第18節 大聖堂地下、司教聖座の秘密 2
長すぎたので二つにわけました。
ドミニク視点です。
あちらの世界について、すこしわかってくることがあったようです。
ベルンハルトが棺の中の階段を下りていく。
ベルンハルトは、下りながら話しを続けた。
「司教様は、前司教様より、引き継がれたそうですが、内容についてはあまりご存知なかったのです。
古文書といってもそんなに古くはなく、精々150年ぐらい前という感じなのですが、秘密を隠すための婉曲的な表現で、隠喩に暗喩というか、非常にわかりにくい書き方の文を解読してほしいと、それに加え、ここの装置の概要についてご相談を受けたのです。
正直なところ、戸惑いました。もしも悪魔の子が顕現するのなら、これは私たち人間の歴史の転換点ではないのだろうか。十字軍よりも重い出来ごとになるだろうと思いました」
ベルンハルトは困っているようなうれしいような感じで続けた。
「あ、話が多くなりすぎましたね。今日の目的の一つ、神聖結界のことですが、例の鐘の鳴り方も、初代司教様の頃は、口伝で伝わっていたようですが、いつしか失われたようです。地下への行き方にいたっては、私にあの部屋を下さったことからもわかるように、まるきり忘れておられたようです。
悪魔の子の話が数か月前にわかり、急遽、見直しというか点検されることになりまして、司教様は大慌てでした。なにしろ、部屋の開錠方法のスタートが私の部屋にあるものですから・・・
私にすれば、まぁうまく抱き込まれたようなものですな・・・私にほかの部屋を与えることも司教様も考えれらたそうですが、時間がないし、司教様が私から部屋を取り上げた後で、ちょくちょく私の部屋に来るようになってもおかしいですものね。
司教聖座の前の床を操作をするのは司教様でないと難しいでしょうが、司式の最中には難しいと思います。ともかくまぁ・・・お陰で面白い体験ができました・・・なんだか、20歳ぐらい若返ったような気がしました」
話しながら二人で下りてみたが、階段は短く、あっという間に下の部屋についてしまった。
今度は10メートルぐらいの四角い部屋だ。
ほんのりと明るいので、上の階と同様に、明り取りがあるようだ。
部屋の中央には、丸い洗礼盤の台のようなものが設置されており、そのくぼんだ半球上のボウルのような上に、30センチぐらいの高さで、大理石でできている、丸い球のようなものが浮かんでいる。
「これが球が、神聖結界の制御装置のようなのですが、これ浮いているでしょう?
仕組みがよくわかっておりません。ただ、悪霊によるものではなく、聖性に基づくもののようです。
で、聖性の高いものが、触って動かすようなのですが・・・私が触っても、若干光るぐらいです。司教様が触ると、心臓のように鼓動というか、光も明滅し始めますし、嫌な予感がします。ドミニクさまのように聖性が高いかたが、迂闊に触ると危険なようなので、重々お気を付けください」
「いや~好奇心は身を滅ぼしかねないですものね」
ふふふとベルンハルトは笑った。昨日のカルワリオの件を思い出しているのだろうか。私は聖性が高いというところはスルーした。
ふと右を見ると、壁の一部が本棚になっており、その前に書見台が設置されている。私は、踊りだしそうな気持を必死で抑えた。私の視線にベルンハルトは気づいて声を掛けてきた。
「神父様、お待ちかねの図面は、こちらの本に描かれております」
ベルンハルトは書見台に置かれている重そうな立派な表紙のついた本を開け、その箇所を示した。羊皮紙にペンで書かれているようだ。
「おおお、確かに。お、これは司教聖座だ、祭壇の後ろの扉や階段もかき込まれていますね。それぞれの箇所に合わせた解説もあるようです。あ、これは開錠方法ですね」
「この本は司教様がお持ちでした。
随分と忘れ去られていたようで、埃をかぶってしました。、執務室の奥の棚に鎖をつけられて、ひっそりと置かれたままだったそうです。
とにかく、そのまま設置していても危険ですので、こちらの部屋に移した次第です。
ここの本と装丁が一緒でしたので、本来はここにあるべきものかもしれません」
私はまた視線を中央の球に戻した。何度見ても同じだが、石のような見える球が空中に浮かんでいるなんて・・・いったいどういう原理なんだろう。
ベルンハルトは私の視線に気づき、話題を戻した。ごめんなさい。落ち着きがなくて申し訳ありません。
「古文書の中には、この球の操作方法が書かれていると思われるものもあるのですが、恐ろしくて試すことができないのです。
なんだか街が崩壊するような表現があったり、悪魔の眷属が空を飛んでいるような絵があるものですから・・・挿絵には、双子の都市になにかがあれば、補完するとかあるのですけど、その意味がわからないのです。
どうやら、あの転移門があるあたりが、あちらの世界では、悪と戦う最前線のようなのです。門が悪に利用されてしまうと、カルワリオから大量の悪魔とその眷属がなだれ込んでしまう可能性があるようで・・・その時のためにこの街に結界が張られたのではないかと、司教様は推論を立てておられました。街の崩壊の絵は、操作方法の結果なのか、崩壊した時のあとの処理方法なのかよくわからなくて・・・そもそも双子の都市というのは、ローマのように双子がいたのか、それとも双子のような都市があるのか・・・謎多き書物なんです。司教様はとうに匙を投げられていて、だれかに丸投げしようと虎視眈々と狙っておられる次第でして・・・」
ベルンハルトは一息間をあけて話を続けた。
「今回、ドミニク神父様をお招きしたのは、もちろん、結界について知られてしまった以上、次の司教でもあるし、司教様の意向、ま、簡単にいいますと、謎を解けっていうことです」
ベルンハルトはニヤっと笑った。
「あああ、やっぱりなぁ・・・そんなことじゃないかと薄々わかっていたのだけど、見事にはめられたかもしれないな・・・好奇心は身を滅ぼすって、司教様自身が私を滅ぼそうとしてませんか???」
いかがでしたでしょうか?
皆さんはGWはいかがお過ごしでしょうか。
私は10連休なんですが、お金もないので、家に籠る予定です。
ずっと積読状態の中世関連の書類を読もうと思っています。
あと、2話前で、高札という表現を使ってしまいましたが、
領主などがお触れを出すときに高札を使うのは日本です。
西洋では、プロクラメーションか、でクレイションの場合、羊皮紙の巻物に書いて
役人が教会前の広場で読み上げるようですね。
小説を史実に近づけようとすると、本当に勉強になるし、自分の知識がいかに
いい加減かわかります。時代考証的におかしいところは、教えてくださいね~
お願いします。