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八雲紫に幻想入りさせられたのだが  作者: 坂上儚月
第8章アリスと幻想郷巡り〜春雪異変〜
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深まる謎、動く儚月

久しぶりの投稿です。出すのが遅くなり申し訳ないです。

春雪異変が終わって、丁度その頃の紅魔館では竜神のお兄さんが片付けをしていた。


「さて、ようやく屋敷の片付けが終わったな。」


俺は紅魔館で雇われている坂上儚月と言う者だ。一応、弟がいるが今は春雪異変の解決に赴いている為、ここにはいない。ん?前に聞いたって?長い間出てなかったから忘れているんじゃないかと思ってな。もう一度名乗っただけだ。...と言うかずっと気になったのだが、竜神は何処に住んでいるんだ?霊夢の所は...まあ無理があるだろうなぁ。...っと、まだやる事があるんだった。


「とりあえず次の仕事は...っと。」


俺は執事服の中に入れてある手帳を取り出して次の仕事を確認した。


「えーと、屋敷の掃除が終わったら美鈴が寝てたら叩き起す、大図書の本の整理、レミリアお嬢様と弾幕ごっこ、フランお嬢様と弾幕ごっこ、パチュリー様と弾幕ごっこ...って、後半弾幕ごっこじゃないか!」


俺は内心面倒だなと思い、とりあえず軽く休憩に入る事にした。


「しかし、フランお嬢様が明るい姿に戻れて本当に良かった。話に聞いていただけだが、あんなに明るい子供だとは思わなかったな。...そう言えば子供って言っていい歳なのか?...深く考えないでおこう。」


俺はこれ以上考えたら命の危険があると思い、考えるのをやめた。


「ふう、とりあえず休んでいる間は暇だからなぁ。...そうだ、此処に来たばかりの頃でも思い返してみるか。」


俺は休憩の間、ここ紅魔館の執事になりたての頃を思い出すことにした。



____________________________________________




俺はこの幻想郷に連れてこられた時、紅魔館に放り出された。そして、この屋敷のメイド長、十六夜咲夜さんにいきなり襲われたがすぐに撃退。そしたら屋敷の主、レミリア様に気に入られたようでここの執事に雇われた。俺が執事になって二日目の日に、地下室の掃除をするように言われた。そして...あの少女、フランお嬢様に出会った。


「あの時は本当、生きた心地が無かったな...」


そう、フランお嬢様に出会った瞬間これまたいきなり襲われた。ハッキリ言って咲夜さんと戦った時より死にそうになった。あの時の狂気...それと強さ、恐らく一生忘れる事の出来ない程の恐怖を植え付けられてしまった。


「フランお嬢様と初めて戦った時は咲夜さんが時を止めて助けてくれたな...もし咲夜さんが来てくれなかったら絶対死んでいたな。」


俺が地下室に入った後、レミリア様が俺の運命を見てくれたようで急いで咲夜さんを地下室に寄越したのだと後から聞いた。しかし、フランお嬢様と一戦交えたとレミリア様に言ったら何故か真剣な顔になって俺に昔の話をしてくれた。...あの時は何故昔の話をし始めたか分からなかったが、今なら分かる。俺に一つの可能性を見ていたのだ。レミリア様は運命は見れる。されど見れる運命は近いうちに起こる運命しか見れない。だから、何時になるかは分からないが、フランお嬢様と戦い、生き残これた外来人の俺に賭けてみたのだ。


「昔話を聞き始めた時は唖然し、同時に憤りも感じてしまったが...後の話を聞いた時はレミリア様の愛情を感じたな。しかし、紫さんもレミリア様も苦悩の決断だったのだろうな...フランお嬢様を殺すか幽閉するかのどちらか一方...だけど、レミリア様はフランお嬢様を殺せない、いや唯一の家族を殺めたくは無かったのだろうな...」


そして、それから永き時の中で一人だったフランお嬢様の中には狂気が溜まり続けたが、俺が来る前にレミリア様が起こした紅霧異変の時に外に出てしまった。だが、その時異変解決に赴いた魔理沙と出会い少しは狂気が晴れた。しかし、最近になってまた狂気が表に出始め、再び地下に幽閉したのだと言う。


「しかし...何故また狂気が出始めたんだ?フランお嬢様も外に出られて狂気もあらかた晴れたと言っていたが...ん?ちょっと待てよ?そう言えばレミリア様に二回目の異変に聞いてみたら途中からの記憶しか無いと言っていたな...それに紅霧異変、春雪異変と言い、起こる期間が短すぎる。まさか...誰かが幻想郷の住人を操り意図的に異変を起こしている?もしそうなら...『彼奴ら』しかいない。だがあの時全員死んだはず...まさか生き残りがいたのか?」


俺は一年前、外の世界にいた時竜神を殺そうとしてきた奴らに襲われた事がある。しかし、近くにいた警官と銃撃戦となり全員死んだ。しかし、全員と言ってもその場にいた奴らだけだ。もし、奴ら以外にもいたとしたら?ハッキリ言ってその可能性は十分有り得る。だが、ここは幻想郷。外の世界から人が意図的に入り込めるような場所では無い。


「...いや、待て...そう言えばあの時一人だけ銃撃戦の時に河川に落ちて死亡したかどうかの確認が出来ていなかった...まさか...そいつが異変の首謀者なのか...?いや、やはり無理だな。どう考えても博麗大結界を越えれるとは思えない。」


しかし、そうなると一から考え直さないといけなくなる。今回も起きている異変...更にレミリア様が起こした記憶の無い異変...何処かに共通点があるはず...。


「...ダメだ。全く分からない。もう少しヒントさえあれば...」


俺が一人うんうんと悩んでいると、咲夜さんが何故か軽く戦闘態勢を取った状態でこっちに来た。


「ああ、咲夜さん。先程部屋の掃除が終わりましたよ。」


「ご苦労さま。それで早速なのだけど、ちょっと戦闘態勢を取っておいて。」


「?...何故ですか?」


「あの白黒の魔法使いがこっちに来るからよ。お嬢様とパチュリー様に大図書館に近付けさせないでと言われたらね。」


「魔理沙が?確か春雪異変に赴いているのでは?」


「どうやら少し前に決着が着いたらしいのよ。さっき来てた文々。新聞に載っていたわ。」


「そうですか。でも何で紅魔館に?」


「さあ?私も詳しくお嬢様から聞いていないから分からないわね...」


「そうですか。とりあえず急いで戦闘態勢を...」


そこまで言った瞬間、大ホールの方で「おーい!!誰か居るかー!!」と大声が聞こえた。


「ん?あれは魔理沙の声か。もう来たのか?」


「みたいね。早く追い返しにいかないとね。」


そう言うと咲夜さんは時を止めてすぐに大ホールに向かって行った。


「全く、この後も弾幕ごっこがあるから戦いは控えたいのだがな...ま、ここで止まっていても仕方がない。すぐさま向かうとするか。」


俺は横に置いていた大太刀を持って大ホールに向かった。



____________________________________________




俺は大ホールに向かったが、そこでは咲夜さんと魔理沙、アリス...と言ったかな?その人達で何やら話をしていた。


「咲夜さん。今来ましたが...戦闘は良かったのですか?」


俺は咲夜さんに聞いてみたら、戦闘はしなくても良いと言った。


「まあ、とりあえずお嬢様に聞いてみるから少し待っていてくれるかしら?あ、儚月は魔理沙が大図書館に行かないように見張っておいてね。」


「はい。かしこまりました。」


咲夜さんは再び時を止めてレミリアお嬢様の元に向かって行った。その間の俺は暇になると思ったので、魔理沙とアリスに春雪異変について聞いてみた...勿論、どんな異変だったのか気になるだけ...では無い。先程から考えていた俺の考えが合っているのかを確認する為だ。


「アリス、魔理沙。今回の異変、どんな感じの異変だったんだ?」


「どんな感じかって?うーん、私は普通に幽々子が異変起こしただけにしか思わなかったが?」


「...いえ、この異変少し違和感を感じたわ。何時もの異変じゃないわ。そう、普通の異変じゃない。」


魔理沙はそう言っていたが、アリスはハッキリと普通では無いと言った。


「何?それはどう言う事だアリス?」


魔理沙は理解が出来ていないようで、頭の上にクエスチョンマークを出していた。


「つまり、幽々子が起こした異変では無いかもしれないと言う事だな?」


俺がアリスにそう聞いてみたら、アリスは頷いた。


「正直確信は無いわ。でもこの異変には裏があるはずよ。...もしかしたら竜神の真相も分かるかも...」


俺はアリスの口から竜神の真相と言う言葉を聞いて驚いた。何故アリスが竜神の真相の事を知ろうとしているのか...念の為に聞いておくか。


「アリス。何故竜神の真相の事を?」


アリスは少し躊躇う感じだったが、春雪異変の前に起こっていた事を話してくれた。それは、地霊殿に行った時に竜神が暴走をしてしまい、更に謎の言葉を放っていた事、鬼すらも倒してしまう力をいきなり出した事、謎のスペルカードを使用していた事...ハッキリ言ってどれもこれも俺の知らない事ばかりだった。魔理沙に関しては途中何処かに行ってしまった。どうせ大図書館にでも行ったのだろう。...とりあえず念仏でも唱えておくか。


「...しかし、地霊殿で暴走をしていたとは...それに謎の言葉にスペルカード...竜神、お前は一体何者何だ...?」


俺は小さく呟いていたが、アリスはそれが聞こえていたらしくアリスが不思議そうに聞いてきた。


「あら、儚月さんでも知らなかったの?」


「ああ、そもそも俺と竜神は血の繋がった家族じゃない。だから地霊殿で起きていた竜神の行動全て、俺も知らないものなんだ。」


「え?儚月さんと竜神は家族じゃないの?」


「あれ?言ってなかったでしたっけ?」


「うーん、多分言っていたかもしれないけど覚えてないわ。」


「そ、そうか。まあ、説明すると物凄く長くなるからまた今度説明するよ。さて、そろそろ咲夜さんが戻ってくるかな。」


俺は話を終わらすと、アリスに大図書館に行くように勧めた。


「何故大図書館なの?」


「いや、魔理沙がさっき何処かに行った。つまりは大図書館に行ったはず。そして大図書館には対魔理沙用の自動攻撃魔法陣が張ってある。多分そろそろ...あ、掛かったな。」


俺がそう言った瞬間大図書館の方から大爆発が聞こえて、魔理沙の叫び声も聞こえてきた。


「魔理沙!?」


アリスは慌てて大図書館の方に向かって行った。そして誰もいなくなった大ホールで俺は空に向かって話しかけた。


「...それで、何時まで覗いているつもりですか?紫さん。」


「あら、何時から気付いていたのかしら?」


「そんなの初めからに決まっているじゃないですか。あんなに気配出していて気付かない方がおかしいですよ。」


「そうかしら?あの二人は気付いていなかったみたいだけど?」


「いえ、気付いていたけど関わると面倒だろうからわざと気付かないふりをしていただけですよ。」


「普通にざっくりと来るわね...」


紫さんは分かりやすい反応を見せた。...全く、歳の割には子供みた...


「今、変な事考えてなかったかしら?」


「いえ、何も考えてないですよ。」


全く、この人は心を読めるのか?とりあえず話が外れてしまったから戻さないと。


「それで?俺に何のようですか?紫さん直々に来るんですから簡単な話では無いでしょうけどね。」


「ふふ、よく分かっているじゃない。まあ、確かに簡単な話では無いわね。」


「それで、どんな話ですかね?あまり悠長にしていると咲夜さんからナイフのプレゼントが飛んできますからね。」


「それもそうね。ま、率直に言うと暫く竜神の代わりに異変を解決してねって事だけよ。」


「...はい?いやちょっと待て。異変解決なら竜神がしてくれるだろう?何故俺が?」


「あら?魔理沙達から聞いていないの?春雪異変の時に竜神は能力の反動で一ヶ月は寝たきりになる事を。」


「何だって!?そんな事は聞いていないぞ!?」


「それはそうよ。だって竜神はこの能力は使わないと思っていたらしいからね。」


「使わないと思っていた?」


「そう。あの能力は他者や自身に神々の力を付与させる事の出来る能力なの。だけど、生身の人間が神々の力を操るのにはかなり負担が掛かるの。」


「そうか、じゃあ竜神はその能力は念の為の秘策として創っていた能力なんだな?負担も一ヶ月も眠り続けるようなものなら本当にギリギリの時にしか使えないだろうしな。」


「流石ね。全くその通りよ。だけど今回はそのギリギリの時だったからその能力を使ってしまったの。」


「そのまで追い込まれていたのか?確か相手は一度倒した事のある相手なのだろう?」


「幽々子の事ね。幽々子は確かに倒したわ。だけど、その後で問題が発生したの。西行妖の桜が止まること無く咲き続けていたのよ。」


「...確かに問題だな。ちょっと聞くが、その西行妖は咲かせている者...つまりは幽々子を倒したら咲くのは止まるのか?」


「ええ、普通は止まるの。そして桜の花はまた散り落ちていくのよ。」


「じゃあ何故桜は散らなかったんだ...?」


「それが分からないのよ。私も予想外の事だったから調べれていないのよ。」


「そうか...何かヒントが見つかれば良かったんだが...」


「ん?何か言ったかしら?」


「いや、何でもない。他になにか気付いた事とかはあったか?」


「ああ、それならアリスと霊夢が白玉楼で謎の気配を感じたらしいわ。ただその気配はすぐに消えてしまったらしいけど。」


「謎の気配...少し調べてみる価値があるか...」


「まあ、調べるのは良いけど近いうちに古参の住人達の異変が起きるのも頭の中に入れて置いてちょうだいね。竜神がその異変の時に目を覚ますか分からないから。」


「確かにいつ目を覚ますか分からないし...って、え?古参の住人達の...異変?」


「あら?言ってなかったかしら?」


「「言ってなかったかしら?」じゃなくて!こっちは教えて貰っても無いですよ!」


「あら〜?おかしいわね?まあ、良いか。とりあえずそんな訳で異変の方は宜しくね〜」


そこまで言うと紫はスキマの中に消えていった。


「あ、おい紫!...全く、無理矢理押し付けて帰っていきやがって...」


半ば呆れ半分の俺は、今度紫にあったらしばこうと心に決めた。


「仕方ない。とりあえずは咲夜さんを待っておくとしよう。しかし、竜神が動けないとなると少しまずいな...竜神はこちらの最大戦力になるだろうし、あいつは確か回復も出来たはずだからな。竜神が戦いに参加出来ないとなると、回復役は...げ、永遠亭の永琳さんになるのか...何だかいい噂を聞かないから心配だな...」


「何一人でブツブツ言っているの?」


不意に後ろから声が聞こえたので振り返ったら、そこには咲夜さんが立っていた。


「ああ、咲夜さん。いえ、先程紫さんが来ましてね。竜神の代わりに俺を異変解決メンバーにすると言っていたのでその事で少し独り言...もとい、文句を言っていました。」


「そ、そう...とりあえずお嬢様に頼んで竜神を紅魔館の一室で寝かすことになったわ。」


「そうですか。分かりました。それで、竜神は何処に?」


「さっき部屋に運んだわ。二階の東の方の部屋で寝かせているから。」


「分かりました。所で、魔理沙達はどうしてますか?」


「魔理沙はパチュリー様からミッチリ説教を食らっているわ。アリスは竜神の寝ている部屋にいるわ。」


「そうですか。あ、そう言えば何故紫さんが来ていた事に驚かなかったのですか?」


「それはお嬢様から聞いていたからよ。お嬢様は、「八雲紫が来るわ。でも儚月と話すだけだろうから咲夜は自分の仕事を優先しておきなさい」と。」


「流石お嬢様だ。でも来ることを知っていたなら教えてくれても良かったのでは...」


「それなんだけど、お嬢様は「後、関わるとろくでもない事になるだろうからね。無視が一番よ。」とも言っていたわね。 」


「お嬢様...はぁ...」


「ま、お嬢様も八雲紫に関わるのは嫌がっていますからね。」


「...ああ、あの話で何となく分かる気がします。」


「そう、実を言う私はその話は知らなかったのだけどね。」


「え?咲夜さん、この話を知らなかったのですか?」


「ええ、とりあえず竜神の寝ている部屋に行きながら話しましょうか。」


「分かりました。」


二人は竜神の寝ている部屋に歩き始めた。


「それで、咲夜さんはお嬢様からあの話を聞かされていなかったのですか?」


「そう。そもそもお嬢様に妹様がいるのは知っていたの。だけど地下室に幽閉されていた理由は知らなかったの。」


「そうだったのですか...しかし、何故お嬢様は咲夜さんにあの話を教えなかったのでしょうか?」


「...それは恐らく私が《ヴァンパイアキラー》だからだと思うわ。」


「ヴァンパイアキラー...」


「そう。元々、私はヴァンパイアキラーとして生きていたのよ。だけど私がこの館に来て、お嬢様に勝負を挑み...負けたの。だけどお嬢様は小さかった私をメイドとして雇ったのよ。私は吸血鬼が人間を雇う事に違和感を感じていたけど、務めていて分かったのは、此処が私にとって大切な場所になってしまったと言う事だけだったわ。」


咲夜さんは珍しく笑いながら話していた。


「でも、咲夜さんがヴァンパイアキラーだったのは分かりましたが、お嬢様が咲夜さんにあの話をしなかったと言う理由が掴めないのですが...」


「あら、さっきから答えは出ているのだけどね。」


「答え...あ、そうか。ヴァンパイアキラーだからか...ヴァンパイアキラーの咲夜さんは下手をしたらフランお嬢様を殺しかねない...だから話さなかったのか。」


「そう。まあ、実際はどうか分からないけどね。これはあくまでただの憶測なのだからね。」


咲夜さんは何時の間にかナイフを取り出していた。


「儚月。このナイフ、貴方にあげるわ。」


「え?何故突然...?」


「いいから持っておきなさい。このナイフは銀で出来ているの。もしもの時の為に持っておきなさい。これを御守りとしてね。」


そう言うと咲夜さんはナイフを上に投げた。


「っと...」


俺はそのナイフをキャッチした。そして少しそのナイフを眺めて懐に収めた。


「素直で宜しい。後少しで竜神の寝ている部屋に着くわ。」


「ああ...分かった。」


その後は二人共喋ること無く部屋まで歩いていった。



____________________________________________




「着いたわ。此処がその部屋よ。」


「分かった。咲夜さんはこの後どうするのですか?」


「私はお食事の用意があるから戻るわ。」



「そうですか。分かりました。」


咲夜さんは最初に現れた時と同じように時を止めて自分の仕事に戻っていった。俺は部屋の前に立つと、扉をノックして部屋に入った。


「失礼するよ。アリス、竜神の様子はどうだ?」


俺は部屋に入ったがアリスの姿が見当たらなかった。


「アリスはもう帰ったのか?」


俺は竜神の寝ているベッドに近付いた。そしたら、竜神の寝ている横でアリスも一緒に寝ているのが見えた。


「...ふっ、竜神。お前も中々に好かれたみたいだな。」


俺は二人の寝ているベッドの横に置いてあった椅子に座った。


「全く、竜神が無茶するから次は俺に無茶をしろと紫が言ってきたぞ?」


俺は寝ている竜神に向かって呟いた。それが誰にも聞かれていないにしろ、何故か喋りたかったのだ。


「だからな...俺は無茶をする。竜神、だからお前はゆっくり休め。その分、俺がやってやるからな...」


俺はそう言うと、ゆっくりと部屋から出ていった。廊下は静かな静寂に包まれていた。そして、暗闇の中から声が聞こえた。その声は先程に聞いたばかりの声だった。


「ようやくやる気になってくれたわね。」


「...そもそも、俺が代わりに動く事は既に計算済みだったのだろう?八雲紫よ。」


暗闇から先程の声、八雲紫が出てきた。


「ふふふ...やっぱり貴方を連れて来て良かったわ。」


「正直、俺は迷惑だがな。」


「へぇ、じゃあ何で動いてくれるのかしら?」


紫は静かに笑いながらそう問い掛けてきた。


「それは...竜神の為であり、俺の仕えているお嬢様の為だ。それ以上もそれ以下も無い。」


「ふふふ、貴方もやっぱり面白いわね。竜神と言い、貴方と言い...自分の為には戦わない。」


「ふん、それが俺である為に。竜神は竜神自身である為だ。」


「成程ね...それで、もう一度聞くけど異変解決のメンバーになってくれるかしら?」


「ふっ...聞かずとも分かるだろう?勿論手伝う事にするさ。」


「ありがとう。それじゃあ、これを渡しておくわ。」


紫は一枚の紙切れを手渡してきた。


「何だ?この紙切れは。何だか妙な気配を感じるような...」


「それは闇の魔力を封じ込めたマジックアイテムよ。それを使えば闇の力を扱えるわ。だけど、代償は寿命を半分も失うの。だから、本当なら渡したくは無かったけど、この後の戦いがどうなるか分からないの。だから、竜神と同じく貴方も最後の切り札なのよ。」


「そうか...分かった。これは預かっておく。ま、使う事が無いように祈っておきたいがな。」


「そうね。それじゃあ、私はそろそろ戻るわ。色々と調べたい事があるから。」


「調べたい事?」


「そう。まあ、貴方には関係無い事を調べるから気にしなくても良いわよ。」


「...そうか。」


「それじゃあ。また会いましょう。」


そう言うと紫は再び闇の中に消えていった。


「全く...紫は隠す気全然無いじゃないか。」


そう、紫は関係無い事を調べると言っていたが、実際は竜神に関して調べに行ったのだろう。


「それじゃあ、俺はお嬢様にこの事を報告しに行くかな。流石に黙っておくと弾幕ごっこで本気を出されそうだからな。」


俺がお嬢様の居る部屋に向かおうとしたら、また暗闇の中から声が聞こえてきた。


「その必要は無いわ。儚月。」


「その声...お嬢様ですか?何故此処に?」


暗闇から聞こえたのはお嬢様の声だった。


「そりゃ、貴方が竜神の寝ている部屋から戻ってくるのが遅いから様子を見に来たのよ。」


「そうだったのですか。わざわざ申し訳ありません。」


「良いのよ。それで、さっきの話なのだけど。」


「もしかして、紫との会話を聞いていたのですか?」


「ええ、全部とは言わないけど聞きていたわ。」


「そうですか。では、先程の話...異変解決メンバーとして動いてもよろしいでしょうか?」


「ええ良いわよ。ただし...」


「ただし...何でしょうか?」


「私も動くわ。」


俺はお嬢様の言葉に驚いた。


「え...ええ!?お嬢様も異変解決メンバーに入るのですか!?」


「そうよ。館でのんびりするのも飽きたからね。少しは動きたいのよ。」


「で、でもお嬢様?朝方の行動は出来ないはずでは?」


「それに関しては問題無いわよ。前に香霖堂に行った時に日焼け止めクリームという物を見つけたからね。これを付ければ日中でも動ける筈よ。」


「そ、そうですか。ではお嬢様も動くということで良いのですね。」


「ええ、良いわよ。それで、行動とかは何時するのかしら?」


「そうですね...まだ異変は起きていないので起きるまでの間は自由で良いでしょう。」


「そう...あ、そうだわ。儚月は確か能力はあるけどスペルカードは持っていないのよね?」


「あ、はい。スペルカードは持っていないですね。」


「なら、儚月のスペルカードでも作る?」


「そうですね...少しは強い技があった方が良いか...分かりました。スペルカードを作りましょう。」


俺がそう言うと、お嬢様は何故か楽しそうな感じだった。


「じゃあ早速作りましょう!スペルカードの名前は私が決めるわ!」


「は...はあ。分かりました。」


「そうと決まれば大図書館に行くわよ!」


「大図書館?何故ですか?」


「細かい説明は後でするから早く行くわよ!」


そして、お嬢様は楽しそうに大図書館に向かって行った。


「全く...まあ、お嬢様が楽しそうで良いか。」


俺もお嬢様の後を追いかけて大図書館に向かうのだった。

久しぶりの為、おかしい部分があるかも知れません。そこは目を瞑って下さい(´・ω・`)

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