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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第71節 街道の探索と戦闘 その25

遅くなりました。風邪引きさんなので、寝てます。スマホでポチポチ打っているので、時間がかかります。


20201202 誤記訂正。オーストリア大公からバイエルン大公に訂正

今は、大広間にいる。砦の要職にある三人が、これからどうするか話し合っているのだ。勿論、アグネスさんや、傭兵団の皆んなも参加している。僕もね。

何しろ、僕にとっては大変な決定になるからだよ。


「リーゼロッテ様のご遺体をどうするかだが、ヴィッテルスバッハ家の先祖に当たる方なので、バイエルン大公への確認もしておかなければならないだろう。フィリップ殿、調整をお願いしてもよろしいだろうか」

「了解した。宮宰様のご意向に沿って動きたい。いずれにせよ、ご遺体を粗末にするようなことがあってはならない。城塞都市のカテドラルに仮安置にしても、聖堂参事会の承認が必要だしな。一番まずいのは、列聖の動きが出た場合だ。どこの参事会も聖人のご遺体は欲しがるからな。まして、腐敗してないのだから、尚更列聖への期待が膨らんでしまうだろう。神父様は、どう思われるか?」

「うむ。腐敗の件については、結界のせいかもしれないので、これからの様子を見守りたいが、さっき、リーゼロッテ様のベッドの天蓋を見たら、魔法円が組み込まれていたよ。腐敗云々より、リッチの件で注意しておきたい。遺体が悪魔達に取られることがないようにしないと、バイエルン大公との間でかなりまずいことになる」


一同は、気難しい顔をしている。僕もリーゼロッテ様の身体を守りたいけど、僕の部屋に安置しようという計画だけは阻止したい。


「参ったな。ご遺体が白骨化でもしていれば、どこへの安置でも良かったのだが。聖女の可能性があるとすれば、どこの聖堂でも受け入れてくれるが、今度は出してはくれなくなるし、下手をすれば、遺体争奪戦になる。また、遺体をバラバラにして、腕だけくれとか、そういう話になるのは個人的に嫌いだ。ましてや、リーゼロッテ様とは、個人的に話をさせて頂いただけに、物凄く近しく感じているしな」

ブルーノ神父様は、困り顔だ。フィリップさんが、何か言いたげだ。それに気づいたオットー様が意見を促した。


「リーゼロッテ様が、一人ひとりに名前を訊いた件だが、物凄い人たらしだと思ったよ。あのお方は、ああやって魂に我等を刻みつけるだけでなく、我等の心の中に、ご自身を刻まれたのだと思う。

王子やアグネス様は、縁者だが、我等も既に他人ではないと感じているだろう?

これから、遺体が分割されるとか、そう言った話は耐えられない気持ちになっているよ。

そこで、これは案なのだが、まず、バイエルン大公の意見が頂けるまで、塩砦のチャペルに、居て頂くのはどうだろうか。帝国側の聖堂は危険だ。残念なことに人間が一番危険なのだ。悪魔の支配地側は、悪魔の動きにだけ気を配ればよいからな」


「フィリップ殿、城塞都市では、ダメなのか?」

「オットー卿、城塞都市のカテドラルには、何か聖遺物はあるか?

ないだろう?悪魔の支配地で隔絶された聖堂が、悪魔と戦い、魂を守り、天に召されたと思われ、腐敗していない肉体だぞ。一度入れたら、二度と出さなくなる。公爵様とて、都市全体の雰囲気には勝てまい。聖女というのは物凄い求心力になるからな。

ましてや、アグネス様の先祖だぞ。公爵様には娘がいないからな。アグネス様人気は知っているだろう?ヴィッテルスバッハ家の意向が決まってからでないと、下手に動けぬ」


「オットー卿、司祭として思うのだが、リーゼロッテ様の身体は、かなり危険だ。厨房地下でご本人がちらっと言った言葉を覚えているか?」

「確かにな、呪いが解けたとて、アンデッドを召喚する能力は、無くなってないと思うのか?」

「そうだ。遺体が悪魔に取られたら、目もあてられなくなるぞ。カテドラルは、広すぎるし、人の出入りが多すぎる。防衛戦には向いてない」

「わかった。砦のチャペルで受け入れよう。皆んな、良いか?」

皆、頷いた。僕も大きく頷いたよ。ごめんなさい。伯母さま。僕の部屋は狭いんです。


それから、リーゼロッテ様、運搬作戦が実行された。


アレクシスさんは、なんかうんざりした顔をしていたので、聞いてみたら、重いから、運ぶのが辛いよって言ってた。僕は、浮遊で浮かすから、多分軽いと思うよって耳打ちしたら、急に元気になった。

「いいこと聞いたよ。ほらカールとか盾の双子とか馬鹿でかいだろ。いつも何か運ぶ時、俺の手の位置が低いのでさ、いつも重いんだよ。なんか損しているって感じるんだよな」


最初は、ベッドごと運べないかって話だったんだけど、出口を壊さないと出れないことがわかった。ご遺体だけ運ぶのは、ダメージを与えるのでだめ。棺桶を用意するしかないだろうということになったが、棺桶は城塞都市か帝国領に行かないとない。手詰まり感が漂っていたのに、更に追い討ちをかける様な報告がなされた。


「オットー卿、ゴブリンが北の森で目撃されたそうだぞ」

レオン様が小さい声で言った。しかし、声は大広間に響き渡った。


声がでかいんだよね。まぁ、本人には言えないけどね。


「フィリップ殿、どのようにお考えか?教えてほしい」

「オットー卿、ゴブリンは、元々地上で、人間に近いところで生活していたのだよ。悪魔の支配地に暮らすことになり、人間に討伐されることも少なくなつた。当然人口が増えたのだ。

元々地獄から魔物と一緒に送り込まれたゴブリンもいるが、地上にいた奴らと組むことはないようだ」

レオン様が興味があるようで、ふんふん言いながら聴いているが、気になることがあるらしく、口を開いた。

「フィリップ殿、森の修道院にいた奴らは、どっちなのか?どうやって見分けるのだろう」

「レオン卿、まず、顔つきだ。地獄から来たのは、人相が悪い。魔界では最下層の魔物だ。より上位の魔物に使役されるし、奴隷の扱いを受けているからなのだ。ところが地上の奴らは、穏やかだ。とは言え、かなり狡猾で残忍だがな。

あ、あと、使っている武器が違う。基本的にはシミターみたいな細身の刀を好むのだが、出来が違うんだよ。地上の奴らのは、使い物にならない酷い刀だ。

戦闘馬車を襲った奴らの武器は、結構良かったぞ」

「成る程、興味深いな。ミイラになった奴とかは、地上の奴なんだな」

「ほう、レオン卿はどうしてそう思われたのだ?」

「フィリップ殿、わしの肩の上にあるのは、お飾りじゃないからな。酒以外の事も、少しは考えておるんだ。

まず、この城を落としたのは、悪魔軍だろ?バフォメットが契約を遂行させるために、色々やったようだが、リーゼロッテ様の方が一枚上手だったよな。悪魔軍の所属なら、ここを狙ってたのが、上級悪魔に率いられた軍団だと知らない筈がないよな。そんなところに侵入して悪さをしないだろう」

今度は、フィリップさんが、ふんふんと頷いて聴いている。

「ワシもレオン卿と同じ考えだ。スタンピードの時、砦を外から襲った奴らは、地上に元々いたゴブリンのようだったがな。

あいつらの武器はひどかった。溶かしても使えなかった。蹄鉄にすらならん。

まあ、それはいいとして、なぜ同じ時にシンクロして攻めて来れたのか不明だが、この辺りの究明が必要だろう」

「オットー卿、奴らは人口が限界を超えて爆発しているのかもしれない。人間と接する機会が減り、討伐されなくなったしな。悪魔軍からも強制的に徴用されて軍に組み込まれることも少なくなくなった筈だ。何しろ大規模な戦闘がずっと無いからな。

魔窟のような巣穴もゴブリンだらけで、住めなくなったのかもしれないぞ。

そんな時に、この城に住みたいと思ったのかもな。枯れてきているとはいえ、元々、地脈の良いところだからな。奴らのリーダーは、どうせ、ゴブリンシャーマンなのだろう?狙ってきそうじやないか」

「いやいやいや、今日のレオン様は鋭いですぞ。このフィリップ、参りました」

フィリップさんは、参ったというポーズをした。オットー様は、にやにやしていたが、真顔に戻り、会話を戻した。

「この城に、これ以上リーゼロッテ様を置けないし、守備隊を早く置かないと、まずいようだ。それに、早急に、あちこち修繕しなければなるまい。頭が痛いぞ」


カールさんが、大広間の上の廊下から、下にいる僕達に叫んだ。


「オットー様、リーゼロッテ様のベッドの下に、謎の物があります」


大広間に、緊張が走った。皆、階段を登ってリーゼロッテ様の部屋に集まってきた。


ベッドは、真横に動かされていた。リーゼロッテ様は、変わらず死んでいる。変化はないようだ。


ベッドの下にあったものは、金属製の椀を伏せた様なものと、その上に浮いている、赤い宝石だった。

「これです。触っていません。宝石は空中に浮いたままです。時々、チョロっと回転しようとします」

オットー様は、振り返って、フィリップさんに訊いた。

「フィリップ殿、これは?」

「アーティファクトだろうとしか言えないが、この宝石は、やはり、中庭に埋まっていたのと同じ石の様だ。凄いな、国宝級の石がゴロゴロとあるなんて」

フィリップさんは、注意深く観察している。

「これは、結界発生装置に似ているが、転移門発生装置にも見える。恐らく両方を兼ね備えたアーティファクトではないか?

リーゼロッテ様のベッドの下にあったということは、うーん」


流石、錬金術師だね。僕はフィリップさんが凄い人なんだって、しみじみ思ったよ。

おや、ベッドの下に模様があるよ。魔法円みたいだ。これ皆んな気付いているかな?

言った方がいいよね。


「フィリップさん」

フィリップさんは、顔を上げて振り返って僕を見た。目が優しい。

「王子、何か気づかれたのですね?」

「はい、遠くから観ると、ベッドの下にも魔法円があるようです。そして天蓋にもありましたよね。そして、リーゼロッテ様が現れるのは常に魔法円の中でした」

「成る程、ということは、これがリーゼロッテ様の出現に使われていたのではないかということですな」

いや、そこまで言ってないんですけど。

フィリップさんは、オットー様達を見回してから、僕に向かって言った。

「王子、この装置に聖性を注ぐことは可能でしょうか」


え?あ、そうか。おじぃちゃん修道士様が教えてくれたやつだよね。

「多分できると思います」

「さぁ、王子、これに」

フィリップさんに促されるまま、僕は例のアーティファクトの側に行って床に片膝を立てて座った。皆んな立ち上がり、僕を囲んで立った。

フィリップさんは、周りを見回して、

「クラウディアかアポロニアはおらんか?」

フィリップさんの声に、アポロニアさんが答えた。


「すまぬ。少し離れたところで、例の毛布を広げてみてくれ。

「はい」アポロニアさんが背中に背負っていた毛布を外して広げた。


「皆、少し離れよう。危険があるやもしれん。では、王子、お願いします」


あれ、危険なの?ていうことは、僕だけ危険で損じゃないかな?まぁ仕方ない。やるって言っちゃったしな。


僕は手を伸ばし、アーティファクトの椀の様なところに、エーデルスブルートから魔力を変換し放射してみた。赤い宝石が光り始め、回転を始めると同時に、アポロニアさんのところの毛布の上に、僕が立っていた。僕は立派な服を着ている。髪も長くて、ゲルマンの王様の様だ。

僕は驚いて、魔力の放出を止めてしまった。しかし、まだ僕はそこに立っていた。

「成る程、土台の様な部分は、魔力を吸い取り、貯蔵するのでしょう。そして、刺激が与えられたり、魔力が放射されると、動き出し、魔法円内にある人の魂を近くの魔法円に表示させる様な働きということですね」

「王子、目を瞑ってみてください」

フィリップさんの言葉に従って瞑ってみた。

「あ、ぼやけてるけど、アポロニアさんが見えますよ。小さくて可愛らしいです。不思議」


アポロニアさんが赤くなって困っている。そうか、他意はなくて、見えたままを言ったのだけど。


「やはりな。ペグニッツ伯が造らせたのだろうか。何のために?この結界だって、一体いつ設置したのだろう。そもそも、リーゼロッテ様はいつお亡くなりになったのだろう。謎だらけだ」

フィリップさんは独り言で自問自答している。


「リーゼロッテ様は、部屋から出る方法は本をみてくれって言ってたよな?まぁ、自然に崩壊したので出ることができたが」

ブルーノ神父様が唐突に言った。

皆んな忘れていた様で、顔を見合わせ、ハッとしている。


「この装置についても、書いてあるかもしれんぞ。お亡くなりになった経緯も書いてあるかもしれん。見てみようじゃないか」

オットー様が言った。

「では王子、一旦魔法円から出てください。あ、目は開けていいですよ」


フィリップさんの言葉に、僕は目を開けた。視界は元に戻った。宝石はまだ光って回っている。

「さぁ、リーゼロッテ様の本を探してみましょう」


僕らは、部屋の片隅にある小さな机に向かった。

次話は、リーゼロッテ様の日記の様な、本です。


頑張りますので、よろしくお願いします。

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