人里の定食屋
ご飯を食べに行きます。
「それにしても、かなり賑わってるよな此処は。」
「そうね。それに此処には人間だけじゃなくて、妖怪も人間に混じって暮らしているのも理由の一つかもしれないわね。」
「人間も妖怪も混じって暮らしているのか?」
「そうです。人里には人間が好きな妖怪が人間に化けたりしながら暮らしているのです。」
「そうなんだな。だけど、何で文は着替えているんだ?」
「いくら妖怪と人間が一緒に暮らしているとは言え、人里の外の妖怪は皆狂暴だと思われていますので。」
「そうなんだな。...すまないな、嫌な思いになってしまったか?」
「いえ、慣れているので大丈夫ですよ。」
そう言っているが、文が一瞬暗い顔をしたのを竜神は見逃さなかった。
「...竜神。」
アリスが小さい声で呼んできた。どうやらアリスも気づいていたようだ。そこで竜神がアリスにしか気づかないように合図した。
「ねぇ、文。」
「はい。何でしょうか?」
「もうすぐで昼時だしご飯を食べに行かない?」
「えっ?でも私、人里のお金は持っていませんよ?」
「大丈夫よ。竜神が出してくれるから。」
「でも竜神さんは外の世界から来たんでしょう?だったら、こっちのお金は持っていないんじゃないんですか?」
「それに関しては大丈夫だ。こっちのお金は持っているから。」
「ですが、早く寺子屋に向かわないといけないんじゃ...」
「少し遅くなっても大丈夫だろう。さっ、早く飯を食いに行こう。」
「でも...」
「大丈夫よ。早く行きましょう。」
まだ、何か言いたそうな文を無理矢理連れて定食屋に向かった。
「よし、ここだな。」
「ですが本当に良いんでしょうか。」
「大丈夫よ。どうせ急ぎの用事じゃないんだから。」
アリスはそう言っていたが、俺には本当は時間がなかった。あの時見た“夢”の事があるから急いで幻想郷の全員に会っておきたかったが、文の様子を見て放っておけなかったから時間をさいてまで文と昼飯を食いに来たのだ。
「まあ、とりあえず中に入ろうぜ。」
俺達が中に入った瞬間、元気の良い男の声が聞こえた。
「いらっしゃい!お客さんは何人様で!」
「三人だ。何処か広くて景色の良い部屋は無いか?」
「それでしたらちょうど一つ空いているので案内しますね。」
「すまないな。よろしく頼むよ。」
案内された部屋は確かに景色もよく、部屋も広かった。
「良い部屋だな、気に入ったよ。」
「気に入ってもらえて良かったです。」
「よし、それじゃあ二人は先に決めておいてくれ。ちょっとこの人と話をしてくるから。」
そう言って、部屋に案内してくれた店員を外に連れ出した。
「あの、それで話とは何ですか?」
「俺の連れの独りについて何だか...」
「それって、あの髪の短い青っぽい服を着た少女の事ですか?」
「いや、もう一人の少し前の新聞記者の服装をした少女の事だ。」
「ああ、あの人の事ですか。でもその人がどうかしたんですか?」
「実はあいつは人里の外の妖怪なんだ。」
「...!!」
そりゃあ驚くよな。狂暴と思われている人里の外の妖怪がいるんだからな。
「何で貴方は外の妖怪と一緒にいるんですか!?」
「ちょっと妖怪の山に行った時に知り合ってな。」
「...ですが、何でそんなことを自分に教えるんですか?自分が他の人達に教えるかもしれないんですよ?」
「うーん。何て言うのかな?あんたの顔を見た時、すぐに“信用”出来るって感じたからかな?」
「まさかそんな理由で?」
「まあ、そうだな。それに此処にはお世話になりそうだからな。」
「...ははは、貴方には負けましたよ。分かりましたよ、これからもよろしくお願いします。」
「本当、ありがとう!これからもよろしくな。」
「そうだ、これからお世話になるんですから自己紹介でもしましょうか。自分は崟兒と言います。能力は「全てを斬る程度の能力」です。」
「俺は坂上竜神だ。能力は...沢山あるからまた暇な日に話す事にするぜ。」
「竜神さんですね、よろしくお願いします。」
「ああ、崟兒もよろしく頼むぜ。それじゃあ、早く戻るか。そろそろ待ちくたびれているはずだからな。」
「そうですね。そろそろ注文も決まっているでしょうし。」
「すまないな、長くなってしまった。」
「本当ですよ。何を話していたんですか?」
「これからもお世話になりますからって言う話をしていただけですよ。」
「そうなのね。」
そう言うと、アリスはこっちを見た。それで俺が頷いたらほっとしたように文に気づかれないように小さく笑った。
「よし、それじゃあ何をたのもうかな。」
「私と文は和食定食にしたわよ。」
「だったら、俺も同じものにしようかな。」
「和食定食を3つでよろしいですか?」
「ああ、それで頼む。」
「十五分ほどかかりますのでお待ちください。」
そして俺達は料理が出来るまで待つのだった。
新しいキャラクター、崟兒が出てきました。




