

三人が声を合わせて朝の挨拶をしてくれた。


「皆さんも、なんか、ご機嫌ですね」

「うむ、楽しみというのは、必要ですからな」

なんだ?三人も楽しみなものって。


フィリップさんが、また、目を細めて僕を見て言った。

「王子、私の楽しみとは、ロッテ様や、あなたの成長です。彼等の楽しみとは、もっと具体的なことなのです」

「そうそう、秋の収穫祭みたいな、お祭りをやろうかって話でな」と神父様。

「祭といえば、酒ですからなぁ」


レオン様は、いつも酒じゃないですか?まぁ突っ込まないでおこう。


「使徒殿、リーゼロッテ様祭を計画しているのだよ。鉱山の民も、年中、鉱山と街の往復で、やはり死と隣り合わせだから、生きる楽しみがないとね。

あと、リーゼロッテ様のお披露目もしなければ、民の不満も溜まるから」


「え?お披露目って、どうやるのですか?」


「ふふふ、リーゼロッテ様を見たい者達に列を作って並ばせて、チャペルの中に数人ずつ入れさせ、ちら見させる感じでやろうと思っているのだ。

皆、聖女様を、我が目で見たいだろうし。あと、やがては、バイエルンのどこかの聖堂にお連れしないといけないというのもあるから、皆有り難く思うだろう。

ワシも司祭の端くれ、神の民の牧者としても働かねば、永遠の命に預かれんから。

いや、使徒殿には感謝しておりますぞ」


神父様が深々と頭を下げたので、びっくりして、そんなことやめてくださいと言った。


神父様は、にこりと笑ってチャペルの方に歩いていった。


「王子、私はこれから城塞都市に戻って、それから、バイエルンに行きます。どうなるかはわかりませんが、あっ、例の宝石、お渡ししておきますね。王子が結婚する時に、お妃様の指輪にして差し上げるとか、ザクセン王朝の正統な後継者として王冠などを作られて、そこにつけるとか、色々楽しみですぞ・・・


お相手が、アーデルハイト姫なら、それよりもっと立派な石を持っていますからね。ロッテ様とご結婚されるのなら、指輪も仕立てるのもいいかなぁ。うーん、楽しみだ」

「フィリップさん、ちょっと待ってください」

フィリップさんは、例の皮袋に入れた、魔物が、転移門を発生させるために使っていた宝石を僕におしつけてきた。

「では、王子、今日の探索はオットー卿と二人で頼みますよ。では、失礼します」


あぁ、行っちゃったよ。フィリップさんの楽しみって、僕にはロクな話ではないことがわかったよ。姫とか言っていたのはアーデルハイトでしょう?ブルグンド王女でイタリア王の正統な継承者らしいし。

アーデルハイトもロッテ様も、二人とも僕を目の敵にしているようだ。いつも冷たいからな。結婚したら毎日あんなきつい言葉で苛めてくるだろう・・・嫌だー。望まぬ結婚をしないといけない貴族ってつらいよね。ああ、りーぜロッテ様も可哀想だね。貴族はつらいみたいだ。


僕は皮袋の中の宝石の感触を確かめながらも、絶望感に打ちのめされて、立ち尽くすしかなかった。


「さて、ワシ

も酒の準備とか、ソーセージとか、これから忙しくなるな。では、使徒殿、失礼します」レオン様もドスドス歩いて行ってしまった。


なんか寂しいな。僕には仕事がないからね。


オットー様が僕に話しかけてきた。

「使徒殿、相談なのだが、山城への転移門を開くことは可能だろうか。

いや、出来たらの話だが」

オットー様が遠慮気味に言っている。


「あー、やってみましょうか。必要に感じたりすると、成功しやすいのですが、いつも開こうとすら思わないので、意識して開く練習したかったのですよね」


 僕は、門という意味のトールの呪文を唱えた。


「オッフンズ トール ツム シュロス」

目の前に卵型の青い転移門が現れた。中は見えないけど、空気が吸い込まれていく音がしている。オットー様は、中に入っていって、すぐに戻ってきた。喜色満面って顔だ。

「使徒殿、すごいぞ、これは。さぁもう行こうではないか」


 せっかちだな。僕、ご飯まだなんだけど・・・

「はい、行きます」

 ここで断れないところが、僕らしいけどね。


一瞬、目の前が青一色になるけど、すぐに山城の部屋の景色になった。

「これは便利だし、戦略的に使えば、怖いものなしだな・・・」


オットー様が、そうはいったものの、すこし考えている。

「いや、待てよ。中庭では、やつらがこれを使ったのだものな。逆に使われたら大変だ」

「でも、青い門は、魔物は通れませんよ。それに僕に悪意のある人は通れないはずです」

「ほう、わしが教わったのは、赤い門と青い門の違いぐらいだったよ。いいことを聴いた。青いのは天使の門とか習ったものだがな・・・さて、探索を開始しよう」

「はい」何気なく答えたけど、急に思い出したような知識だった。少しずつ戻ってきているのかな。


 転移門がつながった先は、リーゼロッテ様のベッドが置かれていたところだった。まだ、結界装置のようなものは、そのままだった。これは、地脈の魔力を吸い上げて溜め、魔法円内に自分の姿を投影するだけでなく、つながった先をダイレクトに見たり聞いたり、あまつさえ会話したりできる優れものだった。

いかがでしたか。節が長すぎたので、新しく分けましたが、

基本的には連続しています。


3連休、頑張って投稿しますから、ブックマークお願いします。

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